竜骨の学者 ──スカイリム漂流記   作:スカイリム愛好家

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第五話

ファレンガーの熱弁を、マサは冷静に聞いていた。宮廷魔術師の衒学的な興奮と、その奥にある純粋な探究心。それはマサ自身もよく知る感情だった。だが、知識の網には常に綻びがある。

 

「いや、とても興味深い。ただ一つ訂正させてもらうよ」

 

マサの静かな声に、ファレンガーの片眉がぴくりと跳ね上がった。

 

「第二紀のエルスウェアで竜が発見されたという報告がある。シロディールでは異端扱いされているが、信憑性の高いものだ。結局、当時の英雄に倒されたらしいが……竜は必ずしも古代ノルドと共に封じられた存在ではない」

 

「ほう……」ファレンガーの目に、不快ではなく、むしろ同好の士を見出したかのような喜色が浮かんだ。「エルスウェアの散逸資料か。迂闊だった、南方の記録までは手が回っていなかった。……さすがはサイノッドだ」

彼は素直に唸り、書きつけるように虚空を指でなぞった。

 

 

「まぁそれは置いておこう。いずれにせよ、竜が蘇った。それは非常に興味深い」マサは本題に戻した。

 

「ああ、とはいえどこまでも推測でしかない。真実はだれにもわからぬ。」

 

彼は積み上がった巻物の山を、忌々しげに、しかしどこか恍惚として睨んだ。

 

「だからこそ、〈竜の石板〉が要る。あれは古代ノルドが竜を埋めた地を記した一次資料だ。憶測ではなく、事実に手が届く。……分かるだろう、この渇きが。私は知りたいのだよ、マサ殿。このスカイリムで、今、何が起きているのかを」

 

 

その渇望は、痛いほど理解できた。

 

「いいだろう。興味深いし、受けよう」マサは頷いた。「ただ、さすがに古代の竜塚に魔術師一人というのはつらい。誰か前衛が欲しいところだが、ファレンガー殿、信用のおける腕利きは知らないか?」

 

「賢明だ」ファレンガーは即座に頷いた。「ブリークフォール墓地は古き死者(ドラウグル)の巣だ。書斎の住人が一人で踏み込めば、まず生きては帰れん」

 

彼は城下の方角——風の吹き抜ける一角を、顎でしゃくった。

 

「腕の立つ前衛が欲しいなら、行く先は一つだ。〈同胞団〉。風の高台にある〈ジョルバスクル〉——あの古い館を見ただろう? スカイリム随一の戦士団だ。金さえ払えば、あるいは見込みがあれば、腕利きを一人貸してくれる。ノルドの誇り高い連中だが、腕は確かだし、報酬と筋さえ通せば裏切らん。下手な傭兵を雇うよりよほど信用がおける」

 

ファレンガーは懐から数枚の硬貨と、首長の紋が入った小さな木札を取り出し、マサに手渡した。硬貨のずしりとした重みが、依頼の重さを物語る。

 

「これは前金と、城の出入りの証だ。石板を持ち帰れば、残りの報酬と——それに、私の蔵書をいくらでも開いて見せよう。竜語の写本もある。学者の君には、金より魅力的だろう?」

 

 

マサは木札と金を受け取ると、もう一つ問いを重ねた。墓地そのものの情報が要る。

「場所か。それは造作もない——むしろ、君が今日通ってきたはずの道の途中だ」

 

ファレンガーは羊皮紙の切れ端に、手早く略図を走り書きした。

「ここからホワイトラン平原を南西へ下ると、白い川沿いに〈リバーウッド〉という小さな製材所の村がある。半日とかからん。ブリークフォール墓地は、その村を見下ろす山の中腹だ。村から峠道を登ればいい。リバーウッドの連中なら、誰でも墓地の方角を指させるだろう。……まあ、近づきたがる者はおらんがね」

彼は筆を置き、声の調子を一段、慎重なものに変えた。

 

 

「さて、注意することだ。よく聞きたまえ。あそこは古代ノルドの霊廟——つまり、〈古き死者〉どもの寝床だ。何千年も墓を守り続ける、干からびた戦士の亡者よ。剣も振るうし、上位の個体は喉から凍てつく息を吐く。生者の気配で目を覚ます」

 

指を折りながら続ける。「次に、洞の浅い所には大蜘蛛が巣を張っていることが多い。糸で搦め捕り、毒の牙で噛む。それと——近頃は、ああした古い廃墟に盗賊が住み着く。財宝目当ての間抜けどもだ。入口あたりで出くわすかもしれん。山道で君が追い払ったような手合いさ」

 

最後に、彼は人差し指を立てた。「そして、古代ノルドの墓には必ず仕掛けがある。床の罠、落とし格子、毒矢。とりわけ厄介なのが、最深部を封じる〈仕掛け扉〉だ。あれは特殊な仕組みでしか開かん。多くは、対になる古い鍵や、紋を刻んだ意匠の道具が要る。石板が眠るのはその奥だろう。扉の前で立ち往生したくなければ、リバーウッドで土地の話を集めておくといい。ああいう村には、墓荒らしの噂話の一つや二つ、転がっているものだ」

 

書斎の窓の外は、もうとっぷりと暮れていた。囲炉裏の炎だけが、古書の背を赤く照らしている。明朝発つ前に、今夜のうちに同胞団を訪ねておくべきだろう。マサは決断した。

 

 

風の高台へ引き返すと、枯れた大樹〈ギルダーグリーン〉の傍らに、瓦を反り返らせた古い館が夜の闇に浮かんでいた。ジョルバスクル。同胞団の本拠だ。扉を押すと、熱気と喧噪、焼けた肉と零れた蜂蜜酒の匂いが、どっと押し寄せてきた。

大広間の長卓を囲んで、屈強な男女が肉を食らい、角杯を打ち鳴らしている。ノルドの戦士たち。隅では二人の男が、半ば本気の取っ組み合いで床を転げ回り、周りがそれを肴に囃し立てていた。静謐な学問の府とは何もかも対極の、剥き出しの力の巣窟だった。

ローブ姿のマサが敷居をまたいだ途端、いくつかの視線がじろりと向けられた。露骨な値踏み。痩せ気味の若い女戦士が、口の端を歪めて隣の男に何か囁き、低い笑いが漏れる。

 

「迷ったの、魔術師さん?」

 

近くにいた赤毛の女が、角杯を傾けたまま声をかけてきた。顔に獣の血のような赤い隈取り、鋭い緑の眼——狩人の目だ。

 

「ここは剣と度胸で飯を食う連中の館よ。指先で火花を散らす手合いの来る所じゃない。道に迷ったなら、坂を下りなさい」

 

挑発の混じった、突き放す物言いだった。だがそこへ、長卓の奥から、よく通るさっぱりした声が割って入った。

 

 

「アエラ。客人に絡むものではありませんよ」

立ち上がったのは、漆黒の長い髪を背に流した、姿勢の美しい女だった。常に背筋が伸び、所作の一つ一つに統率者の品がある。この粗野な館にあって、彼女の佇まいだけが、磨かれた剣のように静かに際立っていた。蒼い瞳が涼やかに、しかし真っ直ぐにマサを捉える。髪には蒼石の簪が一本、きらりと光った。

 

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