シロウからの通信が切れた甲板では、先ほどまでの空気が一変していた。
白ひげは腕を組みながら海を見つめ、シキは船の縁に腰掛けている。
ジョンとガンズイは、それぞれ武器の手入れを始めていた。
ステューシーだけが静かに海図を確認している。
『―ゴッドバレーに、シャッキーさんがいる可能性があります』
最後に聞こえたその言葉が、全員の頭から離れなかった。
ロックスは握っていた電伝虫を、ゆっくりと置く。
「…一年か」
白ひげが感慨深いように低く呟いた。
「一人で一年も政府の施設を潰し回って、ようやく掴んだ情報がゴッドバレー…か」
シキが腕を組む。
「相変わらず無茶苦茶な奴だな…一人で政府施設を襲撃していた、というのも気になるな」
ステューシーが静かに言った。
「情報を得るためとはいえ、一年間ずっと単独でよく生きてたものね」
ジョンが酒瓶を傾ける。
「ハッ…あいつならそうするだろうさ。イカれてんだよ」
だが、その声にはいつもの軽さがない。
「問題は目的地のゴッドバレーだ」
ガンズイが口を開いた。
「天竜人の大規模な催しがあるんだろ? 神の騎士団まで集まるって話なら、相当な警戒態勢になってるはずだ。オマケに海軍もわんさかいるだろうよ」
全員の視線がロックスに集まり、視線を向けられたロックスが話し出す。
「シロウは俺たちに『先に行く』って言ったが…また単独でかき回すつもりだな?」
白ひげが眉をひそめる。
「…おいおい、流石にあいつ一人だと厳しいだろ?…ロックス」
「なんだ?」
「シロウが先にゴッドバレーへ入ると言った意味を考えたか?」
「当然だ」
ロックスは即答した。
「俺たちが大勢で向かえば、あいつの言うように政府に気付かれる可能性が高い…だからあいつは先に入って、シャッキーの居場所を探すつもりなんだろうよ」
「…あいつ、また一人でやるつもりなのかねぇ」
ジョンが呆れたように笑う。
ステューシーが答えた。
「たぶんね」
「あ?たぶん?」
「シロウは自分が危険だから、という理由では動きを変えないもの。分かってるでしょ?」
ステューシーは海図から目を離さない。
「あの人はあくまでもシャッキーを見つけることを最優先にしてるから、そこまで無茶はしないはずよ…ロックスからも軽くではあるけど釘は刺してるしね」
「…なるほどな」
シキが舌打ちをする。
「なら、あいつが何かを見つけるまで俺たちは待ってりゃいいのか?馬鹿が。シャッキーを探してる間に、今度は自分がとっ捕まったらどうするつもりだあの野郎」
「シロウなら捕まらない、と言いたいところだけど…」
ステューシーが目を細める。
「相手が神の騎士団となると話は別ね」
ジョンが立ち上がった。
「だったら急ぐしかねぇだろ」
「当然だ」
ロックスが即答し拳を強く握りしめる。
「一年だ」
その声に、怒気が混じる。
「一年間、あいつは一人で情報を探した。当てもなくだ」
ロックスの言葉に幹部勢の表情が引き締まった。
自分達も情報を探ってはいたが、シロウほどの情報は集まらなかった。
ロックスの腹心ともあろうシロウに負担がかかり過ぎているのを気にしていた。幹部勢はこのロックス海賊団に入って長く、シロウとも関わる中で絆されている部分もあり仲間殺しが当たり前だったのがいつしか無くなっていたのもシロウの影響が強かった。
皆、シロウの影響を受け恩をそれぞれ感じていた。
「だったら今度は俺たちの番だ」
ロックスは全員を見回す。
「シャッキーを連れ戻す」
白ひげがニヤリと笑った。
「あいつばっかりいい思いはさせねぇ…面白くなって来たじゃねぇか」
シキも口元を吊り上げる。
「天竜人の祭りに乗り込む、か。ジハハハ!天竜人の祭りを、俺たちで台無しにするってわけか!腕がなるぜ!」
ジョンは酒瓶を掲げた。
「せっかくの祭りなんだろ?楽しんだもん勝ちだわな」
ガンズイも頷く。
「シロウは、この一年一人で戦ってきたんだ。これ以上あいつに一人で戦わせるわけにはいかねぇな」
ステューシーは静かに微笑んだ。
「ええ。あの人は自分一人で全部背負い込む癖があるもの。あったら叱らなくちゃね♡」
ロックスは前方を睨む。
「シロウ」
遠く離れた海の向こう。
今頃、シロウは一人でゴッドバレーを目指している。
「俺はお行儀よく待つつもりはねぇぞ?俺たちの敵は世界なんだ…世界政府にいる連中が態々降りて来てくれたんだ。この機会を逃すかよ」
獰猛な笑みが浮かぶ。
「今度は俺たちが、お前を迎えに行く。だから死ぬんじゃねぇぞ?相棒!」
そして、ロックス海賊団の船は、ゴッドバレーへ向けて進路を変えた。
目的は一つ。シャッキーの奪還しシロウを、一人で戦わせないことだった。
ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。
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