どっかに誤字があった筈だけどどこか忘れたゾ。
「『国を統べる王家の血を引く者と関わりを持っている』と声に出してみれば凄い事なのだが、これっぽっちも現実味がないのは何故だろうか」
「自分とは縁も所縁もない国の者なのに加えてパレード等で拝見出来る王族らしい姿を見ていないからなのでは」
いきなり王族だと話され信じる事は出来たのだが自分とは違う世界を生きる高い地位にいる者なのだと心の底から思えるかは話は別だ。頭では理解できるが其処まで。何を言いたいのかを表現する為の言葉が出て来ない自分が恨めしい。
「小父様、私小父様の事が知りたいです」
「わ、私も」
「いきなり如何したお前等」
おじさま……久し振りにそう言われ昔出会った娘の事が思い出される。彼奴は元気でやっているのだろうか。
ガキ共二人がそわそわとしているのに加え隣で歩く女も前を向きながらも此方に意識を向けている。仕方ねぇな。
「まぁ暇だから話してやっても良いが大した話の持ち合わせはないから期待はするな」
わーいと喜ぶ二人にそんなに暇を持て余していたのかと首を傾げる。
「昔の事だ、昔と言っても十年前くらい前の話をしてやろう。俺が住んでいた場所では死後死者は冥土と呼ばれる場所に辿り着き其処で生前の行いによって何処へと向かうのかを決められる。善行を積んできた者は輪廻の輪に戻り悪行を働いてきた者は地獄へ送られていく。生き物は死ぬとまた世界へと戻り何かしらの生き物に生まれ変わる、其れを永遠と繰り返す。簡単に説明したが其の繰り返しの事を輪廻と言う。地獄ってのはお前らが思い描いている様な恐ろしい場所で大体合っているだろう。恐ろしく行き着きたくない場所だ、悪人共が其処等中に転がっている」
だがそんな場所でも住めば都。どんなに過酷な環境だろうと適応出来れば何とかなると少しの間滞在した俺が言うのだから間違いない。酒も飯も娯楽も上手くやれば手に入る。地獄と呼ばれるがありゃ一種の更生施設だからな。良い女も居るし天国だ。
「何故そんな事を知っているのか?そういう風に話が伝わっているからなのもあるが、俺は一度だけ地獄に行った事があるから知っている。別に悪さして堕とされた訳じゃない。地獄に送られれば奇跡でも起きなきゃ地上へは帰ってこれないし輪廻の輪に帰る際に記憶も何も無くなっちまうからな。
何故地獄に行った事があるのか、其れは地獄で問題が起き其れに巻き込まれたからだ。
あ、もう一つ教えておこう。さっき冥土に辿り着き裁かれると言ったが冥土には輪廻やら地獄やらを管理する奴らが居る、閻魔と呼ばれる奴等だ」
閻魔は亡者を裁く、其の身に背負う罪と善を天秤で測り処罰を決定する。初めて会った時はどんな巨漢の化け物かと思ったがまさかあんな奴が閻魔をやっているとは思わなんだ。
「巻き込まれた?」
「あぁ、地獄で問題が起きた。地獄には罪人に罰を与え更生させる場所が幾つも存在する。其の内の一つである亡者を焼く為の灼熱の地獄の力が不安定になっているのか暑さが失われたり其の逆もあった。力を制御しようにも不安定である灼熱を如何ともし難いという事で鎮静化後に破棄、他に地獄を移すという事になった」
移転する作業と亡者たちへの対応で手一杯になっていた結果亡者と地上から追い出され地獄にやってきていた妖怪たちが暴れ出した。其れに加えて灼熱地獄も暴走を起こし危険な状態へ。
「地獄も冥土もあっちこっちでお祭り騒ぎ。冥土では管理者共が走り回り地獄では亡者と化物たちが暴れ回る」
そんな時だ、俺が巻き込まれたのは。
「地獄ってのはな?異界にあるんじゃなくて地下深くに存在してんだ。まぁ穴を掘っても辿り着けないような細工が施されているのだが。そんなある時灼熱地獄によって地下に溜まっていた水やら空気やらが地上まで押し上げられた。其の威力は計り知れない程の力で地上と地下の行き来を遮る力が役に立たず通過を許した程だ。大量の水は熱湯となり地上に飛び出した。俺の所では間欠泉と呼ばれるものだ」
勢いよく吹き出す湯に人々だけではなく妖怪たちも異変が起きていると察し物好き以外近付こうとしなかった。
「そんな物好きの一人である俺はどんなものなのかと気になってしまってな、ついつい近くまで寄ってしまった。面倒な事に巻き込まれ易い体質故に近付き過ぎれば異変に巻き込まれると分かっていたからな、湯の柱の元には近付かずに離れた場所にやってきた。だが理不尽というのは突拍子も無い所からやってくるのだと身を以て体験しているのだから近付く事なく家で過ごすべきだと其の時に気付くべきであった」
警戒心が好奇心に負けた結果、異変に巻き込まれる事になった。
「地面に亀裂が入ったと気付いた時には手遅れ。地が裂け其の中へと落ちていった」
落ちていく際何故飛ぼうとしなかったのか。あの時錯乱せず冷静に対処出来ていれば何とかなったかもしれない。
「岩肌に叩きつけられ上から降ってくる岩がぶつかってきた痛みで意識が朦朧としてきた所で広い空間に飛び出し地へと叩きつけられた。其の先で待っていたのは、まぁ話の流れから分かるだろうが地獄だった。何処も彼処もどんちゃん騒ぎを起こしていてな、何処だ此処はと呆然としていた時に地獄の者たちに襲われた」
理由は何だったか。確か『見た事もない奴がいる、きっと冥府の奴だ』だったか。見当違いも甚だしい。寝言は閻魔に罰せられてから言え。
多勢に無勢。しかも地獄の亡者と極悪妖怪共だ、捕まれば何をされるか分からない。逃げるしかない。
「小父様も大変な目に遭っていたのですね」
「覚えておくと良い、生きていれば大変な目に遭ってしまうものだ。俺は他より遭い易いのだがな。続きを話そう。何処に向かうのか、何処へ向かっているのかも分からずに逃げて逃げて逃げ続けた。どのくらい経ったか定かではないが撒く事が出来た俺は岩山に隠れていた。乱れる息を整えていた時複数の足音と話し声を聞いて追手かと思ったのだがな──」
男妖昔話中……
「──奴は確かに言った、勝ったと」
『勝てる』という不確定なものではなく『勝った』と。勝敗が決まっていないというのにまるで自分の言葉は神や閻魔でさえ賛同するだろうと言わんばかりに言い切った。
「見くだしていやがるとむっとした俺は取り敢えず立ち上がって武器を拾って攻撃でもしようかと考えた。だが身体はボロボロで上手く動かず一つの動作を行うにも四苦八苦した。だが長ったらしい下らない口上をべらべらと一人で喚いている奴は気付く事はなかった」
体の内に残っているなけなしの妖力を振り絞り全力で地を踏みしめ砕け荒れた大地を駆け抜ける。懐に飛び込んだ時になって漸く気付き振り向いた其奴は驚いた顔をしているから笑ってやった。
「鞘から抜き放たれた刃が棒立ちの阿呆を斜めに斬り裂き、真っ赤な血と鉄の欠片が宙を舞った。斜めに振り上げられた刀は酷使し続けた事で限界を迎え砕け散ってしまった。其れを横目で見ながら手の中に残っていた柄を放り捨て斬られた事で仰け反る其奴を蹴り飛ばした。今度は地面に転がった其奴に馬乗りになり殴り続けた」
殴って殴って殴って殴って、其奴が抵抗しなくなるまで只管殴り続けた。こんな程度じゃ死なないと分かっていたので遠慮無しにやってやった。
「流石にやり過ぎでは?」
「奴は人間とは違うんだぞ?如何にかしなければ此方が殺されちまう。ただ気絶させただけなんだ、此れでも優しい方だ。まぁ自分でも少しやり過ぎたかとは思ったさ、ほんの少しだけだがな」
「それで、どうなったのかしら?」
其れで?成り行きとはいえまさかこんな事になるとは思っていなかったからな、冥土の奴らに経緯を話し匿ってくれと頼み込んだらすんなりと要求が通った。傷の事もあり長々と過ごしてしまったが今思えば豪勢な飯が出てきていたが軟禁状態だったなあれは。十日位経った頃大きな傷もある程度塞がったからそろそろ地上へはあとどの位で帰れそうかと聞けば直ぐに帰された。説明を要求したが簡単に起こった事を説明され結構な量の金を渡されて終わった。
「反乱分子の鎮圧及び地獄の移転作業の完了、貢献者へと閻魔様の代わりに礼を。とか言われたが何が如何成ればあれ程の騒乱が収まるのか理解に苦しむ 」
何故か俺が其の二つを成功させた貢献者だとかで金を貰ったが内心出自が分からない物はあまり持っていたくない。だから一晩で使い切ってやった。少し位残しても良かったのだが綺麗な姉ちゃんがいるとホイホイ付いて行ったら何時の間にか有り金全部使い切っていた。記憶が定かでは無いが店の酒を飲み尽くさん勢いで飲んでいたのだけは覚えている。
「分からず終いだった。『もっと何かあるだろう』と思っているだろうが俺は此れしか知らん。詳細を説明されずにさっさと帰されたからよう分からん」
「話の展開が斜め上に行っていて突拍子の無い事だらけ。貴方の事を知らない者からすれば到底信じられない御伽噺でしょうね」
其れはつまり知り合ったお前らは信じてくれるという事で良いんだよな?だが御伽噺の様な世界の住人が何を言っているのだろうか。いや俺も何も知らない人間からすれば十分空想の存在に成り果てているのだが。
「だが全て現実に存在し起こっている事なのだ」
「本当の事なのだと、貴方が体験したのだとは信じていますよ」
だがな、と付け足す騎士。あぁやっぱり気になるよなそんな魑魅魍魎が跋扈する世界から来たのだから
「貴方は何者なのでしょうか?別の世界から来た漂流者なのは分かりました。ですが経緯が分かっても貴方がどの様な存在なのかが分からない。化物が跋扈する世界から来たと言っていました。そんな世界から来たのだから貴方も其のような存在だという可能性があります」
此の世界にも化け物やら神やらがいると聞き会話をしている相手は人型の化け物なのではと最初に考えたのは俺なのだがな。
「別段隠す様な事ではないから教えてやっても良いが、其れを知った時お前等はどうするつもりだ?俺を警戒するのか?敵対するのか?一度顔を合わせ同じ釜の飯を食った間柄のお前等とは戦いたくはないのだがな」
「あ、いえそういう訳じゃない!勘違いしないでくれ!」
両手を振りあたふたと謝罪し始める騎士。では何故知りたい。
「いやな、此の世界には他種族に排他的な国もあるからな。先にどんな種族なのかを知っておく事で後々面倒事に巻き込まれた際に対応し易くなるのではないかと思ったのが一つ。二つ目は弱点だ」
「弱点?」
「もし戦闘になった際に苦手とする攻撃をされたり物を用意された際に私が対処に回れるからな。先に知っておこうかと……」
あぁそういう事か。不安そうな顔で言われちゃ教えるしかなくなる。此方を心配して言ってくれているのだから応えるしかない。
「貴方が言いたくないと言うのなら無理には聞きません」
「いや、大丈夫だ」
さて、何を話そうか。話す事があまり無いから話せる事は全部答えてしまっても良いか、どうせ元の世界に帰るのだから教えてしまっても問題は無いだろう。他の者には出来れば教えてほしく無いと釘を刺しておけば良い。
「小父様は人間じゃないの?」
いざ話そうとすれば今まで蚊帳の外に居たガキの片割れが聞いてくる。人間以外は嫌いなのかと思ったがそんな表情はしていないから違うだろう。
「あぁそうだ。嫌か?」
「嫌じゃない!小父様が他の種族でも小父様は小父様でしょ?」
こういった奴が上に立つ事で良い国になるのだろうな。だが悲しいかなそうは問屋が卸さないのが世の常、ずる賢い連中が家臣の中に必ず存在している。
「小父様?」
取り敢えずガキ共の頭を撫でてやる。
「それじゃあ話してやろう。俺は人間じゃない、妖怪だ」
「ヨウカイ?聞いた事のない種族だ」
「世界の作りが違うから此の世界には居ないのかもしれん。妖怪と言っても其の種類は様々だ。妖怪の中にも複数の種族がいる」
どういう事だと見つめてくる女騎士、頭に疑問符を浮かべるガキ。面倒だがきちんと伝えなければ分からんか。
「分からん様だから説明しておくぞ。妖怪というのは人間が生み出した存在だ。魔法やら何やらで生み出した訳じゃないからな?」
女騎士まで疑問符を浮かべ出したから簡単にだが説明しとくか。
「真夜中だ、部屋を出て暗い廊下を歩いている時何も見えない暗闇が広がっていたとする。其の先には何者もいないただの廊下だ。其の時自分が其の場にいたらどんな事を思う?ガキ一号答えてみろ」
「ガキ一号?私の名前は──」
「──残念時間切れだ。其れじゃあガキ二号答えてみろ」
「わ、私?えぇっと……怖いわ、暗い所は」
「そうか。お前は?」
「私か?まぁ何も居ないのは分かっていても暗闇というのは恐怖心を煽る」
「そうだ。人間もそうだが他に生きている生物の大半が恐怖という感情を持っているのだろう。そういった恐怖、畏怖の感情によって妖怪は生まれる」
いきなりの事で呆然と立ち止まられちゃ話も歩みも進まない。
「人間は色んな物に恐怖する。物に、音に、光に、大地に、空に、風に、暗闇に。自分たちでは原理が分からぬ未知の存在全てに恐怖する。だからこそ多種多様な妖怪が存在している。まぁ長い年月を生き続けた結果妖怪へと至るモノもいる」
風や炎、自然の妖怪。猫や狐、動物の妖怪。食器や武器、道具の妖怪。物や者だけではなく山彦や暗闇などの現象に関する奴らまでいる。
「まぁそんな奴らの一人、いや人間じゃないから一体か。そんな一体が此の俺だ。こんな話をしたが俺の事が怖くなったか?」
簡単に説明しようと思っていたが思っているよりも長くなってしまった。俺の問いにふるふると首を振るうガキ二人の頭を再度撫でてやる。さてお前はどうなんだ。
「私は、いや私も恐ろしくは感じない。其方の世界の人間が何かに恐怖した事でお前が生まれたのだな?」
「あぁそうだ」
「そうならば恐れる必要は無い」
理由が聞きたいのだが。
「理由か?簡単な事だ。恐れられたのは他のものであって其れによって生み出されたお前ではない。ならば恐れる必要はない」
畏怖から生み出されたモノにも恐れられたものの特性が現れるのだがな。まぁ空気の読めない事はしないが。
「お前等ありがとよ」
「貴方は何の妖怪なのですか?」
妖怪なのは分かったがどんな妖怪なのか、知りたくなるのは当たり前。だがな。
「何の妖怪かだぁ?俺が逆に知りたいくらいだ。まぁ些細な事だから其処まで興味はないが」
昔の記憶も曖昧な為に自らの生まれがどんなものだったのか、何処で生まれたのかが如何にも思い出せないのだから仕方ない。
「何時の間にやら俺という世界に存在していたからな。分からんものは分からんのだ。すまんな」
「いえ、大丈夫です」
「弱点という弱点がないから戦いの際にも抑えられる事はないから安心しろ。まぁ弱点として上げるなら一つだけあるか」
「あるのか?念の為に教えてもらって良いか?」
真剣な顔に成り一字一句聞き逃さない様にしてくれるのはありがたいのだが。そんなに大したことではない。
「強いているのなら『弱い』というのが俺の弱点か」
「弱い?」
人間よりかは力もあるし能力も持っている。武器はある程度使えるし戦い方もある程度知っている。だが其れだけだ。其れだけしか俺は持っていない。
「強力無比な肉体を持っている訳ではない、才能も無い。ちょいと強い程度だ。だから腕を磨き肉体を鍛え上げた人間に簡単に屈する。あ、俺が弱いだけであって妖怪全体の強さが低い訳じゃないからな。無闇矢鱈に戦うなよ」
「分かった」
弱い事が弱点だと言い人間にも負けるとは言ったが絶対無敵の化物なんて存在しないのだ、他の妖怪も人間に敗れるのだから俺が他より断然弱い訳ではない。其処等の人間が束になっても打ち返してやる。
「強くないとは言ったが戦い方は知っているから心配すんな。というよりか俺は自分の事で手一杯だから自分の事だけ気を付けていろ」
他に何かないかと聞いたが返ってきたのは昔話を聞かせてくれという催促と特に無いという返事だけだった。そんなに俺の話を聞きたいか?
「小父様のお話は面白いわ」
「そうそう」
分かった分かった。服を引っ張る生地が伸びる。地の底の話をしたのだから今度は其の逆に位置する場所の話をしようか。
「次は彼処に行った時の話をしてやろう」
「?」
「何処ですか?」
「空を指差して如何した。飛んでいる鳥しか見えんが。まさか先は地獄の話だから今度は天国とでも言いたいのか?先程の話では輪廻と地獄しか出てこなかったからてっきり天国は存在しないのではと思っていたのだが」
天国の事を話しに話に出してはいないが存在している。しかも複数。伝説やら神話の数だけ世界は存在するのだからな。
「いや天国とか浄土とか極楽とかには行った事はない。そんなに簡単に死後の世界へ行ったり来たりを繰り返すのは如何なんだ」
頭にまた疑問符を浮かべる三人には当ててもらうまでは話はしない。手掛かりはもう既に見えているのだからな。
「ヒントはやはり先程の指先なのだろう。空……天……浮遊大陸か?」
違う。浮遊大陸というものがあるのか。天界やらは知っていたが。
「太陽?」
其れも違う。太陽には行かない方が良いぞ?近付いただけで死ぬからな。蝋で翼を作り太陽に飛び立った男が居たのだがな、太陽によって翼を溶かされてしまい地に落ちて死んでしまったという話があるくらいだ
「うーん……」
案外出ないものだな。簡単に出てくるものだと思っていたのだが。
「それじゃあ、お星様?」
惜しい。
「月!月でしょ!」
正解だ。やっと出てきたか。
「やったぁ!」
「ガキ二号には景品として頭を撫でてやる。俺は滅多にこんな事はしない、ありがたく思え」
偉いぞー良くやったぞー、っと褒めながら撫でてやる。
「一応王族の者だからな?」
煩い。俺はお前等の国の者じゃないから良いのだ。
「むー」
「そう剥くれるな、話してやるから。結構長くなるがまだ着きそうにないから話に飽きても聞かせ続けてやる」
あれは数百年前の事だ。理由は分からないが妖怪の賢者が腕に自信があるモノ、名声を手にしようとするモノ!ただ単に暴れたいモノ、破落戸。色んな所から色んな奴等を集めていた。そんな奴等を集めてるんだ呼び掛けを受けた奴は十中八九何処かに喧嘩を売るのだと思っただろうな。俺か?俺はそんなに集めてるんだ、戦争だと思ったさ。名が知れ渡っている連中だけではなく無名の下級妖怪の元にまで態々使いを寄越してきたからなこりゃデカい戦だと焦った。
「其れで戦いに参加したと?」
「いや、まぁそうなんだがな。何も最初から戦おうと考えていた訳じゃない。戦争なんか命が幾つ有っても足りはしないと断ったのだが有無を言わさぬ威圧に屈してしまいほいほいと連れて行かれてしまった」
報酬が出ると言われたからまぁ適当に頑張って危なくなったらトンズラするかと考えていたのだが、そうはいかなくなった。
「良かったが場所が場所だけに逃げる事が出来なくなった」
「其の場所が月だと?」
「あぁ、信じられない話だろう?俺も月に行く事を伝えられていれば何を馬鹿なと思っただろう」
そんなこんなで賢者の力で俺たちは戦さ場に送られ其処は月だったと。
驚きで固まってしまった俺たちは後からやってきた賢者の指示で月の都に攻撃を仕掛けた。だが月には兎しか居ないとばかりに思っていたが人間が住んでいるとは。そして戦いの火蓋は切って落とされた。
「月にも人間が居たとは」
「本当に其れは驚いた。月に着いてから驚きの連続だが更に驚く事が立て続けに起こる」
都の方から何かが飛び立った。光と煙の尾を引いて空へと向かって飛んでいった物は巨大な柱だった。柱は煙の放物線を空に描き俺たちの頭の上に落ちてきた。
「途中であれは危険だと判断したのが居たんだろうな、向かってくる柱に攻撃を仕掛けた。硬い音を鳴らして柱の表面が砕けた」
すると如何だ、覆っていた壁が無くなった事で其の中身が溢れ出した。柱の中から何千何万という小さな柱が出てきた。
「小さいと言っても最初の柱が大き過ぎたからそう見えるだけであって俺位の大きさはあったな」
「それでそれで?」
「それからそれから?」
「急かすな」
デカい柱と同じ様に炎を発し煙の尾を作りながら真っ直ぐに俺たちに飛んできていた。まるで一体一体の位置を正確に把握し的確に狙っているような動きで。
「いや、まるでじゃない。本当にそうだったのだから」
「追尾式の攻撃だと?」
「そうだ。宙へと撒き散らされた筒は一瞬あらぬ方向に進んだと思った次の瞬間には地上にいた奴等に向かって飛んできた。先程と同じ様に迎撃しようと攻撃を放つが今度は前の様にはいかず此方の攻撃が無かったかの様に飛び続けた」
鬼ごっこの始まりだ。明らかに危険な物だと皆理解し逃げ始めた。中にはトロい奴もいたからなそういう奴から最初の犠牲になった。
「筒に追い付かれた奴がいた、逃げる其の背にドンとぶつかった瞬間にドーンと派手な爆発音を立てて爆炎と煙が広がった。其れからだ、次々と爆発が起こり出したのは」
足の遅いモノ、逃げるのが遅れたモノたちが爆発に飲み込まれ消されていった。一方的な虐殺が行われ一体、また一体と一緒に来た奴等が殺されていく状況に混乱し思考も定まらなった奴等も同じ様に死んだ。
「どれ程の時が経ったか、弱いモノから死んでいった事で残っているのは其れより強いモノたちだった。当然俺も其の中にいた。爆発音は断続的になり始めた頃になり変化が訪れた。今迄追い付き爆発していた筒が追尾している其の途中、空中で爆発したのだ」
そして訪れる歓声に思わず止まり掛けた。逃げながらも何か解決策でも見つかり歓喜する連中に近付き並走しながらどうしたのかと聞けば。
「『生半可な攻撃が効かないだけで攻撃自体は通る』と言われたのだ」
「強い攻撃なら効くと?」
「あぁ。此方からの攻撃が激しくなり撃ち落とされる始めた。強力な一撃で破壊され集中砲火を浴び破壊され最後の筒を破壊し終わり一旦戦闘が終わった」
爆発で空いた穴の中で息を整えていた俺の目の前の空間が裂け其処から出て来たのは妖怪たちであった。第二軍と自分たちの事を呼ぶ連中は俺たちに向かい『其処其処生きてんな』と言った。
「俺たちはどんな攻撃をされるか知る為の先遣隊だったらしいな。其奴等曰く『まだ他にもいる』と言われたのでな憤りこそしたが何も言わなかった」
「どうして?」
「此奴等も次の奴等の為の調査用の餌だと其の言葉から分かったからだ。其奴も其の事に気付いていながらも其れ以上何も言わなかったのだから俺が喚いても馬鹿なだけだ。無駄に体力を削るのも馬鹿らしい」
俺は、俺たちは生きて帰れないかもしれんと絶望のどん底に叩きつけられた。だが此処で嘆いていても始まらないとなけなしのやる気を振り絞り立ち上がった、立ち上がるしかなかった──。
男妖昔話中…
「小父様もっとお話しして〜」
「まだ聞き足りないのか?話し続けて此方は舌の根が乾いてしまったぞ」
騙し奇襲し敵前逃亡も何の其の。確かに面白い所も有るには有ったが好き好んで聴きたいと思う程のものだろうか。
「森を抜ければ直ぐに着くと言われたがどの位の距離なのか知っているか?」
「いえ知りません。近くとしか」
「簡単に抜けられると言われた森ですら未だ続いているのだ、近くというのも期待しないでおくべきか」
歩き始めて歩き始めてどれ程の時間が経ったのか、未だ森の中を歩き続ける俺たち。暇を持て余すガキ共に長々と昔話をしてやり分からない所を教えながら話した事で更に長くなった話を終えても森を抜ける事はなかった。疲れたというガキ二号を肩車してやりもう片方を片手で抱え歩いているのだが此奴等軽いな。ガキなのもあるのだろうが軽い軽い、二人乗っても全く重く感じない。
「今日も野宿か」
「今度は私も見張りに入ります」
「いや俺だけで良い。そんな見るからに重そうなもん着込んで歩いてんだしっかり飯食って寝ろ」
もしもの際に動けませんじゃ俺が困る。此奴の方に行ってた敵が此方に来たら余計に手間取る。
ぐだぐだと何か言ってくる女を無視してガキ共の要望に応えてやる。今度はどんな話をするか。
「俺が話したんだ、今度はお前等の事を話せ」
「私たち?」
お前等が体験した事でなくても良い。此の世界の事でも良いから何か話せ。
「うーん神様の事とか?」
「何をしたのか位は聞いているがどの様な姿なのかどの様な性格をしているのか等は知らんからな。其れで良い」
「それじゃあ話しますね」
腕の中に収まるガキ一号が話し始めたのか此の世界の神について。
「神様はそれはそれは美しい女性なのだと言われていて彼女を崇め敬う事を絶対の至福だと言い毎日祈りを捧げる宗教は幾つも存在しその数は三十を超えるとも」
同一の神を崇めているのに複数存在している、俺の世界にもそういった事はあったが三十はなかった。
「世界が出来た最初期に知恵を持つ生物が少なかったから宗教なんて一つしかなかった、十分に機能もしてない程に小さかった。だけど時間が経つに連れ、種族が増えるに連れて次々に増えていった」
種族が違えば習慣も教えも変わる。離れた土地に広まれば同じ種族でも異なる考えが出来る。繁栄し増え続けた結果が此れだ。
「同じ神を崇めるのは変わりない、だけど中には危険な考えを持ったものもある。私たちが生まれた国のある土地では確認できなかったけど此の大陸にはあるみたいなの」
『神への生贄として異教徒や他種族を殺す』事を旨とする頭の可笑しな連中がおり、他にも異教徒他種族に排他的なものまで存在すると?そういった奴等は人間だけでなく他の種族にもあり排他的な教徒同士の抗争は国同士の戦争の何倍も多く起こっているそうな。いやぁ俺には住み難い世界な様だ。
「話は戻るけど。神様はね、何でも出来るらしいの。世界を創り生命を生み出したんだもん色んな事が出来るんでしょうね」
「其れは凄い」
「神様に直接会ったのは一度きり。産まれて間もない頃だから覚えていないけどね。温厚な性格をしていて住人一人一人に加護を与えてくださるとても優しい方だと言われているわ。だけど加護の事は分からないは、昔の御先祖様が言い出した事らしいから」
加護云々は興味は無いが性格については有る。正に女神、と言われる程の女神像だ。もしかしたら事情を話せば直ぐにでも返してくれるやもしれん。逆に此の世界に存在してはいけないと消されるかもしれんが慈悲深い神ならば助けてくれる筈。
「神様について知っているのは此のくらいよ。でも直ぐに終わってしまったわね」
「それじゃあ今度は私!」
上目遣いで困った様な顔をするガキ一号に気にするなと声を掛ける暇も無く頭に陣取るガキ二号が声を上げる。
「何を話せばいい?」
「何か話したかったから名乗り出たのではないのか。其れに俺に言われても困る」
「でもでもお姉ちゃんみたいに話したい!」
頭の上で叫ぶな落とすぞ。其れじゃあ先程話に出た他種族とやらについて話せ。
「他の種族?妖精族にアンデッド族に魚人族に獣人族に竜人族に、後は天使様!」
「元気に言ってくれるのは良いのだが一つ一つ細かく詳しく教えてくれるとありがたいのだが」
「そうなの?分かった。最初に言った妖精族っていうのは妖精さんたちの事なんだよ」
「もっと細かくだ」
王女説明中…
王族の出とは名ばかりではなく其れ相応の教育はされている様で色々と情報が出てきた。出てきたは良いがまだ子供、良く話すが内容が薄い。という事で女騎士に視線を飛ばせばガキ二号の説明が途切れる所で空かさず一言挟み込み話を補強してくれた。
「族とは似た様な奴等を一纏めにしただけで其れから更に細かく分けたのが属と呼ばれるのか。全て覚えるのが億劫になる」
「一人しか存在しない種族が存在している貴方の世界も大概でしょう、物まで変化し意思を持つのですから」
外部から特別な術を使われずに時間の経過によって生まれる事は此方の世界ではないのだろうか。土地が変われば方も変わる、世界が変われば法則も変わるか。
「だが美男美女しかいないとは。是非エルフの国に行きたいものだ」
「下心が見え透いているぞ」
「「人間は嫌?」」
下心の何が悪い。欲が無ければ、欲を満たせない世界等何とつまらん世界な事か。後ガキ共、俺は別にエルフだから人間だからと差別はしない妖怪だ。区別はするが。だから心配するな。其れにお前等もなかなかなものだ、美女と美少女二人。良く逃げ切れたなと思う組み合わせだ。
「む、嫌な感じがしました」
「寒気でもしたんだろ。やはり体調が万全ではない、今日もゆっくり休め」
「わ、私は「煩い黙れ。喋るのならお前も何か話せ」むぅ、分かった」
親切は素直に受け取れ、だが貰う相手は選べよ。
「種族も神についても話されてしまったが他に聞きたい事はあるのか?」
「お前自身の事でも良いが、此処は技術について話してもらおうか」
「技術?」
昨日の猪の猪の様な存在や神やらエルフやらが居るのだ、特別な技術がある筈だ。現に俺は見た事があり話にも出てきている。どの様な力があるのかを知っておけば警戒し易くなる。
「技術とは魔法の事で良いのだろうか」
「其れだ。俺の世界にも魔法やら魔術やら妖術があったが此の世界のものと同じか分からないからな、知っておいて損は無い」
知っておいて損は無いが俺の世界のものと同じなら多種多様な攻撃を想定しなければならず初見は厳しくなるだろう。
「呼び名は種族によって異なりますが私たち人間属は魔法と呼んでいるものがあります。火や水などの複数の属性があり系統毎に分けられています。子供は生まれてから十年目の春に得意な属性不得意な属性を調べられる。此の世には魔力が満ち溢れており空気中に存在する魔力と体の内で生成される魔力を使う事で魔法を発動できる。魔力を糧として世界に生み出される神秘、其れが魔法」
「簡単に纏めると、色んな系統があって体の中と外にある力を消費して生み出す技術が魔法。話が長い」
「……ええ、そうですね」
ぶすっと不貞腐れる女騎士は放置し思考を巡らす。やはり似た様なものであった。相手がどの様な魔法を使うか戦う前に判断出来るのか、詠唱は存在するのか、此処の所を聞いていこう。
まだ日は頂点にも達していない。変なのに絡まれる前に、街に着く前に一般常識は知っておかなければ。
12210文字。普通だな!
なんでおまけの方が筆が進むのか、理解に苦しむね(ペチペチ)
主人公の昔話はあくまで主人公視点であり子供に聞かせる事を前提にしているので表現を変えて話しているし大事な所とか省いてる。そんな設定。
【補足】
「主人公が猪の事を妖怪と言っている」
人外は大抵妖怪な日本生まれの日本育ちだからね。
妖精とかそういった生物以外は妖怪判定。
「自分がどんな種族かも知らないの?」
知りません、初めから理性も知能もないナニカから成長したから。
「妖怪ってこうやって生まれるの?」
知らん。香霖堂かなんかで昔こんな設定を見た気がするから。
「話ばっかじゃねぇかお前んちぃ」
お兄さん許して!話が浮かばなぁい!
「主人公って強いの?」
強くはないです。
「話の展開に無理やり感がある」
ご都合主義にはならない様にしたい。だけどそれが出来るほど頭良くないから。
「面倒事を嫌がる主人公が何故面倒の匂いがする三人と一緒に?」
面倒ごとを避ける事云々言ってるけど詰めが甘い、徹底していない。他人を簡単に見捨てる事が出来ないグダグダな奴。だけど偶に酷い。みたいなキャラにしたい。