有象無象妖怪譚   作:命楼

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一週間ぶりの投稿です。あ、そうだ、短編投稿したゾ(ステロイドマーケティング)


第十八話【二人だけの宴】

 天狗の姉ちゃんがやってきて飯を食らい何やら考えているのが分かった日、不死人と昼飯を食い死合いを行った日。あれから既に一週間が経った。あっと言う間に時は過ぎるものだ。

 其の間にめぼしい事は起こらず、唯只管に汗水垂らして身体を痛め付け美味い飯を食らうという代わり映えしない日々を過ごしていた。

 人里や旧知の仲のモノが此処から離れているのも有るのだろうが、人っ子一人訪ねて来ないので喋る相手の殆どが居候になってしまう。そうなれば話す事が減っていき終いには無くなってしまう。家に帰っても今日は如何したと話す程度だ。

 

「帰ったぞ、何か有ったか?」

「お帰りなさい、何時も通りですよ」

「そうか」

 

 居候が来る前も変わり映えの無い日々を送っていた筈だが、此処最近は色々な事が立て続けに起きたので何も無い日が続くとつまらないと感じてしまう様になってしまった。面倒事は嫌だが退屈な日々というのも嫌なものだ。

 天狗の姉ちゃんたちが何かしら企んでいると分かり最初の二、三日は戦々恐々と気を張っていたが何も起こる事も無く拍子抜けしてしまった。だが、此れから起こるかもしれないので完全に気を抜く事はしないがな。

 

「鍛錬の成果は出てますか?」

 

 成果か、成果という成果は出ていないのが現状。そう簡単に強く成る事が出来れば人間も妖怪も苦労はしないだろう。

 

「開始して一月も経っていないのだぞ?成果が出るのはまだ先だ」

「少し位はないのですか?」

「身体の鈍りが無くなり、少し動ける様になった程度だ」

 

 今になり漸く負から無に成り、其処から一歩踏み出した所である。

 

「ですが一歩は踏み出せたのでしょう?其れは進歩であり成果です」

「たかが一歩だぞ?」

「されど一歩です」

 

 そんな事を話しながら飯を食べ、風呂に入る。身体を洗い汚れや汗を流し湯船へと浸かれば思わず息が溢れる。今日一日溜まった疲労が抜け、代わりに湯の温かさが内へと流れてくる此の感覚は良いものだ。

 飯の際に鍛錬について話したが、其れについて考える。今日迄続けてきた鍛錬だが、俺は目標という目標を掲げずに行ってきた。唯強くなるとかそういった漠然とした事ではなくきちんとした目標を作るべきなのだろう。

『目標を決め、其れに至る為に努力する』

 そうした方がより強く成れるのではないだろうか。

 

「だが、何を目標にするか」

 

 自衛が出来る様に成るという目標が今の目標だが、誰から襲われた際の自衛能力なのかを決めてはいない。其処等の妖怪や人間なら既に対処出来るだけの実力が有る。だが中級以上の妖怪や其れと同等の実力を持つ人間は無理だ。

 正直に言うと其処までに至るのは難しい。どれ程の鍛錬を積んでいけば良いのか分からない。茨の道どころか地獄を無手で進むが如し。無理だ。

 

「一対一で天狗に勝てる、此の位を目標にするか。かなり高めに設定したが……」

 

 調子に乗った、流石に天狗相手に勝つのは無理だ。欺き騙し陥れれば可能性は無きにしも非ず、だが目標は正面切っての戦いで勝利を手に出来る様になるというもの。強くなれる気がしない。

 

「高い目標を持つのは良いが、其れは実現する事が可能なものだけだ。いや頑張れば出来るだろうが、何年掛かる事か」

 

 ふと視線を上へと向ける。小さな格子窓から見える空は日が暮れて闇色に染まり、其処に浮かぶ星や月が夜空を飾り付け輝き放っている。

 一際輝く三日月に向けて手を伸ばし、月を掴む為に手を握る。掌を開いてみても其処には月は無い。其処に在るのに届かず、月は俺の手の届かない程の位置に存在している。幾ら手を伸ばそうと届かない物、天狗に正面切って戦い勝つという目標と同じだ。

 

「其れでは如何する?誰を目標とする?」

 

 ほんの稀にだが、低級妖怪にも中級や上級の妖怪にも対抗出来る力の強いモノが居る。だが悲しいかなお頭が足りていない為に、力を十全に発揮出来ない侭逸消えていく。宝の持ち腐れである。そういった連中となら鍛錬になるのだが、そう簡単には巡り会えない。

 適当に幻想郷中を歩き回り目に付いた奴に喧嘩を売るのも手だが、辻斬りに成るのは御免被る。ブン屋に面白可笑しく新聞のネタにされて退治されては堪らない。

 

「合意の上で、唯の手合わせにするのなら問題は無いだろうか。いや其れでも記事にされそうだ」

 

 こういった事を嗅ぎ分ける程度の能力でも有るのか、事有る事にやってくる姉ちゃんには参ったものである。

 考えても考えても良い案は出て来ない、一人で地道に鍛えていくしかないのだろうか。昔はちょっと争っても大した事にはならなかったというの、結界が敷かれてからというもの何かしら起これば人間だろうと妖怪だろうと噂となり広まり易くなっている気がしてならない。

 

「そろそろ出るか」

 

 幾ら考えても答えは出ない、なら今日は考えるのを止めて明日にでも頭を捻れば良い。さっさと出て待っている居候に変わろう。

 風呂から上がり手早く着替えて茶の間へと向かっていく。日が出ている間の茹だる様な暑さは消え、まともに出歩ける程に涼しくなる夜は好きだ。

 今日は何年も置いた侭にしていたあの酒を氷室から出してある。見た目からして外から流れてきたと分かり持って帰ってきてしまっておいた秘蔵の酒だ。滅多にお目に掛かれない外の酒、楽しみでしょうがない。

 

「忘れ去られ流れ着いた酒、酒を忘れるなど外の人間は何と愚かな者だろうか。氷室や倉庫に残してある酒を全て記憶している俺を見習ってもらいたいものだ」

「いきなり何を言ってるんですか?」

「何でもない、出たぞ」

 

 居候へ風呂から出た旨を伝え台所へと向かう。酒だ、今日も一日頑張った俺の細やかな楽しみ。

 グラスと酒瓶、其れから摘みを手にし何時も通りの定位置である縁側へと向かう。廊下を進んでいきやってきた縁側には何時も通り月明かりが降り注ぎ、酒を飲むには最適な静寂が広がっている。どかりと座り胡座を掻く、グラスになみなみと酒を注ぎ一口に呷る。

 口内を過ぎ胃へと流れ落ちていきながら、喉を焼いていく酒。そこそこに度が高いが咽せる程では無く、溢れる程に注いだ酒があっという間に消えた。

 

「当たりだ」

 

 外の酒を一杯飲んだ感想、此れは当たりであった。此処に流れてくる酒全てが美味いという訳ではない。流れ着く殆どは安物だと言っても良いだろう。瓶に描かれる絵や文字を見ても、外の酒について知らない俺には良い酒かどうか分からない。開けてみてからでないと分からない、だが飲む迄の間に美味いか不味いかを考えるのも楽しみの一つ。

 今回は当たりだ、表紙に描かれる絵や文字を覚えておこう。つまみを一口食べ、酒をグラスに注ぎ又しても一息で呷りつまみと共に飲み込む。ゴキュッゴキュッと規則正しく喉が鳴り、酒が落ちていく音が心地良い。気分が良い、此の儘此処で眠りに就いても良いだろうか。

 

「駄目ですよ」

 

 背後から掛けられる声に、心臓が飛び跳ねた。後ろへ振り返れば居候が其処に居た。

 

「何時の間に背後に立っていたのかは知らないが、脅かしてくるのは感心しないな」

「忍び足でやってきた訳ではないのですがね」

 

 近付く気配に気付く事が出来なかった、久方振りの外の美味い酒に夢中になり気が緩み切っているのが自分でも分かる。だが今位は好きに飲ませてくれ。

 俺の想いが通じたのかやれやれと肩を竦める居候。

 

「風呂から上がったのか?何時もなら部屋に戻って、ん?」

 

 暗いとはいえ月の明かりがある、居候の手に何かが握られているのが見えた。其処にはグラスが有った。

 

「お前……」

「好きに飲ませてあげますから、私も一緒に良いですか?」

「……初めから其の気で来たのだろうに」

 

 此処、やってきて数日で新たな環境に慣れたと言っていたが其の中には未だ固さが有った。日が落ちて家事が終われば直ぐに眠りに就く、そんな奴が今日はこうして飲もうと言ってきた、如何いう心境の変化だ?

 

「……貴方が」

「うん?」

「貴方が言ったのでしょう『偶には羽目を外してみろ』と。もしやお忘れですか?」

「まさか、忘れる訳がないだろう」

 

 堅物なお前が正直に言う事を聞くとは思っていなかっただけだ。

 

「此処に来て二週間。落ち着けたか?」

「落ち着いてはいたつもりだったんですけどね。本当にゆっくりとはしてなかったと今日知りました」

 

 やはりそうだったか。二週間共に生活を送っていたが気を張ってはいないか、気を遣ってはいないかと不安だった。だが今日になり羽目を外す気になった様だ。漸く、漸くだ。

 

「注ぎますね」

「お、悪いな。ほらお返しだ」

「ありがとうございます」

 

 隣に腰掛けた居候が酒を注ぐ、代わりに俺も注いでやる。互いに相手のグラスに酒を注ぎ、共に酒を飲む。ゆっくりと味わう様に味わい、グラスの中身を飲み干していく。

 

「ふぅ、美味しいですね」

「そうだな」

 

 今日は記念日だ、夜が明ける迄飲み明かそう。そう告げると困った様に笑う居候、だが分かったと同意が返ってきた。何杯か飲んでいたが、此れだけでは足りないなと立ち上がり氷室から酒瓶を幾つも持ってくる。序でにつまみになりそうな物も纏めてだ。

 持ってきた酒瓶は十本以上、落とさない様に持ってくるのは大変であった。酒瓶の数に驚いたのか口を開け間抜け面を晒す居候。可笑しくなって笑ってしまう。

 

「むぅ、何ですか」

「面白くてな、つい。クックックッ」

「……もう」

 

 未だ夜は明けず。二人だけの宴会。日が昇る其の時まで、静かな宴が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人飲み明かし中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けた、其処に映ったのは見慣れた天井であった。自室に居る事に気付いと同時に頭痛と怠さが襲い掛かってくる。暑さと明るさで日が昇っているのが分かるが、何時の間に眠っていたのだろうか。あれから如何やって此処まで帰ってきたのだろう、というより途中迄しか記憶が存在しない。

 

「あの後は確か……」

 

 酒や汗の臭いがする浴衣、其れが肌にくっつく感触が気持ち悪い。脱いでしまおう。

 浴衣を脱いだ所で考える。二人で酒を飲み交わしていた、互いの身の上話をしていた筈だ。俺は異世界へと渡った事を話し、居候は自分がどれ程強いのか語り上司に対しての鬱憤を吐露していた。持ってきていた酒瓶が次々に空になっていき、残す所後一本になったのは記憶に在る。在るのだが其れ以降の事を何も覚えていない。

 はて、何が有っただろう。酒を飲んだ、飲んだのだ。最後の一瓶も開けた、様な気がする。昨日の事を思い出そうとうんうんと頭を捻れば少しずつだが記憶が戻ってきた。

 

「つまみも全て食べた」

 

 つまみも食べ切った、最後は酒だけだった。何が有ったんだ。酒……酒…………酒……………………。

 

「最後の1瓶を飲む頃には二人ともべろんべろんに酔っていた」

 

 酔っていた、其れは凄まじい程に。俺は色々と話していた、取るに足らない武勇伝を只管に。居候は仕事の愚痴を語り続け、俺に絡んできていた。此方の肩にしなだれ掛かっていて酔いが飛んだのを覚えている。

 酒臭い息と言葉に成らない文字の列を口から吐き出し、酒を飲んでいた。今思い出すと居候の壊れ具合はなかなかなものだ、居候に教えてやればどんな反応をするだろうか。あの堅物があんなに成っていたのを俺は忘れないだろう、日記に書いておこうか。

 俺が此処に居るという事は、居候も自分の部屋へと帰っているだろう。登る日によって生み出される影から時間を読む、今の時刻は朝を通り過ぎて昼前。あれだけ酔っていたのだ彼奴も未だに寝ているだろうし俺が昼を作ってやろう。そう思い立ち上がろうと────。

 

 

 

 

 

「んなぁ……」

 

 

 

 

 

 何だ、今のは。上体を起こした状態で動きが止まる。立ち上がろうとした其の瞬間、突如として聴こえた音。

 

「今のは────」

 

 

 

 

 

 ────もぞり。

 

 

 

 

 

 視界の隅で何かが動いた。視線を向ければ身体に掛けていた薄い掛け布団が膨らんでいた。此れは、まさか。いやいや其れはない。そういう事は起きる訳がないのだ、きっと酔っていた所為で部屋を間違えたのだろう。そうだ、そうに違いない。柔らかくなったとはいえあれは堅物だぞ?そう簡単に許す訳がない。

 

「……わぉん」

「…………」

 

 もぞもぞと動く布団の膨らみ、手を掛け捲る。

 

「ん、んぅぅ……」

「……」

 

 突然の日の光に反応し、眉間に皺を寄せて身体を捻り唸る女。其処には居候が居た。分かってたさ、だが此奴はきちんと服を着ている。何も起きていない、筈だ。

 眠る姿は何時もの姿からは考えられない程に無防備で、俺の手から布団を奪い取り包まる姿は見た目通りの少女に見えて思わず和んでしまう。今はそんな事を考えている時ではない。

 

「変に思われる前にさっさと片付けるか」

 

 今の俺の姿は如何だ?下着一丁だ。此奴が起きれば何を言われるか分かったものじゃない。飯の準備もしなくてはならない、早々に立ち去るべきだ。後の事は知らん。新しい服を見に纏い足早に、だが起こさぬ様に静かに部屋を出て行く。

 

「肉と卵、其れから野菜。米は面倒だからパンで」

 

 パンと呼ばれる食べ物。此れはなかなかに良い。甘い物を付けても良い、辛い物を付けても良い。主菜に副菜、おやつにも成る優れ物だが此処ではそう簡単に作れる訳ではなく高いのが難点だ。だが準備するのが楽で頼りになる。

 

「さっさと作るか」

 

 居候が居る手前、手を抜く事はしたくないが一人で作るのだ多目に見てほしい。




5323文字、普通だな。
フラグ?(恋愛要素は多分)ないです。だからフヨウラ!
話が分からない?僕もソーナノ…(クソザコ作者特有の展開の見失い)
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