未来の核が脈動するたびに、美鈴の体から“未来”が削られていく。
髪の先は白く、影は薄く、足元はわずかに透け始めていた。
レミリアはその変化を見て、胸が張り裂けそうになった。
「美鈴……!
もうやめて……!
これ以上は……本当に……!」
美鈴は震える体で立ち上がり、未来の核に手を置いたまま、レミリアを見つめた。
「大丈夫です……
私は……まだここにいます……」
その声は弱く、しかし確かだった。
◆
影が静かに言った。
「紅美鈴。
お前の未来は、すでに“削減”が始まっている。
このまま未来を確定させれば――
お前の寿命は、確実に短くなる」
レミリアが叫ぶ。
「やめて!!
そんな未来、私は絶対に認めない!!」
影はレミリアを見つめた。
「レミリア・スカーレット。
お前は“紅魔館の未来”より“美鈴の未来”を望んでいる。
その願いが、未来を歪めた」
レミリアは震えた。
「私は……ただ……美鈴を守りたかっただけ……
それだけなのに……!」
影は静かに言った。
「その願いは、間違っていない。
だが――未来は“願い”だけでは動かない。
動かすには“選択”が必要だ」
美鈴は未来の核に手を置いたまま、レミリアに向き直った。
「お嬢様……
私は……選びます。
紅魔館が救われる未来を」
レミリアは涙をこぼした。
「美鈴……お願い……
あなたの未来を……奪わせたくない……!」
美鈴は微笑んだ。
「お嬢様。
私は……お嬢様の未来を守りたいんです。
だから……大丈夫です」
レミリアは首を振った。
「大丈夫じゃない!!
あなたの影が……もう薄いのよ……!
このままじゃ……あなたは……!」
美鈴はそっとレミリアの手を握った。
「お嬢様。
私は……消えません。
未来が短くなっても……私は、ここにいます。
お嬢様のそばに」
レミリアは震えながら美鈴を抱きしめた。
「美鈴……お願い……
私を置いていかないで……!」
美鈴は優しく抱き返した。
「置いていきません。
絶対に」
◆
そのとき――
未来の核が激しく脈動し、紅魔館全体が揺れた。
影が低く呟く。
「……始まったか。
“未来の崩落”が」
パチュリーと咲夜が駆け込んでくる。
「レミィ! 美鈴!
紅魔館の魔術構造が限界よ!」
「このままでは……館ごと未来に飲まれます!」
レミリアは美鈴を抱きしめたまま叫ぶ。
「美鈴! もうやめて!!
あなたがいなくなるくらいなら……紅魔館なんて……!」
美鈴はレミリアの肩に手を置いた。
「お嬢様。
私は……紅魔館が好きです。
ここで過ごした時間も、みんなも……
そして、お嬢様も」
レミリアの瞳が揺れた。
美鈴は続ける。
「だから……守りたいんです。
未来が削られても……私は後悔しません」
レミリアは涙をこぼした。
「私は……後悔する……!
あなたがいない未来なんて……生きていけない……!」
美鈴は微笑んだ。
「大丈夫です。
私は……消えません。
絶対に」
◆
影が静かに言った。
「紅美鈴。
最後の選択だ」
美鈴は影を見つめた。
「……どうすればいいんですか?」
影は未来の核を指した。
「未来の核に“願い”を刻め。
お前が選んだ未来を、そこに固定するのだ」
美鈴は深く息を吸い、未来の核へ手を伸ばした。
レミリアが叫ぶ。
「美鈴!!
お願い……行かないで……!」
美鈴は振り返り、レミリアに向かって微笑んだ。
「お嬢様。
私は……必ず戻ってきます」
その瞬間――
未来の核が爆発的に光を放ち、紅魔館全体が白い光に包まれた。
未来が――最終局面へ突入した。