有象無象妖怪譚   作:命楼

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六日振りの投稿です。だけど最新話じゃなくてただの番外、おまけなんだよなぁ…。ほんへ次話は近い内に投稿するかも。



【番外編其の二】八話九話の間の話

 やはりというかなんというか、案の定二日酔いになってしまい苦しい思いをした。竹林からやって来る兎が売る薬のおかげで痛みも怠さも解消されたので問題はないのだが。

 飯を食った後で腹に溜まっており其処まで飲む事ができなかった故に一人きりの月見酒は早々に終わった。其れなのに此れ程に成るとは。

 

「酒は飲んでも飲まれるな。先人は良い言葉を残してくれたと思いませんか?」

 

 酒は飲んだら逃れられん。酒飲みの宿命だどう足掻いても逃げられんわな。

 

「それは一部の人妖だけです。それから薬ばかり飲んでいると逆に体を悪くしますよ」

 

 薬の副作用というやつだな、其れ位の事は俺でも知っている。だが彼処の薬は良く効くし副作用も全く存在しない。其れに加えて俺は妖怪だ、大した事にはならんて。

 

「だから、そういう事を言うから悪い事が起こるんですよ」

 

 そうは言うが今の所其処までの事は起こっていないだろう。確かに正体不明の何モノかに追われたが人里から出れば消えたであろう。

 

「それが起こっているという事なんですよ。似た様な事がまた起こった時、今回の様に何もされずに済むかは分からないんですよ」

 

 其処まで言う事じゃないだろうに。深く考え過ぎだ、幾ら考えても未来の事など分からないであろう。一度頭を冷やして冷静になれ。もう此の話は止めだ止め面倒だ。

 

「まぁ、そうですね。深く考え過ぎですよね。いやあなたの薬付け酒飲み生活は間違っていますから、話を変えないでください」

 

 話しを逸らす事には成功したは良いものの気付かれてしまっては意味がない。分かった分かった薬に頼るのは止める。だが、止むに止まれぬ時が来た際には服用するからな。

 

「ええ、いいですよ。もしもの時だけ使ってください」

 

 二日酔い用の薬をもしもの時に使う。何だか可笑しな話だな。

 さて、今日は何もない。何処かに呼び出されている訳でもなく。用事がある訳でもなく。危険が迫っている訳でもない。文字通り何もする事がない日が今日である。

 いやぁ良いものだ、何もない日とは。面倒事が起きない良い日。此の様な日が死ぬ其の時まで永遠と続けば良いのにと何度思った事か。逆に何もないのは退屈だと思った日もあるのだが今は其の様な事は関係ない、消えろ。まぁなんだ、此処数日の間に色々な事があったのだ今日位は惰眠を貪ってしまっても構わんだろう。

 

「三食食べてくださればある程度は許しますが、掃除の時は退いてもらいますからね」

 

 そうか、其れじゃあお休み。

 

「先程から言いたかったのですが。考えを読ませて此方だけ話しをさせるのは周りから見ると可笑しく映るのでもう止めてくださいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近色々起こった事に加え走馬灯を見て昔の事を思い出した。という事で昔の事を振り返ろうかと思う。此れはただの自分語りなので馬鹿正直に聞かなくとも……前口上とは面倒なものだ、長々と語れば鬱陶しく感じるし短ければ真面目さと意気を感じないのだから。

 

 初めて死を覚悟したのは何時だっただろうか。自分という意識が産まれ自分という存在を認識し得るまでに成長して少し経った頃だった気がする。此の世に産まれ確固たる意志を持つ存在になるまで何をしていたのかは知らないが無数の人間に追われていたところを見るに何かをしたのだろう。まぁなんだ、一つ格が上がった事で特別な術を持たない人間に遅れを取る事など有るわけもなく闇に紛れ一人また一人と闇に葬り去っていった。

 

 其れから、其れからどうだったか。確か近くの村にやって来た旅の僧が退治しに来て其処で初めて死を覚悟したのだ。ケモノ同然だった頃にも死ぬ思いというものを体験したかもしれんが確かめる術など無いので此れが初で良いだろう。

 

 結界を貼り動きを封じ力を押さえ攻撃を防ぐ。逃げようとしても避けようとしても能力を使おうとしても攻撃しようとしても全てが無駄に終わり此れまでかと一瞬、ほんの一瞬脳裏に浮かび。死んでなるものかと終わるものかと立ち上がり意地汚く這いもがき足掻き抵抗し無い頭を必死に捻り命辛々生き延びた。其の時の肉は格別に美味かった。

 

 其れからだ、鍛え始めたのは。力も無く才も無く頭も無かった無い無い尽くしでは死ぬ。少しでも生きる為に試行錯誤した。

 

 

力を付けた。

 

 

能力を強めた。

 

 

頭を使った。

 

 

人間なら勝てる、術士なら危うい、大妖怪なら逃げる。最初の頃から其れは依然として変わらない事ではあったが怪我を負う事は無くなった、其れどころか打ち勝つ事が増えていった。殆どが逃走だが逃げ切れば勝ちであると命があれば其れで良いという節が有ったので逃げ時を見逃すなど先づ無かった。

 

 其れからだ、面倒事に巻き込まれ始めたのは。自分から頭を突っ込んでしまう事も有るには有ったが確かに巻き込まれてきた。ただの面倒事ではなく命が掛かる事も良く起こり其の度に傷付き成長して来た。成長が次々に訪れる厄介事に追い付かず毎度毎度死に掛けるのは当たり前。だが死ななければ安いものである。

 

 まぁ辛かった、辛かったさ。だけど其のおかげで此処まで来れた訳でもある。一生に一度体験できるかどうか分からない貴重な体験をする事は幾らでも有った。運が悪いと面倒だと嘆いてはいるが其の反面運が良いと良かったと思う自分が居り思わず笑ってしまう。悪運が強い、では済ませられない気がするな。もしや何かしらの能力が隠されている、と何度も思い彼是と試してきたが元から有る能力しか無かった。そういう星の元に産まれてきたのだろうな。

 

 色んな奴に出会った。自分と同じ様なただの弱小妖怪から大妖怪、聖獣、聖人、仙人、亡霊、天使、悪魔、神。此の国の出のモノだけではなく海を越えた先の土地のモノ、異世界の住人。多種多様なモノたちと出会ってきた。殆どが言葉も碌に交わしていないので出会っただけではあるが貴重な体験であったのは確かだ。何度か戦う事も有り、前にも書いたから分かっているとは思うが死に掛けた。命を刈られるなど御免被ると死神を口説き落とすのに苦労した。口説く姿が必死で可笑しかったと見逃してもらえたので良しとする。見逃すといえば鬼への下克上に巻き込まれた時は周りの連中が馬鹿正直に突撃してくれたおかげで盾に成るだけではなく足止めにも成り意識を向けさせない様にしてくれたので案外楽に逃げる事ができた。其の過程で顔を見られた事が幾度か有ったが自分の事など覚えていないであろうな。覚えていたら其れは其れで困る、なんだかんだといちゃもんを付けられてはたまったものじゃない。

 

 店主の奴に付き合い無縁塚に着いて行った際異世界に迷い込んだ時も死を覚悟した。何度死を覚悟しているのだろうか、両手の指の数では収まりきらんな。其の異世界は元の世界と良くも悪くも似ていたが違う部分も当然有り四苦八苦しながらも何とか適応し、此の世界に危機が迫っていると何故か旅に同行させられ戦争にも参加させられまたも死に掛けた。戦争はもう沢山だ。

 

 女運にも恵まれなかったが、思い出したくないものの上位に食い込んでいるので割愛させてもらう。

 

 言いたい事は此れ位か、他にもあるが長くなるし面倒なので此れでお終いにしよう。

 

「何度か口に出しているのを聞いていましたが改めてみると良く生き延びてきだと感心しますよ。というかこれ全て本当の事なんですか?」

「勝手に覗くな。事実だぞ。まだ詳しく書いていないし書いていない事も有るが。俺の一生を書くには此の日記帳では収まりきらん程だ。此れで何冊になるか分からん。店主の様に自分の日記を本にしてみるのも一興か。冒険譚、いや冒険はしてはいるが数回だけだ。題名は大事だ、名は体を表す」

「覗かれ易いこの様な所で書いている方が悪いです。名ですか、こんなのはどうですか?」

「なんだ?」

 

 

 

 

 

「【有象無象妖怪譚】というのはどうでしょう」

 

 

 

 

 

「有象無象妖怪譚?…………面白い、面白いじゃあないか有象無象妖怪譚。俺にぴったりだ」

「え、そうですか?適当に言ってみたのですが」

「まぁ今は此の日記の名を其れにするだけだがな。本にするなら全ての日記を倉庫から出し書いた事を一度整理しなければならない。本が出来上がるのは夢のまた夢だ。其処までするのも面倒だしな」

「面倒って、今日だけで何度使っているのだか」




有象無象妖怪譚:主人公の日記、それを編集して本に纏めたもの。このssは実は主人公が本を読んで昔を思い出してる際の回想、という訳ではない。最終話にそんな展開を持ってこようとしてたけど辞めた。
2015年11月15日。追記。タイトル編集。
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