息子の帰還~去年に繋がった異世界から死んだと思った息子が超やんごとなき方として戻ってきた件~ 作:oosima
次回から、ギャグ中心パートに入りつつ、新キャラ登場もしながら今の主人公の地元の様子ももっと出していく予定です。
○2026年3月31日朝 地球 日本国 鹿児島県南部
「…ふう、久々に本土の出版社から戻ってこれたな…」
あの地元の島のループ橋で生じた当時は謎だった竜巻風の怪奇現象が起きてから一年の後、私ダニエル・カールソンは家族がいるその甘富島へ戻ってきた。
「む、今日も船が多いなー…」
『本年度の三軸会議ですが、此度も地球各国は未だに惑星統一政府が築かれていないことを条件にオブザーバー止まりでー…』
私が見上げている天富島の青く澄んだ大空には、白い雲に加えて地球における洋の東西や時代など様々な要素を感じさせつつもハイテクな意匠も混じる巨大な船が、重力を感じさせない様子で浮かんで悠々と進んでおり、その船から空中へ映し出されたニュース映像には耳が長くて美しいエルフだとわからせる美女のキャスターの放送が私の鼓膜を震わせてきた。
「…あのループ橋だった場所で、地球が銀河規模の異世界と繋がってしまってこの一年…この地球、特に日本の片田舎に過ぎなかったこの島は大きく変わったなー…」
それらの昨年までは空想の産物であった、星間宇宙船やエルフなど人間以外の知的生命体がありふれている光景に、ダニエルはこの一年間の出来事を思い出した。
(…まさかこんな片田舎の島のループ橋が、異世界と物理的な意味ではいつでも行き来できる“ワールドゲート”なる存在になるとは…。実際の通行はパスポートや旅券がいるとかでまだ万人の手に届くわけではないけどー…)
まず私が見上げたのは、昨年に私達も巻き込んだ異世界と繋がってしまった現象である竜巻が起きたループ橋である。
今やループ橋の中心から地球の地脈のエネルギーともつながっているという海を思わせるコバルトブルー色の巨大な柱が伸び、その頂点は水面の波紋のように空中へ広がっていき、そこから異世界側からの大小さまざまな宇宙船や浮遊船が水面へ沈むように、逆にそこから浮き上がるようにして出入りを繰り返していた。
『…現在の三軸世界における三大軸協議の会議場です。今回の議題は三軸世界と私達の暮らす地球を繋げるワールドゲート及び周辺地域の管理権ですが、現在管理している“帝国”に対して、エウロパ連邦と東方連合はゲートの解放及び共同管理化と地球側への居留地設置権を主張しておりー…』
(…それで繋がった異世界がまさか銀河規模にまで大きくなったSFファンタジー世界で、しかも銀河帝国みたいな存在と接触するとは…)
そうした船に混じる異世界側から放送されて空中に映し出されるニュース番組の一つには異世界側の銀河系の姿が映し出されていたが、それは球体を成していて私達の暮らすこの地球と酷似していた。
具体的に言うと異世界側であるその球体銀河は球体の表面上に恒星系が多く集まっており、特に私が生まれ育ったこの地球の陸地に当たる部分に人が暮らせて生命が豊かな天体が多く、異世界側の主要な星間国家で知られているもののはほとんどがそこにあったのだ。
そして、異世界銀河には行き来できる星矢構成系が何千とあるだけに、国家の数も多かったがその中で有力な勢力があった。
地球で言う南北アメリカ大陸辺りを領域として国民の過半数を人間以外の種族が占めていて国家の指導者層は他国から
ちなみに、異世界側が三軸世界というのは先に上げた三つが超大国として異世界における軸となっているからである。
だけど、そのような後世になったのは私が知る限りだが、
どうやら、向こう側の銀河は元々並行世界のこの銀河系のようで、向こうにあった地球も産業革命当たりの時代までは概ね同じ歴史をたどっていたようであったが、その頃の列強の一つに今は詳細がさらに不明となった異世界から人間以外の魔法中心の高度な文明を持った種族が漂流してきたのだ。
その結果、異世界からの技術を得たその列強は並行世界における地球の覇権を握り、文明や科学を大きく進歩させ、やがて太陽系の外へも出て銀河規模に文明を広げ、他の知的種族と接触したり、さらには新たな生命体を人工的に創造させるなど科学力は今の異世界よりも進んだほどだったという。
だが、その帝国主義が全盛だった時代に技術ばかり発達させたその文明は、あまりにも多くの資源を食いつぶして環境を破壊し、さらには魂そのものまで手を伸ばそうとしたところでとうとう破局が訪れた。
詳細はもっと不明な部分だが、資源を求めて別世界との穴を開こうとしたらその時に流入したエネルギー量が予想外に大きすぎて、穴が繋がるどころか資源を求めていた世界と求められていた世界双方の銀河が衝突して混ざり合うという、今では“大星災”と異世界側で言われている大災害が起きてしまった。
その時の地球側の情報が向こう側の銀河のそれを上塗りするような形になったことで、一度崩壊して落ち着いた後に一つとなって新生した銀河系は恒星系などの配置は地球の表面と似たような感じとなってしまったらしい。
ちなみに、
「あ、おはようございますダニエルさん」
「ああー、お久しぶりですシスター・カルッサ」
そんなことを考えながら住宅地を歩いていると、地元の教会に務めているアフリカ系のシスター・カルッサが、教会の中でのお祈りをし終えて次にその前の掃除しながら挨拶してきた。
「…あの日からもう一年…色々と大変なことが立て続けに起きましたけど何とか落ち着いてきましたね。この町も…」
「ええ、そうですね。
「…ええ、まあ、そうですね…」
シスター・カルッサのその挨拶に私は後ろめたさを禁じ得なかった。
あの三軸世界と繋がった日、そして、その後の混乱はこの星のほとんどを巻き込み、多くの人々が二度と動けない身、いまだに行方が定まらない身になった。
そして、私の息子のミカエルも一年前にその一人となってしまった。
「…息子さんが亡くなってから大変でしたけど、また作品を書かれ始めたのですね?」
「…ええ、落ち込んだままでいるよりも…あの子と一緒に紡いできた世界を続けていく方があの子も喜ぶと、今年になってやっとわかってきましたからー…」
「ええ、ですがお気を付けくださいね。ここ日本…特にこの島の平和はずいぶんと前に近づきましたけどー…他の国はまだ大変な地域も多くて、この島もまだ時々出たりもするのですからー…!?」
そして、私とシスター・カルッサが話している途中で、そうした犠牲者を今も増やしている理由の一つが襲い掛かってきた。
「スラアアアアアアアア!?」
「うわぁぁ!? 久々に街中でスライムがぁ!」
「シ! シスター危な…ああ! 間に合わなかったー!」
異世界と繋がって増えた侵略的外来種の問題の一部として、三軸世界由来の生物の一種である緑色の巨大な粘液の塊のような姿をしたスライムが教会の茂みより姿を現し、シスター・カルッサの身を拘束したのである。
「…アアぁ! またスライムに捕まるなんてぇ…アアぁ! また服を溶かされ始めてぇええええええ!」
そして、こういう液体系モンスターの定番とでも言わんばかりにスライムは捕らえたシスター・カルッサを消化して吸収しようとし始め、特にその衣服類は早く溶かされ始めてその濃い小麦色のエキゾチックな素肌に包まれたスポーティーな引き締まりと、日本人とは大きく違う豊満な曲線を併せ持った素肌が多く見え始める。
「(ぬおおお!? ファンタジー系異世界の漫画やアニメで見そうな展開でまたぁ作品執筆の上で貴重なインスピレーションがぁぁ…)いかん! 早くぅ助けねば!
「大丈夫だ
「―――あ…」
それに私は初め作家生活で身についた取材魂がはじめ動きかけるもすぐ現実に戻って、助けを呼ぶべくスマホを取るが、
「緑矢雨!!」
「ズラァ!?」
その叫びと共にダニエルの頭上を何本もの緑の枝が弾丸のような速度で飛び越していき、それらはスライムに何本も突き刺さっていった。
「吸水!!」
そして、突き刺さった枝は高速再生されていく映像のように枝葉を生やして葉や何よりも蔓を増やしていき、その太さや長さはまるで縄のようになっていった。
「ずうぅぅらぁアアアアアア!?」
そうなれば必要とする養分やそのための根も膨大になっていき、スライムは我が身の内を急速に侵食されて体液をことごとく吸い尽くされて小さくなってパサパサの乾燥状態となり、粉になったその身は蔓や葉によって一粒残さず回収された。
「…ずううぅ…」
「…ふう、偶々この町での買い物でいろいろ懐かしくなってきたから彼方此方へ寄っていたら大変なことになってたなぁ…」
そして、スライムのものと思わしい断末魔の鳴き声と砂が流れ落ちるようなサーっとした音が静かに大気を振るわせた後、私の前でそれを成した植物は寄り集まってみるうちに変化して形を成していき、亜麻色が強い茶色のショートヘアに深い緑のメッシュが何本かかかって、右目が亜麻色で左目が緑色の幻想的な美貌を持つがどこか深い見覚えのある、少年の上半身へと変わった。
「…ああ、これでも初めの頃のタイの架空犯罪都市の幻想版だった初めの頃よりかは大分平和が戻って来たんだ…」
「あ! ちょっと待って―――!」
「え、何が…あ…」
その少年に私はこの時は安堵と嬉しさに少しの複雑さの混じった顔で近づこうとしたその時、その少年から慌てて制止の声が出るが、間に合わず私の足元からぐちゃっと何かを踏み潰した音が上ってきた。
「…そ、その身…僕…まだ…本調子戻り切ってないから…その踏みつぶされた実…僕の…ゴールデンボールの片玉機能が残されたまま…あう…」
「…あ…」
それを受けてこの世の終わりを目にしたような顔を浮かべた後、少年はパタリと前のめりになって私の足元に頭を預ける形で倒れた。
そして、その少年の頬を私が先ほど踏みつぶしたばかりのパッションフルーツの身の汁が濡らした。
先ほどの攻撃は、この少年がここ天富島でも盛んに栽培されている特産品の一つ、パッションフルーツにその身を変えて行ったもので、スライムは急成長をしていくその身に全ての養分を吸い上げられて倒されたのである。
「…あーーーー…まーたこんな締らない状態になってー…さー帰りますよー“
そこで服装の一部に蝙蝠のような紋章を付けた、全身を迷彩服のような衣装で隠しつつもどこかファンタジー意匠を感じさせる特殊部隊なのがわかる人々が空気から霧のように現れ、意識を失って倒れた少年を抱き上げた。
「…さ、ダニエル殿もお家に帰りましょう。あなたがこの方の当代の
「こちらの捕まっていた聖職者の方は意識を失ったままなので脳を調べたら何が起きたかわからない状態なので身を綺麗に戻してから教会の中の休憩所に寝かせますねー」
「…あー、はい、こっちこそよろしくお願いしますー…」
私はその彼らに一応恭しくされつつもゆるい的に親しまれている様子で接されて大人しくその要請に従った。
「…ううぅ…ぼ、僕のぉ…ゴールデンボールがぁぁ…」
「…はー、全く…あの時…普通なら感動の再会になるというところを…とんでもない爆弾が降ってきたという感じの驚きをあの日からしょっちゅうさせられてきたというのに…どんだけ大身になってもこういうところは変わらんな…」
「まー仕方ないですよー。
そうして共に連れていかれる私に触れられつつもうめき声が混じる寝言をぼやく少年の名はミハイル。
異世界である三軸世界で、他国からは
「…うぅ…父さん…母さん…マリア…先生ぃ…」
そして、この少年は何の奇跡か悪魔の悪戯なのか、異世界側の戦いの影響で仮死状態になっていた時期に魂が抜け出てしまってこの地球に転生してしまい、私の息子となって転生者という自覚と記憶の大半を失いつつも夢という形で時折思い出したそれらをこちら側の父である私に提供してくれた後、あの二つの世界が繋がった異世界ショックの日で遺体も残さず死んだか二度と会えない行方不明になったと思わしい状態となったと思ったら、異世界で仮死状態にある元々の肉体に戻って記憶と意識を取り戻し、世界が繋がったショックによる初期の混乱をどうにか鎮めた後に我が家へ戻ってきた、私の息子ミカエル・カールソンでもあった。
今度のお話は、世界観の基本設定の幾つかの紹介を挟みつつ、作者の地元の要素が出てきます。