有象無象妖怪譚   作:命楼

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八日ぶりの投稿です。
何事も早くに終わらせた方が良いってそ一言。後悔しかないってはっきりわかんだね。


第二十四話【敵前逃亡】

「なっ!?ギャアアア!!」

「おい大丈夫グビャッ!!」

「だ、誰か助けて……」

 

 

 

「まさか天狗が落とし穴に嵌るとは」

「空ばかり翔ける所為で地の駆け方を忘れてしまったのだろうさ、皮肉なものだ」

 

 仕掛けておいた罠に天狗達が落ちた。悲鳴と助けを求める声が辺りに響いている。穴へと落ちたモノは竹槍に貫かれ、血を流しながらも穴の中から這い出る。

 

「数で勝り、質でも勝る。其れにしても油断し過ぎている。天狗とは信天翁の群れだったか」

「……返す言葉が無いですね、此れは」

 

 眉間を顰める居候。襲い掛かってきているとはいえ元は味方、其のモノ達が外部のモノに無様な姿を晒す事に憤りを感じているのだろう。真面目というか何と言うか。

 

「さて、此の場を如何切り抜けるか……」

「……」

「戦うという選択肢は無いのを忘れるな。家を燃やされた俺の気持ちを考えてみろ」

 

 腰の刀へと手を掛ける居候の肩へと手を乗せ、言い聞かせる。

 

 今現在俺達は家からそう離れていない林の中で身を潜めている。如何してこうなったのか、あれはほんの少し前の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖思い出し中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼飯を食い終わり再度始めた道具の手入れ。曰く付きの物の中から使えそうな物を探していたのだが……。

 

 使い道の分からぬ物。役に立たぬであろう物。役に立ちそうではあるが呪いの類に掛かる恐れがある物。

 

 折れず曲がらず良く斬れる刀は俺の身体を乗っ取ろうとする。魔道書は意識して見なくては効果が無い。唯一使える物と言えば鎧程度しかない、戦闘を行うのは困難であると改めて思い知らされた。

 

 道具の手入れと選別、晩飯前には終わる事が出来た。晩飯の支度を手伝う為に上へと上がった。

 丈夫な鎧の胴、腕の部分だけを手にし冷たい洞窟内を進んでいたのだが、其の足が止まった。

 

「……嫌な予感がする」

 

 ぞわりと肌が粟立つ、身体中に弱い痺れが回る、背中の産毛が逆立つ。

 何か起こる、気がする。

 

「如何しました?」

「嫌な予感がするのだ。嫌な予感程良く当たる、此れから何か起こるやもしれん」

「……何が起こるのですか?」

「其れは分からぬ、だが嫌な予感がするのだ」

「今日は早くに食べて備えましょう」

「備える?」

「貴方の勘は良く当たるのですよね?何が起こるにしろ警戒しておいて損は無いかと」

 

 大切な物は地下へと移動した、後に残るのは普段使っている物のみ。他の部屋よりも頑丈である倉庫へと本や服をしまっていく。

 

「ご馳走様」

「ご馳走様でした」

 

 飯を作り食べ終えた。其の後支度を済ませ、少し経った頃に事は起こった。

 

「……ッ」

 

 最初に気が付いたのは居候であった。台所に作られた格子窓から外を伺っていた居候が息を飲む、其れを感じ取った所でがさがさと草木が擦れる音が鳴り。

 

『ギャアッ!』

 

「……んあ?」

 

 短な悲鳴が上がった。

 

「罠に掛かったか」

「罠?」

「落とし穴だ」

 

 此処へとやってくる可能性の有るモノにだけ伝えている事が在る。獣道以外から通ろうとするな、と。怪しげなモノがやってくるのを警戒し罠を張っているからだ。其の何れもが当たり所が悪くなければ死なぬ程度の罠、だがこうして役に立つ機会が巡ってくるとは。

 

「気配を感じ取ったのだろう?」

「ええ、其の後罠に掛かるモノが現れた事で更に気配を感じ取りました」

「驚いたのだろうな、カッカッカッカッ」

 

 気配を絶ちながら格子窓から外を見る。詳しくは分からぬが話す声が聴こえる、居候曰く既に囲まれているのだとか。笑っているが笑っている時ではない。

 

「随分と人気ではないか」

「巫山戯た事を言わないで下さい」

「……逃げるぞ」

「え、ちょっと!」

 

 手を掴み家内を走る、いきなりの出来事に目を白黒させる姿が滑稽だが今は構っている暇は無し。倉庫へ飛び込み地下へと続く穴へと押し込む。

 

「相手の数も位置も分からぬ、一度離れるに限る」

「其れならば最初に言って下さい、いきなりの行動には如何しても着いていけません」

「済まんな」

 

 地下通路を進み倉庫を通る。其の向こうに在る穴から地上へと這い上がる。

 

「大丈夫だ、周りには誰も居ない」

「気配も感じませんね」

 

 木々と伸び切った草の中で当たりを探るが敵影は無し。

 如何にか逃げられたと地へと腰を下ろし深く息を吐く。

 

「……燃えている」

「……如何した?」

「何かが燃えている、そんな臭いがします」

「燃える?此処で燃えそうな……」

 

 無言で立ち上がる、居候にいけないと言われたが身を隠せない。

 

「嘘だろ……」

「一体如何しました、あっ……」

 

 視界の先、草木によって見えなかったが立ち上がる事で何が起きているのか分かった。

 

 燃える臭い、確かに燃えていた……俺の家が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人潜伏中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如何しました、ぼんやりとして」

「目の前で家が燃えているのだ、茫然自失にも成る」

「……」

「別に此れはお前の所為ではないだろうに。そう気に病むな」

 

 家の事も大事ではある、一先ずは置いておけ。今は如何するかに集中しなくては。

 

「其の鎧、暑くはないのですか?」

「暑くはない、重くもない。動きを阻害される事なく攻撃を防ぐ事が出来るだろう」

 

 草木の影から伺えば、ばさりばさりと天狗達が空へと飛び上がっていく様子が見える。

 罠は地上のみ、此れからは俺達自身の力でなくては傷を負わす事は叶わない。

 

「白狼天狗も居ますよ」

「……何処だ」

「彼処です」

 

 烏天狗が此奴に危害を加えていたと聞いていたのだが、白狼天狗も絡んでくるか。此の煙の中鼻は効かない筈。

 

「敵の数は?」

「烏天狗が四、白狼天狗が二。目視出来る範囲で分かっただけですが」

「逆立ちしたって勝てないな。お前は勝てるか?」

「此れでも白狼天狗の中では強い方です。ですが此れ程の数は……」

 

 一人で全てを相手取る、なんて事は出来ぬか。

 

「地下に隠れても食糧が尽きれば外へと出なくてはならない。其の前に見つかってしまう可能性も在る。家へと意識が向いている内に逃げるか」

「……そうですね」

 

 逃げる事に不満が有るのは分かる、だがそう不機嫌に成らなくとも良いだろうに。今は命を賭すべき時ではなく生き残るべき時なのだから。

 

「俺の為にも生きる事を優先してくれ」

「……分かりました」

 

 其の様な仏頂面をされては何時か飛び出さないかと気が気ではない。

 再度言い聞かせ頷かせた所で辺りを見渡し叢から出る。

 

「……」

「木々で隠れてしまい位置が分からない烏天狗が二、其の他の天狗は離れた位置で宙に」

「逃げる先には?」

「先には何も。潜んでいる可能性も有るので気を付けて」

 

 そろりそろりと音を立てぬ様に離れていく。枝の一つでも踏めば気付かれてしまう、故に一歩一歩足元に気を付けて進んでいく。

 

「あの……」

「何だ」

「何故四足歩行で進んでいるのですか?」

「姿勢が低く見つかり難い、足元の確認を目と手で同時に行える……」

 

 他にも色々と理由が有る画期的な移動方法だと思うのだ。だが直ぐに対処が出来ないというのが痛い所。

 

「周りだけではなく、上も頼むぞ。空高くで監視されていた、などという最後は嫌だからな」

「盲点でした」

 

 空へと目を向けながら歩く姿から視線を外し辺りを探る。後方から感じる気配は今尚家へと釘付けとなっている。だが然し、思わぬ伏兵が隠れているやもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人移動中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 居るかも分からぬ伏兵に無駄に気を配りどれ程の時が経ったか。何処へ逃げるかと話し合い敵か味方か分からぬ今誰とも会うべきではないだろうという事になった。

 孤立無援、住む場所を失った今何処に行けと言うのか。

 

「成る様にしか成らんだろう……ほれ、飲め飲め」

「あ、はい済みません」

 

 無駄に精神力を擦り減らした事で警戒などする気が起きず、見張りを居候に任せてしまった。此奴が見つけられぬモノを俺が見つけられる訳がない、ならば辺りを探る必要は無い。ならば此れは正当な──。

 

「──如何した、俺の顔に何か付いているか」

「又可笑しな事を考えていましたね」

「……如何してこうも見破られるのか」

 

 此方を何とも言えない威圧が有る顔で見ないでほしい、肝が冷える。

 

「さて、此れから如何します?」

「如何したもこうしたも無いだろうに。追っ手は居ないのだろう?ならば此処で息を潜めていれば良い」

「白狼天狗が居たのをお忘れですか」

 

 歩き続けて数刻が過ぎた。風に乗って飛んできていた煙の臭いがしなくなった頃には日が昇り始めた。眠る事無く、精神だけを削り続けた目的地の無い強行軍は休憩へ。小高い山の麓、狭い穴の様な洞窟の中二人で肩を寄せ合う様にして休んでいる。

 

「他にも持ってくるべき物が有ったでしょうに」

「酒以上に必要な物は俺自身だ、だから酒を持ってきた」

 

 酒は良いぞ、恐怖を和らげてくれる。戦前に酒を煽り戦うという事は人間でも妖怪でもやっていたのだ、今の俺達には持ってこいの武器と成る。

 

「もしやこうなると分かっていたのですか?何故先に言ってくれないのですか、知っていれば本の一つでも……」

「奴等の所業を聞き、もしかしたらと予想だけはしていた。だがまさか焼き討ちにしてこようとはな。お前が見ていた本も全て燃えて灰へと成っているだろう」

 

 家だけでは無く全て倉庫だけが気掛かりだ。あの部屋だけは木製ではなく石製で作られている、燃えてはいないがこじ開けられて荒らされているかもしれん。貴重な物は地下へと移しているが何時地下へと続く道に気付かれるか。

 

「文屋の姉ちゃんに会いに行ければ良いのだが……」

 

 其れを見越して妖怪の山に奴等の仲間が待ち受けている可能性が有る、近付きたいが近付けない。姉ちゃんが何処で何をしているのか分かれば良いのだが。

 他のモノに匿ってもらえるか分からぬ、巻き込んでしまうかもしれん。

 

 姉ちゃんと会うしかないか。だが如何やって?此処は無理をして妖怪の山を登るか?俺が囮に成り此奴が助けを呼んでくる、其れなら如何だ。

 

「俺にも寄越せ」

「ん……」

 

 一人が考え事をしている最中、もう一人は呑気に酒を飲んでいる。お前だけ飲み過ぎだとグラスを引っ手繰る。残った酒の上から更に酒を注ぎ一息で飲み干す、大きな溜息が溢れた。

 ぼんやりとしていると手に持つグラスへと二本の手伸びてきた。

 

「待て」

「私は犬ではない!誇り高き白狼天狗だ!」

「……酔ってるのか?」

「酔ってないですよ!」

 

 前に飲んだ時はこうも早くに出来上がっただろうか酒瓶の一本や二本で此処迄酔ってはいなかった筈。

 

「お〜よしよし」

「な、撫でないで下さい!」

「疲れてるだろ、もう朝だが寝ろ。見張りは俺がする」

 

 馬鹿にするなやらまだ起きていられると暴れ出し、其の直後に眠りに就いてしまった。

 

「精神的な疲労によって酔いやすくなったか?何時の間にか半分も飲みやがって」

 

 持ち上げた酒瓶は少し前とは比べる迄もなく軽くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男妖見張り中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見張りと言ったが変わる事のない景色を唯眺め続けるだけの時間は詰まらぬものであった。日が昇り今日も太陽が熱を振り撒くのかと憂鬱に思いながら居候へと視線を向ける。

 

 眉間に皺寄せて唸り声を上げている居候。

 

 呑気に寝やがって、悪戯でもしてやろう。そう思い覗き込む様に顔を近づけた瞬間──。

 

「──て、敵は!?」

 

 突如として飛び起きた。顔同士がぶつかる寸前、身体を後ろへと引く事で何とかぶつからずに済んだ。

 

「朝から元気だな、其の調子なら見張りは出来るだろう。お休み」

「お休みなさい……?」

 

 昨夜の奇襲の所為で悪い夢でも見たのだろう。夢の中に迄引き摺るとはな。

 

「もしや今迄起きて……済みません」

「気にしていない」

 

 そんな事は如何でも良い、早く寝かせてくれ。

 

「酒を勧めさっさと寝かせたのは俺だろう?眠いんだ寝かせてくれ」

「……お休みなさい」

 

 何か起きれば起こせと言い残し横になる。それにしても、悪戯しようとした所で飛び起きた時は肝が冷えた。悪戯に気付かれたとばかり思い話を逸らそうと必死になってしまった。寝起きで寝惚けていてくれて助かった。

 

「……有難う御座います」

「……」

 

 眠い、只管に眠い。ゴツゴツとした岩の上で眠ると身体中が痛むが仕方のない事だ。

 瞼を閉じれば睡魔によって直ぐに夢の世界へと誘われる、其の心地良さに身を委ね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面転換中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此れは、何とまあ……」

 

 

「只今到着しました。其れにしても此れはなかなか……」

 

 

「其れで御遺体は……未だ見つからず?ですが此処に居たのでしょう?」

 

 

「周りを囲い監視はバッチリ、逃げた所など見ていない」

 

 

「途中でミスを犯しましたけど、放火を行った。其れでも出て来る事はなかった」

 

 

「蔵の中にも居なかった、では何処へ消えたのか……ん?何でしょう、何か見つけた?」

 

 

「地下、ですか。抜け目無い方とは分かっていましたが、まさかこんな物が有るとは」

 

 

「あ、ちょっと私も行きますから!」




5074文字、普通だな。

Q.展開が分からない
A.嫌な予感→準備→罠発動→逃げ→確認しに外へ→燃え
 →逃げ→小山の洞穴で休憩。
Q.都合良く穴に落ちるか?
A.羽音で気付かれるから歩く
 →何時もは落とし穴とか飛んでるから警戒しない
 →何時も通りに前だけ警戒してて落ちる。
Q.落とし穴に知り合いが掛かる可能性は?
A.知り合いにはずっと前から伝えてあるからへーきへーき。
Q.勘とか狡くね?
A.今迄の経験によって培ったものだから、多少はね?
Q.二人は何持って逃げたの?
A.主人公:刀、鎧(胴、腕)、酒、グラス、タオル。
 居候:刀のみ。
Q.何で鎧は上半身だけなの?
A.動きを阻害したくない。
Q.居候は刀だけ?
A.迎え撃つ気満々だったゾ。敵前逃亡とか弱者の発想(ry
Q.全て燃えたのに冷静過ぎィ!
A.キレそう…キレそうじゃない?でも戦闘→死ゾ、冷静にならなきゃ…ヤバいヤバい…。
 大天狗だとか天魔だとかに請求したる!(ぼったくる気満々)
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