有象無象妖怪譚   作:命楼

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三日ぶりの投稿です。ほんへの投稿は一ヶ月ぶり。三ヶ月後って言ったけど我慢出来なかったゾ…。


第十三話【体調不良と地下倉庫】

「家の中から出られなくて退屈ではないのか?」

 

 連日の激しい運動と猛暑により久方振りの夏バテに。此れには妙に厳しい居候も仕方ないと今日は外に出ずに家の中でぐうたらしても良いと首を縦に振った。

 昼間から何もしなくとも良いという此の至福、他の者たちが働いているというのに自分だけが惰眠を貪る事のできる優越感。なかなかに良いものではないか。大切な物とは失ってから大切なのだと気付くと言われているが確かに其の通り、くたくたに疲れて帰ってくる生活を送った事で怠慢の素晴らしさを理解する事が出来た。

 

「私には理解出来ませんね」

「馬鹿真面目なお前には分からんだろうな」

「馬鹿とはなんですか馬鹿とは。最初の質問ですが、体を動かさない事で体が鈍っていくのを感じてはいます、他の者に仕事を任せてしまう事にも感じるものがあります。しかし天馬様からの命令ですからね、背く様な事はしようと思いません」

 

 生真面目な女だ、偶には羽目を外す事が必要。まぁ今は駄目だが何時かは分かってほしいものだ。

 此方に視線を向ける事も無く頬杖を突きぼんやりと本を読んでいる白狼天狗。一応此方に反応してくれるが張り合いがない。怠慢の素晴らしさなどと語っていたが前の此奴なら『怠慢で優越感を感じ素晴らしいと考える頭を一度医者に診てもらった方が良い』などと抜かす筈だ。俺に慣れてくれた様で何よりだがもうちょっと反応が欲しい。

 

「暇だから其の本を手にしてるのでしょう?ならば読んでいれば良いではないですか」

「活字に飽きた。普段の俺なら酒を飲んでぼんやりしていたのだろうが酒を禁止されてしまっているからな」

 

 昼間からの飲酒に対する禁止令が発令された事に対する嫌味を込めてそう言ってはみるが、今度は返事すら帰って来なかった。

 

 居候の言う通りにするのは癪だがやる事もなく本を読む事に。初めからそうする気ではいたのだがな。

 本を読み続ける、ただ只管読み続ける。そういえば此奴は昼間どんな事をして過ごしているのだろうか。一日共に家に居た事があった筈だが色々と起こった所為で記憶に全く残っていない、本を読んでいたのは覚えているのだがな。

 家に居た日は本を読んでいたが其れ以降俺が居ない時には何をしているのかが気になる。だが無視された手前どう話し掛ければ良いのかが分からない、いや話しかけ辛いのだ。

 

 暇だ、幾ら読もうとしても一行も頭に入ってこない。本を閉じ仰向けに寝そべる。

 さて如何したものか。体も夏バテで怠い、無理に遊びに行っても相手に心配させるだけだ。というよりも面倒だ。

 家の中で何か時間を潰せるものはないかと部屋を見渡すが役に立ちそうなものは目の前で本を読み続ける奴しかない。本当に如何したものか。如何する事も出来ない状況に暑さも合わさり苛立つ。良し。

 

「……何処に行くんですか?」

「ちょっと寝てくる」

 

 こういう時は寝るに限る。家の中をのそのそと歩いて行き自分の部屋へとやってきた、戸を開け中に入れば開けられている窓から風が入り込み汗でベタついた肌を撫ぜていくが少し涼しいと感じたが直ぐに暑さは戻ってくる。汗が染み込んだ服を脱ぎ其処等に放り捨て畳まれた布団を敷き横になる。寝る事で夏バテと幾ら寝ても取れなかった運動疲れが無くなれば良いが。

 窓の外に広がる暑そうな空を眺めていると瞼が重くなり始めうつらうつらとなってくる。そろそろ眠れそうだなとぼんやりと意識の中で思っていたところで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖昼寝中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

「……おはよう、ございます」

「寝ていましたからね、料理は私一人で作っておきました」

「……すまんな」

「寝ぼけてますか?もうお昼の時間ですから食べましょう」

「…………」

「ん?本当にどうしました?」

 

 目が覚めて其処にいた居候に昼だから起きろと言われたのだが。

 

「何故お前が此の部屋に居る?」

「起こしに来たんですよ」

 

 違うそうじゃない。俺が言いたい事はそんな事はそうじゃなくてだな。

 

「すまん質問を間違えた。突然の事で驚いてしまってな」

「起きて早々何を思ったのかは知りませんが寝ぼけているのなら顔を洗ってくるのをお勧めします」

 

 そう言い残し立ち上がり部屋を出ようとする居候を引き止める。まだ質問が終わっていない。

 

「何ですか?まだ何か?」

「今、いや目を開けた瞬間。お前の顔が眼前にあった様に見えたのだが」

「寝ぼけていたのではないですか?ご飯が冷めてしまいますから、先に行っていますよ」

「お、おう」

 

 寝ぼけて、いたのか。起こしに来たと言うし起きなければと布団を畳みタンスにしまい後を追う様に良い匂いがやってくる場所へと向かう。

 

「それでは」

「「いただきます」」

 

 昼、何時もの様に向かい合う様に座り料理に手を付ける。今日も今日とて飯が美味い。掃除洗濯料理、何でも出来る此奴を見ていると口煩くなければ何時迄も此処に置いていても良いと思ってしまう。

 

「其れで、家にある本は何冊読み終わったのだ」

「本ですか?四冊程」

「そうか。暇にならない様に倉庫から何冊か出しておくか」

「?倉庫の中は掃除したのである程度何処に何があるのか知っていますが本なんてありませんでしたよ?」

 

 あぁ、本は別の場所にしまっているから見つけられなくても仕方ない。

 無造作に棚にしまっておいては劣化してしまう。陽の光を浴びて色が変わり、湿気で黴が生えてしまい、虫に食われ、時が経つと共に劣化してくる。一部の例外を除き万物は何時かは朽ちる、変える事の出来ない運命。だが何時朽ちるのかは変える事が出来る。防虫と防黴の薬を振り掛けるだとか陽の当たらない場所にしまうとか温度や湿度に気を付けるとかそういった事を考えた結果地下にしまっている。

 

 此の家に存在する第二の倉庫にして我が宝物庫、地下倉庫。

 

「地下倉庫の事を聞かされていないのですが」

「教えずとも良いだろうと思って話さなかった」

 

 話してほしかったのなら謝ろう。俺としては、大切な物を収めておく為の場所であるし入る事など無く入らせる必要も無いと考えていたのだ。

 

「まぁ別に良いです。宝物事言うからには貴重な物があるのでしょ?共に生活を送るとはいえ教える意味がないですからね」

「宝物庫と銘を打ってはいるが、あくまで『大切な物を収めておく為の場所』だ。俺がそう思った物だからな、大した物は無いだろう」

 

 一時期、手にした珍妙な物を放り込む様に地下にしまっていた為にごちゃごちゃとした空間になっていた。知り合いに整理を手伝わせた時は一日掛かった。

 そんな訳で価値があるか如何か分からない物が山の様にあるのである。

 

「必要なら本を持ってくるが如何する?」

「其れじゃあお願いします」

「分かった。其れにしても、此の煮物は美味いな。丁度良い柔らかさで味は染み込んでいるし」

 

 此奴が作った料理の中で特に美味いのが煮物だ。美味い、其の一言に尽きる。其れ程迄に美味い。

 

「褒め過ぎですよ」

「いやな、本当に美味いのだから仕方無かろう」

「まぁ其れなりに自信がありましたからね。嬉しいです」

 

 煮物以外も美味いのだから箸が進む進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人昼食中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「体調の方は如何なりましたか?」

「おう、まだ怠さやらがあるが其の程度だ」

 

 カチャカチャという皿が当たる音を聴きながら洗い終わった物から順繰りに拭いていく。手際良く片されていくあっという間に其の数を減らし後は茶碗と箸だけである。

 

「そうですか、其れは何よりです」

「俺の事を心配してくれるのか?」

「何を言ってるんですか。私は何時も心配していますよ」

 

 ほう、其れは知らなかった。

 

「不規則な生活、偏りのある食事、飲み過ぎる酒、当たり前の様な怠慢。上げていけばキリが無い」

 

 おいおいおい、また説教か?最後の皿を拭き終わり俺たちはまた卓袱台を挟み向かい合う様に座った。

 

「そんな事を続けていれば体を壊してしまいます、最悪病気になるやもしれません。そんな事を考えてしたくもない心配をさせられる私の身になってください」

「あ、あぁ。なんだ、其の……すまんな」

 

 其の後も説教が続き真面目に聞かなければ更に不機嫌になると、合間に謝罪を挟みながら仕方無く話を聞き続けた。

 

「其れじゃあ暇だから本でも取ってくるとするか。どんな本が良い?」

「基本何でも読みますので何でも。何があるのか気になりますから付いて行っても良いですか?」

 

 別に良いが掃除したのは随分前だ、埃が山の様に積もっているだろう。其れでも良いのなら良いぞ。

 

「やっぱり家の管理は家主がするべきだと思うのですよ」

「やらんぞ」

「面倒なのは分かります。ですが今やらなければどんどん溜まっていきますよ?其れだけではなく虫やら黴やらが其処等中に湧いていても良いとでも?」

 

 今掃除を行っても何時かはもう一度掃除をする、なら今しないで其の何時かの時に掃除をすれば良い。と言い返そうとしていた所で虫と黴を放り込まれ何も言い返せなくなる。其れに対しての対策は行っているが此処で言い返しても此方が頷く其の時まで説教を交えながら口撃を行ってくるのだろう。

 

『諦めた方が良い』

 

 そう天使が耳元で囁く一方。

 

『良い様にされても良いのか』

 

 今度は悪魔が反対側から囁く。俺にも意地がある、意地を通すのなら此処は悪魔の言う事を聞くべきだ。だが此処で拒否して残り約四週間程を生活していくのは辛い、罪悪感と惨めさで精神的に死んでしまう。なら此処は天使の方が良いだろう、掃除を行って綺麗になるし拒否して空気を悪くする事もない。其れにそろそろ長々と考え事をするのも怠くなってきた。何が楽しくて一人で茶番をしていなくてはいけないのか。居候の目が怖くなってきたしさっさと返事でもするか。

 

「決まりましたか?」

「あぁ、掃除してやろう。だが一人じゃ一日で終わらせられる気がしないからな、手伝え」

「分かっていますよ」

 

 せめてもの抵抗として道連れにしてやろうとするが一瞬の逡巡も無く言われてしまった。悲しくなる。

 

「どんな本が保管されているのですか?」

「保管と言う程きちんとしてはいないが。そうだな……色々、としか言えないな。多種多様な種類の本がある。歴史書から芸術、音楽に宗教、戦争と歌集、恋愛本から哲学書、別段決まった物を集めている訳ではない」

 

 其れに此処では滅多な事では本等手に入らない。長編物の小説など一巻があっても其れ以降が流れてこなかったり一巻が無いといった事だらけだ。

 

「つまり、目に入った物を集めていると?」

「選り好みしている場合じゃ無いからな。自分の気に入った種類の本が容易く手に入ればそんな事はしない。だが容易く手に入らないからこその楽しみなのだがな」

「本を手に入れるのが、ですか?」

「あぁ。何が流れてくるか分からないからこそ」

 

 変わった趣味をしていると言われても仕方ない。此のくらいしか楽しみ方が浮かばないのだから。此れは此れで良いものだ。

 

「其れでは向かいましょう。どうやって行くのか先導してくださいね」

「分かっている。掃除道具を持ってさっさと行くぞ」

 

 頭に三角巾を巻き付け口元にも布を巻く、前掛けを身に付け掃除用具を手にし廊下を進んでいく。目指すは地下倉庫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人移動中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地下へと降りる階段、倉庫へ続く廊下。此の時点でホコリが凄いと思っていましたが其処まで無いですね」

「別の場所へと抜ける穴があるからな。其処から風が吹いてきてほこりをかっ攫っていく」

「へぇ〜、何処へ通じているのですか?」

「地上と地底だ」

「はい?」

 

 まさか家の下にもしもの際の逃げ道を作っていたら地底へと続く巨大な縦穴へと横に掘り辿り着くとは夢にも思っておらず落ち掛けた。もう二度と地底など御免だと結界を張っているのだが妖怪からは壁に見えるが風は其の儘流れてしまうので気付かれると拙いが大丈夫だろう。

 

「ん?聞こえなかったのか?地底だぞ」

「地底へと続く穴を掘るなど賢者殿に知れたら大変な事になりますよ」

「勝手に上と下を行き来できる穴を掘ってしまったのは悪いと思うが元から存在した穴に横穴が出来てしまっただけだ。態とではないから大丈夫だろう」

「貴方はぁ…」

 

 恐らく今穴の存在を知っているモノは俺とお前、お前さえ黙っていれば其れで良い。バレなきゃ罪には問われないんだぜ。

 

「良くはないですが、今は良いです」

 

 此れから掃除だというのに此の疲れ様、本当に大丈夫なのだろうか。俺も体調が少し優れないからな、掃除は止めて此の儘回れ右して帰るのもありだが。

 

「だめです」

 

 やはり俺の意見は通る事はない。力関係が出来上がってしまった今俺には従うという選択肢しか存在していないのだろう。

 何の得にも成らない話をしていれば目的地へと辿り着いた。もう腹を括るしかない様である。

 

「此れは、結界?此れが先程の?」

「虫やらが入ってこない様にする為の結界だ」

 

 博麗の札を惜しげも無く使った結界の前には其処等の妖怪の力は無力。鬼の一撃ですら二発は耐えられる実績がある。

 

「入るぞ」

「分かりました」

 

 虫や鼠が入らない様には成ってはいるがもしもの場合がある、気を付けてほしい。

 結界を一部解き巻き付く鎖を外し、重厚な門を開けていく。ようこそ我が地下倉庫へ。




5259文字、普通だな。おまけみたいに一万越えだと誤字脱字確認するの面倒で書くのも時間掛かるから五千ちょいで書いていきたい。三ヶ月後じゃないという兄貴たちは言うだろうが休む事なくおまけ書いてたら無性にほんへ更新したくなっちゃったやばいやばい……。
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