有象無象妖怪譚   作:命楼

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9日ぶりの投稿です。一週間投稿だったけど2日オーバーしてる、誤差だよ誤差!(biim兄貴並感)
あ、そうだ。番外編はほんへを優先したいんでエタゾ。


第二十二話【運命を操るという事】

 何処迄続くのかも分からぬ程に長い廊下、向こう側が米粒程にしか見えぬ。外から見た屋敷の広さは幻想郷一だろうと容易に想像できたが、此処迄長い廊下が収まる程だっただろうか。何かしらの術を使い広くしているのだろう。

 距離を延ばす、そういえば死神の姉ちゃんも似た様な事が出来るんだったか。

 

「此の部屋です。お嬢様に粗相の無いように、もし可笑しな動きを見せれば……言わずとも分かりますね?」

 

 其の問いに何も言わずにこくりと頷く。此処迄来たのだ、無礼を働くなどしようと思わん。

 其れにしても苦しい。大妖怪の妖気に当てられ気分の優れぬ、無駄に自己主張の激しい奴だ。

 

「お嬢様、お連れしました」

『そうか、入ってもらえ』

 

 勝てる気がしない。

 

 言葉を聴き改めてそう実感させられた。

 発せられた言葉自体に重さが有るかの様に、俺の身体にずっしりとした重圧が生まれる。

 更に言葉に乗って妖気がやってきた。身体を包み込み縛り付ける。

 

「……」

「其れでは失礼します……大丈夫ですか?そんな緊張されては話が出来ませんよ」

 

 困った様な笑みを浮かべる従者。此処で漸く重圧と妖気が霧散し、身体が動く様になる。此方を威圧して力を誇示しようというのか、将又驚かせようというのか。

 一際大きな扉が開かれる。大きく息を吸いゆっくりと吐き出し、竦む脚を前へと進める。

 広い部屋だ。俺の家が丸々収まる程に広い。緊張しながら部屋へと入った俺の視界に一番に入ってきたのはテーブルであった。純白の布が掛けられた横長のテーブル、無駄に長いテーブルが其処に在った。

 

「良くぞ此方の要望に応じてくれた、感謝するぞ」

 

 テーブルの向こう、上座にて趣味の悪い真っ赤な椅子に腰掛ける少女が声を掛けてくる。其の身から溢れる妖力で主人なのだと理解する。

 それにしても『要望に応じてくれた』だと?どの口が其れを言うか、と口にしかけぐっと飲み込む。無言を貫き相手の出方を待つ。

 それにしても広い部屋だ。先程迄居た部屋も広かったが此処は其の何倍も広い。

 床に敷き詰められた真っ赤な絨毯には金糸の刺繍が施されている。テーブルの上の豪奢な料理の数々、良い匂いが漂ってきている。天井からは金銀を惜しみなく使ったのだろう、幾つもの巨大な照明が輝きを放っている。

 

「珍しいか?そうだろうな、此処では西洋の物など滅多に無い」

 

 何が可笑しいのかくつくつと笑う吸血鬼。

 

「吊り下げられたシャンデリアだがな、一流の職人に作らせたのだが……幾つも有るだろう?時間も、人手も、金も掛かった。だが、其れに見合った物が出来た」

 

 再度視線を上に上げる。金銀財宝が宙に浮いている、そんな馬鹿な事を考え視線を下げ──。

 

「──黙りか?私だけが喋るのも良いが……」

 

 ほんの一瞬、視線を逸らしていた内に──。

 

「──其方からも何か話してはくれないかァ?」

 

 何時の間にか目の前に。首を掴まれる、其の細い腕からは想像出来ぬ程の力が俺を宙へと上げる。

 

「ン〜?何か話してくれよ、さァ……」

「ぐ、ぐが……」

「さァ……話してくれよ、此の私に」

「は、なせ……」

 

 締まる首、声を出そうとしたが掠れた音だけが出るのみ。

 

「何か言ったかァ?聞こえんなァ、クックックッ……」

「離せ、と言ったんだ……」

 

 息が出来ん、だがもんだいは其処ではない。如何すれば安全を確保出来る。

 

「ほう……随分と嘗めた事を言うじゃあないか。私に向かって、此の吸血鬼である──」

「──お嬢様」

 

 吸血鬼が名乗りを挙げ掛けた其の時、最後から声が掛かる。上機嫌から不機嫌へと変わる表情。空気が凍る。

 

「何だ、我が従者よ」

「お嬢様、お戯れは其処迄にしては如何でしょうか」

「従者の身で私に意見するのか?」

「分を弁えぬ進言、申し訳御座いません。ですが目的を果たす為にも如何か」

「此の程度、支障が出るとは思えんがなァ」

「他者との関係は第一印象が大事だと言います」

 

 首を掴む力が緩み床へと降ろされる。噎せながらも視線は吸血鬼から外す事なく、警戒をする。其れを嘲笑う吸血鬼に怒りを覚えるが踏み止まる。

 

「警戒を緩めず、辺りにも意識を向けている。胸の内に燻る怒りを抑え、最善に辿り着こうとする冷静な判断力」

 

 嘲笑は軈て賞賛を含んだ笑みへと変わる。

 

「そして何より良かったのは『諦め』だ。自分と相手の力量差を理解し、『敵わぬが立ち向かう』などという無謀な行動に走らずに相手の出方を待つ。現状を良く理解している」

 

 そう区切ると瞬きの間に其の姿が消えた。視線を前にやればテーブルの向こうで椅子に腰掛けている。

 

「諦めが人を殺すというが、違うね。『諦めるからこそ最善へと辿り着ける』時が在る。其れが事実だ」

 

 自慢気に語る吸血鬼に如何返せば良いかと悩み、無言を貫く。

 

「まぁ、諦めずに立ち向かい何かを得る、というのも事実。だが今の状況でそんな事が出来るのは『物語の主人公』の様な『そう運命付けられた存在』だけだ」

 

 御伽噺の主人公など、そう易々と都合良くやってきたりはしない。俺自身主人公ではない、如何足掻こうと絶望のみ。

 

「立っているのもあれだろう、座ってくれ。食べながら話そうではないか」

「……分かった」

 

 大人しく席に着く。見慣れぬ食器に料理が並んでいる。何も知らぬ妖なら如何食せば良いのかと戸惑うだろう。相手は此方の様子を見るだけで手を付けていない、故に分からぬだろう。

 だが俺には関係の無い事である。白銀の小刀と肉刺しを手に持つ。

 

「……じろじろと見られては満足に食事が出来ぬのだが、何か面白い事でも有ったか?」

「多少の心得は有ると……面白いじゃあないか」

 

 外の世界に少しの興味を抱いていた事が幸いした。初期棚の奥、偶にしか使わぬ物たち、其れを提供してくれた店主のおかげだ。

 

『海の向こう、大陸より更に向こうの食器と食事マナーブックと呼ばれる物が手に入ったのだが……買うかい?』

 

 何時もより多くの銭を持っていた事、全くという程に外来の物が手に入らなかった事、店主の機嫌が良かった。色々な要因が重なったおかげである。記憶の中から掘り出した食事作法、此処で役に立つとは。

 皿の上に乗る分厚い肉を一口大に切り取る、切った途端に溢れ出る肉を口へと運ぶ。

 

「…………美味いな」

「そうだろう、そうだろうさ。我が従者が今日の為に手塩に掛けて準備してきたもの、其れを調理したのも其奴だ。一から、という訳ではないが……此れ程に出来るのだよ」

 

 視線を横にやれば先程の銀の髪の従者が頭を下げる。一つ一つの所作が様に成っている。

 他の料理にも手を伸ばすが、其の全てが美味い。良く分からぬ物も在ったが癖になる美味さがある。

 

「其れで、話とは?」

「おおそうだそうだ、すっかり忘れていた。お前のぎこちない動きが面白くてなァ」

「……」

「そうムスッとするな、程度が知れるぞ?」

 

 未だ警戒を解かぬ此方とは正反対な吸血鬼に更に苛立つ、其れすら向こうの思い通りだと思うと手に持つグラスを砕いてしまいそうだ。

 

「其れでは話していこうか、だが何から話して良いやら。訊きたい事が在るのなら訊いても良いぞ?」

「……何故此処へ連れて来た」

「先ずは其処か。簡単な事だ、面白そうだったからだ」

 

 面白そう?面白そうだったからと言ったか?

 

「……俺は何時になれば帰してもらえるのだ?」

「……つまらん男だ、もっと言う事が在るだろう?『巫山戯るな』とか『ぶっ殺してやる』だとかなァ?」

「身に成らん事はしない主義だ。で、何時だ?」

「何時、帰りたい?」

 

 真面目に答えるつもりが無いのだろうか、いや此方を苛立たせて楽しんでいる顔だ。腹が立つ。

 

「そう怒るなよ、ただの戯れだろうに」

「戯れの為に連れて来たのか?なら十分戯れたろうからな、帰っても良いか?」

「急がば回れ、良い言葉だ。そう思うだろォ?」

「此処は満喫したさ、もう十分だ」

 

 だがそう簡単に帰してはくれないのだろう。

 玩具にする為だけに手の込んだ料理迄出すだろうか。其れに先程従者の人間が言っていた事が気掛かりだ。

 

「幾ら思考を巡らせようとも無駄だろうに、其れが分からないのか?」

「……」

「OKOK。そう睨むなよ、殺したくなるだろうに、クックックッ……」

「……其れで、連れて来た本当の目的は?」

「本当の目的か、良いだろう話してやる」

 

 腹の立つ笑みから一変し真面目な顔へ。吸血鬼から伝えられる言葉に身構える。

 

「何故連れて来たのか、簡単な事だ。貴様に依頼を頼もうと思ったのだ」

「依頼?」

 

 今日会ったばかりの妖怪に頼み?顔見知りなら兎も角──。

 

 

「『今日、偶然此処へやってきた俺へ頼みだと?』そう思っているな?」

 

 ──今日、偶然此処へやってきた俺ッ!?

 

「お前の考えなど手に取る様に分かる。ンン?如何した、動揺しているぞォ?」

「……心の内を読んでくる輩は何人も居たが、会って直ぐに読む奴は一人しか居なかったんでな」

「心を読む……面白そうな連中だ、会ってみたいものだ」

 

 其れから、話の途中でくだらない事を挟まれながらも話は続いていった。

 

「お前は『此処に来たのは偶然だ』そう思っているだろう。然し、其れは間違っている」

「……」

「其の顔はもう察しが付いている顔だな。理解力の有る奴は好感が持てる、如何だ?此処で働かないか?」

「命が幾つ在っても足りない所じゃあ初日に死んじまう。遠慮しておこう」

「そうか、其れは残念だ」

 

 其の割に言葉と表情が合っていないのにはもう言及しない。

 

「貴様を選んだ理由、大して強くはないが機転が利くモノを探した結果お前が選ばれたのだ」

「……」

「如何やって調べたか?従者を人里に送り調べさせた迄の事」

 

 人里の住人に話を訊いて回り、あの妖怪大百科に目を付けたと。慣れない事はしないものだ。

 

「苦虫を噛み潰した様な顔をしているぞ?妖怪の身で人に手を貸す、そして見返りを求めぬ。妖怪としての本分から逸脱している」

「……」

「いや、其れが貴様という存在の本分なのだろう。ならば他者がああだこうだと言うものではないか」

 

 打算が在ったから助けただけだ、見返りが無ければ助けなかっただろう。

 

「力は無いが生き残る事の出来るモノ。理解力の有るモノ。他者を顧みる事の出来るモノ。其れが貴様だった」

「俺が選ばれた理由は分かった、依頼とは?」

 

 選ばれた理由など如何でも良いのだ、過ぎた事を求める事は出来ないのだから。ならば未来で起こる何かを防ぐ事に専念するに限る。

 防げればの話だがな。

 

「依頼内容ならもう既に話しているぞ?」

「何?」

「だから『既に話している』そう言っている」

 

 くつくつと憎たらしい笑みを浮かべ此方を見てくる吸血鬼、何度目かも分からぬ苛立ちを募らせる。

 だが、既に話しているとは如何いう事だ?言葉の侭に受け取るのならば分かるのだが……考えた通りの事ならば……。

 

「思い付いたのならば話してみろ」

「戯れ、なのか?」

「そうだ」

 

 席を立つ、同時に首元に添えられる冷たい何か。左手には銀の髪の従者、右手には赤の髪の門番。

 

「いやぁすみません、此れも仕事なもので」

「先程の警告をお忘れですか?」

「……」

 

 首元の何かが離れた所で席に着く。にやにやとするんじゃあない。

 

「戯れと言ったが、巫山戯ている訳では断じてない。そもそも戯れの意味を勘違いしているぞ」

「勘違い?」

「そうだ、勘違いだ。依頼というのは私の妹と遊んでもらう、というものだ」

「……ッ」

「時間とは空間に干渉するものだ。如何だ、動けんだろう?」

 

 再度立ち上がろうとするが、同じ様に立ち上がる事が出来なかった。動けない、身体が固まったかの様に動けん。

 

「時を操る、其の応用らしいぞ?」

「……話を続けろ」

「そう熱り立つなよ。此れは真剣な話だ、ガキとお遊戯会を開くのとは訳が違う。貴様も知っているだろう?我が妹の事を」

 

 紅魔の屋敷には『吸血鬼が二人居る』。今の博麗の巫女から始まった弾幕による決闘法、其れによって初めて解決された異変。其の後起こった小さくも強大な出来事によって存在を知られる事になった存在。

 

 紅魔には狂気に飲まれし妹が居る。

 

「……」

「定期的に彼奴には玩具を与えていたのだが、直ぐに壊してしまう。片付けもせずに散らかすだけ散らかすのは別に良い、良いのだが代えを用意するのも難しい」

「だから俺だと?」

「ならば壊れ難い玩具を用意すれば良い、そう考え付いたのだ」

「短絡的だな」

「だが此れがなかなか良かった。妖怪ならば人間よりかは遥かにマシだった、数の少ない人間を使うよりも妖怪ならば好きに使えるからなァ」

「其の言い様からして既に試しているな」

 

 封じ込める事が出来なくなる、ならば外に出たいと思わない様にすれば良い。

 

「次は俺か。悪いが遠慮させてもらう」

「賃金は弾むぞ?」

「殺されるのに賃金だと?笑えんな」

「何も毎回壊される訳じゃあない、其れならば妖怪に切り替える必要が無い」

 

 初めから貴重な人間を使っている事自体が驚きなのだがな。

 

「飽きるか落ち着くか、どちらかに持っていければ生き延びられる。人間の中にも生き残った者が居たぞ?二回目で壊されたが」

「……」

「見合うだけの報酬を支払おう。其れだけではない、相応の対応で雇おう」

「……」

「一定期間が過ぎれば辞めても良い、いずれ又頼むかもしれんがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖怪談話中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日決める事など出来る訳もなく、後日話し合おうという事に落ち着いた。

 正門へと見送りに来た二人には。

 

『お待ちしております』

『又やりましょう!』

 

 と言われたが如何返せば良かったのだろうか、目の前に出来上がった問題にばかり意識が向いてしまい適当な相槌しか返す事が出来なかった。

 道中如何しようかと考えていたが良い案も浮かばずに家へと着いた。未だ灯りの点いている所を見て、起きているなら仕方ないと腹を括る。

 

「只今帰った」

「お帰りなさい」

 

 辺りは既に暗闇、日が落ちてかなり経っている。何も言わず遅く帰ってきた俺へと文句の一つでも言ってくると思ったのだが、普段と変わらぬ様子。

 

「遅くなってすまない」

「いえ事情は聞いていますから」

「実はだな……?」

 

 今何と言った?事情は聞いている?

 

「実は夕方に紅魔館からの使者と名乗る者が来ましてね。『居候の天狗の方ですね、家主は此方で預かっています、危害を加えるつもりはないから安心してください。帰りは深夜になると思います』と言われました」

 

 何故俺の家の場所を知っているのか、何故俺の家に他の住人が居ると知っているのか、疑問に思う事が多過ぎる。

 其れと共に俺の荷物迄持ってきてくれたという。何から何迄知られているのではないだろうか。

 

「流石に怪しいと問い詰めたのですが何処吹く風でして。実力行使も辞さないと思った時には影も形も……心配したんですよ?」

「すまぬな、迷惑を掛けた」

「本当ですよ。お風呂沸いてますから入ってください」

 

 さっさと風呂に入って今日は寝よう。家に帰れば説教を受ける事になるとばかり考えていたが、そうならずに良かった。

 

「其の服、似合ってますよ」

 

 そういえば、起きてからずっと着ていた此の西洋の服は如何すれば良いだろうか。




6005文字、普通だな。
見直しなんて必要ねぇんだよ!じゃけん後から手直ししましょうね〜。
Q.威圧的過ぎィ!首絞めた理由は?
A.力の誇示、交渉を優位に進めるため。
Q.運命って?
A.ああ!それって吸血鬼?運命を操り湖まで誘き寄せ門番に連れてこさせた(バトルしろとは言っていない)
Q.何で戦ったん?
A.門番「久し振りに戦ったら血が騒いだから戦って鎮めてくれよオラァン!」
Q.普通に話してたけどメイドは何も言わんのか?
A.可笑しな動きを見せれば(言葉はノーカン)
Q.貴重な人間を使っていたのか……(困惑)
A.弾幕も力もないTDN人間なら安全だっていう考え、吸血鬼がそこらの妖怪にやられるわけないんだから妖怪使えよオラァン!
Q.主人公の服装は?
A.眠っている間に着替えさせられたゾ。主人公は褌じゃなくて古道具屋で買ったトランクス穿いてるゾ(ナウなヤング)
Q.展開がガバガバ過ぎんよ〜
A.お兄さん許して!
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