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ハラルドの勧誘に失敗し、エルバフを後にした頃の話。
ロックス海賊団の船は、新世界を悠々と進んでいた。
「ヴォハハハハハ!!ハラルドの野郎は惜しかったな!」
その横でシロウは静かにエルバフで仕入れた紅茶を口にしていた。
「惜しかった、ではありません。あなたが最初から喧嘩腰だったから話すのにだいぶ遠回りする羽目になりましたよ。」
ロックスは肩をすくめる。
「俺に交渉なんざ期待するなよ。性に合わねぇ事はお前も知ってるだろ?力を見せつけた方が早ぇ」
「その結果、断られました」
「まぁそうだな!」
ロックスは全く気にした様子がない。
その様子を見たニューゲートは酒を飲みながら呟く。
「グララララ。失敗したってのに気楽だな」
「ジハハハ!まぁ船長が惚れ込んだ男だろ?最初から簡単に仲間になるわけねェだろ」
そんな話をする船員を尻目にロックスは世界地図を広げた。
「ぐだぐだ言っててもしゃーねぇ。なら次だ。面白ぇ奴ァまだまだいる」
シロウもロックスが広げた地図を眺めながら各海の手配書リストから該当の海賊の手配書を探す。
「西の海に最近名を上げている女海賊がいますね」
「ほう?誰だその女は?」
「シャーロット・リンリン。異常な怪力と体躯を持つ女性で能力者でもあるようですね。側には小柄な男性もいるようですが仲間でしょうか?」
マーロンが持ってニュースクーの新聞には一人の写真が載っている。
『怪物 シャーロット・リンリン』
その隣には、細身の男。
『料理人 シュトロイゼン』
マーロンが最近でた世界経済新聞を持ってきて話す。
「直近の新聞にも載ってたぞ?それに、この間襲った海軍基地にあった政府への報告書にも載っていた女海賊だな。まだ若いが危険度は高いって噂だ」
王直が補足するように話す。
「確か菓子が無いと暴れるとか言ってなかったか?」
「菓子が無いと暴れる??なんだそりゃ?」
シキが呆れながら反応するとステューシーが理由を話す。
「特定の食べ物を急にどうしても食べたくなる衝動だったかしら?食べられないと衝動を抑えきれなくなり、理性を失って自分の部下や街中を無差別に破壊し尽くす危険な発作って聞いたわ」
「おいおい、そんな奴仲間なんかにして大丈夫かよ?」
ロックスは話を聞くと立ち上がり船室を出る。
「決まりだ!まずは会いに行くぞ」
「えぇ!?勧誘すんのか!こいつ!?」
「俺達は別に仲良しこよししてる訳じゃねぇだろ?まだまだ戦力がいるんだ。強ぇに越した事はねぇ」
西の海のとある港町。
そこでは巨大な宴が開かれていた。
山のようなケーキ。巨大な肉。いくつも空いた酒樽。
その中心ではまだ二十代半ばのリンリンが笑っていた。
何皿もある料理が一瞬で空になる。
「もっと甘い物持って来ーい!!」
店主は涙目で叫ぶ。
「もうありません!!勘弁して下さい!」
そこへロックス達が入る。
突然の来客にリンリンと傍にいた男…シュトロイゼンは振り返る。
「誰だお前?見ねぇ顔だな」
「いや待てリンリン…こいつぁ」
「派手に食ってるじゃねぇか。俺はロックス・D・ジーベック。お前を仲間にしに来た。」
島が静まり返る。
リンリンは数秒見つめたあと――
大笑いした。
「マ〜〜〜ママハハハハ!!いきなりだねぇ!!」
シュトロイゼンはロックス達を警戒する。
「リンリン、気をつけろよ?この男は危険だ」
「危険?危険なんか当たり前だろうが!じゃなきゃ海賊なんてやってねぇ」
シロウが一歩前へ出る。
「初めまして。私はシロウと申します。あなたがシュトロイゼンですね」
シュトロイゼンは目を細める。
「…こんな俺をご存じで?」
「彼女がそばに置くという事は信頼されているからでしょう?私は彼女よりもあなたが気になりますね」
「そりゃどうかね?評価されるのに悪い気はしねぇが、出会った敵はだいたいアイツに消されるからな。印象に残んねぇんだよ(俺の情報なんざ殆ど無い筈なんだが…それが逆にこいつにとっては怪しかったのか?)」
シロウはただ微笑むだけだった。
リンリンはロックスを睨む。
「仲間になる理由は?」
ロックスは即答した。
「好きなだけ暴れろ。好きなだけ食え。好きなだけ奪え。だが、俺の儲け話に協力して欲しい。そうすりゃお前のしたい事は何だってできる!」
その言葉にリンリンの目が輝いた。
「マーーママママ!面白いじゃないか!!」
しかしシュトロイゼンが止める。
「リンリン!いきなり会ったやつを信するな!ましてや相手はロックスだぞ!?」
ロックスはニヤリと笑う。
「交渉は決裂だな?じゃぁ力比べだ!!」
その言葉と同時にリンリンの拳とロックスの拳が激突し巨大な島が揺れる。
ドゴォォォォン!!
大地が割れ、瓦礫は海まで吹き飛ぶ。
「ジハハハ!怪物同士だな」
「グラララ…女だってのにこの力か。腕力だけで言えばロックスとタメはるな」
リンリンは息を弾ませながら笑った。
「アンタ最高だ!!簡単には死ぬなよ!」
シュトロイゼンはシロウを見る。
「お前は戦わないのか?」
「私は必要以上に争いを望みません。ですが仲間を傷付ける相手には容赦しません。それだけです」
穏やかな笑顔を浮かべるシロウだが、一瞬だけ放たれた覇気に、シュトロイゼンは冷や汗を流した。
(一瞬感じたこいつの覇気…こいつはロックス以上に底が知れない)
戦闘が続く中、リンリンは突如攻撃をやめ話し始めた。
「決めた!!私はアンタらについていく!!」
「ヴォハハハ!なら決まりだな」
するとシュトロイゼンは深くため息をついた。
「…リンリンが行くんなら俺も行くさ。料理人がいなけりゃ困るだろ」
ロックスはシュトロイゼンの肩に手を回し肩を叩く。
「最初からお前も連れて行くつもりだった。料理人は死活問題でな」
「死活問題…ん?待てロックス。普段は誰がやってたんだ?」
「そこのシロウが殆ど回してた。うちの海賊団には器用な奴がいなくてな?料理・洗濯はこいつが担当みたいなモンだったからな」
シュトロイゼンが驚きシロウを見るも、シロウは向けられた目線に対して気不味そうに明後日の方を向いていた。
シュトロイゼンはシロウに近づき周りに聞こえないよう耳打ちで会話する。
「(お、お前マジか!?そのなりでか!?)」
「(…ニューゲートなんて力任せに洗うから衣服は引き裂きますし、ステューシーはめんどくさがりますし、他の人はそもそもやらないから必然的に自分がやるしか無いんです)」
「(苦労してんだな…ひとまずは料理は任せろ)」
「(本当に助かります)」
こうしてリンリンとシュトロイゼンはロックス海賊団の仲間になった。
リンリンとシュトロイゼンを仲間に加えたロックス海賊団。
その頃、新世界では一つの噂ニュースが広がっていた。
【海軍が怪物を捕らえる。正体は鬼のような角を持つ、ウォッカ王国出身の化け物】
その新聞記事を読んでいたリンリンが笑った。
「マママママ!! あのガキ、とうとう捕まったのかい!」
「なんだ?リンリン?こいつ知ってんのか?」
「ああ、怪物さ。まだガキだけど、将来間違いなく世界最強クラスになる」
その言葉にロックスは笑った。
「なら決まりだ。今は護送中みたいだからな。奪いに行くぞ」
その時、見張りのガンズイが海軍の護送艦隊を発見する。
「ロックス!! 海軍の大型艦隊だ!!すげぇ数だぞ?」
「ジハハハ。海軍が新世界でこんな大所帯とは珍しいな。もしかして探していたヤツか?」
王直が双眼鏡を覗く。
「話していた通りありゃ護送船だな…囚人がいる。」
その瞬間、護送船の甲板が爆発した。
ドォォォォン!!
巨大な鉄鎖が千切れ飛び海兵たちが吹き飛ばされる。
そして現れたまだ若い一人の少年。
一対の角に圧倒的な体躯、傷だらけの身体だが目には獣のような殺気が宿っていた。
「腹減った…なんか寄越せ」
それが第一声だった。
白ひげが笑う。
「グラララ!!生意気な癖に大した覇気だな」
シキも口元を吊り上げる。
「ジハハハ、こいつは面白ぇ」
そんな状況を見過ごせなかった護送船を指揮していた海軍中将が叫ぶ。
「奴を逃がすな!!カイドウを何としても捕らえろ!!」
カイドウ。
ウォッカ王国出身。
奴隷であったが強すぎるが故に戦争に駆り出されていたが、ついには国に売られ、幾度も海軍へ捕らえられた怪物。
ロックスは興味深そうに笑う。
「リンリンの言うとおりだな。こいつは欲しいな」
シロウは静かに答える。
「……ええ。ですが素直に話は聞かなそうですね」
「なら分かってんだろ?いつも通り力づくで分からせるまでだ」
海軍艦隊を壊滅させた後、島の海岸でカイドウはロックス達を睨んでいた。
「…お前らも俺を捕まえるのか?」
ロックスは笑う。
「違ぇよ。カイドウであってるよな?お前、仲間になれ」
カイドウは眉をひそめた。
「……は?いきなり何言ってんだお前?俺は誰にも従わねぇ」
するとシロウが前へ出た。
「では、一つお聞きしますがあなたは何を求めていますか?」
カイドウは鼻で笑った。
「簡単な事だ…強さだ。誰にも負けねぇ力だ」
シロウは静かに微笑む。
「それなら…私たちの船は、きっと退屈しませんよ?世界最強を目指すのであれば、ロックスほど相応しい相手はいないでしょう」
カイドウはシロウを見る。
「お前も強ぇのか?」
「ええ…多少はですが?」
その穏やかな返答に、カイドウは笑った。
「その顔が気に入らねぇ。俺と戦え」
近隣の無人島の海岸。
ロックス海賊団が見守る中、シロウとカイドウが向かい合う。
「先に言っておきます。私はあなたを倒すつもりはありません。ただ、仲間になっていただきたいだけです。」
カイドウは金棒を構える。
「知るか!!甘っちょろい事言ってんじゃねぇ!!!」
ドゴォォォォン!!!
振り上げた金棒による一撃をシロウに目掛けて振り下ろし大地が砕ける。
しかし、シロウはその攻撃を片手で受け止めていた。
「……っ!?」
カイドウの目が見開かれる。
シロウは静かに言う。
「良い目をしています。怒りも、悲しみも、悔しさも経験した目です。ですが、それだけではありませんね?」
あなたはまだ、生を諦めていない。
カイドウの瞳が揺れる。
「……何なんだよお前は?」
「だからこそ、もっと自由に生きてください。誰かの兵器ではなく、誰かに売られる存在でもなく、あなた自身の意志で!」
その言葉にカイドウは笑った。
「……変な奴だな。」
「よく言われます」
シロウも微笑む。
⸻
ロックスが豪快に笑う。
「ヴォハハハ!どうする、カイドウ?オメェの負けだが?」
カイドウはニヤリと笑った。
「ウォロロロ!!面白ぇ…乗ってやる。だが覚えとけ、いつか俺がお前ら全員を超える」
ロックスはさらに笑う。
「ヴォハハハ!生意気なガキだな!上等だァ!!精々超えてみろクソガキ!」
シロウは穏やかに手を差し伸べる。
「ようこそカイドウ。ロックス海賊団へ」
カイドウはその手を見つめ、力強く握り返した。
こうして後に“百獣のカイドウ”と呼ばれる怪物は、ロックス海賊団へ加わることになった。
カイドウ加入後には"財宝狂い"キャプテン・ジョンや巨体の魚人バーベルを仲間に加え、海賊たちの楽園である海賊島ハチノスの元締めを殺害し島を制圧し統率した。
起こした犯罪は数知れず、世界経済新聞を通じてロックス海賊団の結成と悪名は世界へ知られて行く事になった。
感想・評価お待ちしています。
ロックスの死についてですが、どちらかお選びください。それによって書き方を変えようと思います。
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