皆様も体調にはお気をつけ下さい。
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ハラルドとの戦いが終わった後、ロックス達は城を出ていた。
結局今回も勧誘は失敗に終わった。
ハラルドは最後まで、ロックスの船に乗るとは言わなかった。
港へ戻る道中、ロックスは不機嫌そうに腕を組みながら歩いていた。
「…失敗だ」
「はい、いつも通りの返答でしたね」
隣を歩くシロウが淡々と答える。
「何度も…何度も勧誘したんだ…それが何であぁなるんだ?」
「はい」
「…お前、もう少し慰めろよ」
「慰める必要がありますか?」
「あるだろ!何度も!何度も!!何度も!!!何であいつは断るんだ!?」
ロックスが振り返る。
シロウは少し考えた。
「では…残念でしたね」
「他人事じゃねぇか!」
「私も同行していましたが?」
「そういう問題じゃねぇ!」
ロックスが頭を掻く。
その様子を見て、シロウは小さく笑った。
「…今回の件で、一つ分かったことがあります」
「あ?」
ロックスの表情が変わる。
「私達と彼の付き合いもなんだかんだ言って長いです。攻撃はされましたがハラルド自身は、私たちを完全に嫌っているわけではないと思います。むしろ…何か事情があるんでしょう」
「まぁ…心当たりがあるとすりゃぁ…」
ロックスは頭をかきながらも続きを話す。
「
「えぇ…恐らく」
シロウは足を止める。
「今回の戦い、ハラルド王は何度も私たちに攻撃を仕掛けはしましたが、致命傷になる攻撃だけは避けていました」
「…」
「つまり――」
シロウはハラルドがいるエルバフの王城の方向へ振り返った。
「ハラルド自身が、私たちを殺すことを望んでいるわけではない。むしろ望んでいるのは五老星とあの人でしょうね…」
ロックスは腕を組む。
「…あん時に会ったクソどもの親玉だな?」
「おおかた、私と貴方を殺せば世界政府の加盟国に入れてやるとでも、ハラルドへ言ったんでしょう」
「…その辺りが妥当な予測だろうな」
ロックスは大きく息を吐いた。
「世界政府…汚い手ばかり使いやがるな」
「ええ…まったく。巨人族達の平和を願うハラルドからすれば喉から手が出るほど希望に満ちた提案だったのでしょう。だからやるしかなかった…ってとこでしょうね」
歩いていたら、いつの間にか停泊している海岸まで着いていた。
夕暮れのエルバフを眺めながら、ロックスとシロウは二人で話していた。
「あんな感じだしな…力ずくで連れて行くのも無理だ」
「ハラルドを倒すこと自体は可能でしょうが、それではお互いに意味はありません。推測した条件が正しければ簡単には頷かないでしょうね」
「だが、それじゃ意味がねぇ」
ロックスは拳を握る。
「俺が欲しい理由は、まぁ…人柄に惚れ込んだのもある。あいつはシロウ…お前以外で初めて楽しいと思えたやつだった」
「…人柄ですか」
「そうだ」
ロックスは笑う。
「エルバフの王が自分の意志で俺の船に乗る!それじゃなきゃ面白くねぇ」
シロウは少しだけ目を細めた。
「まだ諦めないつもりですか?こないだ言った海賊は欲しいものを妥協し無いって事ですか?実にロックスらしいですね」
ロックスはシロウを見る。
「だから…次の手を考えるぞ?正面から誘うだけじゃ駄目だってことは分かったんだからよ」
「ええ、そうでしょうね」
シロウは静かに頷き、付け加える。
「ですが、下手に動けばエルバフそのものを危険に晒す可能性があります。そこを解決しなければハラルドは頷かないでしょうね」
ロックスの表情が僅かに険しくなる。
「問題は世界政府か」
「はい。まずそこからでしょうね。私達としても無視はできないでしょう」
「なら、慎重にやる」
意外な言葉だった為にシロウは眉を下げながら訝しげにロックスを見る。
「慎重に?貴方が?」
「俺だって、馬鹿じゃねぇぞ?ちゃんと考えて行動してるんだぜ?」
…ちゃんと考えて?行動してる?
《ロックスやらかし集》
・ステューシーが入っている風呂を覗き見る
(本人に処される)
・リンリンのお菓子を無断で食べる
(食い患いによりハチノス半壊)
・ニューゲートの酒をジョンや王直に横流し
(自身はやってないと言いジョン達を売る)
・マーロンの葉巻をハーブタバコに変える
(マーロンはいつもと味が違くむせた)
・本人の酒に酔った状態の癇癪によるハチノス半壊
(シロウから禁酒1ヶ月をくらう)
・エルバフの木々を薙ぎ倒して進む森林資源破壊
(第四話参照)
「そ…そうですか…これは失礼しました」
「お前、俺を馬鹿扱いしてねぇか?」
「時々ではありません。今馬鹿にしてます。胸に手を当ててこれまでのことを思い浮かべて下さい。浮かばないなら手の施しようが無いですよ?あなた…どんだけ私が苦労したと…」
「おい!テメェ、一回マジでシメるぞ!?」
ロックスは船長室に幹部を集めた。
怪我をしてることもあり多少心配されたがそれまでだった。
白ひげ、シキ、ニューゲート、ステューシーが集まる。
「ハラルドの勧誘は失敗だ」
ロックスが宣言すると、
「知ってる」
「見りゃ分かる」
「何回も行って今回も断られてるからな」
「あんだけ体が大きいいんだもの…一緒にいない時点で勧誘が失敗したのはすぐにわかったわ」
好き勝手に言われる。
「うるせぇ!」
ロックスが机を叩く。
「だが、今回で重要な情報を掴んだ」
全員が黙る。
「ハラルドは俺たちを本気で殺したいわけじゃねぇみてぇだ…憶測だがな」
シロウが続ける。
「彼は、世界政府に従わざるを得ない状況にあると推測しています」
「あ?世界政府に?」
白ひげが眉をひそめる。
「エルバフの王が、なぜそこまで政府に従う?」
「そこが問題です」
シロウは答える。
「ハラルドは巨人達の平和を願っている王です。その未来を守る為に彼は行動しています」
「これまでもそんなこと言ってたな。だが、それでお前達を攻撃する理由になるのか?巨人族の平和とシロウ達は関係ないだろ?」
「一つ考えているのが、恐らくエルバフを加盟国にする条件は私達を消す事だ…とでも言われているのでしょう」
「ジハハ…まぁこんだけやらかしてちゃあ、世界政府にとってお前ら2人は良い加減に邪魔だろうな?」
「貴方達2人が居なくなればロックス海賊団は瓦解し、更に世界政府にとってはエルバフの巨人という手駒や兵士…奴隷が手に入るって事でしょうね?」
「そうでしょうね」
「そんなことには絶対させねぇ」
一斉にロックスに目線を移す。
「ハラルドは
「えぇ…そうですね。天竜人の好きにはさせません。一先ずはハチノスに戻って作戦を練りましょう」
エルバフを後にして数日後、ロックス海賊団の船がようやくハチノスへ帰還した。
甲板から島を見たロックスは、眉をひそめる。
「…妙だな」
いつもなら海賊たちの怒鳴り声や笑い声が響く島であるが、出迎えは無く静かだった。
よく全体を見ると、島のあちこちから黒煙が上がっている。
「留守中に戦闘でもあったのか?」
シキが目を細める。
白ひげも無言で島を見つめた。
「…島にはマーロンや王直達もいたはずだが…ここまで壊れるか?何か嫌な感じだ」
船が港へ接岸し、ロックスたちは一斉に飛び降りた。
そして――
「…!」
最初に目に入ったのは、血だった。
道端の瓦礫の陰に、一人の男が倒れている。
「
ステューシーが駆け寄り状態を確認するが、血まみれになったマーロンは、かろうじて息をしていた。
「おい! しっかりしろ!」
白ひげが身体を起こす。
「……う…ぐッ」
マーロンが薄く目を開ける。
「……船長たち…戻った……のか……?」
「マーロン!何があった!?」
ロックスが怒鳴る中、マーロンは苦しそうに息を吐く。
「……シャッキー」
その名前を聞いた瞬間、シロウの表情が変わった。
「シャッキーさんが?」
「……さらわれた…」
「誰にだ!」
「……分からねぇ」
マーロンの声が震える。
「突然……島に……妙な連中が…来やがって」
「妙な連中?」
「……やたら豪華な…装備を…した奴らだ」
その言葉を最後に、マーロンの意識が落ちた。
「マーロン!」
ステューシーが叫ぶ。
「まだ息はある!」
「急いで医務室へ運べ!!」
「ぁぁあああ!マーロンの旦那!」
「消毒用の酒持ってこい!」
「島内の負傷者も探せ!纏めて治療にあたれ!」
ステューシーや島内の海賊は医療施設のある建物へマーロンを運ぼうとする。
だが…シロウは動かなかった。ただただ、血まみれの地面を見つめている。
ロックスが不審がり振り返る。
「シロウ?」
返事がない。
シロウはゆっくりと膝をき血まみれな地面へ手を置いた。
目を閉じ呼吸を整える。
周囲の雑音が消えていく。
足音。
風。
仲間たちの声。
それらすべてを意識の外へ追いやる。
代わりに――島に残された「気配」を読む。
シロウが得意とする覇気の色は異質な力に特化した見聞色で、その地の過去の記憶を見ることができる。
その場に残った人々の恐怖や怒り、殺意など多岐に渡り感じ取ることができる。
この見聞色では場面を映像として見ることができる。
―ロックス達が帰投する数時間前 ハチノスにあるシャッキーのバー。
「今日は随分と賑やかね」
カウンターに立つシャッキーが笑う。
そこへ――
見慣れない男たちが入ってくる。
全身を覆う豪華な装束に腰には剣。少なくともハチノスでは見ないもの達であり、雰囲気はただ者ではない。
「……誰?」
シャッキーが尋ねる。
男たちは答えず、シャッキーは眉をひそめる。
「どういうつもり?」
その表情には、普段の余裕がない。
次の瞬間…店内に殺気が走った。
マーロンが立ち上がる。
「なんだテメェら!?…なにもんだっ!!」
マーロンが銃を構えるよりも先に外から大量の兵士が押し寄せた。
直後に銃声、剣戟、怒号が響きわたった。ハチノスの海賊たちが迎え撃つが、相手が強すぎる。
一人、また一人と倒されていく。
マーロンも必死に戦うが
ズガァン!!
壁へ勢い良く叩きつけられ血が飛び散る。
その間にシャッキーの腕が掴まれる。
「離して!」
シャッキーが叫ぶ。
だが、その言葉を最後まで言うことはできなかった。
口を塞がれ、そのまま連れ去られる。
マーロンは連れ去られるシャッキーを見ながらも気を失った。
彼らを見た瞬間、ハチノスの海賊たちは震え上がった。
「…天竜人!?」
その中でも特に威圧感を放つ者。
胸元に輝く天翔る竜の蹄に豪華な装飾が施された装備を身に纏う、金髪の特徴的な髪型の男がいた。
手引きした男は、その背後で下卑た笑みを浮かべて話す。
「…これで約束は守れよ?」
神の騎士団の一人が答える。
「当然だ、契約通りだからな。金は渡すさ…だが目撃者は全員殺せ。顔を見られてるからな。私もお前も」
「へいへい、金置いてさっさといきな」
響き渡る銃声を最後に映像が途切れる。
――現在。
映像が途切れたシロウは目を開いた。
誰も何も言わない。
シロウはゆっくりと立ち上がるが、その顔からはいつもの穏やかな表情が完全に消えていた。
「…貴方でしたか…この惨状を作り出したのは」
小さく呟く声を聞いたロックスが聞き返す。
「シロウ?何って言った今?」
シロウは答えない。
「シロウ」
「……」
「おい!」
ロックスが肩を掴もうとするが、シロウは…その手を静かに払った。
「…行くとこが出来たので行ってきます」
「待て」
白ひげが立ち塞がる。
「どこに行くんだ?説明しろ!」
「退いて下さい」
「何があったか説明しろ!」
「説明している時間がありません」
シロウは歩き出すがその手をロックスが掴む。
「待て、シロウ!」
「離してください」
「
「……」
シロウは振り返る。
その瞳に、今まで誰も見たことのないほど冷たい光が宿っていた。
「王直が…シャッキーさんを売りました」
「……!」
全員が凍りつく。
「何だと…?確かなのか?」
シキの顔から笑みが消える。
「王直が……?」
「王直は買収されたようです」
シロウは淡々と続ける。
「そしてハチノスに、天竜人――神の騎士団を招き入れた」
「神の騎士団だと……!」
ロックスの拳が震える。
だがシロウはもう歩き始めていた。
「シロウ!」
ステューシーが叫ぶ。
「一人で行くな!」
止まらない。
「シロウ!」
白ひげも叫ぶ。
それでも――シロウは止まらない。
黒い司祭服の裾を揺らしながら、ただ一人、王直のいる場所へ向かっていく。
ロックスが怒鳴った。
「シロウ!!」
その声にも――
振り返らない。
「……許しません」
誰にも聞こえないほど小さな声。
「シャッキーさんを傷つけたことも」
一歩。
「仲間を売ったことも」
さらに一歩。
「この島へ……あの者たちを招き入れたことも」
握る拳には時折、赤い光を放つ黒い武装色が僅かに滲む。
シロウの脳裏に、シャッキーの笑顔が浮かぶ。
そして――
「…人を道具として扱う者を」
静かに目を開く。
「俺は……決して許さない!」
その頃。
ハチノスの奥。
王直は一人、酒を飲んでいた。
だが、彼は気づいていない。自分へ向かって一直線に近づいてくる存在に。
コツ……
遠くから足音が響く。
王直が振り返る。
「……誰だ?」
暗闇の向こうに赤黒いマントが揺れる。
「――私です」
シロウが姿を現した。
その顔を見た瞬間、王直の顔が一瞬で凍りついた。
ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。
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助ける
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助けない