夜桜の長女と、とある柘榴。   作:ただねこ

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2話 柘榴

「「「いただきます!」」」

 

……この一家は独特だ。いい意味でも、悪い意味でも。

 

「これ食べるかい?」

「ありがとうございます、二刃さん」

「まったく、いつになったら敬語抜けるんだか」

「いつまでも師匠は師匠ですよ」

「……そうかい」

 

夜桜二刃。10代目夜桜家次女。夜桜式柔術「しだれ組手」の達人であり、俺の師匠だ。

昔二刃さんと出会ってから、いろいろなことを聞いた。そのまま流れで弟子入りしたんだっけ。

懐かしいな。

 

「ところで柘榴」

「……っん、どうしましたか凶一郎さん」

「太陽はどうだった」

「!」

 

朝野太陽。夜桜家10代目当主の夫。六美さんとは同級生らしいけど……。

 

「精神性はクリアかな。この調子で行けばすぐに許可証(ライセンス)だって発行できる。木っ端の言葉ではあるけどね」

「ほう……お前がそれを言うか」

「え?え?」

「そういえば太陽には説明してなかったな」

「凶一郎、説明してやんな」

「何故俺がコイツに?」

 

本当にこの人は、六美さんの夫としての太陽が嫌いなんだな……。

 

「……はぁ。いいかい太陽。許可証(ライセンス)ってのは「スパイ許可証(ライセンス)」のことだ。20世紀初頭、有志のスパイが設立した「スパイ協会」の発行する、由緒あるライセンス。合格率は1%未満だけど、その狭き門をくぐった者は「情報共有」「任務斡旋」「スパイ年金」など、様々な特典を与えられるのさ」

「そんなものが……」

「それと同時に、プロを証明するものでもある。あたしら兄弟は全員持ってるぜ」

「下から銅級(ブロンズランク)銀級(シルバーランク)金級(ゴールドランク)だね。辛三兄ちゃんより上は全員金級(ゴールドランク)。僕ら3人は銀級(シルバーランク)だよ」

「……あれ、柘榴さんは?」

「俺はまだ銅級(ブロンズ)だ。つってももう銀級(シルバーランク)試験自体は受ける資格もある。……受けるかどうかは別としてな」

「お前ならすぐに金級(こっち)まで来れるだろう、柘榴」

 

……それは買いかぶりすぎですよ、凶一郎さん。

 

「いや、俺は太陽の辿る路が見たくなった」

「!」

「それって……」

銀級(シルバーランク)の試験は、俺は太陽と一緒に受けよう。……悪いね、わがままで」

「お、俺は構いませんよ!」

「いいんじゃねえの?」

「俺も良いと思うぜ」

「うん。柘榴兄ちゃんがそう言うなら」

「七悪、俺はお前の兄じゃないぞ」

「ごめんごめん。……辛三兄ちゃん?」

「あ、俺も賛成。俺達の知らない側面で太陽を見れるのは、太陽にとっていい糧になる」

「あたしも同意見。どうだい凶一郎、六美」

「私は賛成だよ」

「……六美がそう言うのなら、いいだろう。だが……もしも太陽が金級(ゴールドランク)に上がる時、お前が居なければその意味がないだろう」

「ってことは?」

「太陽が金級(ゴールドランク)に上がる頃には、お前には金級(ゴールドランク)になっていてもらう。それが条件だ」

 

 

・・・・・

 

 

夕飯も食べ終わって、それから少し時間の経った頃。

 

「今、家が大変なんでしょう?いいんですか、俺と散歩なんて」

「大丈夫、問題ないさ。それに……久しぶりに束音と話せる機会だからね」

「……そうですか」

 

……やっぱり、いつ見てもかっこいい。二刃さんは俺の憧れだ。

 

「それで、要件はなんですか?」

「ん?」

「とぼけないでください。ずっと気づいてましたから。晩御飯の時から、ほんの少し動きがズレてた」

「……流石、あんたの触覚だね。……凶一郎でも気付かなかったレベルのものに気づくなんて」

「家族には誰も?」

「ああ。……束音」

 

そう言って、二刃さんは俺に向き直る。

 

「……あんたと初めてあったのは、あたしが銀級(シルバーランク)試験を受けた後だったね」

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