ONE PIECE 救済を求める神父   作:ヴァンプッシュ

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第十七話 神父による尋問

 

「シ、シロウ!!?何でここが!」

 

王直がシロウを認識し銃を構えたその時だった。

 

――ヒュッ

 

「……!?」

 

王直はシロウが消えた瞬間に背後に振り向いた。

 

「な、テメェ!」

 

次の瞬間。

 

ガシッ!!

 

王直の首をシロウの片手が掴んだ。

 

「ぐっ……!」

 

そのまま軽々と持ち上げられる。

 

「な、何しやが――」

 

シロウは答えない。

 

ただ、冷たい目で王直を見つめる。

 

「…質問に答えろ王直」

 

「……っ!」

 

「一つずつ聞く」

 

シロウの指に力が込もる。

 

「シャッキーさんを、なぜ売った?」

 

「……」

 

王直は目を逸らす。

 

「答えろ」

 

「……金だ」

 

「……」

 

シロウの瞳が細くなる。

 

「聞き間違いか…?もう一度」

 

「金だよ!」

 

王直が叫ぶ。

 

「政府の奴らが大金を出したんだ!」

 

「それだけか?」

 

「それだけだ!」

 

王直は必死にシロウの腕を外そうと掴むがびくともしない。

 

「俺は…俺はただ金が欲しかった!」

 

シロウはしばらく無言だった。

 

怒鳴りもしない。

 

殴りもしない。

 

ただ王直を見つめている。

 

その静けさが、かえって恐ろしかった。

 

「…仲間を売ってまで?」

 

「ハッ仲間?」

 

王直が苦しそうだが、鼻を鳴らし笑う。

 

「海賊にそんなものがあるかよ……!それにこれはロックスが始めた事だ!儲け話があると言われ来たが、一向に儲からねぇ!ただただ使い潰される事にうんざりしたんだよ!!!」

 

その瞬間、シロウの表情が変わった。

 

「…そうですか」

 

声が低くなる。

 

「あなたにとっては、そうなのですね」

 

王直を壁際へ押し付け締め上げる。

 

ドンッ!

 

「次の質問だ」

 

「……っ!」

 

「シャッキーさんは、どこへ連れて行かれた?」

 

「知らねぇよ!」

 

即答ゆシロウの眉が僅かに動く。

 

「……もう一度聞くぞ」

 

「だから、本当に知らねぇんだ!」

 

王直が叫ぶ。

 

「俺はあの連中をハチノスに入れただけだ!」

 

「その後は?」

 

「知らねぇ!」

 

「誰が連れて行った?」

 

「神の騎士団の奴らだ!」

 

「どこへ?」

 

「だから知らねぇって言ってるだろ!しつけぇな!」

 

王直は首を振る。

 

「俺が知ってるのは、あいつらがシャッキーを連れてきて、船に乗せたってことだけだ!」

 

シロウは黙っている。

 

「船の行き先は?」

 

「話聞いてたのか!?知らねぇ!」

 

「他には誰がいた?」

 

王直が一瞬だけ言葉を詰まらせる様子にシロウは見逃さなかった。

 

「誰ですか?」

 

「知らねぇ!」

 

「では、なぜ今黙ったのです?」

 

「……」

 

「言え」

 

王直は目を逸らす。

 

「…五老星が乗った政府の船だった」

 

「どこの港へ向かったかは?」

 

「分からねぇ」

 

「本当に?」

 

「本当だ!」

 

王直は震える声で答える。

 

「俺は金を受け取って、連中を島へ入れただけだ! シャッキーをどこへ連れて行くかなんて聞いてねぇんだ!五老星は帽子を被った奴だった!そんだけしか知らねぇ!!」

 

シロウは王直の目を見て、見聞色を研ぎ澄ますが、王直の言っている事に嘘はない様子だった。

 

来た五老星は"サターン聖"だ。

 

これ以上聞いてもシャッキーの行き先について王直は本当に知らないだろうと考え、シロウはゆっくりと手を離した。

 

王直の身体が床へ落ちる。

 

「げほっ……!」

 

王直が咳き込むなか、シロウは背を向けた。

 

「……分かりました」

 

「は……?」

 

「あなたが何をしたのかは、もう十分理解しました」

 

王直が顔を上げる。

 

「待て……!」

 

シロウは冷徹な目を向けながら振り返る。

 

「あなたを殺したいくらいにはムカついています…ですが、船長にも確認を取らず、行うのはハチノス内でのルールに反します。後で仲間たちから相応の裁きを受けてもらいます」

 

「……!」

 

「ですが、今は――」

 

シロウの瞳に再び冷たい光が宿る。

 

「シャッキーさんを取り戻すことが先です」

 

王直が震える。

 

「お、お前……どこへ行く気だ?」

 

シロウは答えない。

 

ただ、扉へ向かって歩き出す。

 

「待て!」

 

王直が叫ぶ。

 

「行き先も分からねぇんだぞ!」

 

シロウは足を止めた。

 

「……ええ」

 

「だったら――」

 

シロウが静かに振り返る。

 

「仲間を裏切ったあなたには関係ありません…私が必ず見つけます」

 

その言葉には、一切の迷いがなかった。

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

別の場所では――

 

ロックスたちがシロウの後を追っていた。

 

「クソッ!」

 

ロックスが拳を握る。

 

「シロウの奴、どこまで行きやがった!」

 

白ひげが低く呟く。

 

「……あいつ、本気で怒ってるな」

 

ステューシーも不安げに周囲を見渡す。

 

「シャッキー…無事ならいいけど」

 

ロックスは拳を握り直した。

 

「王直を問い詰めれば、行き先くらい分かると思ったんだがな…肝心の本人がどこにいやがるんだか」

 

その時遠くから――

 

コツ、コツ、コツ……と足音が聞こえてきた。

 

シロウがひとりでに戻ってきた。

 

見つけた瞬間ロックスが駆け寄る。

 

「シロウ! 王直はどうした!」

 

「奥の酒場にいます。尋問をしてきました」

 

「シャッキーの居場所は?」

 

「……知りませんでした」

 

全員の顔が曇る中、シロウは続けた。

 

「しかし、手掛かりはあります」

 

「何だ?」

 

シロウは空を見上げる。

 

「来たのは五老星が乗っている政府の船です」

 

ロックスの目が鋭くなる。

 

「五老星だと?…なんで奴らが?」

 

「分かりませんが…」

 

シロウは静かに告げた。

 

「一度、世界政府の船を追います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチノスを出てからシロウは、一人で政府の船を追っていた。

 

ロックスたちは何度も同行を申し出た。

 

だが、シロウは首を横に振った。

 

「落ち着いて聞いて下さい」

 

「落ち着いてきいてられるか!?シャッキーを攫ったのは政府だぞ!お前一人で追ってどうすんだよ!」

 

ロックスが怒鳴る。

 

「なら俺たちも行く!」

 

「お気持ちはありがたいですが……」

 

シロウは静かにロックスを見る。

 

「全員で動けば、政府に警戒されます」

 

「……」

 

「私一人なら、こちらの被害が一番少なく動けます」

 

ロックスはしばらく黙り――

 

「わかった…死ぬなよ」

 

「はい。もちろん死ぬ気はありません」

 

それだけを交わしてシロウは一人で海へ出たが、政府の船はハチノスから出航していて時間が経っていた為、追うことが難しく直接追い続けることはできなかった。

 

そこでシロウは別の方法を取った。

 

政府の施設や支部に補給所、情報拠点、政府と繋がりを持つ裏の組織など一つずつ潰しながら、情報を集めていく。

 

「シャッキーという女性を乗せた船が、どこへ向かった?」

 

「し、知らねぇ!」

 

「そうですか」

 

ドンッ!!

 

施設の壁が吹き飛ぶ。

 

「では、次へ行きましょう」

 

シロウは淡々と歩き出す。

 

 

政府施設を襲撃するたび、情報は少しずつ繋がっていった。

 

「西の海域へ向かった」

 

「いや、世界政府本部方面だ」

 

「天竜人の船が同行していた」

 

「神の騎士団が護衛していた」

 

断片的な情報しか無い状況で纏まりが無かった。しかし一年間、シロウは諦めなかった。

 

一つの情報を得れば、次の場所へ行き次の場所を潰せば、さらに次へと繰り返した。

 

髪は伸び、服は傷み、身体には無数の傷が増えていった。

 

それでも―シロウは止まらなかった。

 

 

 

 

 

◆一年後

 

とある政府施設の地下深く。

 

シロウは一枚の資料を手にしていた。

 

「…ゴッドバレー?」

 

資料には、極秘の記録が残されている。

 

数年に一度、世界政府が極秘に開催する天竜人たちによる巨大な催し。

 

そこへ集められる奴隷や囚人、世界各地から連れてこられた者たち。そしてその島に住む人々が催しである狩りの対象となる。

 

シロウの目が細くなる。

 

「…なるほど…相変わらず胸糞悪いことをしますね政府は」

 

これまでの情報が一本に繋がった。

 

シャッキーを連れ去った神の騎士団に天竜人、ゴッドバレーて行われる催し。

 

シロウは資料を握り締める。

 

「あなたがたは…シャッキーさんを商品にするつもりか!」

 

纏めた情報から確信に近いものを得たシロウは懐からでんでん虫を取り出した。

 

横には盗聴防止用の白でんでん虫を添え長い追跡の末、ようやく仲間へ連絡を取る。

 

 

◆ハチノス

 

「――プルプルプル… ―プルプルプル」

 

ロックスの前のでんでん虫が鳴る。

 

「誰だ?」

 

受話器を取る。

 

『もしもし、私です』

 

聞き慣れた声。

 

ロックスの目が見開かれた。

 

「…シロウか!?」

 

『お久しぶりです、ロックス』

 

「お前、今どこにいやがる!」

 

『政府施設です、違法研究をしている場所ですが破壊していたとこです』

 

「また一人で乗り込んだのか!」

 

『はい』

 

「一年も連絡寄越さずに何やってやがった!?お前ば普段から言ってるほうれん草とやらはどうした!!?」

 

『…ロックス。ほうれん草では無く、報連相ですよ?』

 

「揚げ足とってんじゃねぇよ!?」

 

ロックスが怒鳴るが、シロウは気にせず話を続ける。

 

『シャッキーさんの行き先が分かりました』

 

その一言で――

 

船長室にいた全員が静まり返る。

 

「…本当か?」

 

『はい、場所はゴッドバレーという島です』

 

「ゴッドバレー……?」

 

白ひげが呟く。

 

シロウは続ける。

 

『一年かけて政府の施設を追い、その島で天竜人がゴッドバレーで大規模な催しを行うという情報を掴みました。そして、シャッキーさんを攫った神の騎士団も集まるでしょう』

 

ロックスは拳を握った。

 

「…シャッキーもか?」

 

『恐らく。予想では開かれる催しの景品にされるでしょう』

 

「なら――」

 

ロックスの口元が大きく吊り上がる。

 

「決まりだ。全員、ゴッドバレーへ向かうぞ!」

 

船長室にいた全員が立ち上がる。

 

「シロウ」

 

ロックスが再び呼び掛ける。

 

「お前はどうするんだ?」

 

『私も向かいます』

 

「場所は分かってるんだろ?なら俺たちと一旦合流しろ」

 

『…いえ、私は先に向かいます』

 

「…理由は?」

 

ロックスが頭を抱える。

 

『現状の単独行動が好ましいからです。政府施設を襲撃したことで政府からの私へのマークは厳しくなっています。私がこのまま単独で動く事で海軍や政府勢力を分散させられます。そうすればロックス達も動きやすいのでは?』

 

「……ったく」

 

ロックスは呆れながら笑った。

 

「分かった。今は単独行動は許すが、合流したら今度は勝手に消えるなよ?」

 

『…努力します』

 

「努力じゃねぇ!約束しろ馬鹿野郎!?」

 

シロウは小さく笑う。

 

『では、ゴッドバレーで合流しましょう』

 

通信が切れる。

 

 

シロウはでんでん虫を懐へ戻した。

 

窓の外には、荒れた海、その先に目的のゴッドバレーがある。

 

「一年…ですか」

 

シロウは静かに呟く。

 

「ようやく、ここまで来ました」

 

黒い外套を羽織り刀を腰に差し立ち上がる。

 

一人、船を止めてある港へ向かう。

 

「必ず迎えに行きます」

 

その先で待つのが天竜人たちの狂宴と、ゴッドバレー事件。そして、ロックス海賊団と世界政府の運命を大きく変える、決定的な戦いだった。

 

 

 

 

 

 

ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。

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