(多趣味故我更新遅多謝罪、夜渡満喫也)
突如始まった死の連鎖に翻弄された私達は、未だ仙台に囚われている。
早々に離脱出来たものはこの上なく幸福だったろう。
私達は荒れ狂う暴力の嵐により道を見失い、こうして日々隠れ潜むことしか出来ない。
今身を隠している廃墟から外へ出ればその瞬間、この身が砕け散ってしまうような恐怖。
辛いとき、苦しいとき、悲しいときにどこからともなく現れて、助けてくれる無敵のヒーロー。
そんなものなど現実には存在せず、ただ理不尽に蹂躙されるだけだった。
何せ食料補給すらままならず、ただこうして何日もたまたま持ち合わせていた携帯食料と、スーパーに忍び込めた際に回収できた保存食。
あとは雨水を乞うだけの日々だ。
「ああ、疲れた」
乾き切った声帯から、しがれた声にならない響きがあった。
母の危篤を知り、遥々大阪からここまで舞い戻ったばかりというのに災難だ。
結局母の死に目にも立ち会えず、どうにもこうにもという状態。
もういっそ、死んでしまおうか。
こんな所に救助など来ないのは分かっている。
私を置いて逃げた妻は賢明だった。
もうすでに大阪に逃げおおせたことだろう。
大した金も残せず、死にゆく私をどうか許して欲しい。
大の字に寝転がる。
冷え切ったコンクリートが肌を突き刺すように刺激する。
それは漠然とした絶望感であり、身体の熱を奪っていく。
次第に強まる死への恐怖が魂を蝕んでいく。
嘆きは、憎悪へ転じて視界を赤く染め上げる。
あいつらさえ、あいつらさえいなければ………!
断末魔が如き怨嗟の念が生み出したのか、周囲から見るもおぞましき呪霊が複数体湧き出てくる。
もう殺してくれ帰りたい楽してくれ嫌だ死にたい死にたくない痛い冷たい苦しい寒い熱い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
俺はまだ………
軍靴が地を蹴った。
故に、正義は此処に成る。
民衆が未来を求め続ける限り、
刀身に込められた太陽の光輝が呪いを一閃する。
それは暗雲を切り裂く雷鳴であり、名も無き民草を照らす希望の顕現。
それと同時に遥か遠方、全てを見透かしたように袈裟姿の魔人はこうほくそ笑んだ。
「嗚呼嬉しいよ。漸く
黄泉路を踏破し、邪悪を滅する光輝は1000年の時を経てなお変わることなく天地を照らす。
「ああ、助けてくれたのか………そうか、ありがとう……」
苦境に窮した男は身をやつしたまま、英雄へと語りかける。
「けど、もう私はダメなんだ。目が霞んで恩人の顔も見えやしない」
最早精根尽き果て、骸が如きその様は決して呪いに満ちたものではなかった。
「謝罪する。お前の様な無辜の民草を巻き込まぬよう、全力を尽くすと誓ったはずだったが……全く力不足だったか。」
英雄はただ死にゆく男に謝罪を告げ、己が未熟を悔恨する。
「違うよ、貴方は死にゆく私の心を救ってくれたんだ」
「そうであれば、良いのだがな」
英雄は自嘲しながら、痩せ細った手を握りしめて、消えゆく命の灯火を見送った。
「ありがとう」
「ならば礼など不要だ」
「え」
鮮血が舞う。
『5点が追加されました』
「お前の犠牲は断じて無駄にはせん」
運命の歯車は加速する。
クリストファー・ヴァルゼライド
術式:◾️◾️
得点:68点