有象無象妖怪譚   作:命楼

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一週間ぶりの投稿です。
くっそ難産、納得は出来ないけど投稿するゾ。


第十九話【酒は飲んでも呑まれるな】

 彼是と考え飯を作る事に決め、着替えを早々に終わらせ台所へと足を運んだ。じめっとした暑さのおかげで既に汗が噴き出して不快だ。冷蔵庫の中に在る食材を適当に取り出し簡単な物を作っていく。

 

「さて、作ったのは良いのだが此れから如何するか」

 

 何を悩んでいるのか。其れは居候を起こすべきか、自分から起きてくるのを待っているか、というものだ。彼奴の立場に立って考えてみれば分かるが、もし起こされた時彼奴は何と思うだろうか。

 

『起こされたと思ったら相手の部屋だった』

 

 彼奴がどの様な反応を示すかは分からない。だが生真面目な彼奴の事だ、何を言われるか分かったものではない。ならば此処は起きてくるのを待つべきだ。いやそもそも何故俺の部屋で寝ているのだ?彼奴が自らの意思で寝ているのなら大丈夫なのでは?其れでは俺の部屋で寝ていた理由は?

 

「行った方が良い、いや行かない方が良い。行った方が……行かない方が……」

 

 片方の意見が出ればもう片方が異議を申し立て意見を出す、其れに最初の方が異議を唱え意見を提示する。見事に堂々巡りに陥ってしまった。

 如何するかと頭を捻る事数分、家の中で何かが動く気配を感じた。そして続いて聞こえてくる足音。起きてきたかと何時もの位置に急いで座る。俺が行動を起こす前に賽は投げられた、後は野と成れ山と成れ。

 

「すぅ…………ふぅ…………」

 

 騒ぐ心の臓を落ち着ける為、ゆっくりと息を吸いゆっくりと吐き出す。普段通りを装い居候を待つ。

 一歩ずつ近付いてくる足音、少しずつだが近付いて来た其れは部屋の前で止まる。間を空けて戸が開かれる。更に一瞬の間を空け部屋へ入ってきた居候、其の顔は俯いている所為で垂れた髪が顔を隠し見えない。何時もなら会えば挨拶を掛けてくる筈、だが今日は何も言わずに突っ立っている。何だ何だ、一体如何した?

 

「お、おはよう」

「……おはようございます」

 

 如何したのかと戸惑ってしまったが、直ぐに立ち直り声を掛ける。間を空けて返事が返ってきた。

 

「…………」

「…………」

 

 其の儘目の前、何時もの定位置に座る居候。ぼけっと其れを見つめる俺。片や不安気、片や表情が分からず。挨拶を交わしたのは良いのだが、其れ以上会話が続く事はなかった。

 

「……昨日は」

「ん?」

 

 此方が如何声を掛ければ良いのか頭を抱えていると、向こうから声を掛けられた。昨日?昨日が如何した?

 

「あの、ですね。昨日は、お酒が入っていまして……」

「かなり飲んだな」

「そう、ですね。其れで、飲んで……何時もはあまり飲まないんですよ私。でも昨日は、心配掛け続けるのは拙いと思って。でも無理して飲んではいませんよ?飲みたいから飲んだんです」

 

 遂に上がった顔は赤くなっていた。あぁお前が何を言いたいのかは分かった。其れから?

 

「其れでですね、其の後飲んだじゃないですか?かなり」

「飲んでいたな、八瓶位か?」

「そんなに飲んだんですか、私……」

 

 ん?もしや……。

 

「お前」

「あ、私も其処まで飲む筈じゃなかったんですよ?いや無理してたとかじゃなくてですね。飲んでいたらついつい飲んでしまいまして。そしたら気分が昂ぶってきたといいますか」

 

 そうか、無理に飲んでいた訳ではなかったか。其れにしても俺とは違い昨日の事をきちんと覚えているのだな。

 

「いえ、途中から記憶は無いです」

「そうなのか」

「でも朧気に、途切れ途切れにはあるんです。お酒を煽って、愚痴やらを話しているのを。其れでですね、あの、貴方には迷惑を掛けたなと……」

 

 迷惑?はて、迷惑など掛けられたか?酒を飲んでいて気分が良かった所為で気付いていなかったのか、将又記憶が無い所で何かされたのか。

 

「別に気にしていない」

「そう、ですか。本当にすみませんでした」

「そう謝るな、誰にだってそういう時はあるのだ」

「はい……」

 

 さて、折角作った飯が冷めてしまうから食べようではないか。

 

「昼飯は俺が作ったのだ、夜は任せたぞ?」

「分かりました、頑張ります」

 

 晩飯は任せたと言えばそう返事が返ってきた。今日は豪勢な物が出るかもしれん。其れじゃあ食べるかと箸を手に取り、皿に手を伸ばそうとしたが居候の様子を見て止まる。

 

「如何した?」

「あ、いえ……其の……」

 

 顔を赤らめもじもじとしている姿は可愛らしくて良いが、本当に如何した?風邪か?

 

「昨日の事なんですけど。私の記憶が途切れ途切れと言いましたよね?」

「あぁ確かに聞いたが?」

「お酒を飲んでいくに連れて記憶がどんどん薄れていまして。最後の一瓶の所からは何を話したのか、何があったかも殆ど分からない位なのです。其れで聞きたい事が有りまして」

「ふむ」

 

 聞きたい事が有ると言われても俺も後半に入れば入る程に記憶が無い。期待に応えるのは難しいのだがな。

 

「昨日、全てのお酒を飲み終わった後。私たちって如何したんですかね?」

 

 顔を真っ赤にしてそう問い掛けてくる居候。飲み終わった後?何かしたのか?記憶が完全には無くなっていないというのならある程度分かっているのでないのか?

 

「あの、如何ですか?」

 

 如何と訊かれてもだな。

 

「………………すまん」

「え?」

 

 正直に答えてしまおう。此処で変に取り繕って要らぬ誤解を生みたくはない。どっち道記憶が無いのだから答え様も何も無い。

 

「昨日の事だがな、如何にも記憶が無いのだ。最後の一瓶の所からの記憶がな。少しずつ思い出してはいるがさっぱり分からん。期待に応えられなくて本当にすまん」

「そう、ですか」

 

 俯く居候の表情からは怒りや悲しいといった負の感情は出ていない。有るのは純粋な困惑だけだった。何を疑問に思っている。

 

「あの、だな」

「え?」

「何を疑問に思っているんだ?」

 

 聞いてしまった。聞いても良いのか分からぬ内に、何も考える事なく聞いてしまった。好奇心は猫を殺すを肝に銘じている俺がだ。

 

「あ、其の、ですね。何と言えば良いか」

「悪い、嫌なら……」

「違うんです!」

 

 聞くべきではなかった、そう発言を訂正しようとした所で居候から声が掛かる。

 

「お酒を飲んでいた筈が何時の間にか寝ていて。知らない天井だと思って起きてみたら自分の部屋ではなくて。良く見れば貴方の部屋で。

 飛び起きて周りを確認して。何が有ったのか、何をしたのか分からなくて。服はきちんと着てたし、匂いもしなかったからそういう事はしていないと判断して……」

 

 ぽつりぽつりと言葉を繋げていく、其の声は少しだけだが震えている。そうだろう、起きたら共に酒を飲んでいた男の部屋。しかも布団の中と来たもんだ。何が如何なって此処で寝ていたのか知りたくなるだろう。

 

「でも貴方の部屋で寝ていた事は本当の事で。だから如何いう経緯で寝ていたのか知りたくなって……」

 

 昨日は何もなかった、此れは確実だろう。白狼天狗の鼻だ、目視で調べた俺よりも信じられる。しかし本当に如何してお前が俺の部屋に居たのか。

 

「経緯は分からん、大方飲み潰れた俺をお前が部屋まで運んだが其の儘倒れて寝てしまった。とかだろう」

「そう、ですかね?」

「疚しい事はしていないのは分かっているのだろう?記憶も少ししたら戻るやもしれん、どちらかが思い出せば解決だ」

「知りたいような知りたくないような……」

「さっさと飯を食うぞ、本当に冷めてしまう」

 

 此の後二人で飯を食べた。気拙い雰囲気を払拭する為に、昨日の居候の様子を面白可笑しく伝えてやったら恥ずかしがり縮こまってしまった。面白かったと記しておこう。

 昨日の事を話したり他愛の無い話をして飯を食い、其の侭放置された酒瓶やつまみの皿を片付けた。黙々と掃除を行いながら時折頭を抑える居候に薬を使うかと聞くと『……今日だけですよ?』と了承を得る事が出来た。居候も此の痛みには耐えられなかったか。

 薬を渡し二人並んで飲み掃除に戻り薬が効いたのか、何時も通りの動きを取り戻した居候に負けるかと此方も力を入れていたら、何時の間にか家中の掃除を行っていた。時間を見れば一刻も経っていない、やる気を出せば此の位は余裕だ。

 

「何時もやる気を出してくれますか?」

「やる気にも限度が在る、一度出せば数日自堕落な生活を送らなければならんのだ」

 

 毎日野を駆け回り刀を振るっているのだから此れ以上を俺に望まないでもらいたい。進歩してるのかも分からぬ侭に只管鍛錬に打ち込んでいる俺を見れば、俺を知るモノたちは驚くだろう。

 

「其れじゃあ軽く身体を動かしてくる。家の事と飯の事は頼んだぞ?」

「分かりました、気を付けて」

「行ってくる」

 

 習慣というのは恐ろしいものだ。走りたい、戦いたい、動きたいと身体が疼いて落ち着けん。昔の、未だ井の中の蛙も蛙だった無茶をしていた頃を思い出してしまう。

 午前か午後どちらかは動かなくては気が済まなくなるとはな。鍛錬を始めた頃には露程も考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖疾走中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時もの鍛錬場、炎に焼かれた竹林。今日は何処に行こうかと考え目的地も定めずに走っていると、何時の間にやら湖に着いていた。正式な名前は無いが紅魔の湖や霧の湖と呼ばれている。名前の由来は読んで字の如し、紅魔の館が建っているのと昼間は霧に包まれているからだ。湖の外周をのんびりと歩くと丁度一刻で一周出来る此の湖、綺麗な円を描いており自然に出来たのかと疑ってしまう。

 夏だろうと冬だろうと濃霧が掛かっている所為で幾ら目を凝らそうとも見つける事が出来ないのだが、湖の中心には島が存在している。目では捉えられなくとも真っ赤な屋敷から流れる妖気が其の位置を嫌でも知らせてくる。人妖の区別無くまともな感性を持つ奴等は近付こうとせず誰も住み着かない事で有名なのだが、中には其れを知ってなお湖にやってくるモノが居る。打倒吸血鬼を掲げるモノ、湖に住もうとするモノ、涼みに来るモノ。そういった連中は胆力が有るのか唯の馬鹿なのかと言われており、其の中に入れられているのが俺だ。解せぬ、近付こうとも危害を加え様としないのなら身の危険はない、ならば湖に来るだけなら別段問題は無い。周りからの勘違いによって要らぬ風評被害を受けたのだ、紅魔の連中を訴えても、力技でねじ伏せられる未来しか見えないな。

 やってくる奴等の中には其の儘住み着いてしまうモノも居るのだから驚きだだ。妖気に当てられる事もものともしない程の力を持っているのかと警戒したのだが、会ってみれば其の殆どが能天気な阿呆であった。こんな奴等と同類なのだと思われていたと思うと悲しくなる。

 

「外周を駆けようにも幽霊屋敷が有り、妖怪の山も近い」

 

 紅魔館を挟んだ向こう側、湖の畔には襤褸屋敷がある。夜な夜な屋敷の中から複数の楽器の音が聞こえてくるそうだ。随分陽気な奴等が住んでいるのだな、何時か演奏でも聴いてみたいものだ。其の他にも妖精が家を作り住んでいるという、妖精に家を作る技術や知能が有るのかと問いたい噂だが探してみれば良いだろう。

 少し視線を横にずらせば山の頂点が雲に隠れて見えぬ妖怪の山が在る。俺が匿っている事は知られてはいないだろうなら天狗に見つかっても心配は要らないのだ、近付いても問題はない筈。

 巨木の根元、地面に這い出た丸太のような根の下に出来ている空洞に荷物を隠す。序でに博麗の札で結界を作り包み隠す。此れで大丈夫だろうと鍛錬を始める。

 

「影闘、開始」

 

 思い浮かべるのは、鍛錬を始め最初に生み出した蟷螂だ。其の巨躯から叩き出される速さと死神の鎌に警戒しながらも隙を窺う。

 地を蹴り迫る蟷螂、鞘から抜いた刀を振り下ろされる鎌の側面に沿わせる様に振るう。

 

『キシャァァ!』

「ぐっ」

 

 横から力を入れ軌道を逸らす事が出来たが、反対から襲い掛かる鎌に反応出来ずに吹き飛ばされる。そりゃそうなる、上からの攻撃は左右に避けるが横に薙ぎ払う攻撃は上か下かの二択だ。後ろ?前に出てるのに後ろに跳べるか。湖の水面へと叩き付けられ、沈む。水面に目を向ければ朧気にだが蟷螂が見える。水中から弾幕を放つ。

 

『キシャァァ!!』

 

 衝撃で水面が乱され真っ白な気泡が視界に広がった。あくまで此れは劣り、水中の俺を警戒している間に陸へと向かう。

 静かに陸へと上がり振り返ると未だ湖の中に潜っているだろうと待っている蟷螂が。今の内に刀に妖力を込める。

 

「ッ!」

 

 無防備な背中へと斬撃を放つ。ありったけの妖力を込めた一撃は蟷螂の胴を斜めに斬り裂く。斬り裂かれた蟷螂は空気に溶ける様に消え去った。

 

「なぁんだかなぁ……」

 

 呆気なく終わってしまった。想定した強さが、想像力が甘い。昨日の酒がまだ抜けきっていない所為なのか。いや俺が手を抜いているからだ。

 

「やる気を出して此処迄来たのは良いが、此処に来てやる気が削がれてしまった」

 

 湖に飛び込んだ事で全身がずぶ濡れになり涼しいが、時間が経つに連れてじめじめとした暑さが身体に絡み付く。今日は泳ぐか。服を脱ぎ絞る、丸まった服を荷物と同じ場所に置き湖に向き直る。

 

「行くか」

 

 ひんやりとしていて冷たい湖の中へと飛び込んだ。




5197文字、普通だな。
一度文章がぶっ飛んで本当にやる気なくなってエタるかと思ったゾ(自分語り)
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