たくさんの票をありがとうございました!
これからのことを話し合い、その後は宴を開いていたロックス海賊団一同はしっかりと二日酔いになり幹部含めほとんどがダウンしていた。
シロウは酒は苦手であまり飲まなかった為、ケロっとしており、二日酔いの被害が無かった幹部勢とあることをする為準備をしていた。
普段ならば酒と笑い声が響く拠点だったが、今日は珍しく静まり返っていた。
周囲の人間は広場の中心に立つ二人に目を向けていた。
一人は、ここ数年で青年から大人へと成長した――シロウ。
もう一人は、巨大な薙刀を肩に担いだ男――白ひげ。
周囲にはロックス、シキ、王直、ステューシー、その他の幹部たちが集まっていた。
ちなみにジョンとマーロンは様子をロックスが見てきたのだが、昨日の宴で飲み比べをしていたので、絶賛二日酔い中の為、この場にはいない。
ロックスは呆れて2人を寝ていたベッドから拠点外へ捨ててきたと話した。
「いきなり呼ばれたんで何だと思ったら模擬戦だと?しかも内容は武器を奪われた時の対処法の為…ねぇ」
「ジハハハ。お前、聖職者みたいな格好してるくせに、結構やることは荒っぽいよな」
「戦場では、理想だけでは誰も救えませんから。剣を失えば終わり、能力者は海楼石で能力を封じられれば終わり。何も出来ず死なない為、そうなった場合の鍛錬です」
ロックスは腕を組みながら口角を上げた。
「つまり、今回の模擬戦の目的は武器無し・能力無し・体術のみの格闘戦ってとこか?」
「そういうことです」
シロウは腰に差した無名の刀を外し、近場の岩へ立てかける。
手は自然に力を抜き重心をわずかに前へ向き完全な脱力状態を作る。
野次馬の1人である王直が問いかける。
「珍しいな、お前が武器を置くなんて。今まで肌身離さず持ってただろ?使わないにしろ持ってればいいじゃねぇか?」
「武器は己の半身ですが…」
シロウは拳を握る。
「武器が無くなった程度で戦えないのでは、大切なものを守れませんからね」
白ひげも準備ができたのかシロウと対面に向き位置に着く。
「行くぞ」
白ひげが一歩踏み込む。それだけで地面が砕けが破片が舞う。
そのまま巨大な拳がシロウへ迫る。
体格差は勿論のこと、その質量の拳を受ければただでは済まない。
しかし、拳が届く寸前にシロウの姿が消える。
否、紙一重で身体を滑らせていた。
「…!(こいつ)」
白ひげの目が細まるが、シロウはすでに白ひげの懐へ潜り込んでいた。
「ニューゲート…八極拳というものを知っていますか?」
「は、八極?何だって?」
問いには返さず、シロウは自身の腰を落とす。
「震脚」
ドンッ!!
足元から衝撃が走る。
続けざまに掌打をするが、この技は拳の一点へ集約し放つ。
「寸勁!」
「ぐぉ!?」
体の中心に打撃を受けた白ひげの巨体が数メートル後退する。
「おお!?体格差あるのにあんなに飛んだぞ!」
「どんな力だよ!副船長!」
「シロウのやつ…武器無しでも強いのかよ」
周囲から声が漏れる。
「グラララ…まだ甘いな、シロウ!こんなもんじゃ俺は倒れねぇぞ!!」
白ひげが笑った次の瞬間、ふたたび急接近した白ひげの巨大な腕がシロウを薙ぎ払う。
シロウは当たらないよう後方へ跳ぶが、空中で白ひげが拳を解き指が伸びる。
「捕まえたぞ」
シロウの腕を掴む。
白ひげほどの力が加われば普通ならば骨が砕ける。
だが、シロウは逆に捕まっている白ひげの腕に攻撃をした。
「
その瞬間、白ひげの腕を中心に波紋状の複数の衝撃が内部へ伝わる。
外傷ではなく、内部へ響かせる打撃。
「…ん?何だ?手が勝手に開きやがる」
白ひげが手を離す。
「こいつぁ…確か花ノ国の拳法か」
「はい。以前旅をしていた時に身につけましたよ。八極拳と八衝拳はそれぞれ敵対するほどに流派がそれぞれ分かれていますが、何とか両方の流派の棟梁に頭を下げて修行させていただきました」
シロウは構え直す。
「旅をしていた時に学びました。一人で世界を巡る中で、様々な武術に触れました」
「その中でも花ノ国の武術…八極拳の剛の力と、八衝拳の衝撃操作による柔の力…この二つを合わせることで、武器を失った時でも戦える自分だけの型を作りました」
シロウが以前から思っていた疑問、というより確信に近いものだった。
八衝拳は防御不能の衝撃波を操る強力な拳法であり、鎧や盾も簡単に壊し、相手の体の中へ直接ダメージを与えるものだ。
それに自身の知識で残っている某神父の格闘術の八極拳に八衝拳を加えるだけで相当強くなるのではないかと考えた。
そこから試行錯誤し、自身で編み出した独自の柔剛合わせての戦闘武術。
名を八極衝。
シロウが再び踏み込むが、その攻撃は普通とは違う。
一撃が重い八極拳に相手の防御を崩した瞬間、八衝拳による連続衝撃。
震脚で地面を踏み鳴らし力の方向を定め、足から放つ八衝拳の衝撃と踏み込みで距離を潰す。
「掌底・連衝」
複数の衝撃が白ひげの身体へ伝わる。
「面白い技だな。だが…」
覇気が膨れ上がる。
「俺にはまだ届かねぇよ」
武装色を纏った拳に対しシロウも武装色で拳を固め、拳と拳が激突する。
ドォン!!
島全体が揺れ衝撃が島を巡った。
見守る幹部たち以外の船員達は自身が巻き込まれないために避難していた。
「ジハハハ!おいおい、あいつ本当に神父か?格闘家の間違いじゃねぇか?」
ステューシーは微笑む。
「武器を扱う者ほど、それに頼りがちになるわよね。今のシロウは、最後に頼るのは己自身と言わんばかりに証明してるわね」
ロックスは満足そうに笑った。
「ヴォハハハ。お前らは見る目がねぇな」
「あ?どういう事だよ。ロックス?」
「見りゃ分かんだろうが?」
シロウはまだこの戦闘で底を見せてねぇ。
数十分に及ぶ模擬戦が終わった。
シロウは肩で息をしながら立っていたのに対し、白ひげは笑いながら拳を下ろす。
「体力が足りませんね…私は。もう少し鍛錬しなければですね」
「いや十分だろ?今回の目的は武器を奪われても、戦えるかの鍛錬だろ?」
シロウは頭を下げる。
「ありがとうございます。ですが…」
シロウは自身の拳を見る。
「まだ足りません…刀がなければ戦えないなど情けないですし、最後に頼れるのは、この身体と覚悟ですから」
ロックスは酒を飲みながら笑った。
「いいじゃねぇか…別によ。結局は最後に立ってた奴が勝ちなんだよ」
「極論じゃねぇか」
白ひげとの模擬戦が終わったが幹部たちの興味はまだ尽きていなかった。
「次は俺だ」
低い声に振り返ると、そこに立っていたのは――
シキが不敵な笑みを浮かべている。
「白ひげ相手にそこまでやれるなら、俺も試してみたくなった」
「あなたが?」
ステューシーが少し驚く。
「珍しいじゃない。あなたが自分から相手をするなんて」
「勘違いすんじゃねぇよ」
シキは笑う。
「こいつがどこまで力を隠してるのか気になるだけだ」
ロックスはその話に乗るように話し始めた。
「いいじゃねぇか!シロウ!武器を奪われた時の対処って話だったな?」
「えぇ。その通りですが…」
「なら次は、自分が武器を封じられた状態でやれ」
シロウは頷く。
「なるほど…分かりました」
シキは腰の刀を抜く。
「安心しろ。あくまで模擬戦だからな…峰打ちで済ませてやる」
「…いりませんよ」
「あ?」
シロウは無言で、ただ拳を構える。
「本当に素手でやる気か?こっちは武器と能力無しの制限がないんだぜ?」
「はい、私は一向に構いません」
言い切った次の瞬間、シキの姿が消える。
「そうかよ!なら遠慮なく斬るぞ!」
声だけが響く。フワフワの実による浮遊能力を使った空中からの奇襲。
普通の相手ならば、自由な軌道で攻撃できるシキの攻撃はどこから来るのかわからない。
しかし、シロウは逆に目を閉じた。
「……」
周囲が静まる。
「俺を舐めてんのかシロウ!?」
シキが怒りにまかせ叫んだ瞬間、シロウが動いた。
半歩の僅かな移動。
その瞬間、刀が通った場所を紙一重で避ける。
シキが急上昇し、また上空から急降下する。
「なら、これは避けられるか?」
二刀が迫るがシロウは前へ出て、逃げずにシキの懐へ潜る。
その反動を利用して――
「八極衝・一骨!」
正面からの突き込みをくらい、シキの体勢が崩れる。
拳ではなく、掌で触れた瞬間には八衝拳による衝撃を内部へ流す。
「……!」
シキの体制が崩れるがすぐに空中に退避する。
「なるほどな」
シキは笑った。
「接近戦に持ち込んで、相手の武器の利点を消すか」
「はい。ですが…」
シロウが構える。
「武器を持つ者にも、武器を失う瞬間はあります。だからこそ、その時の戦い方を磨く必要があります」
「面白ぇじゃねえか!」
シキの周囲に刀が浮かぶ。
「じゃあ、これはどうする!シロウ!?」
"獅子威し・地巻き"!!
シキの能力は自身を除いた生物以外の物に触れたものを操る。
自身の能力で地面を持ち上げ、獅子の頭の形に変えて敵を押し潰すように放った。
王直が呟く。
「範囲が広いな…武器無しじゃ防げねぇぞ」
シロウは拳を構えた。
「防ぐ必要はありません」
「…はぁ?」
シロウは地面に足を固定し、右手を後ろに引き左手で照準話合わせるように向かってくる攻撃に対して振るった。
「八極衝・晴天撃!」
拳を向かってくる攻撃に叩き込む。
シキの攻撃に当たらず、空振りに見えたがシキの攻撃は砕けるように霧散した。
『はぁ!!?』
一同は触れていないのに破壊されたシキの攻撃を見て驚く。
この隙を逃さず、シロウは落ちてきた瓦礫を足場に空中にいるシキに向かって接近する。
シキは対応する為、自身も迎撃のため近づく。
そして――
「そこまでだ」
シロウの拳がシキの目の前で止まり、シキの刀の切っ先もシロウの首元で止まっていた。
互いに届く距離であり、同時に決め手を持っていた。
「引き分け…ですかね?」
シロウが言う。
シキは笑う。
「ジハハハ…いや俺の負けだな」
周囲がざわめく。
「お前、最後に俺を倒すことじゃなく、仲間同士だからってだけでギリギリ殺さない位置で止めただろ」
シロウは微笑む。
「当然です。これは戦争や殺し合いではなく、あくまで鍛錬ですから」
ロックスは満足そうに笑った。
「いい見せもんだった!今日は解散だ。落ち着いたら明日から遠征だから準備に取り掛れ!」
こうして幹部通しの模擬戦は終わったが、ロックスからの提案によりこれから定期的に行われることを皆はまだ知らない。
ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。
-
助ける
-
助けない