静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第19話 滅びの未来、最後の姿

 未来の核が爆ぜた瞬間――

紅魔館は完全に“未来の戦場”へと変貌した。

 

 空は裂け、床は未来の断片で構成され、壁は存在したり消えたりを繰り返す。

 

 燃える未来の炎が空を走り、消える未来の虚無が足元を侵食し、救われる未来の光が断片的に瞬く。

 

 ここはもう、幻想郷のどこにも存在しない。

未来そのものが剥き出しになった、最終決戦の舞台だった。

 

 

 

◆

 

 美鈴は未来の核に手を置いたまま、ふらりと倒れそうになっていた。

 

 レミリアが抱きとめる。

 

「美鈴……!

 もうやめて……!

 あなたの体が……!」

 

 美鈴の腕は、肘から先がほとんど透明になっていた。

未来が削られ、存在が薄れている。

 

 咲夜が息を呑む。

 

「……美鈴……その腕……!」

 

 パチュリーが震える声で言った。

 

「未来の削減……ここまで進んでいるなんて……!」

 

 美鈴は弱く微笑んだ。

 

「大丈夫……です……

 私は……まだ……ここに……」

 

 レミリアは涙をこぼした。

 

「大丈夫じゃない!!

 あなたの未来が……消えていってるのよ……!」

 

 美鈴は震える手でレミリアの頬に触れた。

 

「お嬢様……

 私は……お嬢様の未来を守りたいんです……

 だから……」

 

 レミリアは美鈴の手を強く握った。

 

「そんな未来、いらない……!

 あなたがいない未来なんて……!」

 

 

 

◆

 

 そのとき――

未来の核が、低く唸った。

 

 空間が震え、未来の断片が一斉に集まり始める。

 

 パチュリーが叫ぶ。

 

「……来るわよ……!

 “滅びの未来”の……最終形態が……!」

 

 レミリアが美鈴を抱き寄せる。

 

「美鈴、下がって!」

 

 美鈴は首を振った。

 

「いえ……私も戦います……

 これは……私が選んだ未来ですから……」

 

 レミリアは唇を噛んだ。

 

「あなたは……本当に……!」

 

 

 

◆

 

 未来の核から、黒い霧が溢れ出す。

 

 霧は渦を巻き、形を成し、

やがて――“それ”は姿を現した。

 

 それは、かつての怪物とは比べ物にならない。

 

 巨大で、歪んでいて、未来の断末魔そのものが形になったような存在。

 

 燃える未来の炎をまとい、消える未来の虚無を背負い、救われる未来の光を喰らっている。

 

 影が静かに言った。

 

「……これが、“滅びの未来”の最終形態。

 未来の収束が生んだ、最後の敵だ」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「こんなもの……未来なんて呼ばせない!!」

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「お嬢様……行きましょう」

 

 レミリアは美鈴の手を握り返した。

 

「ええ……一緒に」

 

 

 

◆

 

 影が最後の真実を語る。

 

「紅美鈴。

 お前が未来を選んだことで、

 “滅びの未来”は最後の抵抗を始めた。

 これを倒せば――未来は確定する」

 

 美鈴は息を呑む。

 

「倒せば……紅魔館は救われるんですね……?」

 

 影はうなずいた。

 

「だが――

 お前の未来は、さらに削られる」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「そんなの……認めない!!

 美鈴を犠牲にする未来なんて……!」

 

 影は静かに言った。

 

「犠牲になるかどうかは――

 美鈴の“願いの強さ”次第だ」

 

 美鈴は未来の核を見つめた。

 

「私は……守りたい。

 紅魔館も……お嬢様も……

 みんなの未来を……!」

 

 レミリアは美鈴の手を握りしめた。

 

「美鈴……お願い……

 私を置いていかないで……!」

 

 美鈴は微笑んだ。

 

「置いていきません。

 絶対に」

 

 

 

◆

 

 滅びの未来の怪物が咆哮した。

 

 未来の炎が空を裂き、虚無が足元を侵食し、光が弾ける。

 

 レミリアが翼を広げる。

 

「美鈴……行くわよ!」

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「はい……お嬢様!」

 

 二人は同時に飛び出した。

 

 未来そのものとの戦いが――

ついに始まった。

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