有象無象妖怪譚   作:命楼

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三週間と二日ぶりの投稿です。
何時の間にかこんなに経ってたんすけど……新手のスタンド使いかな?(KNGKRMZN)


第二十三話【忘れた頃にやってくる】

 目が醒める。目元を擦り欠伸をし、部屋を出る。

 

「お早う御座います」

「お早う」

 

 廊下を進み風呂場へと向かう。桶の中へと溜められた冷水で顔を洗い、台所へ。

 

「頂きます」

「頂きます」

 

 食べ始める頃になれば寝惚けていた頭が働き出す。

 温かい食事を味わいながら考えるのは昨日の事。何から何迄見透かされ、操られていた。

 

「嗚呼、面倒な事になった。向こうの思うが侭であったのだから仕方ない、そう諦めるには事が重大過ぎる」

「依頼の事ですか?」

 

 昨日は疲れているからと話をする事なく寝た。そして今日になり何が起こったのか話したのだが、考えれば考える程に先が見えなくなっていく。

 依頼を如何拒否すれば良いのか。此方の素性は割れている。何処迄監視されているのか分からぬ。運命を操られてしまう。此の時点で避ける事は無理なのでは?

 依頼を受け、危険な存在と『戯れる』としよう。殺されるのは容易に想像出来る。勝負になるかは置いておき、戦うとして傷を付ければ他のモノ共に殺されるやもしれん。速さと力強さを兼ね備える吸血鬼に対しての策は無い。生き延びるのは無理なのでは?

 対面する場所の見取り、其れからどれ程の力を持つのかを知りたい。

 

「情報が有れば……などと簡単にはいかんだろう」

「命懸けの仕事ですか。吸血鬼と闘う、という事ですよね?」

「面倒な事になってしまった」

 

 天狗の速さに鬼の力を持つ存在。其れに加えて凶悪な能力を持っているのだから更にタチが悪い。

 

 正に理不尽、門番にすら勝てぬ俺に如何こう出来る存在ではない。

 

「ですが直ぐに始まる訳ではないのでしょう?」

「そうだ。此処最近は異変を解決した者たちのおかげで大人しくなっているらしい」

「博麗の巫女、其れから白黒の魔法使いですね」

 

 眉間に皺を寄せ苦い顔をする居候。嗚呼、そうか。

 

「そういえば彼奴等、妖怪の山への侵入者だったな」

「はい」

 

 其の際に立ち塞がった一人が此奴だった筈だ。随分とやられたと天狗の姉ちゃんが話していたな。

 

『服はボロボロ、誇りはズタズタでしたよ〜』

 

 自分もやられただろうに、何故にやにやと話せるのかと思ったが敢えて訊かなかった。

 

「あの方から聴いていますよね?」

「まぁ、な」

 

 だが、そんな事は今は如何でも良い。終わった事を振り返っても始まらない。故に目の前に迫る問題に集中しなくては。

 

「お前の事が在る、夕方から朝方迄は此方に居たい。朝から昼を跨ぎ夕方迄ならやらん事もない」

「然し、吸血鬼の相手など出来るのですか?鍛えているとはいえ、実戦に活かせる程に成っていますか?」

「出来る出来ないではない、やらねばならんのだ」

 

 言葉にするのは簡単だ、現実に行うのとは訳が違うのだが。だがやらなければ死んでしまう。

 

「連中はこう言っていた『人間の中にも生きて帰っていった者が居た』と」

 

 如何やったのかは知らぬがな。だが可能性が無いという訳ではない、そう実証されているのだ。

 人間に出来て妖怪で在る此の俺に出来ぬ道理は無い。

 

「其の方法は?」

「知らぬ、知らぬが……何とか成るだろう」

「力が無い、根拠も無い感情論程信じられない事は在りませんね」

「向こうに話を訊かん事には始まらん。今の内から気に病んでいては心労で倒れてしまうぞ?妖怪は身体よりも精神が資本なのだから」

 

 吸血鬼の妹、狂気に飲まれしモノ。狂気に支配されていては対話は出来んだろう、ならば理性が働かぬ事を利用しようではないか。まともな思考が出来ぬのならば、其処を狙うしかない。

 

「精神だけではなく身体にも気を付けてくださいよ。其れで、何時話をするのですか?」

「今日から二日後だ、時間は此方の都合の良い時に来いとよ。断らないと分かっているだろうにな」

 

 何時遊び相手に成るか分からない今、何を優先してやるべきだろうか?武器や道具の持ち込みは良いのだろうか?

 知りたい事が多過ぎる、二日後に全て纏めて尋ねなくては。

 

「其れ迄は最期に成るやもしれぬ今生を満喫しようと思うのだが……良いか?」

「始まらない内から何を言っているのですか。やらなければならないと言ったのは貴方でしょうに」

「口では如何とでも言える、其れだけだ」

 

 ご馳走様と声に出し、綺麗に料理が無くなかった皿を手に持ち台所へと向かう。

 カシャカシャと音を立てる食器、桶の中へ張られた水の揺らめきに乗り消えていく泡。嗚呼、平和だ。身体の節々に若干の痛みが走るが、昨日の事が嘘の様に穏やかだ。

 

「現実逃避をしようと来るべき時はやって来ますよ」

「今は忘れさせてくれ」

 

 今此の一時だけは目を逸らさせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖掃除中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日、派手に暴れたという事で今日は一日大人しくしている事と相成った。だが何もせずに時間を消費するのは如何なものか、居候から投げ掛けられる言葉に家事を手伝う事に。

 余りにも暑く頭から冷水を被る事数回。一時は冷えるが直ぐに暑さが押し寄せてくる、整理を兼ねて蔵へと涼みに地下へと向かった。

 

「手伝いましょうか?」

「手を借りる程の事は行わん、適当に整理するだけだ。何か在れば呼んでくれ」

「分かりました」

 

 居候を上へ残し地下へと降りる。地上は暑いが地下は日が当たらずに冷えている。少し歩けば身体の熱が抜けていき、薄っすらと浮いた汗が冷たくなる。

 

 かつかつ、かつかつ、響き渡る足音。手元の灯りが無ければ何も見えぬ空洞を進み続け、遂に地下倉庫へと辿り着く。

 

「さてさて、始めるか」

 

 綺麗に掃除された蔵の中、無数の物が並んでいる。掃除を行ってから十日、見渡してみるが特に異常は見受ける事は出来なかった。結界を張っているのだ、何か起こってもらっては困るというもの。

 中へと入り近くの物から分別していく。

 

「見た目でどんな物か判断し分けていたが……」

 

 手に取り改めて観察すると別の種類の道具なのではと思ってしまう物が出てくる。

 

 大して貴重ではない置物かと思えば其の実、値を付ける事が出来ぬ価値有る物で在ったなどは偶に起こる。

 逆に、貴重な芸術品か何かだと思っていれば其の実、幼児の玩具で在ったなどという事も起こる

 

 此処では作れぬ精巧な造りの物が外では何万と作られている事も珍しくない。其れ故に要らぬ先入観に踊らされる。

 

「あれも其の一つ……」

 

 顔を上げ視線を向ける。其の先で鎮座するは鋼の塊。否、鋼で作られし西洋の鎧である。

  精巧な装飾の無い、実用性だけを求めた鈍い輝きを放つ鎧。何も感じ取れぬが故に唯の鎧だと決め付けていた。

 

「まさかあれ程の物とはな」

 

 彼処迄の強度を持つとは思わなんだ。装飾も無い鎧が妖怪の攻撃を受けて尚形を保つ処か傷すら付かぬ。

 

 其れだけではない。先日、居候が開き無様に地に伏せた原因で在るあの魔道書だがあれも鎧と同じだ。手に入れる際に其の力を感じ取る事が出来なかった。

 見ただけで影響を及ぼす魔道書なのだが、目に止まらなければ其の力を感じ取る事が出来ぬという特性を持っていた。

 

「俺も彼奴と同じ様に……」

 

 魔道書だとは分からず手に取った俺に襲い掛かる罠。眼球を襲う痛みに一日倒れ伏していた。だが一度受ければ何の苦もなく読む事が出来る様になる、痛みを負ったが良い物が手に入ったと喜んだ。喜んださ、海の向こうの言葉で書かれていることを知る迄は。

 

「……」

 

 恐らく未知なる力を秘めているであろう其の魔道書、だが使えぬのならば意味が無い。使役出来ぬ無知なるモノには宝の持ち腐れにしかならん。

 

 猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏。挙げればキリの無い諺の数々が頭の中を過ぎ去り、俺の胸へと傷を穿つ。

 

「馬鹿な事を……」

 

 何が悲しくて自分で自分を蔑めなくてはならんのか、馬鹿な考えだと頭を振るい今迄考えていた単語の数々を消していく。だが然し、蔵の中を進めば自ずと視界に入る曰く付きの道具たち。其の数々によって蒐集家としての誇りが顔を覗かせ、実際家としての落胆が顔を覗かせる。

 

 此れ程の代物を手にする事が出来るとは、何たる幸福か。

 

 優れた代物を手にしようとも使えぬモノに意味は無い、何たる失望か。

 

「嘆いていても意味が無い」

 

 そも魔道書など実生活で使えるのか?使い所が無ければ意味が無い、故に嘆く必要は無い。集め眺める事に意味が有るのだからな。

 もしも、使い道が有るのならば大きな損失を被っている事になるのだが。

 

 再度道具たちを広げ分けていく。だが幾度と無く見てきた事で新たな発見が見つかる事は無く、細かな掃除を施すのみで時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖納涼中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んあ?」

 

 カツカツカツ……カチャカチャ……。開け放たれた扉の向こう、何か音が聞こえてきた。靴が堅い地面を蹴る音、軽い陶器がぶつかる音。

 

「お昼の時間ですよ」

「やはりお前か」

 

 此処数日で腐る程感じ取ってきた妖気によって気付いていた。

 両手に持ったお盆をテーブルの上へと乗せると辺りを見渡し顔を顰める居候に如何したと声を掛ける。

 

「嫌な臭いが漂っています」

「臭い?特には臭わないが」

「何というか、前に目をやられた時に感じた臭いが漂っているのです。何か良からぬ事をしていましたか?」

「良からぬ事などしてはいない。強いて言えば封を解いていたが……此れか」

 

 呪術の類を秘めた物、其れが発する妖気を感じ取ったか。

 

「そう睨むな。先日のあれは先に伝えておかなかった俺が悪い、だが悪気が在った訳ではないのだ。無警戒で物色しているお前にも非が……分かった分かった俺が悪かった」

「……本当に分かっているのですか?」

「分かっている。故に危険だと判断した物には再度封をした、抜かりは無い」

 

 一度封を解き手入れを行う。以前掃除の際に行ったのだが、此れはあくまで何の力を宿さぬ物にだけ行った。大部分が終わり一度落ち着いた今、曰く付きの道具たちの手入れを行うのだ。

 

「曰く付きの物には封印が施されている、ですか。では何故魔道書と呼ばれる妖魔本が唯の本棚に?」

「前に封を解いた際に忘れてしまったのだろう……だからそう怒るな」

「貴方の不注意で私が被害を被ったのですがね」

「其の後暴力を振るったからお互い様だろうに」

 

 妖気を流していると道具たちが暴れる。話を変える為に飯を食う事にしようと考え、何とか席に着く事に成功。

 

「後二日ですね、何か策は見つかりましたか?」

「思い出させるな……。まぁ、何だ……手入れをしながら考えていたのだがな、大して思い付かなかった。何度も言うが俺は知らな過ぎる、知らなくては如何も出来ぬ」

「つまり二日は今日の様に無駄に過ごすと?」

「無駄ではない、来るべき時の為に身体を休めているだけだ」

「少しでも鍛えておくべきでは?」

「其れこそ無駄だ。一日二日で大妖怪を相手取る程に強くなれるか」

 

 時間は有意義に使うべきなのだ。

 

「……本当に大丈夫なのですか?」

「心配なのか?」

「はい」

「……」

「吸血鬼の相手などするべきではない、命が幾つ有っても足りません。人間が助かるのならば妖怪でも助かるとは言いますが、本当の事なのでしょうか?一抹の希望を抱かせ、話に乗り易くしようとしたのでは?」

 

 そうなのかもしれんな。だが何から何迄お見通しの奴等から逃げる事など出来るのか?出来る気がしない。

 

「ならば妖怪の山へ……」

「余所者をそう簡単に匿うか?其れに吸血鬼という強大な力を持つ存在と事を起こそうとはしないだろう。逆に恩を得る為に俺を生け捕りにしようとするやもしれん」

 

 悲しげな顔を浮かべる居候。頭では分かっているのだろう。だが心では納得出来ていない。

 

「お前、勘違いしてないか?」

「え?」

「俺が殺されるとでも思っているのか?」

 

 態々殺されに行く訳がなかろう。俺だけが割りを食い、俺だけが死ぬと分かれば迷わず逃げる。

 

「吸血鬼が相手だろうと死ぬつもりは無い、俺は死なん」

 

 地獄の亡者共と地獄で戦って生き延びている。其れだけではなく、遠く離れた地にて戦争に参加して生き延びてきた。鬼に比べれば狂気に飲まれた吸血鬼と戦うなど遥かに楽だ。

 

「分かりました」

「分かってくれたか」

「貴方が如何しようもなく楽観的で考え無しなのが」

「……貶してくれるな」

「もう知りません。其れだけ言うのなら生きて帰ってきてください」

 

 死ぬ気は毛頭無い、生きて帰るつもりだ。

 

「だが五体満足で帰って来れるか如何か……片脚程度で済めば良いが……」

「格好を付けたのなら最後迄格好を付けてください」

 

 生きる死ぬの両極端で考えていたが細々とした事に目を向けていなかった。格好を付けている場合じゃあない、不安が沸々と沸いてくる。

 

「未だ時間は残っている、其の間に悔いが残らない様に……」

「だから弱気に成らないで下さい」

 

 蒐集した物の中で吸血鬼との戯れで使えそうな物はないだろうか。手入れをしながら探してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吸血鬼は蝙蝠に成れると聞くが、一匹だけなのだろうか。聞く所によると肉体の質量分の蝙蝠に分裂すると聞く。一匹なのか複数なのか、一体何方なのだろうか。

 

「───、───────」

 

一匹にしても複数にしても蝙蝠位ならダメージを負う事はない、弾幕が有るか。

 

「─────、───────」

 

 複数の視点で見られるという事は複数から弾幕を放てるのでは?蝙蝠化をさせるのは逆に危険か。

 

「───すよ?────か?」

 

 吸血鬼の代表的な弱点は太陽光と十字架炒めた豆、其れから大蒜。鬼と付くからには豆は弱点なのは分かる、何故大蒜が弱点なのだろうか。聞いてみるか。

 

「──そろ─いてください!───てますから!」

 

 鎧は必須、後は刀。球を打ち返すという能力が付属された鉄製の細い棍棒も持っていくか。

 

 

 

「いい加減に!して下さい!!」

 

 

 

「何だいきなりデカい声を出して」

 

 耳元で突如として響いた声、鼓膜が振動しこそばゆい。

 

「先程から声を掛けていましたよ、現実から逃避する貴方には聞こえなかった様ですがね」

「そう怒るな、其れで如何だ?」

「大事な時なんですから集中してくだはい。如何と言われても見ての通りですよ」

「他には?」

「恐らく居ますね」

 

 だろうな、妖気が漂って来ている。隠す気の無い様子、態とにしては可笑し過ぎる。忍のが下手くそなのか気を抜いているのか。

 

「何方にしても面倒な事には変わらん。如何する?」

「如何します?」

 

 其れは俺が聞きたい事なのだが。

 

「私としては唯でやられるつもりは無いですね。一人の戦士として戦って死にたいと思っています」

「俺としては誇りもへったくれも無いからな。敵に背中を向けて全速力で逃げたいと思っているぞ」

 

 そんな目で俺を見るな。前にも言っただろうに。だが逃げる事すら出来ぬ状況に居るのが何とも悲しい。

 

「地面が冷たい、明日から地を這って生活を送るか」

「暑さで頭をやられましたか。男なら腹を括って戦って下さい」

 

 逃げる事も侭ならない。着の身着の侭。手元に有るのは刀のみ。如何しろと?明日からの生活は如何しろと?

 

「最悪私が囮に成ります、其の間に──」

「──其れは駄目だ」

「はい?」

 

 安全が確認される迄お前を匿うのが契約だ、故に安全ではない今お前を一人にする事は出来ない。

 

「……」

「何だ其の顔は、らしくないと?」

「いえ、そういえば貴方は妙な所で理義だなと思いまして」

 

 死なせてしまえば報酬は受け取れんだろう。

 

 見捨ててしまえば天狗たちから追われるだろう。

 

 だがそんな事より大切な事が在る。

 

「女一人置いて逃げるなんざ、男が廃る。寄って集って一人に危害を加える野郎共には一発ずつ殴らなきゃ気が済まねぇ」

「……」

 

 そして何より……。

 

「契約を守らなくてはあれを御偉方に請求出来ん!絶対に弁償させてやる!!」

「やはり貴方は貴方でしたか」

 

 俺の目に映るのは唯一つ。

 

 

 

 

 

 轟々と全てを焼き尽くし赤く燃え上がる炎。

 

 

 周囲へと拡がり辺りを曇らせる煙。

 

 

 宙へと飛んでいき暗闇へと姿を晦ます火の粉。

 

 

 離れているのに感じ取れる此の暑さ。

 

 

 

 

 

「先ずは生き延びる事を優先して下さいね?」

「……」

 

 

 

 俺の眼の前で、家が燃えていた……俺の家が……。




6343文字、普通だな。
今日SNPGUM行ってきたゾ、スゲェ〜ためになったってはっきりわかんだね。じゃけん就職してから活用しましょうね〜。
あ、そうだ。SNPGUMに来てたシンガーソングライターの曲あぁ^〜たまらないぜ。
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