タイトルはAIRNTUのパロだゾ(理由は)ないです。
昔々のお話。
自らを認識し真っ当な思考が出来る様になってからどれ程の時が経ったのであろうか、真面に考える事もなく残る本能の赴く侭に動いていたのは覚えている。未だ幼子同然の頭の俺は誰に物事の道理というものを教わる事なく無駄に時間を浪費しながら色々な事を学んでいった故に悠然と迄はいかないが亀の様な早さで世俗とやらを理解していった、人の世も妖の世も。
今迄殺し食らっていた餌は人間と呼ばれる生物であったのを知った。牙も爪も強大な力も持たぬ弱き者たち、だが知恵があった。其の知恵の所為で幾度となく打たれ撃たれ討たれ掛けたのかも分からぬ。人間は群れを作る、其れはやがて大きくなり村を作り町となり街と化した。一人一人は脆弱だが一つの集合体と成った其れは大妖怪と呼ばれるモノたちですら容易に討ち取る事の出来る存在になる。
遠くから眺める其の先で無数の小さき点が蠢めく姿は一種の妖怪の様にも見える。準備を済ませている町ですら返り討ちに遭うのだ此れ程大きな街を襲うなど死にに逝く事と同義だ、街に背を向け森の奥へと向かう。
如何しようもない際に食らい、縄張りを巡り戦うモノたちは妖怪と呼ばれる存在であったのを知った。牙を持つモノ力を持つモノ此の世の理すら捩じ曲げるモノ、多種多様な存在を一纏めにしたモノだ。此の中に俺は入っているらしい、人間が俺に向かいそう叫んでいた。どの様な定義付けされているのかは知らないがな。
其の中でも俺は弱くよく返り討ちに遭う、此れが負けるという事なのだと知り殺した際に此れが勝ちつという事を知った。死にたくない其の一心で何でもしていたのを覚えている。死にたくないという心が芽生えたが其れだけではなく負けたくないという気持ち迄存在している事に気付いたのは何時だったか。
人を観て人を、妖を視て妖を。ミテみて見て視て観て。俺は色々な事を知った。知る事で、学ぶ事で今の俺が出来上がった。
「何を考えていたか知らんが、お前たちは逃がさん。此処で全て消し去る」
ざわざわと動揺が広がる。作戦通り散ったのは良いがまさかこんなのが早々に出てくるとは。現実逃避をしている暇はなさそうだ。
「後少しなんだがなぁ……」
隣の爺さんが零す、老いているとは思えない動き振りを見て老いは擬態かと疑ったが人から妖怪へと成った故に老いている此れでも動くのが辛いと言う爺さんの顔には疲労の色が出ている事に気付いた。無茶をする。
「くっそォ!!俺たちは此処でお終いなのか!?」
爺さんとは反対側に居る巨漢が叫ぶ。耳元で騒ぐな。額から二本の角を生やしており其の肉体は逞しい、見た目通り鬼であるのだが才に恵まれず木偶の坊と呼ばれていたそうだ。だが腐っても鬼、其の力は並の妖怪とは比べ様もない。
「褒美……人間……食い物……金………」
後ろでぶつぶつと何事かを呟いているのは……よく分からん奴だ。気味が悪いと誰も近付こうとしなかったのだが其の中には俺も入っていた。故に名も種族も分からずじまい。
敵陣の砦まで目と鼻の先だというのにまさかこんな化物が立ちはだかるとは夢にも思わなかった。いや、嫌な予感だけはしていたのだがまさか当たるとは思わないだろう。
「う、うおぉぉぉぉ!!」
近くの奴が雄叫びを上げ突っ込めば、其れに呼応する様に周りの連中も雄叫びを上げて走り出し攻撃を仕掛ける。隣の鬼と後ろの奴も横を通り抜けて行く。何時の間にか隣の爺さんが居ない。如何したのかと思い視線を巡らし──。
──耳を劈く爆音、ぶれる視界、身体中に痛みが駆け抜ける。
視界一面に広がる星空、場面は刻一刻と変わり次に映ったのは先程まで立っていた大地。草木は消し飛んだ巨大な穴が其処にはあった。何時の間にあれ程の穴が出来たのか、先程の音は此れが原因かと思い。
何か、何かを忘れている様な。いや忘れているのではない、何か見落として。
「俺は今何処に、如何して此処に……?」
自分が何処に居るのかを理解した。理解したと同時に浮遊感が無くなり、落ちていく。
空に居る。何時の間にか空高くへとやってきていた。身体に走る痛みに地に出来た大穴が開い、地中から攻撃を受けたのかと気付いた時には既に地への距離は半分を切っていた。痛む身体に力を込め四苦八苦しながらも速度を落とし其の場へ浮く。飛ぶという行為、此れが如何にも苦手だ、長時間受けず速度も出ず方向を直ぐには変えられない。真面に飛べる様になるか他に移動手段を身に付けなくては。
「おう随分暇そうじゃないかい、一丁付き合え」
真横から聞こえた声、其の方へ向き手を交差させた瞬間再度痛みを感じながら飛ばされる。更に背へ痛みを感じてみれば如何やら今度は空ではなく地へとやってきた様で、固い地盤を物ともせずに砕き小さな穴を開けたらしい。かなり深く迄飛ばされたのか暗く地上迄の距離が分からない。
全身から発せられる痛みに歯を食いしばり何処にも怪我が無いかを確認すれば骨が折れたやら内臓が潰れたやらは無く有るのは打撲による痣や皮が切れただけで大した事は無い。
「あちゃ〜やり過ぎたか、こりゃ死んでるな」
「穴の底が見えない、生きてても体の骨はバキバキで内臓はグチャグチャだね」
「軽〜く小突いた程度なんだけどね〜」
「私たちの基準じゃそうでも他の奴等じゃそうはいかないだろう」
「更に軽く殴るなんざなでる様なもんじゃないか、其れじゃつまらん」
穴の向こうから声が聞こえる、死んだと思っているが此の通りよ。軽くやられてなきゃ死んでいただろう。
さっさと立ち去ってくれないかと息を潜め気配と妖力を消して待つ事数十秒、何とか立ち去っていくまでに気付かれる事はなかった。もう嫌だ、こんな所からはおさらばだと穴から這い出て死体のふりをしながら森へと向かっていく。
「相手の鬼を殺せば大金をやる?ありゃ勝てる勝てない以前に勝負にもならないじゃねぇか。勝てるかもと期待させやがって」
俺を引き入れた奴等の頭がそんな事を言い破落戸たちに鬼を倒す様に仕向けていたが恐らく足止めの為なのだろう。頭には一発殴らなきゃ気が済まん。
「だが此の儘何の成果も得る事が出来ずに逃げ帰るのか?答えは否だ。何でも良い、何か持って帰る事が出来れば」
森の手前、立ち止まり考える。砦に入り盗める物は持てるだけ持って逃げるしかない。善は急げださっさと行くか。
駆ける駆ける駆ける、荒れた大地を踏みしめ敵も味方を越えて暗い空を彩る弾幕を避けて。
半ば壊れた門を抜け目の前に躍り出る敵を足場にして其の後ろに居た敵を蹴り飛ばす。其処には敵味方入り乱れる広い空間が広がっていた。
何処が宝物庫かと考えていれば俺を覆い隠す影、横に飛べば先程まで居た場所に巨大な何かが振り下ろされた。俺以外に逃れたモノは居ないらしく棍棒が振り下ろされた場には潰された妖怪たちが。
此方に気付かず全てを潰したと思い込み歓喜を顔に貼り付けた鬼が其処に居た。
「お前は阿呆か!仲間を巻き込むなァ!!」
「あぁ?うるせぇぞ!」
其の鬼に向かい怒号が飛び其れに対して鬼も怒号を上げる。地を揺らさんばかりの怒号、然し此の中では其れは叶わず喧騒の中へと消えていった。
「媚びを売るしか脳のねぇ雑魚妖怪が幾ら死のうと関係ねぇんだよ!死なせたくなきゃ避ければ良いだろう!!」
「其れが出来ないからお前に殺されたんだろう!」
「弱ぇから死んだんだ!弱肉強食が世の真理だ!雑魚は雑魚らしく憂さ晴らしの為の的にでも成るのがおにあいだぜぇ!!」
一閃、振り下ろされた棍棒は地を砕き放射状に衝撃を撒き散らし、周りに存在する全てを吹き飛ばす。其れには俺も例外は無く飛ばされる。飛ばされた妖怪が山の様に積み重なり下敷きになったモノから順番に死んでいく。
「ッ!?テメェ!何しやがる!」
一本角の鬼が棍棒を持った鬼の頬を殴る。其れに蹌踉めいた鬼は怒りの形相を浮かべ睨み付ける。
「テメェこそ何しやがる!」
新たに現れた鬼に向かい棍棒を薙ぎ払う。強烈な打撃音が響くが鬼は一寸も動く事も無く受け止めた。
「私とやろうってのかい?」
「言っただろう弱者は死ぬのみ、死にたくなければ避けろと。俺が攻撃してもお前は死なん、他の奴等もお前の様に成れば解決だろう?」
「そんな事出来る訳がないだろう!」
「出来ぬ奴等が悪い。死ぬのが嫌なら此処に立たなければ良かったのだ。だが奴等は自らの足で此処に立ったのだ!死んでも良いとなァ!!」
「本気でそう思っていない奴もいた筈だろう!」
「お前は嘘が嫌いだったよなぁ?鬼に嘘を吐いたんだ、死んで当然だろう?」
「〜〜〜ッ!テメェ」
「四天王に選ばれたからって粋がんな。テメェの、いやテメェ等の事を認めていない奴等は幾らでも居るからなぁ精々口の利き方と背中には気を付けろよ〜?」
「…………如何いう意味だ」
「お前の所為で他の奴が不幸な目に合うかもしれねぇぜ?」
「テメェ!!」
棍棒を肩に担ぎ下衆な笑みを浮かべる鬼と其れに食って掛かる鬼。此奴等は相性が頗る悪い様だ。今の内に。
「嫌なら鬼らしく正々堂々戦ってみろ!」
「あぁ?鬼らしく〜?そんなもんじゃ飯は食えねぇんだよ」
「鬼の本分を忘れたか!」
まだ言い争っているのか。鬼たちの声を聞きながら彼方に行って此方に行ってなかなか宝物庫に辿り着けず仕方なく探しながらも高値で売れそうな物を風呂敷に包んでいく。
結果を言えば宝物庫は見つからなかった、俺が見逃しているだけであるのかもしれんがな。腹癒せに牢屋に閉じ込められていた人間やら妖怪やらを出してやった。
広場に戻れば戻ってくる頃には棍棒を使う鬼によって消え去った喧騒が戻っていた。鬼の姿も気配も感じず。背中の荷物の重さを感じどれ程の値になるのかと想像しながら道を進む。依然として敵味方と形振り構っていられないという馬鹿共が襲い掛かってくるが知った事かと迎え討つ、仲間だろうと邪魔するのなら其れは敵。
「死ねぇ!グギャァ!?」
「ヒャーハー!ヒャビャー!?」
「お前の命は此処でゴブァ!?」
一斉に襲い来る連中は面倒だ、逃げるに限る。まさか避けるとは考えていなかったのか三体が三様に床に頭から落ちている様はなかなか面白いが遊んでいる暇は無く次々に来る敵やら弾幕やらを避ける。出口に着いた頃には服も身体もボロボロだが何とか荷物だけは守った。
「オォウラァ!!」
「デリャァッ!!」
鬼が拳を合わせ爆発──。
──気絶していた様だ、目を覚ました俺の前にあったのは暗闇。
「此処は何処だ、重い!」
暗闇の中何かが伸し掛かる。体全体を押し潰さんばかりな何かに混乱した頭を一旦冷やし今は現状の確認だと何かを触ってみればボロボロと崩れていく。此の匂いに此の手触り、土だ。土が俺の上に伸し掛かっているのか。
一体全体何が如何すればこうなるのか、何があったか思い出そう。
「命辛々外に出て、ちょいと離れた所に先程の鬼が二体。戦いながら妖力を込めた拳をぶつけ合って」
そうだ、彼奴等がぶつかり合った所為で地盤ごと吹き飛ばされたのだと考え付いた。先程から何かがぶつかる音と揺れが酷いのだがまだ戦っていると?今度は死にかねん、さっさとずらかるかと音がしない方へ方へと掘り進んでいく。まるで土竜の様だ。
鬼同士で戦うとは、合わないのなら共に居なければ良いものを。そんな事をしているから侵入を許し仲間が殺され盗まれるのだ。鬼とは肉体だけではなく脳味噌まで筋肉で出来ていると聞くが其の通りなのかもしれんなと笑えない事を考えながらも掘り進む、吹き飛ばされただけなのだから地下に居る訳でない直ぐに出れるさと考えていれば目の前に光が。ほうら言ったじゃねぇか。
「んあ?土竜、いや土竜の妖怪かい?」
「僕は悪い土竜じゃないよー」
穴を抜けた光の先には少女が。だが見た目で侮る無かれ、其の身から溢れるは絶対強者の威圧感と膨大な妖力。頭から生えるは二本の角。鬼だ、鬼に出会ってしまった。何故気付かなかったのか、戦さ場に居る何百もの妖怪の力が混ざり満ちている為に存在に気付かなかったのか?いや注意深く探れば分かった筈だ、浮かれていたと言わざるを得ない。
「地上が煩くて何が起きているのか知りたくなったんだよー」
「うん?何って戦だけど?」
「危ないなー戻ろうかー」
ずりずりと後ろ向きの侭穴へと戻る。
「ちょっと待ちな」
頭に痛みが走り穴から出されてしまう、髪を掴んで引っ張るとは。
膝立ちに成った俺の顔をもう片方の手で固定し対面する。
「此の辺りに土竜妖怪が居るなんて聞いた覚えがないけど?」
「餌を求めて来たんだよー」
「本当かい?」
「餌の他にも珍しそうな物が欲しいよー」
鬼は嘘を嫌う、下手な事を言うと殺されてしまう。如何すれば良い?如何すれば此の危機を脱する事が出来る。
ドッと爆ぜる音が聞こえパラパラと土が降り掛かる、だがそんな事を気にしていられない。目の前で此方に疑いの目を向ける鬼が目下の障害なのだから。
「ふーん、まぁあんたは強そうじゃないから別に良いか」
髪と顔から手が離してくてくと何処かへと向かっていく鬼。良かった、本当に良かった。助かった。
此方に背を向ける鬼の後ろ姿が見えなくなる間で動く事は出来ず視界から消えた所で漸く荷物を背負い直し森へと走り去った。
場面切り替わり中…
「其れで如何だったんだい?」
「如何もこうもねぇ、彼奴の所為で折角の良い気分が萎えちまった」
「面白い奴は居なかったのかい?」
「……私が殴り飛ばした奴が居ただろう?」
「そんなの一々覚えてないよ。あの地面にメリ込んだ奴の事かい?一発で死んだじゃないか」
「彼奴と揉めた時に、其の場に居たんだ。見間違いだ、他人の空似だと思ったさ。だけど再度見て分かった。手加減したとはいえ死んだと思っていた、生きていても直ぐには動けないかもしれないと思った。なのにピンピンしていやがった、私の目を欺きやがったんだ」
「私は良くは見てなかったからどんな姿の奴なの?」
「えぇっと──」
「え?あっ……その、さ。言い出しにくいんだけど。其奴と会ったかもしれない」
「あんたに取られちまったか〜、騙されたからねぇ一発くれてやりたかったのに」
「御免、大した事ない有象無象だと思って逃しちゃった……」
「……」
「……」
「まさか鬼に正面切って嘘を吐く、然もあたしたちにだ!嘗められた?いや違うか。こりゃ一本取られちまったなぁ!!」
「自身を偽り相手を騙す、あたしら鬼は嘘が嫌いだ。だけど正面から仕掛けた其の気概、なかなかのものだ!」
「其れが出来たんだ、きっと力を隠していたんだろう。真正面からの殴り合いも好きだがこういうのも面白い!」
「また何時か、相見える其の時まで」
5901文字、普通だな。
暇潰しにパパッと書いて、終わり!なので見直しとかしてないゾ。