息子の帰還~去年に繋がった異世界から死んだと思った息子が超やんごとなき方として戻ってきた件~   作:oosima

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今回、主人公達の今の地元の治安状況の端緒的な話になります。


005 息子と暮らす今の地元が場所にもよるが主観的に治安悪すぎである話

 ○帝国歴6026年3月31日朝(地球2026年3月31日朝) 三軸世界 エウロパ連邦 トラキア星域 首都星系第一トラキア 首都星第一コンスタンティノープル○

 

 地球で私の息子ミカエルとその学友であるコクトー君が帝国の警察に怒られていた頃、その帝国と冷戦関係にあるエウロパ連邦の首都、地球の地図で言えば小アジアとバルカンの付け根辺りにあるその惑星で、同国の高官の何名かが秘密裏の会議を行っていた。

 

「…それで、例の情報は間違いないのだな?」

「ああ、昨年に起きた…帝国とこちら十以上の星系を吹き飛ばしかねなかったあの大人災をどうにか防いだ…帝国の初代皇帝の“初代魔王”が、現地の星系にある地方都市で療養中というのは確かなようだ…」

「ああ、あの全盛期には小さな惑星も一撃で粉砕したあの怪物が…大幅に弱体化している状態でいてくれるとはな…」

「しかもその力で我らの同胞も含めた大勢を救うために使ったと…その上で、その力ゆえに脅威とみなされるとは…異教徒に傅かれる悪魔など所詮はこのような存在ということですな…くくく」

 

 照明がほとんど切られて中央の空中投影型ディスプレイしか光源がない中、彼らはその画面に映し出されている私の息子の映像に怨恨と侮蔑を隠さない顔で嘲笑を上げている。

 

「…ですがしかし、今すぐに動かせるもので我らの手の者はおりません…」

「以前、あの決戦の最中に討ち取ろうとした者達はー、返り討ちにされてその後に帝国とそれに魂を売りおった親帝国派の連中によって芋づる式に取り締まられ、我らの身内も少なからず捕縛され、今も公判中でー…」

「…だとしたら…やはり“選定の勇者”に頼るほかー…」

「過去の功績からして、こちら側の人員で最も実力的に頼りになるが…。所属は中立派…それも帝国に近しい親帝国派に身内がいるぞ」

 

 だが、途中から息子の映像の隣に何やら髪がボーイッシュな亜麻色の髪をしている戦士風の少女が出てくると、彼らの表情へ一気に疲労と影が見えてくる。

 

「…ですがー、こちらが信頼できると見込んで送り込んだものの大半が壊滅して、それによる発生した内紛による犠牲者がシャレにならずー…」

 

 高官の一人が口にした瞬間に彼の背後が立体映像で映し出されるが、そこには壁一面を埋め尽くす勢いで数百枚もの遺影が映し出された。

 

「…ここまでの同志をやるとは…くそぉ! 魔王めぇ…!」

「いやぁ、ほとんどはこっちの内輪もめによる政争とそれを狙った敵対派閥所属の治安機関による取り締まりが原因でー…」

「被害が出ている以上は同じだろうが!」

「何を言うんだ! そもそもお前とこの前に捕まって公判中のそのドラ息子がー…!!」

 

 何十年か前のヒーロー系パロディ番組の悪の組織の一場面のような背景の前で高官たちは内ゲバを始めた。

 

「…だがなぁ、この子があの初代魔王も関わっていた事件で、他の者達とは違って鉱石も上げてあの男にも信頼を得て、今も近くにいてその情報などをこちらへ回しているのも確かだし、何より我が連邦の市民も多く救われているのは確かだ…」

「ふん、そこは“選定の勇者”とされるだけはありますか?」

「今回はどうにか弱っている今の内にあの初代魔王をどうにかー…」

 

 だが、一方でその少女に話が戻るとなんだかんだ彼女に信頼があるのか、場の空気は何とか沈静化していった。

 

 

 

 

 

 ○地球 日本国 鹿児島県南部 甘富(あまとみ)島 甘富(あまとみ)瀬那(せな) 某農道○

 

「…はあ、学校の授業にはどうにか家へ立ち寄っても普通に間に合いそうですね…」

 

 一方その頃、私はと言えばそのような陰謀がまためぐらされていることには気付かず、息子の学友であるコクトー君の実家が手配してくれた飛行カーに乗って帰り道についていた。

 初めからそうして欲しかった感じもあるが、呼ぶのもただではないので最初はなるべく自分達の力で帰ってほしかったのに、ジ●リに怒られそうな車(?)っぽい姿でカーレースに至って帝国警察に怒られたのもあり、これ以上話を大きくされたくないというシュガルスキー家がようやく手配してくれたのだ。

 

「このまま何事もなくて家にひとまず帰れればいいんだけどさー」

「先生、そう言うのは以前にフラグになるとおっしゃられたのは先生自身―――」

「むぐー! むごー!」

 

 その車中で息子と光代ちゃんの師弟コンビがまたフラグを回収した証が、下の方のサトウキビ畑より彼らの鋭い鼓膜を震わせる布越しの悲鳴が聞こえてきた。

 

「―――ってぁ…来ちゃいましたフラグが…」

「あ、本当だ。何かサトウキビ畑の一角が円形状に踏み荒らされて半グレみたいな連中に若い女の人が真っ昼間から襲われてるよお兄ちゃん。てかあいつらー…明らかにお兄ちゃんに前に絡んできてからしょっちゅうあれな目に遭わされている連中じゃー…。まあ、ほとんど()()()()()()()()()()から覚えられてないけどー…」

「とりあえずどうします?」

「お兄ちゃんに帝国警察をさっさと呼んでもらう。異世界と繋がってここは割と治安が悪くなった場所も多いしー…」

「あーうん、そうだなーマリア。権力があるなら使うべき時に使わないとなー。あ…でもーあの場合はハイディナに頼んで軍を送ってもらった方が良いかもー」

「いや、親としては子供に危険な真似をしてくれんのはありがたいが、普通ここは漫画やアニメだと放っておけるかって感じで飛び込んででも助ける場面ではー…!?」

 

 その第二の故郷と選んだこの地の治安状況の悲しい証拠とそれへの子供達の反応に、私が悲しみも混じる微妙な反応を示していたその時、それを放っておけない若者が現れた。

 

「ぬおおおおおおおおお! 砂糖を! サトウキビをおお粗末にするものは許さんぞーーーーーーー!!」

 

 息子の学友であるコクトー君が顔こそないがそれにあたる部分であろう制服の襟首から伸びている長方形黒糖部分に怒りの青筋代わりなのかヒビを無数に走らせながら、飛行カーから降り立つと足を細長く伸ばして器用にサトウキビを踏まないようにしながらその現場目掛けて駆け込んでいく。

 

「…ち、どっかから邪魔が来やがったか…。おい、お前ら片付けろ…!?」

 

 その姿に気付いた半グレチームのリーダーである、中学生くらいと思わしいが目つきの鋭さから平均よりかは整いつつも同年代を怖がらせる面貌をした少女だが、次に瞬間に彼女は信じられないものを目の当たりにする。

 

「砂糖を! サトウキビを冒涜する者はこの僕が星にしてくれるわーーーーーーー!!」

「ぶベらーーーーーーー!?」

 

 何と、コクトー君は襲われていた美女の方をそのどてっぱらから蹴り上げ、あっという間に星へ変えてしまったのだ。

 

「「「「「ええええええええええええええええええええ!!!!????」」」」」

 

 当然、それを目の当たりにした半グレグループはもちろん、飛行カーにいた私とマリアを驚愕させた。

 

「な、何してんだテメエは!?」

「いいぃいきなり飛び込んで何をしやがるんだ!?」

「女をあんな高く蹴り飛ばすなんて!?」

 

 当然、襲っていた側の半グレたちはついさっきまでの自分達の恐慌も忘れて非難の声を上げる。

 

「それはこちらのセリフだ! 君たちはどれだけ自分達が危険なことをしていたのかわからんのか―――!?」

 

 それに対してコクトー君は怒鳴り声で半グレたちをしかりつけるが、その最中に彼が星にした女性の蹴り飛ばされた方角がキュピーンと再び光り、そこから轟音を添えて半透明の刃のようなものが豪速で近づいてきた。

 

「―――あ…!?」

 

 その刃のような何かを後ろ側のうなじに受けたコクトー君の首(?)はズバっと切り飛ばされて宙を舞った。

 

「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!??」」」」」

 

 それでコクトー君の首を斬り飛ばした衝撃波はすぐ傍の地面に着弾するとすさまじい衝撃波と爆発を起し、土砂と共に半グレ達は悲鳴を上げながら宙高く舞った。

 

「あべぇ!?」

「うわァ!?」

「あ、この子、普通の人間の地元系半グレだから落としたら死ぬんで回収しとくよ」

「ぐぼぉ!?」

「見捨てるよりかはマシだがお前も女性の扱いがぞんざいというか俗にいう氷○将軍式男女平等理論の気が強いというかー…。しかし、今度は何がー…!?」

 

 その内の一人である半グレグループのリーダーの少女は間抜けな顔で飛行カーの前面車窓に蛙の如くぶち当たり、ズルズルと重力に引かれてかなり下にある地面へ落ちそうになるが、息子の身から伸びてきたゴーヤの触手にキャッチされて後ろのトランクにポイっと投げ込み、私はそんな息子に微妙な顔を向けつつも先ほどのその学友の行動に怪訝な顔を浮かべた。

 

「…ぐはぁ!? おおお落ちるぅうぅ…ほ! 何とか落ちずに済んだか…」

 

 そこでそのコクトー君の首が飛行カーのボンネットに不時着し、カラカラと落ちそうになるも切断面から簡単な手足を生やして○殻のイ○サキのような動きでしがみついた。

 

「…コクトー君…今度は何が起きているんだ…?」

「あー、その理由については彼女から聞いた方が良いかとー…」

 

 そして、コクトー君がその簡単な手足の一本を他所の方向に向けると、そこには誰かが宙に立っていた。

 

「…ち! 全く…腹が減っていたから適当に雑魚を偽ってそれに引っかかるような馬鹿を何匹か食おうと思っていたのに…!」

 

 そこには先ほど襲われていた黒い長髪のそれなりの美貌はあった東洋系の女性が、足をバッタのように変形させて背中側から虫のような翼を生やして浮遊して私達に殺意と怒りを隠さない顔を向けている姿があった。

 

「…む? この感じー…プッツンしちゃったときの()()…じゃなくて魔王とは別の悪意がー…?」

 

 一方その頃、その現場に近いある海上の空を、まるで背中から見えない翼でも生やしているような少女が突き進んでいた。

 

「…この感じ、たしかー…この星の“無国籍地帯”辺りから食い込んでいる“こっち側の海賊”がこの辺りで久しぶりに出てきたかな…?」

 

 少女はその若葉のような若さが残る中高生くらいの身に、まるで幻想世界の騎士が着るような青く鋭利な意匠だが高潔さも感じさせる鎧を身に纏い、その手には明らかに身の丈を越して質素だが根本的な質の高貴さを素人目でも覚えさせる大剣が握られていた。

 

「…全く…彼の周りにはいつも厄介な案件が近づいてくるわね…」

「いやねぇ、どっちかっつーとかそういうのを撒く体質なんだろう…。私達と共に冒険してて()()()()()()()()()もそんな感じだったしー…。いやー…()()()()してた時期もああいう感じだったのは裏歴史書からして同じだったらしいがー…」

「まあまあ、その辺はあまり触れずにしておこーや。うちの馬鹿なお偉いさん達が惑星を吹き飛ばしそうになったあの事件の時もよー()では初代魔王の当代の依り代であるあいつが制圧してどうにか最悪の事態は防がれたんだしさー…」

 

 そして、その少女と同様に飛行して彼女についていっている、白銀色の鎧を着た金髪碧眼の女騎士、魔法使いのようなローブを身に付けて19世紀の小説のような回答の格好をした魔術師、無精ひげを生やして頭からも何本かそりのこしの気が生えている東洋風僧侶ないかつい男の姿があった。

 

「…で、どうするの“選定の勇者”ちゃん?」

「普通の通称でも“選定”であっても、勇者となることを選んだ私の仕事は変わらないよ! 巨悪に立ち向かう人を見つけたら変わらない! たとえ立ち向かう人が“魔王”であっても…」

 

 その少女は周囲に問われると鋭くも責任感の強さも感じさせる笑みを浮かべると、その進行方向先を強く見据える。

 

「それが“勇者”である私のやりたい事でやるべき事なんだから!!」

 

 そうしてエウロパの高官たちの会議で取り扱われていたその少女は、バッタと女が混ざったような怪物と私達が対峙しているその現場へと仲間達と共に飛行速度を加速させた。




次回、主人公チームと今回にて現れた敵によるバトルシーンになる予定です。
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