マイサンの帰還~去年に繋がった異世界から死んだと思った息子が超やんごとなき方として戻ってきた件~ 作:oosima
○帝国歴6026年3月31日朝(地球2026年3月31日朝) 地球 日本国 鹿児島県南部
「…全く、異世界だか何だか知らねえが…向こうから来た超暴力馬鹿共の相手は疲れるぜ…」
私が息子ミカエルとその学友たちと共に、半グレグループに招かれたトラブルに巻き込まれてから数分後、その半グレグループで甘富に拠点を置く組織のボスである男が日本本土から同島に戻り、車を部下に走らせていた。
容姿は青年に近い若さを保っていて整ってはいるが、顔には苛立ちと否定してもしきれない疲労が残っている男だ。
「…そう言えばお嬢は今頃どうしてるんですかねー?」
「まあ、触れちゃならねえ危険には手を出さねえように部下を付けて常に一緒で行動するように教えているから大丈夫だと思うが…」
農道を走っている最中で携帯電話が鳴り響く。
「…? この番号はあいつからか? 何だ―――?」
『パパァァァァァァァ!! たたた助けてぇええええええええええええ!!』
ボスがそれに嫌な予感を感じつつも携帯を手に取ったその直後、鼓膜を破らんばかりの声量で彼が愛する娘の悲鳴混じりの懇願が鳴り響いてきた。
「―――あぁ!? な、何だその声は!? 何が起き…!?」
少なくとも部下からは冷酷で非情な怪物と恐れられるボスが数少ない溺愛する存在のその声に動揺を隠せない顔になるが、そこで車の頭上よりジェット機が近くを飛んでいる時に似つつもそれよりも大きくて不吉さも覚えさせる音が近づいてくる。
「…な、なんだこの音は…!?」
それにボスが見上げたその直後、彼らが乗る車は上から真っ二つにされて車体もろとも彼らは宙高くを舞った。
「「ギャアアァアァアアアア!!??」」
当然、急にそんな目にあわされれば、天へ高く吹き飛ばされる浮遊感と、数秒しかないその後に来る重力に引かれて大地へ戻されていく感覚には悲鳴を上げさせられるのは当然の流れである。
「!? 危ない!」
「「ぶげぇ!?」」
そんな本来なら重力に転落死で殺されただろう彼らを救ったのは、植物のような感触がする巨大な手であった。
「…う…ぅうぅ!? な、何が起きているんだぁぁ!?」
「あ、そっちはそんな怪我人は出て無さそうで良かった」
「……へ?」
どうにか痛みを堪えつつも目を開いたボスの部下が目にしたものは、サトウキビ畑の中をジ○リ○り神風ゴーヤ多脚カーを操縦している私の息子ミカエル。
「…!? あ、あんた達は
「あー、こいつと一緒に何か見たことあるなーって思ったら、あいつらだったんだ」
「…え?」
当然、そこには私とその娘であるマリアの姿もあった。
半グレ達は私の息子ミカエルが魔術で生じさせて操るゴーヤの巨大ハンドに救助され、同じ車内へ引き込まれたのである。
「ななな何だよテメエらは!? 俺らと敵対してる他のグループのお雇い異世界傭兵とかか!?」
「いや、私の息子とその学友たちはともかくー…私と娘は普通にごくごく一般人だから…、むしろ堅気じゃないのは向こうの方でぇ…!?」
それに半グレの部下がわめき散らかしながら問い詰めると、ゴーヤ多脚カーがまるで奇々怪々なコースを爆走しているジェットコースターのように激しく揺れ動いた。
「ほらぁ! さっさと死ねやアアぁ!」
先ほど現地で反グレグループに襲われているふりをして彼らを襲おうとしていた、バッタのような特徴を持った美女が、背中から生えている翼で光速に飛び回りつつ、その足を超高速で振るって斬撃のような衝撃波を撃ち込みまくってきていたのだ。
「ギャアアアアアアア!?」
その攻撃の一部を受けて息子が操るゴーヤ多脚カーの天井が斬り飛ばされ、危険すぎるオープンカーになってしまうと、より激しいバトルの場にいることを実感させられてしまうので半グレの部下は更に悲鳴を上げる。
「おおおおいいいぃ! 早くあんなのから逃げてくれよおおおお! あんたもそう思うでしょおおぉボスぅぅぅ―――!?」
半グレの部下は自分の齢も忘れたように滅茶苦茶泣きわめいて相槌を打ってくれるものを求めたが、同意してくれるだろう上司の今の姿を見て言葉が止まってしまう。
「……………」
ようやく見直した彼の上司である半グレボスは首がまるで絞った雑巾のようにねじ曲がってあらぬ方向を向いて白い目を向いており、地球だけの現実で言えばもはや生きてないのは明白な状態であった。
「い! いやぁアアアアアアアア!? パパがアアアアアアアアアア!?」
そして、それに縋りついて泣き叫んでいるのは、先ほどバッタ女の罠とは知らずに半グレな部下を率いて彼女を襲おうとしていたそのリーダーである少女。
この二人は親子関係にあった。
「あーもー! 死にたくないんだったらあんまりわめかないでよトロミ~ヒャッヒャ! 操作に回す気が散って僕らはともかくそっちがくたばる可能性が上がるだけだから!!」
「ひぅ!?」
そんな少女を痛すぎる名で怒鳴りつけて黙らせる我が息子。
「お、おい!? 父親が目の前で死んでいる女の子にそんな言い方はねえだろ!?」
それに半グレ部下は自分の身元や仕事内容を棚に上げて真っ当な非難を上げる。
「いや、そのおっさんって
「…え?」
だが、半グレの男たちにとっては初対面のはずなのに、私と同じく訳知りのマリアはもう慣れや諦めが混ざったような言い方で窘めて彼を戸惑わせる。
「しつこいわよあんた達ぃ! もういい加減にさっさと死ねやアアアア!」
そんな所でバッタ女が苛立ちを隠せない様子で大量の斬撃風衝撃波をマシンガンのように乱射してきた。
「あ! 先生あれって私達はともかくこの人たちはやばいですよ!!」
「落ち着いて光代! 前の時みたいにこの人がいる!!」
そこで息子ミカエルは車内スペースを少なからず占めるだけのものとなった
「あばばばばばぁ!!??」
それで引っ張り出されたのは、雑巾のように首がねじれまくってぽっくり逝ったはずの半グレのボスの男が、首を強引に巻き戻されてボキボキという嫌な音と悲鳴を上げて泣きわめいている姿。
「…え!? パ、パパァ!? い、生きてぇ―――」
「おい、トロミ~ヒャッヒャ、そっちにはこの人をやる。せいぜい娘として父親に守ってもらいなさい」
「―――えぇ…!?」
それに驚きつつも喜ぶ半グレ少女トロミ~ヒャッヒャだが、息子がゴーヤアームでその父を無造作に渡したところで、何発かの斬撃が彼女達への直撃コースに入った。
「ほら! あの国民的海賊漫画の嵐○みたいなのがまたたくさん来たから!」
「いやぁぁ! 助けてパパァァァ!?」
トロミ~ヒャッヒャは反射で父である半グレのボスの背に隠れた。
「あ…お前どうしてここにひや…あびゃああああああぁアアアァアアアアアァ!!??」
「えーーーーーーーーーーーーー!!??」
当然、そうなれば意識が戻ったばかりな様子のボスは体の前面からバッタ女の斬撃衝撃波の雨を無数に浴びてしまう羽目になり、半グレの部下は驚きの悲鳴を上げた。
「…え? わ、わたし…な、何をぉぉ…って!? パパーーーーーー!!??」
数秒後、一旦攻撃が止むと半グレのボスは、身の前面がまるで滅多切りにされたスルメのように無残な姿となっており、思わず彼を盾にしてしまっていたトロミ~ヒャッヒャは悲鳴を上げた。
「どどどどうすんだよこれぇ―――!?」
「あーもー落ち着けトロミ~モブ! その人はゾンビ…じゃなくてもうミイラだからどんだけ痛い目に遭っても死にはしないから!!」
「―――え…!?」
当然、半グレの部下がまた驚いてわめき始めるが私の息子の一喝でビクッと収まり、続けて信じられないものを目の当たりにする。
「…あ…あべべ…あええぇ…ええ…」
そこにはピクピクとしながらも無数にある傷からは血を出さずに、代わりにモザイク越しでなければ普通は直視できない切り傷だらけになった身の穴の一つとなった口から力ない悲鳴を上げつつ、もぞもぞと少しずつだが傷口が塞がり始めている半グレボスの姿があった。
「…な、何よこれぇ!? パ…パパに何が起きてぇ…え…ぐ…おおぉろろろろろろろろ!!??」
トロミ~ヒャッヒャはそれにおぞましさを覚え、続けてこれまでのゴーヤ多脚カーの無茶な運動で催していた吐き気も加わって、とうとう胃の中身をリバースしてしまった。
「あ! その人はミイラだからヒロインにゾンビとして復活させられた高校生が主人公のあのラノベと違って湿気が弱点だから気を付けて!! もう死んではいるけど再生に滅茶苦茶時間がかかる大ダメージを受けるから!!」
「…あ…ああぁーーーーーー…」
「えーーーーーーーーーーー!!??」
そこで少し慌てた私の息子の言うとおり、半グレボスがその娘のゲロで体がまるで水を吸って急速にもろくなったビスケットのようにボロボロと崩れ出し、半グレの部下は再び悲鳴を上げた。
次回、やっとファンタジー作品では定番のあのキャラが本格参戦する予定です。