ONE PIECE 救済を求める神父   作:ヴァンプッシュ

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第六話 ハラルドとの謁見

巨人の国・エルバフ。

 

その中心に存在する巨大な黄金の城には巨人達ですら見上げるほど巨大な門があり、壁面には古代戦士達の異形を讃える彫刻が彫られている。

 

歴代の戦士の中でも一際異彩を放ち、通常の巨人よりも大きい古代巨人族の血を引くエルバフの王であるハラルドがロキの件を部下から聞き慌てて帰還した。

 

ズシン――。

 

ズシン――。

 

一歩踏み出す度、

城全体が揺れる。

 

赤銅色の長髪に鬼のような角。

全身に刻まれた戦いによってついた無数の戦傷。

 

玉座へ向かう途中、兵士達が一斉に頭を下げる。

 

「ハラルド王!!」

 

「遠征、お疲れ様です!!」

 

だがハラルドは答えず、その目はただ一点を見ていた。

 

玉座の間にいる人影を…そこに、あり得ない連中が座っていたからだ。

 

ロックス海賊団。

 

王の玉座の前で、その船長のロックスが足を組んで笑っている。

 

「…ヴォハハハ!!よう、久しぶりだなァハラルド」

 

空気が凍った。

王に対する話し方ではない。

 

兵士達の顔が青ざめるが、ハラルドは怒鳴らなかった。

 

「久しぶりだな、ロックス。久々の再会は嬉しいが、息子が怪我をしたと聞いてな。慌てて帰ってきたんだ。まずは無事を確認したい」

 

「それは大丈夫ですよ。こちらで治療していますから」

 

その巨大な瞳は、話に入ってきたロックスの隣に立つ白髪の青年を捉えていた。

 

「…シロウ。お前も久しぶりだな」

 

シロウは静かに頭を下げる。

 

「お久しぶりです、ハラルド王」

 

ハラルド・ロックス・シロウの3人が会うのは聖地マリージョア以来だ。

 

かつて。

 

ロックスとシロウが“聖地”へ侵入した際、ハラルドはそこで彼らと遭遇していた。

 

巨人族の過去の所業を憂い償おうとする王。

世界を壊そうとする海賊。

全人類の救済を掲げる青年。

 

本来交わるはずのない三人だがこうして再開している。

 

奇妙な縁だなと思うハラルド。

 

「…まだ生きていたか。ロックス…お前の悪評は聞いてるぞ?ここに何をしにきた!?」

 

ロックスが笑う。

 

「ヴォハハハ。会いたかったぜ!!!ハラルドォ!!」

 

すると、玉座の横からロキが現れたがその状態に目を見開く。

 

額から目にかけてシロウの言うように治療した後の為、包帯があるが怪我をした原因は聞いてはいなかった。思ったよりも怪我が酷い様子に目を細める。

 

「…親父(れ、連絡したらまじに帰ってきやがった…大事な遠征中に来るわけないって思ってたのに)」

 

「ロキ無理はするな。お前が強いのは知ってるが冥界にはあまり行くな…あそこは危険がいっぱいだ」

 

ロキから伝わる禍々しい覇気の残滓。

 

そして急に来たロックス達。

 

全てを察したロックスにより玉座の間に殺気が満ちる。

 

ハラルドの怒りを感じた兵士たちの顔は青ざめていく。

 

「ロックス…貴様ロキに何をした」

 

巨体から放たれる低い声により城が揺れる。

 

シキですら異様な威圧感に口元を歪める。

 

「ジハハ…こりゃヤベェな」

 

白ひげは腕を組む。

 

「…大事な息子が怪我すりゃ怒るわな」

 

だがロックスは笑った。

 

「教育してやっただけだぜ?」

 

ハラルドの巨大剣がロックスに向かって振り下ろされる。

 

しかし――。

 

ギィィィン!!!!

 

ロックスとシロウ。

 

二人が同時に剣を抜きその一撃を受け止めていた。

覇王色同士が激突した影響か座の床が砕け衝撃波が周囲に拡散し貫く。

黒い稲妻が玉座の間を走る中、周囲にいた兵士達が巨大な覇気に当てられ次々気絶していく。

 

ロキはその光景に目を見開く。

 

「(…すげえ!親父の攻撃を止めた!?)」

 

ロックスとシロウ。

 

知り合ったばかりの小さい人間が二人並んで父であるハラルドの攻撃を止めている光景にロキは驚いていた。

 

「…貴様ら!絶対に許さんぞ!?死を持って償え!」

 

「ヴォハハハハ!!挨拶代わりにしちゃ重ェなァ!!」

 

「ハラルド王!落ち着いてください」

 

「落ち着けだと?」

 

ハラルドの覇気がさらに膨れ上がる。

 

「我が子に傷を付けられて、黙っている親がいるかぁ!!!」

 

だがその時。

 

「待ってくれ!親父」

 

止めたのは意外にもロキだった。

 

ハラルドが目を向ける。

 

ロキはロックスを睨みながら言う。

 

「そいつらムカつくけど、やったのはこいつらじゃねぇ。やられそうにはなったけど、そこの奴…シロウに助けられた」

 

ちらりとシロウをハラルドが見る。

 

「…嘘ではないのだな?」

 

その言葉に、シロウは少しだけ目を細め頷いた。

 

「ヴォハハハハハハ!!聞いたかシロウ!!あったばかりのガキに懐かれてんじゃねェか」

 

「グララララ!!随分気に入られたもんだなァ!!」

 

「おや?そうなんですか?ロキ?」

 

ロキは顔を赤くする。

 

「ち、違ぇ!!そんなんじゃねぇ!?」

 

だがハラルドだけは、黙ってシロウを見ていた。

聖地で見た時より、遥かに変わっている。

覇気にあの時聞いた覚悟にはいまだにブレずにいる事をハラルドは理解していた。

 

この青年は、ただの海賊ではない。世界そのものを変えようとしている。

 

三者の覇気がぶつかり続け城全体が軋んでいたが突如ハラルドが剣を引いた。

 

ズシン――

 

巨大な刃が床へ突き立つ。

 

覇気の衝突が止み、空気が重く沈む。

 

「俺は勘違いをしていたようだ。すまなかった。座れ…話を聞こう」

 

「ヴォハハハハハ!!ようやく話す気になったか」

 

「話が進まなかったのは、あなたが話をややこしくするからでしょう…ロックス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な円卓…そこへロックス海賊団が座る。

巨人にとっては普通のテーブルでも人間たちであるロックス海賊団にとっては土地のように感じる大きさだった。

 

ロックスはハラルドと話をする為、肉が乗った皿の上へ座る。

白ひげは運ばれてきた酒樽を勝手に開け、シキは椅子へふんぞり返る。

ステューシーは優雅に脚を組み、王直は肉を貪る。

マーロンは葉巻をふかし、ガンズイは巨大なフルーツを頬張っている。

 

完全に敵地とは思えない態度ではあったがハラルドは気にしなかった。

 

その目はずっと、シロウを見ていた。

 

「…お前は変わったな。初めて会ったあの時のお前は、“救済”という理想に酔っている小僧だと思っていた」

 

空気が少し張る中でロックスだけが笑っていた。

 

「ヴォハハハ!言うじゃねェかハラルド!!テメェも似たようなもんだろうが」

 

だがハラルドは真剣だった。

 

「だが今は違うようだな。本当にやり遂げようとしている」

 

巨大な瞳が細まる。

 

「お前は地獄を知った目をしている」

 

その言葉にシロウは目を伏せ沈黙で答える。

 

ロキは普段見ない父の様子を不思議そうに見た後シロウを見る。

 

ハラルドの言葉にシロウはここ数年の航海で改めてこの世界は理不尽な世界だと理解させられていた。

 

世界政府による奴隷の黙認。

加盟国以外に人権がない制度。

天上金による国々への財政圧迫。

それによって起こる飢餓による国の陥落。

海賊などの無法者の襲撃により生き絶えていく人々。

 

間に合わずに失われたもの、その全てが彼の中に積み重なっていた。

 

「…ええ。たくさん見てきましたよ…理想だけで世界は変わらない。実力が無ければ…弱ければ何も変えられないし救えない」

 

白ひげは酒を飲みながら呟く。

 

「考え方は、ここ最近でロックスに染まったとも言えるがな」

 

「違ェよニューゲート」

 

ロックスは獰猛に笑った。

 

「こいつは最初から壊れてた。馬鹿げた夢を本当にやり遂げようとしてる。だから面白ェんだ」

 

ロキはシロウを見る。

 

"壊れている"

 

そう言われてもシロウは否定しない。

自分が壊れているなど自覚しているからだ。

 

隣にいるロキはその人の死に憂いているシロウの姿が妙に頭に残った。

 

ハラルドは腕を組むと話を切り替えるようにロックスに聞く。

 

「それで?今日は何をしに来た」

 

ロックスが口角を吊り上げた。

 

「決まってんだろ」

 

その瞬間、覇気が膨れ上がる。

 

「エルバフを味方に…と言うよりお前の勧誘だ!俺の仲間になれ!!ハラルド!!!」

 

兵士達がざわつく中、ハラルドは笑わない。

 

「断る」

 

即答だった。

 

「問題児になったお前らなんかと仲間なんかなった日にゃ他国からの信頼なんか一気に失う!」

 

「お前が政府のためにやってることなんか無駄だ!世界政府がお前の要望なんざ聞くわけねぇだろ!?あの気時わかっただろうが!」

 

「俺が動く事で巨人族に対する世間の目は変わってきた。やっとここまで来たんだよ!」

 

「お前は世界政府に支配されてぇのかよ!?」

 

「そうならねぇ様に道を模索してる!自分達含め皆対等であるべきだ!シロウの理想の様に!」

 

「ハラルド!エルバフは誇り高い最強の戦士の国だぞ!弱い奴の意見なんか聞くなよ!力で叩き潰せよ!」

 

「そんなエルバフは昔の話だ!エルバフは変わる!」

 

ロックスは沈黙した。

ほんの一瞬、息が詰まったその隙をハラルドは見逃さなかった。

 

ハラルドはシロウを見る。

 

「お前はどうだ?シロウ」

 

シロウは静かに答える。

 

「私はロックスの意見には賛成です。今の根本的な不幸には世界政府が確実に絡んでる。それによって出てくる奴隷も、差別される種族も、踏みにじられる弱者も全てが世界政府の被害者だ!」

 

ロキが目を見開く。

そんなことを言う奴はエルバフでは聞いたことのないものだった。

 

巨人は強者の国で弱者を救うなどと普通は口にしない。

 

ハラルドは目を閉じる。

 

「…お前は甘いな」

 

「ええ、否定しません。ですが、それでも誰かがやらなければならない。動かなければ何も変えられない!」

 

「敵が巨大すぎる!シロウ!世界政府だぞ!?世界政府が定めた法ルールだぞ!簡単にいくものか」

 

「ルールですか…ルールの中で生きていても誰も救えなかった。そう…人類を救うためならば…たとえルールを破る事になろうとも誰にも()の夢を邪魔させはしない!!」

 

その瞬間、ロキの胸が強く鳴った。

 

“いい目をしている”

 

自分の気味悪がられた目をそう言った男。

 

今なら少し分かる。この男は、自分達を“怪物”として見ていない。

一人の人間として見ている。

 

だから――。

 

ロキは気付かぬうちに、

シロウの言葉を真剣に聞いていた。

 

結局、ロックスによるハラルドの勧誘はならず巨人の国を去ったロックス海賊団はその後は世界でも錚々たる勢力を揃え拡大していく事になる。

 

 

 

 

 




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