静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

19 / 26
第19話 滅びの未来、最後の姿

 未来の核が爆ぜた瞬間――

紅魔館は完全に“未来の戦場”へと変貌した。

 

 空は裂け、床は未来の断片で構成され、壁は存在したり消えたりを繰り返す。

 

 燃える未来の炎が空を走り、消える未来の虚無が足元を侵食し、救われる未来の光が断片的に瞬く。

 

 ここはもう、幻想郷のどこにも存在しない。

未来そのものが剥き出しになった、最終決戦の舞台だった。

 

 

 

 

 美鈴は未来の核に手を置いたまま、ふらりと倒れそうになっていた。

 

 レミリアが抱きとめる。

 

「美鈴……!

 もうやめて……!

 あなたの体が……!」

 

 美鈴の腕は、肘から先がほとんど透明になっていた。

未来が削られ、存在が薄れている。

 

 咲夜が息を呑む。

 

「……美鈴……その腕……!」

 

 パチュリーが震える声で言った。

 

「未来の削減……ここまで進んでいるなんて……!」

 

 美鈴は弱く微笑んだ。

 

「大丈夫……です……

 私は……まだ……ここに……」

 

 レミリアは涙をこぼした。

 

「大丈夫じゃない!!

 あなたの未来が……消えていってるのよ……!」

 

 美鈴は震える手でレミリアの頬に触れた。

 

「お嬢様……

 私は……お嬢様の未来を守りたいんです……

 だから……」

 

 レミリアは美鈴の手を強く握った。

 

「そんな未来、いらない……!

 あなたがいない未来なんて……!」

 

 

 

 

 そのとき――

未来の核が、低く唸った。

 

 空間が震え、未来の断片が一斉に集まり始める。

 

 パチュリーが叫ぶ。

 

「……来るわよ……!

 “滅びの未来”の……最終形態が……!」

 

 レミリアが美鈴を抱き寄せる。

 

「美鈴、下がって!」

 

 美鈴は首を振った。

 

「いえ……私も戦います……

 これは……私が選んだ未来ですから……」

 

 レミリアは唇を噛んだ。

 

「あなたは……本当に……!」

 

 

 

 

 未来の核から、黒い霧が溢れ出す。

 

 霧は渦を巻き、形を成し、

やがて――“それ”は姿を現した。

 

 それは、かつての怪物とは比べ物にならない。

 

 巨大で、歪んでいて、未来の断末魔そのものが形になったような存在。

 

 燃える未来の炎をまとい、消える未来の虚無を背負い、救われる未来の光を喰らっている。

 

 影が静かに言った。

 

「……これが、“滅びの未来”の最終形態。

 未来の収束が生んだ、最後の敵だ」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「こんなもの……未来なんて呼ばせない!!」

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「お嬢様……行きましょう」

 

 レミリアは美鈴の手を握り返した。

 

「ええ……一緒に」

 

 

 

 

 影が最後の真実を語る。

 

「紅美鈴。

 お前が未来を選んだことで、

 “滅びの未来”は最後の抵抗を始めた。

 これを倒せば――未来は確定する」

 

 美鈴は息を呑む。

 

「倒せば……紅魔館は救われるんですね……?」

 

 影はうなずいた。

 

「だが――

 お前の未来は、さらに削られる」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「そんなの……認めない!!

 美鈴を犠牲にする未来なんて……!」

 

 影は静かに言った。

 

「犠牲になるかどうかは――

 美鈴の“願いの強さ”次第だ」

 

 美鈴は未来の核を見つめた。

 

「私は……守りたい。

 紅魔館も……お嬢様も……

 みんなの未来を……!」

 

 レミリアは美鈴の手を握りしめた。

 

「美鈴……お願い……

 私を置いていかないで……!」

 

 美鈴は微笑んだ。

 

「置いていきません。

 絶対に」

 

 

 

 

 滅びの未来の怪物が咆哮した。

 

 未来の炎が空を裂き、虚無が足元を侵食し、光が弾ける。

 

 レミリアが翼を広げる。

 

「美鈴……行くわよ!」

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「はい……お嬢様!」

 

 二人は同時に飛び出した。

 

 未来そのものとの戦いが――

ついに始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。