未来の核が爆ぜた瞬間――
紅魔館は完全に“未来の戦場”へと変貌した。
空は裂け、床は未来の断片で構成され、壁は存在したり消えたりを繰り返す。
燃える未来の炎が空を走り、消える未来の虚無が足元を侵食し、救われる未来の光が断片的に瞬く。
ここはもう、幻想郷のどこにも存在しない。
未来そのものが剥き出しになった、最終決戦の舞台だった。
◆
美鈴は未来の核に手を置いたまま、ふらりと倒れそうになっていた。
レミリアが抱きとめる。
「美鈴……!
もうやめて……!
あなたの体が……!」
美鈴の腕は、肘から先がほとんど透明になっていた。
未来が削られ、存在が薄れている。
咲夜が息を呑む。
「……美鈴……その腕……!」
パチュリーが震える声で言った。
「未来の削減……ここまで進んでいるなんて……!」
美鈴は弱く微笑んだ。
「大丈夫……です……
私は……まだ……ここに……」
レミリアは涙をこぼした。
「大丈夫じゃない!!
あなたの未来が……消えていってるのよ……!」
美鈴は震える手でレミリアの頬に触れた。
「お嬢様……
私は……お嬢様の未来を守りたいんです……
だから……」
レミリアは美鈴の手を強く握った。
「そんな未来、いらない……!
あなたがいない未来なんて……!」
◆
そのとき――
未来の核が、低く唸った。
空間が震え、未来の断片が一斉に集まり始める。
パチュリーが叫ぶ。
「……来るわよ……!
“滅びの未来”の……最終形態が……!」
レミリアが美鈴を抱き寄せる。
「美鈴、下がって!」
美鈴は首を振った。
「いえ……私も戦います……
これは……私が選んだ未来ですから……」
レミリアは唇を噛んだ。
「あなたは……本当に……!」
◆
未来の核から、黒い霧が溢れ出す。
霧は渦を巻き、形を成し、
やがて――“それ”は姿を現した。
それは、かつての怪物とは比べ物にならない。
巨大で、歪んでいて、未来の断末魔そのものが形になったような存在。
燃える未来の炎をまとい、消える未来の虚無を背負い、救われる未来の光を喰らっている。
影が静かに言った。
「……これが、“滅びの未来”の最終形態。
未来の収束が生んだ、最後の敵だ」
レミリアが叫ぶ。
「こんなもの……未来なんて呼ばせない!!」
美鈴は拳を握りしめた。
「お嬢様……行きましょう」
レミリアは美鈴の手を握り返した。
「ええ……一緒に」
◆
影が最後の真実を語る。
「紅美鈴。
お前が未来を選んだことで、
“滅びの未来”は最後の抵抗を始めた。
これを倒せば――未来は確定する」
美鈴は息を呑む。
「倒せば……紅魔館は救われるんですね……?」
影はうなずいた。
「だが――
お前の未来は、さらに削られる」
レミリアが叫ぶ。
「そんなの……認めない!!
美鈴を犠牲にする未来なんて……!」
影は静かに言った。
「犠牲になるかどうかは――
美鈴の“願いの強さ”次第だ」
美鈴は未来の核を見つめた。
「私は……守りたい。
紅魔館も……お嬢様も……
みんなの未来を……!」
レミリアは美鈴の手を握りしめた。
「美鈴……お願い……
私を置いていかないで……!」
美鈴は微笑んだ。
「置いていきません。
絶対に」
◆
滅びの未来の怪物が咆哮した。
未来の炎が空を裂き、虚無が足元を侵食し、光が弾ける。
レミリアが翼を広げる。
「美鈴……行くわよ!」
美鈴は拳を握りしめた。
「はい……お嬢様!」
二人は同時に飛び出した。
未来そのものとの戦いが――
ついに始まった。