息子の帰還~去年に繋がった異世界から死んだと思った息子が超やんごとなき方として戻ってきた件~   作:oosima

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今回も色々と急すぎ、詰め込み過ぎな展開だと感じられるかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。


001 息子の夢に出ていた現象に似たものが現実でも起きちゃった話

 ○某惑星 某所○

 

「…はぁ! はぁ…! な、何故だ…!? 何故…“魔王軍”がこんな田舎に!?」

 

 地球や木星のような星が夜空に見える、地球の中世欧州のように見えるが地球とは別の惑星の、竜巻が中心に生じて雷鳴も轟かせているループ型の橋がある町で、打ち壊された教会の前で赤子を抱えている神父が血を流しながら片膝をついていた。

 

「…それはまぁだなぁ…」

 

 その彼の前に立つのは、漆黒の蝙蝠の如き翼が大きい紋章を掲げる軍勢で、その軍勢は神父と同じ白人系の人種と、それ以外のアジア系やアフリカ系の人間たち、もしくは肌や目の色に角が生えているなどからして、人間以外の知的生命体で構成されているのがわかる大軍勢で、その先頭には一人の少年が立っていた。

 少年は土の色を思わせる濃い亜麻色の髪や瞳で中性的な美貌をしていたが、その美貌に畏怖を覚えさせるまでの絶望的な威圧感を纏っており、その身に纏うボロと広い霧が混ざったような漆黒の衣装をまとっていた。

 

「答えろ! ()()()()()()よ!!」

 

 その少年の正体は神父が憤怒と憎悪、それで隠そうとしても隠しきれない叫びが示したように“魔王”。

 かつて今の彼らが生きている時代よりもはるかに文明が進んでいた時代の名残で、何百もの星々に人々が散って暮らすようになったこの世界で、多くの人々を恐怖させている闇夜に住まう眷族“魔族”を率いる魔王の初代目であった。

 

「…だってさあ、あんた…昨年に“勇者”が産まれた時に、そこにあるその“神剣”がでかいタワーのように上空に向けて光を伸ばしたし、何よりもあんたが“この村に新たな勇者が誕生したぞー!!”ってでかい声で宣伝しまくってその子の名前も発表したらさー、普通にこっちまでその話は届くでしょ…。ファンタジーRPGとかのゲームで勇者が証拠付きで生まれたら周りに自慢するって人が昔はいたみたいだけど…。それに勇者が産まれたのがわかったら強くなるのをいちいち待つよりもこうして弱い内に解決した方が楽でしょ」

「「「「「…!!!!!!??????」」」」」

 

 魔王が呆れた様子で神父たちがいる村の中心の広場にある、神々しい日本刀と西洋剣が合わさったようなその“神剣”とそれが突き刺さった神殿の跡のような台座を指さすと、神父及びその周りにいた人々は“あれがいけなかったのか!?”と言いたげな絶望に染まった顔を浮かべた。

 

「…これで、勝ったと…お思いですか…魔王…!」

「む?」

 

 そうして周囲の人々が絶望で沈黙に陥る中、静かで凛とした女性のものだが憎悪と義憤をそこしれず感じさせる声が神剣から立ち昇ってきた。

 

「あ、たしか喋れるんだったね。まあ、始まりが目覚めたばかりとはいえ暴走したこっちの同胞の力で、武家であった家族とそれが守っていた村を山ごとふっとばされた時の生き残りが、仲間と出会った後で色々冒険した末にどっかの神に僕らを殺せる力を願ったらー…、その力は得たけど自分では動けない無機物になった元人間だったっけ…」

「…たとえ今この時を潰せても終わりません。何れは新たな主が私と共に次こそあなたをー…!?」

 

 その神剣と魔王の間で(一方的だが)憎悪と怨嗟を隠さない言葉が交わされ始めたその時、両者の間に幾つかの石が投げ込まれた。

 

「おい! あそこに魔王と神父様と神剣がいるぞー!」

「急いで駆けつけろー!」

 

 石を投げ込んできたのは、この魔王軍の襲撃を受けた地の民衆で、彼らは鎌や鋤など粗末な武器を手に大勢で近づいてきていた。

 

「…いけません! 皆で逃げてください! 魔王にはあなた達ではかないません!」

「神剣様! そのようなわけにはまいりません! 我々は! やっと! やっとーー!!」

 

 神剣はそれに悲痛な声を上げて止めようとするが、その民衆の先頭に立つ男は構わずに神父の方へ向かう。

 

「あ、あなた達…止めなさい…この魔王は…勇者でも()()ではかなう相手ではありません…」

「神父様! 今この場で逃げるわけにはいきません…だって! 我々は―――!!」

 

 民衆の代表と思わしい先頭を切る男は魔王の前に飛び出て、神父の両肩を掴んで目線を合わせて顔を近づける。

 

「―――あんたに今までの恨みを晴らせる機会が来たんだからなーーーーーー!!!!」

「にっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!??」

 

 そして、殺意と憤怒全開且つ遠慮のない右フルストレートを神父の鼻っ面にお見舞いし、神父は悲鳴と鼻血や歯をまき散らしながら神剣とそれが突き刺さっている台座まで吹き飛んだ。

 

「…え?」

 

 予想の斜め上を行った光景を目の当たりにしまった声音なのがわかる呆けた声を神剣上げるが、そこで続々と残りの民衆も神父に群がりだした。

 

「よっくも勇者とかいうガキが産まれて以降にその装備や旅立ちのための費用と称して重税を課しまくりやがったな!」

「おかげでこっちは昨年病気になった御袋の薬を買えずに死なせちまったんだぞ!」

「それで税を安くしてほしいってお願いしたら信心足りないとか魔王軍の間者とか抜かして異端異教審問で拷問や処刑をしまくりやがって!」

「ぎゃあアアアアァアアアァアアアアアァ!!??」

「…うーん、竜出身の魔王を倒せと命じて棒きれみたいな装備とそれも買えるかどうか微妙な軍資金しか渡さない初代○Qとかゲームの王様に比べたらー、勇者にとっては良い人だったかもしれないけどー…民衆にとってはすっごい負担が掛かることだったんだなー現実って…。まあ、初期の町の物価を考えれば神剣とか伝説の装備を集めるのはすっげー費用掛かりそうだし…」

「…う、ううーーー…」

 

 人々にフルボッコにされていく神父の姿に魔王は非常に微妙そうな顔になりながら、その両手で早めに神父から抑えた勇者(予定)の子供が今にも泣きそうなのであやしていたが、人々の怒りはピクピクとしか動かなくなった神父から神剣へ向かう。

 

「…元はと言えばテメエが必要だからって捜すための資金が必要だって神父や領主が重税をかけやがったのが始まりだったよなぁぁ!」

「それで税をかけるだけじゃなくって探す冒険者が足りないからって俺らからも徴兵して魔族の領域に向かわせたりしたしなぁアア!」

「向こうの方が税率低くて治安が良いってのが知れたのが良かったけどよぉ!」

「それに気づかない内に向こうの綺麗で豊かな集落を襲ってしまって刑を喰らって中には死刑まで喰らった奴も出たしよぉ!」

「…わ、私はー…」

 

 怒りや殺気と共ににじり寄ってくる人々の群れに、神剣は目に見えて戸惑いと恐れがわかるまでに刀身が後方にそれていって、先ほどの凛としたものとは違う弱々しい声で弁明をし始める。

 

「…私は人ではありません。神剣です。主やそれに近しい方々に逆らう口など持ってはいませ―――!?」

 

 だが、その弁明が途中の所で民衆の一人が振るうハンマーが神剣を刀身の真ん中から叩き負った。

 

「―――えびっぢょううぅぅううぅーーーー!?」

「だったら俺らがやるのは殺人じゃなくて危険物処理だよなー!!」

「叩きおりまくって捨てろー!」

「いや待て! こいつ不死身で放っておくと再生するからバラバラにした後は破片をそれぞれコンクリ詰めにして海底に沈めろ!」

「ま!? まっでぐだひゃい! び、人を何だとぉ…!?」

「うわ! バラバラにしていったらぼこぼこなってるけど美女の姿になった!」

「落ち着け! 元々はこれが神剣になる前の姿って話だ!」

「封印する前に○せー!」

「さっき自分を人間じゃないって抜かしたばっかで都合悪くなったときばっか人権とか言うんじゃねえぞ無機物!」

「あーーーーーーーーーーーー!?」

 

 そのままアダルトやグロ的な意味で子供には聞かせられない内容の罵詈雑言と共に、神剣は情け容赦ないリンチの雨に晒された。

 

「…み、醜い…」

「お、俺達も…先祖の代で魔王領になっていなければ…この人達みたいになってたのか…!?」

「い、いや…人間は好きじゃないエルフの俺から見ても…お前はそうなりはしないよ…多分…」

「へ、陛下ー…どうしますか?」

「…いや、まーー…僕たちの今回の目的はー…早い内にこの子を安全な所へー…あれは放っておいても良い。僕ほどじゃないけど…どうせ不死身だし、こっちが抑えてもまたあり得ない○タゴラスイッチみたいな幸運…というか不運で加俸されて記憶が飛んだりして、こっちに元気な状態でまた噛みついてくるから…多分…」

 

 その人間の醜さをまざまざと表す光景に、種族を越えてドン引きしていく魔王軍を引き連れて初代魔王が背を向けた所で、辺りは闇に塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 ○2025年3月31日朝 地球 日本国 鹿児島県南部 甘富(あまとみ)島 甘富(あまとみ)市 某住宅地○

 

「…う…あ、今日の夢はぁ…ファンタジーRPG系作品の疑問に答えながら夢をぶっ壊していく内容だったなぁ…」

 

 私の息子、ミカエル・カールソンがこの度目を覚ましたのは、この子が中学校の一つ上の先輩たちを卒業生として見送る日の朝のことであった。

 未知の星での魔王と神剣一党のやり取りは、()()()()ではこの子がしょっちゅう夢という形で見るSFファンタジーな世界での夢想の光景であった。

 私の息子は、窓のカーテンの隙間から差し込んでくる朝日で目覚めた眼をこすりつつ、私が言うのもなんだが日本人である妻の千美子の血を引くがためのハーフゆえの、茶色が強い亜麻色の髪と瞳でそれなりに整っている面貌を鏡で見た後、朝食をとるべく部屋を出た。

 

「おはよう父さん」

「ああ、おはようミカエル―…って、その顔はまた夢でも見たか!?」

 

 居間に息子が到着すると私はその顔からまた例の夢を見たことに気付き、さっそくボールペンとメモを手に鼻先が触れ合う距離でにじり寄った。

 

「ちょっとあなた! 今日はミカエルの先輩達が卒業する日なんだからネタ集めは後にしなさい!」

「そーそー、お父さんもお兄ちゃんもラノベのネタの話になると長くなるんだからー! まーそれがこのうちの飯の種で私達はそのおかげで良い暮らしできるようになったからわかるけどー…」

 

 そこで私ダニエル・カールソンはその妻で私と違い生粋の日本人である千美子・カールソンに怒られ、息子と違って私の地が強いためか金髪碧眼をした、クラスメイトや同級生にもモテるが少し生意気なところがある娘のマリア・カールソンが揶揄ってきた。

 

「…北欧生まれのお父さんがお母さんと出会ったのは、お父さんが子供の頃に見た日本のアニメや漫画にドはまりして自分もそれを仕事にしたくて日本に移住して同じオタク趣味のお母さんとコミケで偶々出会って、それで意気投合して結婚したんだけどー中々作品が売れずに語学力と母さんの実家があるのを生かしてここのホテルに就職した後でー、生まれたお兄ちゃんの夢がやけに幻想的だけど細かくて現実臭くもあって、それでー同じ世界観が元になってるんじゃないかってどの夢にも共通しているところがあってー、それを元に父さんが仕事の片隅にラノベをネットで書いて載せたらーそれがバカ売れして今じゃー他の媒体にも進出してー、その売り上げのおかげでこんなこの田舎の島だけど一等地のマイホーム暮らしになったんだからわからなくは無いけどねー。親のすねかじりならぬ息子のネタかじりって感じー?」

 

 私が息子ににじり寄った理由を言いながら娘マリアが軽やかな足取りで出たのは、ここ世界自然遺産にもなった天富島の中心都市甘富市瀬那(せな)の街並みを見下ろせる住宅地にある、白い別荘風な我が家にある広めのテラスであった。

 

「はい、今日は記念に“鶏飯”よー」

「うわ、朝っぱらからこんな御馳走も食べられるなんてー、まーお兄ちゃんの夢とお父さんの文才のおかげねー」

 

 その広いテラスに置かれた机に千美子が準備した朝食は、白く炊き上げたばかりのご飯に錦糸卵や椎茸に解した鶏肉や千切りのネギやパパイヤの漬物等を乗せ、熱めの鶏がらスープをかけた豪華な茶漬けのように見えるこの島の郷土料理“鶏飯”である。

 

「…でもまあ、おかげでとても子供には見れたものじゃない…というか、子供が見知れる範囲内のものでは見れないはずのものが色々出て、妙に現実味のある夢だけどね昔から…。それにー、何かいつか実際に現実でも起きるんじゃないかって不思議な不安というか期待がするというかー。時々ー…夢の中にはここに似た景色の場面が出るのもねー…」

 

 そうして朝食が準備されたテーブルを共に囲んで、私の息子が何処か不安そうな顔で周囲の景色を見渡す。

 

「…それでも、おかげで私達は子供のころからの夢を思った形ではないけど叶えることが出来たし、お前たちにもこんな立派な暮らしをさせてあげられるようになったんだ…ありがとうな…」

「あ、そうそう。せめて今回見た夢でー子供にも聞かせられる内容の部分だけでも言っとくよー。ここからでも見えるー、ここみたいな田舎地方都市でどうやってそんな予算を用意したんだとかそこまで利用者とかいるのかってあのループ橋みたいな橋が出たんだけどさー…」

 

 そこから見える()()()()()()()()()の、亜熱帯の山々とコバルトブルーの海が見えるベランダに息子ミカエルも出てl色々とディすりつつもあるものを指さした後にそれは起きた。

 

「…ああいう感じのループ橋の中心にすっごい竜巻が出来て別の星と繋げて行くみたいな感じの話なんだけどー…!?」

 

 息子の言うとおり、私もこんな小さな島でしかも世界自然遺産にもなっていなかった時期にどうやって建設資金を用意したんだなという疑問を生じさせられた、山肌でとぐろを巻いて這う蛇のようなループ橋の中心で、息子が指をさした直後に突如として大きな竜巻が放電を伴って生じたのだ。

 

「…そうそう、夢の中に出たループ橋にもあんな感じの竜巻が出てー…」

「いやいやお兄ちゃん! 実際に竜巻が出てるわよー!」

「え…他は晴れなのにどうしてあそこだけ―!?」

「他はどうでもいい! 今は部屋の中へ! 地下倉庫に隠れるんだ皆ー…ってミカエルー!?」

 

 そのあまりにも不自然且つ急すぎる自然現象に私達は混乱に叩き込まれるが、あろうことか息子はまるで見えない大きな手に掴まれたかのようにふわりと浮き上がり、竜巻へ吸われ始めたのだ。

 

「…え!? ちょ!? なにこれ!? と、父さん! 母さん! マリアーーーー!?」

「お、兄ちゃん! 掴まってー!」

「息子よー! この手を掴めー!」

「あ、あなた―…!?」

 

 それに血相を変えた私達がミカエルへ必死に手を伸ばして彼を引き戻そうとその互いの指先が触れ合ったその瞬間、ループ橋の中心部より生じた竜巻よりまき散らされている雷は巨大な閃光となり、私達の視界を白く埋め尽くしてその場の意識を刈り取った。

 それが、この時点では気づいてはいなかったがこの世界が私達の作品の元ネタの世界と繋がってしまった日の一幕にして、私達三人と息子ミカエルが()()()()()()()()()前の最後の光景であった。




果たして、息子のミカエル君を運命は如何に!?
まあ…前作の内容を覚えておられる方なら予想はつくと思いますけど…(苦笑)。
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