ONE PIECE 救済を求める神父   作:ヴァンプッシュ

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第十四話 海賊達の休戦

 

普段なら喧嘩と銃声が絶えない島が、その日は異様な緊張に包まれていた。

 

「船だ!船が見えたぞ!!」

 

見張り番の船員が叫ぶ。

 

「西から海賊船接近!」

 

港にいた海賊たちが一斉に武器を取る。

 

黒い海賊旗が風になびく、髭のついた髑髏のマーク。

 

その船首に立つ男を見た瞬間、島中がざわついた。

 

「…ロジャー海賊団だ!!」

 

「ゴール・D・ロジャーだぞ!」

 

ロックス海賊団の幹部たちも港へ姿を現す。

 

ロックスは腕を組み待ち構える。

 

「向こうから来るとはいい度胸じゃねぇか…何しに来やがった?」

 

白ひげは薙刀を肩に担ぐ。

 

「久しぶりだな…ロジャー」

 

シキは刀へ手を添えた。

 

「白ひげテメェは手を出すな!俺の獲物だぞ?ここで決着つけるか?」

 

張り詰める空気、一触即発。

やがて港へ船が着き、先頭で降り立ったロジャーが大きく手を振った。

 

「よう、ロックス!久しぶりだな!」

 

ロックスは笑みを浮かべたまま返す。

 

「俺はテメェの友達なんかじゃねぇぞ?何しに来やがった?戦争なら歓迎してやるぞ?」

 

ロジャーは肩をすくめた。

 

「今日は違う、喧嘩しに来たんじゃねぇ」

 

シキが鼻で笑う。

 

「ハッ信用できるか」

 

その時、酒場の扉が開いた。

 

「店の前で騒がないで?いつも言ってるでしょ?」

 

静かな声は店主のシャッキーだった。店内から顔を出し、呆れたようにため息をつく。

 

「うちの店を壊したら、お酒は出さないわよ?」

 

その一言で、ロックスは眉を上げた。

 

「……」

 

ロジャーも苦笑する。

 

「はは…それは困るな」

 

ロックスは幹部たちを見回した。

 

「聞いたかお前ら!!今日は店の前で暴れる奴は俺がぶん殴る」

 

白ひげが薙刀を下ろす。

 

「酒が飲めなくなるのは困る」

 

シキも舌打ちしながら刀を納めた。

 

「今日は休戦ってことか」

 

「勘違いするな?」

 

ロックスはロジャーを睨む。

 

「島の中だけだ。島の外に一歩でも出たら容赦はしねぇぞ?」

 

ロジャーも頷く。

 

「十分だ。俺たちも飲みに来ただけだからな」

 

島中の海賊たちは耳を疑った。絶対碌なことにならないと。

ロックス海賊団とロジャー海賊団が、同じ酒場へ入るなど誰も想像していなかった。

 

 

酒場店内。

 

ロックス海賊団は左側。

 

ロジャー海賊団は右側。

 

互いに睨み合いながら酒を飲む。

少しでもきっかけがあれば乱闘になりそうな空気だった。

 

「はい、お酒」

 

シャッキーが淡々とグラスを置いていく。

 

誰も彼女には逆らわない。

カウンターにいるシロウだけはいつも通り紅茶を受け取っていた。

 

ロジャーはその様子を見て笑う。

 

「相変わらず酒じゃないのか?」

 

「ええ」

 

シロウは穏やかに頷く。

 

「今日は茶葉の香りがとても良いですね。また新しいのを仕入れましたね。美味しいです」

 

「気に入ってくれて何より」

 

シャッキーは微笑む。

そのやり取りを見て、ロジャーは少し感心したように笑った。

 

「お前だけはやっぱ他のやつとは空気が違うな」

 

「そうでしょうか?いつも通りですよ」

 

「普通、この店じゃそんな落ち着いてられねぇ」

 

その時だった。

 

シャッキーが、何気ない様子でロジャーの近くへ歩いていく。

グラスを置きながら、小さな声で尋ねた。

 

「…ねぇレイさんは?」

 

ロジャーは一瞬だけ目を丸くした。

そして、にやりと笑う。

 

「何だ、最初に聞くのがそれか?」

 

「答えて」

 

「いやぁ来いってつったんだがよぉ!!体調が悪いとか言いやがって船で寝てるよ」

 

シャッキーは「そう」とだけ答え、表情を変えずに次の客の元へ向かう。

だが、そのほんのわずかな心配したような横顔を、シロウだけは静かに見ていた。

 

(本当に、一途な方ですね)

 

彼は紅茶を一口飲み、何も口にはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

夜も更け、店内には酒瓶が増え、笑い声も大きくなっていた。

 

だが、その笑い声の裏には緊張がある。

 

ロックス海賊団とロジャー海賊団。

 

普段なら顔を合わせた瞬間に戦いが始まる両者が、同じ空間で酒を飲んでいるのだ。

 

「おい、ロジャー」

 

ロックスがジョッキを片手に笑う。

 

「酒なんざ飲んでねぇで、一発やるか?」

 

ロジャーも負けじと笑い返す。

 

「だから今日はやらねぇって言ってるだろ?シャッキーに店を出禁にされたくねぇ!」

 

「ヴォハハハ!お前がそんなこと気にするとはな!」

 

「美味い酒を飲める場所は大事だからな。むざむざ捨てたかねぇ」

 

そのやり取りに、店内の海賊たちは苦笑した。

 

その頃、ロジャー海賊団の一角では、スコッパー・ギャバンがシロウの前へ腰掛けた。

 

「隣、いいか?」

 

「もちろんです。どこに座るか自由ですよ」

 

シロウは紅茶のカップを置く。

 

「酒じゃないのか?」

 

「私は酔うより、考える方が好きなので」

 

ギャバンは豪快に笑った。

 

「変わってるな。悪名高い凶悪なロックスの船にいるとは思えねぇ」

 

「よく言われます」

 

穏やかな返事に、ギャバンは思わず吹き出した。

その様子を見ていたロジャーが声を掛ける。

 

「シロウ」

 

「はい?何でしょう?」

 

「お前、本当にロックスの仲間なのか?他のやつらと違いすぎて場違いに見える」

 

店内が静まり返る。

ロックス海賊団の幹部たちも耳を傾ける。

 

シロウは少しだけ考え、答えた。

 

「私はロックスの思想すべてに賛同しているわけではありませんよ?」

 

シキが眉をひそめる。

 

「おいおい」

 

しかしシロウは続けた。

 

「ですが、私はこの船でしか見られない景色があります。この時代を知り、人々を知り、世界を知る。そのために私はここにいます」

 

ロジャーは頷いた。

 

「なるほどな。なんかお前らしい答えだな」

 

二人の間には敵意はなく、あるのは互いへの興味だけだった。

 

その時、カランと店の扉が開いた。

 

全員の視線が入口へ向く。

 

「…!」

 

シャッキーの手が止まる。

 

そこに立っていたのは、長身の剣士。

金髪を後ろへ流し、腰には剣を提げている。

 

「悪い遅くなった」

 

静かな声が店内に響く。

 

ロジャーは笑った。

 

「お、来たか。体調不良じゃなかったのか?」

 

「…ああ完治したよ」

 

男は短く答える。

 

シャッキーの表情が、わずかに柔らかくなる。

 

「いらっしゃい。レイさん」

 

その一言だけだったが、その声音は誰に向けるものとも違っていた。

 

レイリーはカウンターへ歩き、自然に腰を下ろす。

 

「いつものを」

 

「ええ」

 

シャッキーは迷いなく酒を注ぐ中、シロウは紅茶を飲みながら静かに二人を見つめていた。

 

(自然ですね。)

 

飾ることもなく、無理に言葉を重ねることもない。ただ同じ空間にいるだけで落ち着いている。

 

それが二人の関係を物語っていた。

 

シロウは小さく微笑む。

 

「良いご縁ですね」

 

その言葉にレイリーはシロウを一瞥した。

 

「…そうかもしれないな」

 

短い返事。

 

しかし、その口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。

 

店内ではロックスとロジャーがまた言い争いを始め、白ひげとギャバンも酒を酌み交わしている。

 

敵同士でありながら、一夜だけの奇妙な停戦。

 

その中心には、誰にも分け隔てなく酒を出すシャッキーと、彼女が唯一特別な眼差しを向けるレイリーの姿があった。

 

そしてシロウは、その光景を静かに見守りながら、湯気の立つ紅茶をゆっくりと口に運んだ。

 

 

ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。

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