86-エイティシックス-DIE NEUE THESE   作:ふそう

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【機体名】長距離滑空爆弾型《フルークヘルヒェン》(Flügelchen )》
【形状】 自走地雷型+低反射炭素繊維製ウイングスーツ(ディスポーザブル仕様)
【巡航速度 / 突入速度】滑空時:時速420km / 自由落下突入時:時速980km
【概要】空中強襲輸送型(ムッターフォーゲル)の貨物室から放たれる空中奇襲兵器。
本来は地べたを這い回るだけのはずの自走地雷型に使い捨ての滑空用ウイングスーツを装着させ、姿勢制御を完全自律化させた。
レーダー反射断面積(RCS)が極めて小さいステルスウイングを展開し、投下された後は一切の熱源(エンジン)を持たず、無音の滑空で前線FOB(前方運用基地)やバルタ線の陣頭へ音もなく接近する。
目標上空に達した瞬間、ウイングスーツを不可逆的に爆破パージし、元の「人形の生ける屍」となって、時速1000キロ近い終端速度で屋根や塹壕へ直接突入・自爆する。
ウイングスーツを纏ったまま突入する場合もある。
前線のエイティシックス達からは、空から降ってくるその無気味な人形の姿から「空飛ぶ死体」「落ちてくるバグ」と恐れられている。



第Ⅱ章 Ⅳ話

 

〈ミニ・ヒストリカル・ドキュメンタリー〉

 

「人類史上最優良民族である我ら新白銀種が造り出したジャガーノートが、劣等ヒト型生物が造り出した〈レギオン〉に負ける事があるとしたら、其れは中枢情報処理装置の元になったエイティシックスの無能さに原因があります」

 

「エイティシックスという名称の屍獣の身でありながら、素晴らしい兵器の一部となって戦い、同種が造り出したレギオンに勝利する。自らが劣等種でも、他の同種、例えば五体満足ながら中枢情報処理装置にすらなれず、地べたを這い回る以外能がない真のゴミよりは少しマシな劣等種だという事を自覚した上で完全に死にたい。そんな、怠惰でクズなゴミの中でも多少の向上心と其れを叶えうる実力は持ち合わせていたゴミ共」

 

「そんな奴らに、最良種たる我ら新白銀種は慈悲を与えました。自らの身銭を切り、手を動かし、汗を流し、奴らにそれを実現する機械と機会を与えてやったのです」

 

「ですがやはり、所詮無能は無能、ゴミはゴミでした。奴らはたかだかレギオン一機に数機掛かりで挑んで勝てもせず、ただスクラップになって死んでいくのです」

 

「其れだけではありません。あろうことかエイティシックスは自らをレギオンに捧げ、そうして手に入れた力で恩義ある我等へと牙を剥かんとするのです」

 

「何たる裏切りでしょうか、何たる屈辱でしょうか、何たる侮辱でしょうか」

 

「だからこそ、優秀な我ら新白銀種が。・・・全く手間な事ではありますが、奴らの無能さに目を瞑る寛大な心持ちで中枢情報処理装置(プロセッサー)化したエイティシックスを正しく管理し、正しく教育し、正しく運用し、確実かつ不可逆的に死なせてやる必要があるのです」

 

〈大歓声と万雷の拍手〉

 

"映像資料:星歴二一四一年、サンマグノリア共和国空軍及び野戦空軍創設二百周年記念式典での皇女イヴォーヌ・ド・プリムヴェール空軍元帥の演説(抜粋)"

 

 


 

 

「さっきは有り難うアネット、助かったわ。それにしても、今日はずいぶん早いのね」

 

「仕事よ、徹夜で。あんな人殺しのゴミクズバカカルト連中と一緒にしないでよ?」

 

鉄道駅にある自動改札機と瓜二つな見た目のセキュリティゲートを潜り抜けながら斜坑エレベーター乗り場に向かう道中、アンリエッタは言う。

 

「此処は死地でも戦場でもなくて、グランミュール山脈の此方側。

レギオンと戦うのはエイティシックスで、別にうちらが指示を飛ばそうが飛ばさなかろうが向こうは勝手に戦ってくれる。

だいたい、今の共和国軍なんて、完璧ただの失業者対策じゃない。

傷病将兵の為とか言って造ったは良いけどグランミュール山脈に押し込められっ放しの名誉部隊とか、阻電攪乱型(アインタークスフリーゲ)避けのエクスキャリバー(超高層レーザー砲塔)とか。

ウチみたいな研究部門はまだ良いよ?

他なんて仕事にあぶれた馬鹿とか、親衛隊員や甲冑隊員の肩書を持たせたかったけど試験に落ちて仕方なく共和国軍に入らされてきた馬鹿とか、ゲーム感覚でエイティシックス狩りがしたい成金のガキンチョとか。

後はさっきの連中見たいに活動資金の足しにしたくて入って来た活動家気取りの連中とか、そんなのばっかり。

そんな状況じゃ、軍隊なんてあってもなくても良いようなもん「「なんなんだよアレ!プロセッサーの奴ら、リサイクル品の分際で!?」」

 

アンリエッタの言葉を遮る形で響いた、恐らくは自分達と同年代と思われる二人の男の怒声。

軍服は紺青、靴は黒革靴で、さっきの連中よりはマシ。

首には例の薄い痣。

新白銀種だ。

 

「本当だよ。何でブリズベーン生まれのブリズベーン育ちの"模範"の俺らが死に損ないのエイティシックス共に嫌み言われなきゃなんねぇんだよ!?クソが、マジでぶっ殺してやる!!!」

 

第九共和政樹立後のサンマグノリア共和国では、領土縮小に伴い戦前の大管区と地域圏といった地方区分の再編が行われた。

八十五の州はそのままに、グランミュール地域圏と中央地域圏のアーストラリス地方を除いた極西・西部・中央・東部の地域圏は首都圏・セレナリア・エルドラド・エウロパ・北アメリア・南アメリア・ジーア・エフリカの八つの地方毎の単位に分割再編された。

其れを監督する皇帝府(戦前は大統領府)直属のセレナークティカ大管区も、極西・西部・中央・東部の四つに分割再編。

グランミュール地域圏は新たに設置された皇帝府直轄の〈閉鎖領〉となった。

そして、旧中央地域圏から分離されたアーストラリス地方は、セレナリア地域圏との境に位置するアルプス山脈と共に、皇帝が勅撰した皇族が勤める代官によって統治される〈アーストラリス皇帝領〉とされた。

ブリズベーン半島があるのも、先の新白銀種の故郷であるブリズベーン市があるのも此処だ。

サンマグノリア共和国第一共和政時代に築かれた歴史ある古都である此の都市はプリムヴェール一族の出身地でもあり、離宮もある。

一番の特徴は、皇帝領には新白銀種以外の人種は立ち入りを禁止されている点だ。

其の徹底ぶりは、古白銀種や其の他の白系種を乗せた国内線旅客機に領域の上空通過を認めない程で、国際線等はもっての他。

其所の出身だからという訳では無いが、アーストラリス出身の新白銀種の指揮管制官には、エイティシックスに対してあからさまな殺意を抱きながら接するものが多いのだ。

 

"模範"という単語にも説明を擁する。

新白銀種市民は、模範・浮動・背徳者の三つの階層に分類されている。

大統領令九四一〇号に基づいて整備された制度で、あくまでも対象は新白銀種のみ。

正式には共和国市民登録制度と言うが、対象外である古白銀種等は此れを〈信用格付〉と呼んでいる。

 

"模範"は模範的民族同胞の略だ。

主に先祖代々新白銀種(ノヴス)純血だという者が該当し、六億人の内の八割が"模範"だ。

憂国騎士団が言う処の民族愛や同胞愛に満ちた模範的な新白銀種(ノヴス)であり、皇帝領に移住する権利を持つ。

本人の能力の有無を問わず、職場での出世の道が開かれている人々でもある。

 

"浮動"は浮動勢力の略だ。

先祖、又は現在古白銀種(ヴェトゥス)や狭義の白系種(アルバ)と婚姻関係にある新白銀種(ノヴス)が該当し、六億人の内の一割が浮動である。

参政権はあるし、進学や就職の機会も特に制限は無いが、出世の早さでは模範にハッキリと劣る。

 

そして"背徳者"。

最下位の階層であり、略称ではない。

当代から四世代以内に有色種と婚姻関係にあった新白銀種(ノヴス)が該当し、六億人の内の最後の一割が背徳者である。

国家に対する反乱の可能性ありと疑われ、公民権は無期限停止。

閉鎖領への強制移住及び隔離監視措置が取られている人々である。

 

古白銀種の様な少数派ではなく、多数派である新白銀種を対象に、こうした身分制度同然の仕組みを設けているというのも、第九共和政の特徴と言える。

 

「ね?見たでしょ?彼奴ら(ノヴス)にとってはレギオンと戦うよりエイティシックスを殺す方が大事な仕事な訳。

ギアーデ帝国が滅亡して、既に統帥権を保持した人間がもういない事も。

レギオン自体が知性化して、寿命を克服したのを知っててもね?

彼奴ら(ノヴス)からすれば、真っ当にエイティシックスを指揮してレギオンに勝とうとして、何より生き残らせようとするウチら(ヴェトゥス)の方が可笑しいんだから」

 

 

知性化されたレギオンの事を、周辺諸国やサンマグノリアの古白銀種達(ヴェトゥス)は"黒羊や"羊飼い"と呼んでいるが、新白銀種達(ノヴス)達は単に"死に損ない"と呼んでいる。

 

星歴二一三〇年から配備が開始されたレギオンの中枢処理系には本来、万一の暴走時の保険として変更不可の寿命が設定されていて、その期間はバージョンごとに五万時間、およそ六年弱である。

此れは戦前にギアーデ帝国の公式発表に基づく情報である。

 

だが、九年前の軍団兵戦争開戦直前の時点で、混沌極まる内戦状態にあったギアーデ帝国。

特に首都である帝国都市ザンクト・エデルブルクは、エルンスト・ツィマーマンという人物が主導する共和主義組織と其れに与した各領邦諸国家の軍隊が合同した革命軍によって占領され、新たに発足した〈ギアーデ暫定国家機構臨時政府〉による統治下に置かれた事で、共同君主制のギアーデ帝国にあって正帝を輩出するアデルアドラー王室とアドラリア帝国政府及び、王党派アドラリア帝国軍及び帝国近衛軍は、北極圏に位置する紅薔薇砦要塞(ローゼンフォルト)へ。

帝国議会や帝国政府は禿鷹城要塞(ガイエスブルグ)に立て籠る事を余儀なくされていたという。

 

その様な情勢下にあって、統帥権保持者である正帝や副帝、そして帝国を構成する諸領邦の君主達を除いたレギオンの最上位存在であるとされる自律型総合管理戦略指揮AI(ファーター・デア・レギオーネン)(以下、ファーター)は、何らかの理由で突如暴走を開始。

内戦を戦う各勢力のみならず周辺諸国全てに侵攻を開始したというのが、ヴラディレーナやアンリエッタの知る開戦の経緯である。

その過程でファーターは、人間に頼らずとも中央処理装置の更新を達成する手段として人間の戦死者や捕虜の脳構造を利用する事を考えたのだろう。

 

そうして現れた知性化されたレギオンが、今や戦場で確認されるレギオンの全てを占めており、そればかりか、彼等自身による新型レギオンの開発や戦術研究にも取り組んでいる。

 

飛行型レギオンに課せられた攻撃兵器搭載禁止の禁則事項を回避すべく、唯一人形を模したレギオンである自走地雷型にウイングスーツを着せて空中強襲輸送型(ムッターフォーゲル)の貨物室から投下、滑空しながら地上の目標に突入する長距離滑空爆弾型(フルークヘルヒェン)を開発したのは其の一例だ。

 

「・・・私も、彼処で言い返しても、火に油を注ぐだけだって言うのは判っているんだけど・・・」

 

「レーナ、もう彼奴ら(ノヴス)には徹底的に無視決め込みなさいよ。

彼処までプリムヴェール主義にどっぷり浸かった人間には、もう何を言っても通じないんだから。

何より、レーナの御先祖様は彼奴ら(ノヴス)に憎まれる要素が盛り沢山なのよ?」

 

 

サンマグノリア共和国における奴隷解放運動及び公民権運動の始まりは、星歴一九三九年に勃発した、アルビオン王国やイゾラビアンカ共和国、〈征海船団氏族首長国連邦レグキード〉等が支援するアーストランティス州における奴隷供給植民地の独立戦争と、全大洋北部を占める北大洋を挟んだオリエンティス州大陸部における奴隷貿易相手国だった大華帝国と朝麗王国で勃発した、辛亥(しん・がい)率いる共和主義者勢力と令仁(れい・にん)率いる無産主義者勢力による反奴隷貿易運動、共和革命、無産主義革命を支援する海神国との戦争での敗戦だった。

 

アルビオン王国とイゾラビアンカ共和国による南北挟み撃ちでの本土侵攻が現実味を帯びた星歴一九四五年、其れを阻止したいサンマグノリアが白崖海峡とアルブ海での示威目的で原子爆弾を使用した事。

ギアーデ帝国から見て極西と呼ばれるアルバンティス州と、極東と呼ばれるオリエンティス州を結ぶ回廊の一つ、ペラン回廊アルバンティス州側での海神国艦隊眼前で同様の目的で原子爆弾を使用した事が、講和に繋がった。

 

"回廊"とはなにかについては説明を要する。

星歴世界において人類の外海進出を拒んでいる敵性海棲生物〈原生海獣(クジラ)〉は縄張り意識が異常に強く、自らの縄張りに人類が立ち入るのを嫌うように、彼等クジラ同士でも他の種類が自分達の縄張りに入って来ることを拒み、故に互いに距離をとって接触を避け合っている。

これによって、種類と種類ごとの棲息海域に幅が百キロから最大で三百キロ程度の緩衝海域(人類にとっては安全海域)が出来上がる。

それが回廊である。

この回廊は大陸間や島国との貴重な海上交易ルートとして利用されてきたが、回廊出入口付近や回廊内に位置する島の領有権を巡って国家間で度々外交紛争や戦争が起きるきっかけにもなった歴史がある。

 

新古白銀種の超大国相手に極東黒種(オリエンタ)の島国が事実上勝利を収めた事は、サンマグノリア国内の奴隷達や農奴達に強い衝撃を与え、アルビオン王国王立空軍とイゾラビアンカ共和国空軍によるサンマグノリア本土空襲によって荒廃したセレナークティカ・サンマグノリア各地で大規模な反乱を続発させた他、セレナークティカ東部から深東部一帯の古白銀種や其の他白系種、解放奴隷出身の自由人による奴隷・農奴解放論を勢いづかせる結果を呼んだ。

敗戦の衝撃に混乱する新白銀種達は否応なしに、『奴隷や農奴は本当に必要か?』という自問と、意識改革を強いられた。

 

そんな時代に登場したのが、ヴラディレーナの先祖。

星歴一九六一年に古白銀種としては初めてサンマグノリア共和国大統領に就任した万民民主党のヤロスラフ・ミリーゼだった。

彼は"新時代政策"の一貫として奴隷制度と農奴制度の廃止、女性参政権実現、復興の労働力としての人種を問わない移民受け入れ等を公約に掲げて、新古白銀種双方は勿論、白人系有色種からも支持を得て、大統領に当選したのだった。

ミリーゼ家がリベルテエガリテに越してきたのも此の時だ。

 

しかし当時のサンマグノリア共和国はアルビオン王国との冷戦や、海神国(わだつみこく)との間に勃発した〈遼東諸島ミサイル危機〉等の外交問題への対応に追われ、実際に公約が実現されたのは二期目序盤の星歴一九六六年の事だったが。

 

彼の功績は高く評価され、死後、彼の生まれ故郷である、今は死地とされる旧東方辺境地域圏ルーチュカシロカ州の州都ソコルスカには〈ヤロスラフ記念堂〉が建てられている。

そんな彼は今、新白銀種からはギルマンティス側に留まっていた雑色化を白銀聖土たるセレナークティカ側に迄拡げた移民侵略首謀者。

 

新白銀種に対する希代の詐欺師。

 

身の程知らずの野心家で陰謀家。

 

等々、此れでもかと言う罵詈雑言誹謗中傷を受ける絶対悪的存在とされて久しい。

そしてヴラディレーナは、そんな彼の子孫なのだ。

アンリエッタが幼馴染みの身の安全を気にするのも当然と言えば当然の話である。

 

「ありがとう、でも・・・」

 

時を同じくして、アラームが鳴った。

軍服のポケットに入れておいた指揮管制官の必需品、華奢な外見のチョーカー状の銀環、〈レイドデバイス〉が、指揮する部隊からの急報を告げている。

敵襲の報せだ。

 

「戦場がお呼びね、王女様」

 

 

空軍本部が置かれるブランネージュ宮殿だが、同時に歴史的建造物でもある。

その価値を保全する為、主要部分に関しては地下に設けられている。

此れは他の軍本部や、省庁でも同様だ。

斜坑エレベーターに乗って降りる、指揮管制官達に戦区別に分け与えられる地下深くの管制室には、無機質なコンソールで半ば埋まるような、レンタルオフィスの個室を思わせる小さな部屋が連なっている。

一応は毎日清掃されている筈の廊下には今日も朝からゴミが散乱している。

大抵は空き缶や菓子の袋だ。

そんな室内は薄暗く、ひやりと冷たい。

 

「・・・ハンドラー・ワン!応答してくれ!?ハンドラー・ワン!!・・・畜生!殺してやる!!殺しっ」

 

何処からか、若い男の大きないびきが聴こえてくる。

 

「ウホッ!死んだ死んだ!」

 

そんな男の声が、スナック菓子を咀嚼する音と袋の音と共にヴラディレーナのすぐ近くから聴こえる。

待機状態のホログラムのメインスクリーンの淡い光に、部屋の銀色の床と壁がぼんやりと照らされる。

アームチェアにきちんと足を揃えて掛け、レイドデバイスを長い銀髪をかきあげて首に嵌めて、レーナは凜と視線を上げる。

戦線は此処から遥か遠い。

この小ぢんまりした、十人分のスペースで区切られた部屋が、サンマグノリア共和国がレギオンと戦う唯一の戦場だ。

 

「サンマグノリア共和国空軍ヴラディレーナ・ミリーゼ中佐。戦争地帯第一戦線第九戦区本部長兼本部付第一機甲戦隊指揮管制官」

 

声紋と網膜パターンの認証を経て、管制システムがスタート。

ホログラムのスクリーンが次々に浮かび上がり、遥か前線に設置された各種観測機器の膨大なデータを表示、メインスクリーンがデジタルマップと彼我の機動兵器を示す輝点を映し出す。

友軍機ジャガーノートを示す、本隊の青のブリップは七〇。

残りの四十六は第一機甲戦隊の戦隊長機が指揮する分戦隊。

緑のブリップは、これもやはり戦隊長の指揮下にある歩兵型戦隊だ。

敵性存在、即ちレギオンを示す赤のブリップは、最早数も知れぬほどだ。

 

知覚同調(パラレイド)起動(アクティベート)。同調対象、第一機甲戦隊戦隊長機〈プレアデス〉中枢情報処理(ユニットプロセッサー)

 

其れを合図に、レイドデバイスの、人間で言えばうなじ部分に当たる部分嵌めこまれた青い結晶体が僅かに熱を帯びる。

物理的な熱ではなく、知覚同調で活性化した神経系が感じる、幻の熱だ。

励起した擬似神経結晶が情報演算を開始。

構築した仮想神経を通じて、脳の特定部位、人類が次の進化のために取り置いた、あるいは進化の過程の遥かな太古に忘れ去った、未使用領域ナイトヘッドの奥底の一機能を活性化させる。

ヴラディレーナという個人の顕在意識と潜在意識の、その更に奥にある、本来意識的にはアクセスできない、人間全てが共有する「人類種族の潜在意識」、「集合無意識」にある種の「道」が通る。

それは集合無意識の海を経由し、第三機甲戦隊戦隊長機、パーソナルネーム〈プレアデス〉のプロセッサーの意識に接続され、ヴラディレーナと共有される。

 

「同調完了。ハンドラー・ワンよりプレアデス。現在の状況を詳しく教えてください」

 

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