有象無象妖怪譚   作:命楼

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一ヶ月ぶりの投稿です。再開したのは良いけど最初の頃書きたかったものが書けているのかと考えると思っていたものとは違っている、何処に向かっているのかこれもうわかんねぇな。


第七話【仏も何時かは怒る、故に怒っても良い】

「品書きに載っている料理名が百を超えていたのだが外の世界ではこれが当たり前なのだろうか。いや流石にそれはない筈だ」

「いきなりどうしましたか?自分で問い掛け自分で返して」

 

 料理の数が多いという事は其れ相応の欠点、不利益が生じる。色々と理由は思い付くが、『店の中にいる客全員が別々の料理を注文すればどうなるか』と想定しよう。そうなれば注文の料理を作るには時間が掛かるだろう、一つ一つ作るには人手もいる。料理の数が多ければ多い程負担となってしまう。

 逆に料理の種類が少なければ、料理の系統が一つだけならばどうなるだろうか。系統が同じなら複数の料理を記憶しなくて済む。注文が被れば一度に纏めて作る事ができる。品数が少ない事で人手が少なくとも対応でき、負担が少ない分が利益となる。

 『ある程度人の出入りが多い店なら大変だろうと分かるが其処まで客が来ない店ならば品数が多くとも平気なのでは』と考えているモノもいるだろう。しかし其の様な店なら利益が少ない故に多くの食材を確保する事はない。種類を少なくし纏めて仕入れる筈。そうなれば必然的に品数は減る。

 

「店を回す為には料理の種類が多いのは良くないと言いたいんですか。しかし料理の数やら人手云々長々と説明していましたが何故あの店の品数が多いのかという本題に触れていないんですよね。考えている事が擦れていると言うか何と言うか。飲兵衛は所詮飲兵衛ですね」

 

 多い理由?どうせ幾つもの国の料理を揃えた結果あれ程の数になったのだろう。俺の頭で考える事ができるのは此処までが限界の様だ、此処で止めておこうと思う。それに面倒になってきた。後の事は他の奴等が考えるだろう。いやもう答えは出ているかもしれん。

 しかし自分の頭の程度が低いのは分かっていたがまぁ遠慮も無く言ってくれるものだ。妖怪とは精神的な攻撃に弱いというのに。

 

「この程度でやられる程柔では生きていけませんよ、産まれたての子犬じゃないんですから」

 

 御尤もな考えで御座います。

 

 需要と供給について考えてもさっぱり分からん。参考書とやらを読んだ事があるが良く分からない単語が多く分からなかった。

 分からないという事が分かる事を無知の知と言うらしいが人間もなかなか考えるものだ。真の知に到達する為の出発点、自らが何も知らないという事を理解する事が重要であるという。まぁ公で自らが無知を晒すのは嫌だがな。

 

「そう言うことでは、いえなんでもないです。買い物も済ませましたし、これからどうしますか?」

 

 恐らく自分から話し出したのに面倒になったから止めるのか、とか私には無知を晒しても良いのか、とでも考えているのだろう。面倒事はできるだけ避けるのが良い。無知を晒す事についてはこれから一つ屋根の下で暮らすのだから取り繕うとも時が過ぎれば自然と襤褸が出て知られてしまう。

 

「そうか、そうだな。此方にもう用はない。お前は?」

「私の方は特にないですね」

 

 既に昼を済ませ店から少し離れた場所におりもう用はないかと話し合っている。変なのに絡まれるのも面倒だ、さっさと帰りたい。

 背中の背負子を肩に掛け直し帰るかと言えば同じ様に背負い直す居候を見て門に向かって歩き出す。

 

「いやぁ今日は運が良い。食糧を買い込む事ができた、其れも安くだ。美味い飯も食えたのだこれで面倒事が起きなければもう何も言う事はない。後、酒を呑めれば良い」

「これからは呑む量を管理させてもらいますからね」

 

 そんな事を前にも言っていた気がするが守る意思など皆無である。細く長く生きるよりも太く短く生きていく方が性に合っている。

 しかし店の中は洒落た店だった。見た事のない装飾が飾られ異国の料理が合わさり此処最近感じる事のなかった新鮮味とやらを感じる事ができた。料理もなかなかに美味く至福の一時であったのは言うまでもない。

 

「そうですね、これで何事もなく無事に帰れればいいですね。何も起こらず帰れれば」

「何故同じ事を二度言ったのか。大事な事ではあるが」

「大事な事なので二回言ったんですよ。あぁ、そういえば気付いていましたか?」

 

 どうしたいきなり。何に気付いたと言うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「買い物を始めた頃から付けられている事を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「態と触れなかった事を…」

 

 そんな事は買い込んでいる途中から気付いている。買い物をしている際や食事を摂っている最中にも見られていては気が休まる事など出来る訳がない。

 辟易とした気分になる今日この頃。無事に帰る事はできるのであろうか。

 

「しかし妙ですね、監視するにしては私たちに気付かれてしまっていますし。私を追ってきた天狗なら簡単には気取られる様な事はしないでしょう。人間だとすれば何故監視するのか疑問が出ます。私や他の天狗は知っている範囲でですが人里の人間には何もしていません。貴方と接する人間の反応からして貴方と人間との間に何かしらの因縁があるとも考えにくい」

「彼奴等だけがそうであっただけで他の人間には良く思われていないかもしれんだろう。妖怪に対して排他的な人間かもしれん。色々な可能性があるが、どうする?このまま帰っても付けられたままだと俺の家で生活しているのかばれる」

 

 天狗ってのは幾つもある勢力の中でも上にいる奴等だ。高い社会性と硬い仲間意識があるというだけではなく天狗という種族そのものが強いからである。隣の奴なら兎も角俺じゃあ撒く事はできん。

 だが相手が人間にしろ天狗にしろ何者なのかを知っておきたいところ。

 

「何者か判断したいのなら一度人里から離れてみてはどうですかね。隠れる物がないですから何者なのか分かりますわ」

 

 相手がどんな奴なのか確かめたいのだが此処では分からない。ならば外に出れば良い、付けてくるというのなら同じ様に出て来なければならない。何者なのか分かるだろう。

 此処では決まりが二つある。

 一つ、人里では人間を襲ってはならない。

 二つ、人里で暴れてはならない。

 二つ目は緊急の事態や一部を除いた場合である。この二つの決まりは簡単に破れるものではない。此処を創り上げたあの賢者が絶対厳守と定めたのだから破ろうとすら思わないだろう。偶に馬鹿が馬鹿な事をしでかす事はあるのだがな。

 だが裏を返せば人里から出れば此の決まりは適応されないという事でもある。一歩でも出てしまい喰われたとしても自業自得なのはガキでも分かる単純明快な話だ。

 この決まりがある以上人間なら外には着いて来ないだろう。着いて来ても隣の奴一人で十分対処できる。もし天狗なら俺は助からないだろう、命乞いが通じれば話は別だが。

 

「お前の力で何とかならないのか?別に攻撃しろとかではなく相手がどんな奴なのか複数いるのか、そういった事は分からないのか?」

「能力を使って確かめようとはしているのですが、上手くいっていません。建物の後ろに隠れられては私の能力は無意味」

 

 どれだけ離れていようとも隠れていなければ捕捉できるのに、と俺に言われても困る。遠くまで見通す程度の能力かそれに近い能力なのだろうとは分かったがその力をどの様に使えば良いのかさっぱり思いつかん。

 

「作戦も何も思いつかん、此処にいれば安全だとは思うが絶対にないとは言い切れん。出ても何かしらしてくるだろうし。ぼーっと突っ立ってるのもなんだ、これから適当に人里を回る。その間特定できる様に頑張れ、以上」

「以上って、ちょっと待ってくださいよ!」

 

 あぁ面倒だ億劫だ憂鬱だ。対策を立てなければならないのにどうすれば良いのか浮かばない、相手が何処のモノなのかすら分からずどれ程いるのかも定かではない。

 

 あぁ面倒だ億劫だ憂鬱だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「其れで何か分かったか」

「いえ何も、分からない事だけは分かりましたが」

「無知の知、此処まで思考が分かるのは流石に異常。よってお前はサトリ妖怪である、証明終了」

 

 気配を消すのが下手な癖になかなか尻尾を出さない相手に更に苛立ちが募る。依然正体は分からず気配は着いてくる。

 付けているのだと分かる様に気配を消さないのか。大した事のないモノだと思わせる為なのか他にいる仲間の存在を悟らせない為のものなのか。いや本当に大した事のない自分の存在を偽装する為の二重の罠なのでは。いや本当に気配の消し方も分からない大した事のないモノなのかもしれない。

 ああでもないこうでもないと考えてみても分からずじまい。

 

「自分が狙われる事など滅多にない故にどうすれば良いのか分からないと言った顔をしてますね」

「あぁ、面倒になってきたから突っ込んで行きたくなるが相手が格上だとな。飛んで火に入る夏の虫って奴は勘弁したいのだが…」

 

 相手が分からなければどうしようもないと言うのに。あぁ苛立つ。小太刀を掴む手に力が入りギチリと軋む。

 

「強行手段も辞さない」

「良いんですか?」

 

 良くはない、が此処まで苛立たされたのは久しぶりだ。この苛立ちをこそこそと隠れ見ている奴にぶつけてしまっても許されるだろう。地獄の閻魔だって十王全員即決で無罪と言う筈だ。なぁに相手が複数いてもお前だけは逃がしてやる。やれる気がする。

 

「やるという事はやられる覚悟のある奴だけしかできない。相手を苛立たせるという事は相手に殴り飛ばされても文句は言えないという事。責任や結果が降り掛かるのは当たり前だ。よって因果応報なのである」

「先程から良く喋るなと思っていましたが、怒ると口数が増えるタイプですか」

 

 普段温厚な俺も怒る時は怒る。此処まで虚仮にされたのだやり返さなくては気が収まらん。

 

「流石にここでは馬鹿な事はしないでくださいよ。やるなら外に出てからにしてください」

「怒ってはいるがそんな事はしない」

 

 何処の何奴が知らんが俺を怒らせた事を後悔させてやろう。

 

「やろうとしている貴方はやられる覚悟ができているのですかね?」

 

 ……………五月蝿い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういう結果になりましたが」

「まだだ、まだ出てこないだけで後から来る。其処で一発ぶん殴る」

 

 憤怒の炎を燻らせ人里の外に出て来たのは良いのだがそれから幾ら経っても人っ子一人出てこない。人里の人間に被害を出すのは拙いので離れた所でこしの刀に手を掛けて何時でも抜刀できる様にしていたのだが、人っ子一人出てきやしない。見張りの奴等が奇怪な物を見る様な目を向けてくるが気にしない。帰りましょうという居候の言葉も無視し待ち続けたのだが気配の主は出てくる事はなかった。それから居候の堪忍袋が切れたのか耳元で怒鳴られ驚いたところで殴られ其の侭家路に付いた。

 能力を使わせ付けられていないか怪しいモノはいないか監視させ続けたのだが何もなかった。態々回り道をしてまで用心して家に着いた時には精神的に疲れ果てており荷物を倉庫にしまい終えると茶の間に直行し畳の上に倒れ込む。

 

「目に物見せてやろうと息巻いていたのに何もせず帰ってきましたね。何も起きなくて本当に良かったです」

「お、喧嘩か?喧嘩を売っているのか?腹立たしいが買っても勝てない喧嘩なんて御免だ。争いは同じ力を持つ同士でないと起こらないのだ」

「そうですか。それにしても人里を出てからは気配の主は消えていった訳ですが、やはり人里の人間なのでしょうか。監視している事を悟らせるなどする意味がないですからね」

「…そう思わせる為の罠の可能性もある」

「他に可能性がないか考えるのは必要な事だと思いますが考え過ぎもどうかと思いますよ。お茶持ってきますね」

「おう、茶請けに饅頭も頼む」

 

 部屋に一人になった。苛立っていても仕方のない事だろう一旦落ち着こう。

 

 ゆっくりと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

 

「家に帰るまで付けられている様子はなかった、気配も感じず姿も見えなかった。怪しいモノもなかった。家の中も変化がないか確認したが変化はなかった」

 

 一度改めて考えてみたが何も起こらず良かったと思う反面其れが不安になってしまう。何か見逃してはいないかと。

 

「分かるという単語が今日だけで幾ら考え幾ら口にして幾ら聞いたのだろうか。去年一年分の回数を超えている気がするのだがどう思う?」

「知りませんよ。そんな事よりお茶にしましょう」

 

 丁度戻ってきたので聞いてみたがそんな事と一蹴されてしまった。まぁこうなる事ははなから分かってはいた。短い間とはいえ此処まで心が通い合うとは。

 

「心身共に疲れた訳だが、こういう時には甘い物と熱いお茶と相場が決まっている」

「その意見には同意します」

 

 茶請けを摘み茶をチビチビと飲み、昨日と同じ本を読み始める居候。其の姿をぼけーっと見ていても此方の視線に見向きもしてくれない。頑なな意思を感じ取ったので俺も本を読もうと棚から本を取り出し栞が挟んだ所を開き読み始める。

 

 うん?此処は前にも読んだ事がある気がするぞ。




5103文字、普通だな。前書きにも書いたけど最初の頃思っていたものとは違ってきてる。まぁええやろ。主人公のキャラがガバガバだけどお兄さん許して〜。暇な時なんか付け足していくゾ。
2015年10月30日追記。
いるか分からない補足:最初の料理の数の件ですが、専門家でも何でもない主人公の考えなのでガバ理論です。
いるか分か(ry其の二:面倒事を避けたがる主人公が『人里から出て相手が出てくるのを待つ』という面倒になるような事をしたのは怒っていたからです。仏も三度目で怒るのだから怒っても仕方ない。まぁ相手を確認したいという思惑もあるけど相手が強かったらという危険があるからなぁ…。
いるか(ry其の三:人里で付けてきた謎の存在。人なのか妖なのかは不明。数も不明だが一人(一体)いるのは分かっている。
い(ry其の四:主人公が何時もと違うのは憂鬱だったから。
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