静かなる門番と歪む運命   作:肩幅ひろし

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第20話 紅い翼と青い拳、未来を切り拓く

 滅びの怪物が動いた。

 

 黒い腕が空間を裂き、未来の炎が奔流となって襲いかかる。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「美鈴、右へ!」

 

 美鈴は未来の流れを掴み、炎の軌道を“ずらした”。

 

 炎は美鈴の横を通り抜け、空間の裂け目へ吸い込まれる。

 

 パチュリーが驚愕する。

 

「……未来の軌道を……操作した……!?

 そんな芸当、普通は……!」

 

 影が静かに言った。

 

「紅美鈴は“運命の門番”。

 未来の流れを拒み、選び、変える力を持つ。

 覚醒した今、その力はさらに強まっている」

 

 咲夜が呟く。

 

「でも……その力を使うたびに……美鈴の未来が……」

 

 レミリアは歯を食いしばった。

 

「そんなの……許さない……!」

 

 

 

◆

 

 怪物が再び咆哮し、今度は虚無の波が押し寄せる。

 

 触れれば存在そのものが消える波。

 

 美鈴は拳を握りしめた。

 

「お嬢様……行きます!」

 

 レミリアが頷く。

 

「ええ……一緒に!」

 

 二人は同時に飛び出した。

 

 レミリアの紅い魔力が虚無を押し返し、美鈴の青い光が未来の流れを固定する。

 

 虚無の波が砕け散り、怪物の胸に隙が生まれた。

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「今よ、美鈴!!」

 

 美鈴は未来の光を拳に集めた。

 

「紅魔館は……滅びません!!」

 

 拳が怪物の胸を貫いた。

 

 光が爆ぜ、怪物が後退する。

 

 だが――

怪物はすぐに形を取り戻した。

 

 影が呟く。

 

「滅びの未来は強い。

 “未来の収束”そのものだからな」

 

 レミリアが叫ぶ。

 

「そんなの……関係ない!!

 美鈴と一緒なら……私は負けない!!」

 

 美鈴は微笑んだ。

 

「お嬢様……!」

 

 

 

◆

 

 そのとき――

美鈴の体が大きく揺らいだ。

 

 レミリアが振り返る。

 

「美鈴!?

 どうしたの……!」

 

 美鈴の足元が、透けていた。

 

 未来が削られ、存在が薄れている。

 

 パチュリーが叫ぶ。

 

「まずい……!

 美鈴の未来が……限界に近い……!」

 

 咲夜が震える声で言う。

 

「このまま戦えば……美鈴は……!」

 

 レミリアは美鈴の手を掴んだ。

 

「美鈴……もう戦わなくていい……!

 お願い……これ以上は……!」

 

 美鈴は首を振った。

 

「戦います……

 私は……紅魔館を守りたい……

 お嬢様の未来を……守りたい……!」

 

 レミリアは涙をこぼした。

 

 

 

◆

 

 影が静かに言った。

 

「紅美鈴。

 お前が未来を選ぶ力は強い。

 だが――

 “最後の鍵”が必要だ」

 

 レミリアが影を睨む。

 

「鍵……?

 まだ何かあるの……!」

 

 影はうなずいた。

 

「未来を確定させるには――

 “二つの願い”が一致しなければならない」

 

 美鈴は息を呑む。

 

「二つの……願い……?」

 

 影はうなずいた。

 

「紅美鈴の願い。

 そして――

 レミリア・スカーレットの願いだ」

 

 レミリアは震えた。

 

「私の……願い……」

 

 影は静かに言った。

 

「レミリア。

 お前はずっと“願い”を隠してきた。

 美鈴のために。

 紅魔館のために。

 そして――自分自身のために」

 

 レミリアは唇を噛んだ。

 

 美鈴はそっとレミリアの手を握った。

 

「お嬢様……

 私は……聞きたいです。

 お嬢様の願いを」

 

 

 

◆

 

 レミリアは震えながら、美鈴の手を握り返した。

 

「美鈴……

 私は……ずっと……怖かったの……」

 

 美鈴は目を見開いた。

 

 レミリアは続ける。

 

「あなたが……いつか私の前からいなくなる未来が……

 怖くて……たまらなかった……」

 

 美鈴の胸が痛んだ。

 

 レミリアは涙をこぼしながら叫んだ。

 

「だから私は……未来を歪めたの!!

 あなたが死ぬ未来を……消したくて……

 あなたがいなくなる未来を……否定したくて……

 私は……運命をねじ曲げたの!!」

 

 美鈴は息を呑んだ。

 

 影が静かに言う。

 

「そうだ。

 レミリアの“願い”は――

 『美鈴がいなくなる未来を拒絶すること』

 だった」

 

 レミリアは美鈴の胸に顔を埋めた。

 

「美鈴……

 私は……あなたがいない未来なんて……

 生きていけない……!」

 

 美鈴の目から涙がこぼれた。

 

 

 

◆

 

 レミリアは震える声で言った。

 

「私の願いは……

 あなたが生きていてくれる未来。

 それだけなの……!」

 

 美鈴はレミリアを抱きしめた。

 

「お嬢様……」

 

 レミリアは続ける。

 

「紅魔館が滅びてもいいなんて……

 本気で思ってるわけじゃない……

 でも……

 あなたがいない未来なんて……

 私には……“滅び”と同じなの……!」

 

 美鈴は涙をこぼしながら、レミリアの背中を優しく撫でた。

 

「お嬢様……

 そんなふうに思ってくれて……

 ありがとうございます……」

 

 

 

◆

 

 影が静かに言った。

 

「二つの願いは、まだ一致していない。

 美鈴は“紅魔館の未来”を望み、

 レミリアは“美鈴の未来”を望む」

 

 レミリアは美鈴を見つめた。

 

「美鈴……

 あなたの願いは……何?」

 

 美鈴は涙を拭い、レミリアの手を握りしめた。

 

「私の願いは――

 お嬢様と一緒に未来を歩くことです」

 

 レミリアは息を呑んだ。

 

 美鈴は続ける。

 

「紅魔館を守りたい。

 でも……

 お嬢様と一緒にいたい。

 その未来を……私は選びたいんです」

 

 レミリアの瞳から、涙が溢れた。

 

「美鈴……!」

 

 影が静かに言った。

 

「二つの願いが――

 今、初めて一致した」

 

 未来が震えた。

 

 滅びの怪物が咆哮した。

 

 未来が、決まろうとしている。

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