有象無象妖怪譚   作:命楼

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三週間ぶりの投稿です。前回一週間から二週間で投稿と言いましたが一カ月に変更します。展開と文章が強引。誤字や内容の指摘待ってます、あと評価も。


第三話【居候と主様の邂逅】

「ここにある本って外の世界の物ですよね?他の本も。いったい何処で入手してるんですか?」

 

 部屋に案内し風呂場や台所、何処にどの部屋があるかを教え終え使用する布団を干すせばそれ以降する事もないので夜になるまで自由にする事にした。一か月程我が家で過ごす事になった新たな住人である白狼天狗の居候に何かする事がないかとしつこく訊かれたが自由にしていろと答え続けた。本当にないのだからこればかりは仕方ない。

 茶の間で本でも読むかと独り言を呟けば御一緒しますと言われ台所で茶と茶菓子を手にし二人揃って茶の間にやってきた。好きに読んでいいぞと一言声を掛け本棚から読みかけの本を引き抜く。座布団を折り畳み枕にして横になり続きを読みだす。向こうも数秒本棚にある本を凝視した後めぼしい物を見つけたのか一冊抜き取ると余っていた座布団に座り読み始めた。

 読み始め数分経った頃、声を掛けられたので本から目を離し相手に答える。

 

「あぁ、ここにある本は外の本で合っている。魔法の森の手前に香霖堂って古道具屋があるんだがそこで買った物だ。そこの店主が物好きでな、外の世界の本やら道具やらを拾ってきて売っている。危険だから止めとけとは言ってるんだが」

 

 忘れられた物が流れ着くおかげで外の世界の物が手に入ると喜んでいたがそれだけでは物足りないのか外の世界に行ってみたいと言っていた。そこまで外に興味があるのだ、あいつは。俺は正直な話どうでもいいから外への長ったらしい考察を話半分に聞いていた。

 

「危険って……いったい何処に仕入れに行っているんですかその人は」

「無縁塚だ」

 

 魔法の森の近く、山と山の間にある一本道を只管に進み一番奥の行き止まりの広い空間の事を無縁塚という。木々に囲まれた空間には年中彼岸花が咲き乱れ怪しげな雰囲気に包まれている。ここだけ何故か結界の綻びが起こり外の世界で忘れられた物や外で死んだ仏さんが流れ着く事がある。それも相まって不気味さが出ている。

 あいつは店からあまり出ないという理由で動かない古道具屋などという二つ名を持つが商品の仕入れと称して偶に無縁塚に通っている。秋の彼岸の時期には仕入れの時期だとやる気を出しかなりの頻度で行ったり来たりを繰り返している。流れ着いた誰とも知れぬ仏さんの弔いをし外界の道具をせっせと拾っている。

 

「仕入れの為とはいえ危険度が高い無縁塚に行くのは拙いですよ。流れ着いた躯目当てにやって来るモノが怨霊や妖気に獲り憑かれ狂暴化していますし結界の綻びの所為で何処か知れない場所に迷い込むか分かったものじゃないです」

 

 確かにあそこは危険だ。鮮やかな紫色の桜の下には罪人の怨念や魂が山程埋まっていたし、狂暴化した妖怪や妖怪化した躯が襲ってくるし、下手すると三途の川や魔界やらに行ってしまう。恐ろしい恐ろしい。

 

「あそこが恐ろしい所なのはあいつも重々承知な筈だ。だが何かを得るにはそれ相応の代償がいる、あいつはそう考えている。こっちが心配しても何処吹く風さ。まぁ妖怪に襲われにくい体質なのに加えて十数年も通っているから平気か拙いかの判断はできているだろう。心配しても意味がない」

「そういうものですか」

 

 そういうものだ、話はそこで区切り読書の続きに戻る。外から流れ着く本は種類も数も疎らな為何巻も続く本はなかなか揃わない、が全ての巻が揃うのをじっと待ち続けるのも一種の楽しみだと思う様になってきた。実際に揃った時は何とも言えない昂揚感に身を震わせた事か。

 どの様な本が流れてくるのか分からないのもそうだが新しく入荷された本は店主が先に目を通したり気に入った本を非売品にする所為で直ぐに手にする事はできない。長い付き合いがある分優遇して売ってくれるが蒐集家なだけあり上手く交渉しなければお目に掛れないまま店の奥に消えていく本があるのは非常に残念でならない。だが自分一人で無縁塚に行っても地理に詳しい訳でもなく無数の妖怪に対応できる自信もないので入荷を待つしかないのが悔やまれる。

 居候が本に集中しているのを横目で確認し此方も自分の本に目を戻し文章に意識を沈めていく。

 

 本は良い物だ。人間は今まで料理や酒など数々の物を作り出してきた、その中でも本は上位に入る程に良い物だと俺は思っている。書物に書き綴られたものはそれがなくなるその時まで存在し続ける事ができるし何度でも見る事が出来る、持ち運びにも困らない。

 数百年数千年という長い時を生きる妖怪は変化もあまりせず自由気ままに生きている。長過ぎる時のおかげで色々な事ができるが長過ぎるというのも考え物である。長い時の中で大抵の事をやり尽くしてしまうのだ。縫い物や織物、手の凝った料理や菓子、畑仕事から狩り、鍛冶師の真似事、鍛錬を積み好戦的な妖怪との試合、暇つぶしは考えられるだけでもかなりあるし時代が進む毎に増えていくが追いついてしまい一度やり終えた趣味をまた掘り返す事になってしまう。久しぶりという事で然程つまらないと感じた事はないが。

 

 喉が渇いてきた、上体を起こし机の上の湯呑に手を伸ばし一口飲みまた横になり本を読む。本を読む傍ら茶を飲み湯呑の中が空になれば置いてある急須で茶を足し飲む。

 もう一人の方も茶を飲んでいる、普段の倍の速さで急須の中身が減っていく。その結果。

 

「んあ、もうなくなったか」

 

 傾けられた急須からは少しの茶しか出ず最後の一滴を出し終えた急須は役目を終えた様に何も出さなくなった。淹れてくるか、と机の上に本を置きいざ立ち上がった瞬間。

 

「あ」

「ん」

 

 机を挟んだ反対側の居候も立ち上がっていた、どうやら同じ事を考えていたらしい。

 

「俺が行こう」

「いえ私が淹れてきますよ。私は匿ってもらっている居候の身ですから、これくらいはやります」

 

 俺が手に持った急須を少し強引に取ると茶の間を出て行った。遠ざかる足音から先に場所を教えていた台所に向かっているのが分かる。仕事もないからのんびりしていて良いと言っていたが何もしないで居るのも悪いと思っていたのだろう。

 湯を沸かし入れてくるまでまだ時間が掛かるだろう、本を読んで待っていよう。

 

「お茶入れてきました」

 

 本を数ページ読んだ後、向かってくる足音に振り返れば急須を手に戻ってきていた。元の位置に座り直すと二つの湯呑に淹れたての茶を注ぎ自分の湯呑の茶を飲む。茶を淹れてくれた事に一言礼を言いこちらの湯呑を手に取りなみなみと注がれた茶を飲む。茶が喉を通り腹に流れていき温かさがじんわりと身に染みていく。暑い夏でも熱い茶は美味い。

 本を読む時折茶を飲むその繰り返しの途中で昼寝したり布団を中にしまい込んだりし数刻。

 

「ふぁぁ……そろそろ、か」

「行きますか?」

「あぁ」

 

 本日三冊目の本に栞を差し込み伸びをする。寝ているとはいえ流石に身体が硬くなった。

 

「そろそろ良い時間だろ、ちょっと準備するから待っててくれ」

「私も準備しますね」

 

 本棚に本を戻し台所に湯呑と急須を持って行き部屋に戻る。着ている甚平を脱ぎ箪笥の奥に入れておいた少し上質な着物を取り出し着る。その上に羽織を羽織れば完成。一人なら見た目等気にはしないのだが如何せん他のモノがいる。締まりのない恰好はできない。

 懐に中身を確認した銭袋を入れ部屋を出て玄関に向かえば既に準備を終えて待っている姿が見える。

 

「待たせた」

「私も今来たところです」

 

 何時も白狼天狗たちが着ている服ではなく白の浴衣に変わっていた。何でもあの白狼天狗の正装のままなのは拙いから普通の和服で生活する様に言われたそうな。普段見ない恰好は新鮮だ、良く似合っている。腰にある刀がなければもっと良く映えたのだろうが何かあった時用の護身だという。俺も腰に小太刀を差しているから言えた事じゃないか。いや美しい少女の浴衣に武器、これもこれでありかもしれなん。物騒だが。

 戸に鍵を掛けしっかり戸締りしてあるか確認し終え、それじゃあ行こうかと声を掛け二人連れ立って夕焼けの中を歩きだす。目指すは一日振りの夜雀の屋台だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家から夜雀の所まで歩いて向かえば、店まで距離がある、何もなくてつまらん、と言い早々に飛んでいくくらい距離があるのだが二人なら話に花を咲かせ続ければ退屈だと思わないで済む。日が落ち辺りが暗くなり森の中を照らすのは月と星の光だけとなったが小動物の気配しか感じないので警戒もそこそこに歩き続ける。もう一人の方は白狼天狗だ、哨戒を主な仕事としているのに加え白狼と言うくらいだから鼻が利くし気配を察知するのに長けているだろう。

 星を見上げながら進んでいると突然立ち止まり鋭い視線を先に向け始める我が家の居候。視線の先を見れば遠くに小さく明かりが見える、あそこが夜雀の屋台だ。遠目に見ても特に可笑しな所もない屋台。そこから薄らと風に乗って妖気が流れてきていなければだが。どうやら妖気を感じ取り相手がどれ程のモノか分かり警戒を強めたらしい。それに加えてここは自分の縄張りだ近づくなと言わんばかりの威圧も交じっている。警戒して当たり前だろう。

 

「感じますか?この先に居るモノの気配」

「あぁ分かる。だが行かないと約束の相手に申し訳ない」

 

 あいつの事だ行かなければ最悪殺される、流石に殺されるのは御免被る。足を進めるが肩を掴まれその場に縫い止められる。

 

「んあ、何だ?」

「何だ、じゃないです。近づくなと警告してきているのに近づくのは拙いですよ。待ち合わせをしているお相手には失礼ですが行くのはやめましょう。その人も今日はあそこに近づこうとはしないでしょうし」

 

 確かにその通りだ。流れる妖気から伝わるは大妖怪特有の濃い妖力。そして近づけばどうなっても知らんぞという警告を孕んだ威圧感。まともな思考が出来る奴は行こうとしない。触らず神に祟りなし。だが。

 

「その待ち合わせの相手がこの妖気を垂れ流してる奴なんだ」

「え?」

 

 その相手がこの妖気と警告を発するモノの正体なのだ、一度体験したおかげで分かる。昨日の今日だ、また面倒な輩に絡まれない様にしているのであろう。

 呆然としている居候に昨日の事を説明しなければならないのだがここで話すより屋台に着いた後酒を飲みながらでも教えればいいだろう、向こうにもこいつの事も説明しなければならないから一石二鳥だ。屋台に向け歩みを進めれば後ろから早足で近づく足音が聞こえる、隣まで追いつきどういう事なのか説明を求める怪訝そうな目を向けられるがまだ待っててくれ向こうで説明すると言い聞かせ渋々だが了承してもらう。

 匿う事になったのにそれに加えて今日も飲みに行くという面倒事が重った所為で説明するのを頭に入れていれずに来たのは自分の所為だ。いや、これは言い訳だな。流石に説明も碌にしなかったのはいけなかった。相手の事くらい軽く教えておこう。

 

「今日会う事になってる相手なんだが、向こうで殺気ばら撒いてる奴だ」

「今更遅いですが、会う予定のお相手の事を先に訪ねておけば良かったですね。過ごす場所が決まった事で安堵しきり抜けていました。不覚です」

「先に説明していなかった俺が悪かったすまん。話を続ける、その相手なんだが強力な奴だとは分かるだろ?他の大妖怪同様に力に見合ったそれ相応の誇りと傲慢さを持っている。だがある程度の吟じと常識は持っていると俺は思っている。下手な事をしなければまず何かされる事はない。気楽にしてればいい」

 

 気楽にしろとは無茶を言う、と小言を言ってくるが大丈夫だろう。なんだかんだ言って優しい、と俺が思っているだけだがいきなり攻撃してくる様な奴じゃないと数刻程の付き合いだが分かる。初対面でいきなり殺されそうになったがあれは出会い方が拙かっただけだ。

 

「普通にすればいい普通にな。俺たちはただ飯を食い酒を飲みに来ただけだ。大丈夫だ」

「心配ですが貴方には泊めさせてもらっている恩がある。信じてますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩く事半々刻、店に着いた。暖簾の下から客が一人座っているのが見せる。片手で暖簾を上げ潜る。

 

「そろそろ来る頃だと思っていた」

「時間指定がなかったから適当な時間に来たが、良かったか?」

「あぁ大丈夫だ。私が表に出れなければ意味がないからな。良い時間に来たと誉めてやろう」

 

 随分な言い草だ。お前は何様だ、と言えば主様だと返され殺される事は火を見るより明らかだ何も言わん。さてここからだ。一人増えた事をどう切り出せばいいのだろうか。

 

「ん?後ろにいるのは誰だ」

「こいつか?こいつは……」

 

 なんて言えば良いのか、一時的に匿っている事を素直に話しても良いのか。誰かに話される可能性は……分からん。

 

「わ、私はこの人に訳あって匿ってもらっている白狼天狗です」

「匿う?白狼天狗?天狗、だと……?」

「天狗だがどうしふごぉ!?」

 

 首を、掴まれ、苦し。

 

「な、何を……」

「何があったか知らんが天狗の側に付いたとは、裏切者は死有るのみ」

「裏切ったとはなんだ…!意味が分からんぞ…!!」

 

 吊り上げられ苦しい状態からなんとか落ちつかせる事に成功、生きたまま地を踏みしめる事ができて嬉しいぞ。下りる時地面に投げ捨てられ尻を打ち付けたが。踏んだり蹴ったりだ。

 

「裏切者とは、どういう事だ」

 

 赫々云々と話合いどうしてこうなったのかが分かった。

 

 天狗と一緒だという事で自分を裏切り天狗たちに寝返ったと勘違いしたそうだ。何故それだけで天狗たちに付いたと勘違いするのか。流石に一度下僕になった身、鞍替えをするつもりはない。裏切ったらその瞬間に殺されるしな。全く、沸点が低いんじゃあないのか。

 

「一緒にいるのはお前を裏切って天狗に寝返ったのではない、そもそもお前と出会う前から天狗とは知り合っていた。別に天狗と組んでお前を嵌めようとしてた訳じゃない、だから闇を向けるな」

 

 また良からぬ事を想像したのか闇が周りに集まりだし此方に向かって伸びてきた。一歩下がり説明を止め何も疾しい事がないと一言付け足し攻撃されるのを回避する。

 

「天狗の新聞を購読しているからそれで天狗と知り合っていただけだ。今日、日が落ちる前その天狗が家にやってきて依頼を持ってきた、こいつを匿ってくれとな」

 

 親指で後ろに佇む居候を指差す。新しい我が家の住人にも話の補足をさせ懇切丁寧に言葉を選びながら説明しこちらの事情を伝える。流れで教えてしまったがもう知らん、もうどうにでもなれ。

 

「置ける所が見つからず信頼できるお前の所に匿ってもらう事にしたと?ほうほう、随分天狗たちに信頼されているのだなぁお前は」

「正直、何故俺の所なのか今でも疑問のままだ。いや、ここしかないと言われ理由も先程言った通り教えてもらえたから分かってはいる。だが他の所でもいいじゃあないかと思うのだ。新聞を取っている俺が良いのなら他の新聞を取っている何処かの誰かでも良いではないのか」

「もう決まった事なのだろう?男ならぐだぐだと言うな。自分でも良いと言ったのだから諦めろ」

 

 その通りだ。承諾したのは俺だ、嫌だとは微塵程しか思っていない。本当に嫌だとは思っていない、だから不安そうな目で俺を見るな。

 

「全く、先に話せば勘違いする事もなかったというのに」

「説明する前に仕掛けてきたのはお前あぁ分かった分かったそう睨むな威圧するな俺が悪かった」

 

 有無を言わさぬ視線と重圧に言葉はかき消され謝罪させられる。理不尽ここに極まれり。

 

「それじゃあ面倒な話はここまでだ、今日も飲むぞ。覚悟は出来ているのだろうな?」

「昨日の今日だ、軽めにしても良いだろ分かった分かった今日も飲む飲みますだからそれはやめろ」

 

 また元の椅子に座り直し悪い笑みを浮かべる我が主に苦笑いしか出ない。このまま立っていても解決する訳がない、腹を括るしかない。ため息を一つ吐き隣の椅子に座る。

 

「私の隣に座る事を許した覚えはないが?」

「幾つも椅子がある訳じゃないんだ仕方ないだろうが、奥に詰めろ」

「随分と言うじゃないか、面白い。まぁ私は寛大だ、今の無礼許してやろう」

「はいはい我が主様は本当に心が寛大なお方」

「昨日今日出会ったばかりなのに御二人さん仲が良い事で」

 

 女将の夜雀がそう言い二人顔を見合わせる。確かに出会って一日しか経っていないというのにここまで心を開き言い合う程の仲になっているとは。

 

「おい何を突っ立っている天狗。さっさと座れ」

「は、はい?私ですか?」

 

 そういえば居候の事を忘れていた。お前以外に天狗が他にいる訳がないだろう、呆け過ぎだ。

 

「なんだぁ?私の酒が飲めないとでも言うのではないだろうな。お前の居候は愚か者らしい」

「え!?ちょ、いや、そういう訳じゃ!?」

「フ、フッハッハッハッハッハァ!冗談だ、真に受け過ぎだぞ天狗」

 

 生真面目な白狼天狗には冗談は通用しないってか。いや大妖怪の冗談は心臓に悪いからやめてやれ。

 

「は、はぁ」

「フフフ、お前たちは二人揃って面白い。気に入った、天狗だから僕にできないのは残念だがもしもの時は力を貸してやろう。日時が限定されるがな」

「……よろしいのでしょうか」

「気にするな、私がお前を気に入っただけだ」

 

 話が流れ流れて協力まで期待する事ができるようになったのは良い。まぁ封印の所為で満月に近い日の夜でなければ力が戻らないのが残念だが。

 

「ほらさっさとそいつの隣に座れ。今日は朝を迎えるまで飲んで飲んで飲み続ける、付いて来い!」

「流石に朝まで飲み続けるのは辛いんだがな」

「それじゃあ、失礼します」

 

 なんだかんだあったが説明もできたし仲も良くなれた、終わりよければ全て良しとは良く言ったものだ。まだこれから酒を飲み続けるという地獄が待っているがもう一日くらい問題はないだろう。

 

「両手に花とは罪な男じゃない、出不精で愛想も甲斐性も無いあんたには荷が重いんじゃないの?」

「両手に花、ねぇ。俺の手には収まりそうにないな、持て余す程だ」

 

 夜雀の戯言にそう応えながら左の奴が差し出してくる硝子のカップに置いてある瓶を手に取り中身を注いでやれば、当たり前だと言わんばかりの笑みを浮かべ一気に飲み干された。感謝の言葉もないである。

 それじゃあ適当に注文するとしよう、俺と居候の二人分なら十分に支払えるくらいの額は持ってきているがこいつはどれくらいの量を食べるのだろうか。かなりの量を食べ飲むなら懐が心配になる。

 

「私は自分で出すので大丈夫ですよ?」

 

 俺の考えに気付いたのかそう言ってくる。

 

「男の甲斐性を見せる所じゃないの、色男さん」

 

 にやにやと話に入ってくる夜雀。色男とはなんだ色男とは。甲斐性のないと言ってきたのは何処の何奴だったか。

 

「心配するな。金ならある」

「なら私の分も出してくれないか?」

「お前は自分で出せ」

 

 まったく、図々しい事この上ない。

 

「そうだ、私の事を教えていなかったな。どれ私の武勇伝でも聴かせてやろう。私は何千年もの昔、闇を操り何万と言う妖怪を統べる大妖怪として君臨していた!当時鬼や他の妖怪たちも一目置く存在だったのだ!他の配下ではない妖怪の所に行けば自ら頭を地に付け仲間に入れてくれと懇願される程の────」

 

 昨日に続いて今日も始まった自分語りは昨日聴かされた内容と寸分違わないものだった。俺は二回目だがもしかしたら夜雀は何度も聴いているのかもしれないな。

 話を聴かされている居候の分を注文し出来上がるまで先に出ていた冷を飲む。明日も酔いで頭を痛める日になると思うと今から頭痛がしてくるがしょうがない。今日も飲むぞ。

 




あとがき、書く事あんまりないな。前回一週間から二週間と言ったのに三週間経ってしまう申し訳ない。これからは一日から一カ月の間に投稿していこうと思います。
文字数はギリギリ7800に届かず。
2015年10月25日。追記。文章を更新し7799文字に。
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