とあるドリフターの日々   作:大金剛

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ストーリーとか主人公には関与しない、端っこをかすめていくその他大勢。
そういうのが好きなんです。


依頼の日のこと(1)

 

タァーンという音、銃声が廃墟に響く。

 

狙われたのは空飛ぶクラゲこと、ゲイザーというエンダーズ。

飛ばないクラゲはきっと今後も見ることはない。

 

体の中心、でかい目玉に大口径の弾丸を食らい、口があれば「痛いんじゃが!」って叫んでるっぽいって感じで、体を急旋回させながらのたうっている。

 

 

そして、いきなり銃撃してきた無法者に対して「やり返してやる!」と言わんばかりに、音のした方つまりこっちに体の向きを調整して……

そこで再度、タァーン、タァーンという音が連続して響くと、ゲイザーの目玉には音の数だけ穴が開いた。

 

 

あと1秒で体をぐるんぐるん回転させながら渾身のエネルギー弾を発射する予定だった緑色のゲイザーは、ぐらっと傾いて落下し、地面に落ちる前に消失した。

 

 

 

 

『ドロップはありません、手間は省けました』

「そうだなあ……あると拾いに行きたくなるしなあ……」

 

マークスマンライフルをガシャコっと音をさせてリロードしつつ、メイガスのコメントに返事する。

クレイドルが軽く頷いて見えたのは、リロードする動作の1つがそれっぽかっただけだろう、多分。

 

欠伸しながらのクレイドル操作が雑だったせいではない。

 

 

とあるネストからの依頼で

 

"輸送ラインの上を飛んでるゲイザーが余りにウザ過ぎるのでぶっ殺してくれ"

 

ってのを受けてみたものの、よく読んだら

 

"ノルマは25匹ね"

 

と書いてあったのに後で気付いても、最早どうにもならず。

 

そんなに居るのかあ……ってライフル担いで現地に行ったら5匹くらい飛んでたので撃墜した後、ネストに

 

"残りはどこ?"

 

問い合わせたら

 

"暫くすると沸く、頑張ってね"

 

って返事が来て更にやる気が急降下。

 

 

「あと何匹だっけ……」

『現在17匹、あと8匹です』

「……湧きと倒す時間込みの予想は?」

『推定で2時間から3時間30分といったところです、ユナイター』

 

 

契約書の備考に

 

"どうしても途中でキャンセルするなら、違約金をがっつり取る"

"どれぐらい取るかっていうと、凄い"

 

って文章と一緒に書かれてる金額に愕然としつつ、その辺に突っ立っての湧き待ちなんかすると、うっかり賞金首や盗賊団にエンカウントしたらマジで笑えないわけですよ。

 

というわけで。

 

でかい陸橋が崩れた残りみたいな高台に陣取って、残ったコンテナの中に隠れながら、ちょくちょく空間から湧き出るゲイザーを狙撃して今に至っている。

 

この依頼ってもしかして、面倒さにキレてキャンセルするドリフターから違約金をせしめるビジネスなのでは?と疑いつつ、順調に撃墜数を増やしているのだが、10匹を超えたくらいで少しずつ沸く間隔が長くなってきていた。

 

 

つまり、流石に暇になってきているわけである。

 

 

狭い高台で、しかも錆びたコンテナの中に隠れて。

撃つ時だけ少し外に出て、ターンって撃ったら戻ってみたいなことを続けていると、流石に飽きる。

 

次が沸くまで操縦席で時間を潰すのにも限界ってもんがある。

 

 

「外に出るのはマズイかなあ?」

『現状、天候予測とついでに天気予報では雨の心配は無し、仮に降ってもコンテナが屋根になりますが、外に出ること自体が良いかと言えば―――』

「だよなあー……あ、じゃあハッチ開けて、空気入れ替えだけ」

『それならまぁ、はい。リフレッシュしたいのも分かりますから―――操縦席のロックを解除します』

 

 

クレイドルからガコンカコンって音がして、操縦席のハッチが開く。

 

冷たい外気がするっと流れ込んできて、操縦席に籠ってた空気と入れ替わっていくのが、すーっと気持ちいい。

上半身だけでも伸びをして背筋や両腕をぐいーっとやると、バキバキ音がするのもいっそ心地良い。

 

地上は雨やらその水溜まりに触る=そのまま死ぬデスワールドだが、それさえ無ければ地下よりはずっと良い空気が吸える。

 

……いやごめん、それさえって言ったけど、訂正するわ。

 

ブルーなんとかって即死する雨以外にも、人類殺戮エンダーズとか、メイガス狙いの盗賊団とか、略奪ヒャッハーな賞金首とか、全然ヤバいの一杯居るわ。

 

どうして地上はこんなことになってしまったんだ。

 

なんもかんも、致死性の雨と何も無い所から湧いてくるエンダーズってバケモンが悪いのは分かるけども。

 

 

「あのネストの仕事はもう、受けるの止めようかなー……」

 

 

やってることは湧き待ち待機のスナイパー。

湧いてくるのもゲイザーを順番に処理するだけの作業に近いとはいえ、移動の往復時間、待機時間、クレイドルや武器の準備にだって時間が掛かる、とまぁ、とにかく時間が溶ける仕事だった。

 

あれ、そういえばチェイサー見かけないな?

 

 

『次はドリフターの本業、AO結晶の採掘をしますか?雨の日なら稼ぎも大きいですよ』

「そうだなあ、実際、金貯めるならそれが一番かあ」

『それ以外だと盗賊団狩りぐらいです、札付きの相手は絶対に嫌だって前言ってましたし―――』

「だって強い上に怖いじゃん、アイツら……」

 

 

それはそうですねってクレイドルの横に浮いてる、メイガスのホログラムも腕を組んで頷いてる。

 

 

『盗賊団も幹部は楽な相手ではありませんし―――』

「赤いヤツな」

 

 

札付きってーのは独自仕様のクレイドル乗ったクソ野郎、赤いヤツは異様に速く動くクレイドルのったバカ野郎だ。

 

 

「ぁー……煙草ってこういう時に欲しくなるのかねえ」

『健康上の理由から喫煙は非推奨です、いえ、禁止しますユナイター』

 

 

ホログラムが駄目、絶対って胸の前で腕を交差させてバッテンを作って見せる。

まぁ、元々、本気で言ったツモリじゃなかったけども。

 

 

『それよりもエンダーズの反応を検知しました、ゲイザーの出現を確認。ハッチを閉鎖します』

 

 

言われて、モニターの端っこの円形MAPを見ると、赤い点が1つ増えた。

するーっとした動きは確かにゲイザーだな、これは。

 

操縦席のハッチがガシャガシャ言いながら閉じて、ロックされる音がする。

 

少し前傾姿勢だったクレイドルが体を起こした後、少しだけ進ませてコンテナの外を、赤い点のある方向を目視でも確認する。

大分遠い……前までのゲイザーと大差ない距離で、今度は黄色いのがふわふわ浮いてるのが見えた。

 

 

『ゲイザー、それもViscount―――バイカウントです。先ほど迄のゲイザーより強敵です』

「何でだよ、バージョンアップしてきんじゃねーぞ、バカか」

『バロンからバイカウントになると耐久性が平均して43%は高いです、気を付けてください』

 

 

気をつけろって言われてもね、することは変わらないしな。

クレイドルをそーっと動かして、マークスマンライフのスコープを覗いて……ゲイザーが止まったところを撃つ、それしかない。

 

ターン!って音が響いて、体の真ん中を撃たれたゲイザーが動きを止める。

 

そうすると一瞬、停止して……そんでぐるっと旋回して、正確にこっちを見る。

どうやって射線を判断してるのか分からんけど、すごい精度でこっちの場所を看破するんだよな。

 

ゲイザーがこっちを見る間に、マークスマンライフルをリロードして……こっちを見た瞬間にもう1発、撃ち込む。

 

完全にこっちを見てるから、ど真ん中の目玉に簡単に当たる。

着弾の衝撃に揺れた後にグルングルン回り始めるけど、構わずリロードしてもう1発撃ち込むと動きが止まる。

 

 

『目玉に命中、大きなダメージを確認』

 

 

その間にまたリロード、また回り始める前に撃ち込んだら、ガクーンと力が抜けたゲイザーが落下して宙に消える。

 

 

「ふぅ……こえー、撃たれるかと思った」

『ゲイザー撃破、あと7匹です、ユナイター』

 

 

最後ので倒せなかったら、エネルギー弾が飛んできてた。

そうしたら、今度はこっちがコンテナの奥に逃げ込んで隠れなきゃいけなかった。

 

 

『ユナイター、先ほどのゲイザーからはコアと帯電組織が残ったようです。回収しますか?』

「うぐぇ……」

 

 

帯電組織、帯電組織かぁ。

超電導モーターに使ったりはするんだよなあ、あの青白いキッショいの。

 

売れるっちゃ売れる、モーターにすればなおの事。

コアも使い道はコフィンシェルとかモジュールに需要はある。

 

問題は……

 

 

「降りるのが面倒くさいなあ」

『―――言うと思いました』

 

 

何やらメイガスのホログラムがこっちを、まるで駄目な人間を見る目で見てくる。

 

ガレージでたまにみる顔と一緒だなあ、再現度高いなあ。

例えば、倉庫が一杯になってきてるから早く処分をしましょうって言ってる時とか。

 

 

「あ、良い事思いついた」

『良いことかは後で判断しますが、一応、聞きますよ?ユナイター』

「なんてこと言うんだ」

 

 

最近、メイガスが辛辣なんだが。

 

 

「あと7匹倒さないとじゃないか、ゲイザー」

『そうですね。数は合ってます。すごいです』

「オレは算数ができないと思われてる?」

『まさか。誤解です、ユナイター』

 

 

ほんとか?

クレイドルの向きをメイガスのホログラムの方へ、あ、後ろに移動された。

 

 

『続きをどうぞ』

「あと7匹倒してから、纏めて拾いに行けばいーんじゃないか。湧く場所は大体同じだし」

 

『どこかに転がってスキャンに掛からなくなるかもしれません』

「最初から無かったって思えばいいかなって」

 

『通りすがりのドリフターが拾っていくかもしれません』

「その時は諦めよう、撃つわけにもいかないし」

 

『何が言いたいか分かってきました―――都度、拾いにいって、クレイドルが人目につくリスクを避けたいんですね』

「そう、そういうこと、え」

『え?』

「いえ、そういうことです」

『今、えって言いましたよね?ユナイター』

「言ってません」

 

 

後ろに回ったホログラムがスーっと横に戻ってきて、わざとらしい動きで首傾げながら、クレイドルのカメラを覗き込んでくる。

じーって言いながら、こっちを覗き込んでくる。

 

 

『長時間、定期的に銃声が響いている』

『盗賊団や賞金首が来る可能性がある』

『何度も隠れているコンテナから出て、特に賞金首に見つかると困る』

『だから極力、姿を見せたくない』

『―――ではなく、ただ面倒なだけですか?』

「怖い怖い、待って、少しずつアップになるの止めて」

 

 

普通に怖い。

 

 

「一旦、この話は止めよう。」

「まず依頼、ゲイザーの残りをね、ほら、そろそろまた出てきそうだしね」

「ささっと片づけてね、そんでね、パパっと拾って撤収しよう」

 

 

ホログラムがすごい駄目なものを見る目でこっちを見てくる。

 

 

「そういえば、アパレル・アメイジアのメイガスコーナーに新作が出てたじゃないですか!」

「こう、通販とかでですね!」

『そういうの前も聞いたような気がしますが―――』

 

 

どアップになっていたホログラムが下がっていく。

 

 

『今回は良いでしょう、帰ったらショッピングということで手を打ちます』

 

 

よし、正座を華麗に回避!

操縦席の中で思わずガッツポーズも出る。

 

とはいえ、依頼が終わらないと帰れないから、マークスマンライフルを持ち直して少しだけ、コンテナからクレイドルの顔を出す。

 

おー、飛んでる飛んでる、黄色いゲイザー。

またバイカウントかよ……いやもう何でもいいか。

 

早く、早く倒して帰らねば。

 

長引くとさっきの話が再燃しかねない。

それは困る、非常に具合が悪い。

 

スコープで覗いてしっかり狙って、引き金を引く。

 

真ん中に弾を貰ったゲイザーが何事!?ってな感じで左右に揺れるのを、落ち着いて狙ってもう1発。

 

よし、この調子でいこう。

 

 

 

 

 

仕事は無事に終わった。

 

ゲイザー25匹を仕留めて、ちょこちょこ落ちてた素材を拾って急いで帰った。

幸いなことに盗賊団とか賞金首は来なかったし、なんなら同業者の協会員も見かけなかった。

 

あの辺、AO結晶の反応も無かったしな。

 

AO結晶が無いなら、施設かその跡地でもなきゃ、人はなっかなか来ない。

ネストに繋がる道ではあったけど、それだけじゃなあ。

 

ああ、物流が再開したらそれ目当てはあるかもねえ。

 

 

と、ソファでダラダラしながら薬草茶飲んでたら、横でデカイ壁掛けモニターとタブレットでショッピング二刀流してるメイガスが顔を上げた。

 

 

『ユナイター、さっきの道で大型トラックをクレイドルの一団、おそらく盗賊団が襲ったそうです』

『札付きらしき大型のクレイドルも確認されたそうで、討伐の呼びかけがきています、どうされますか?』

 

 

もう答えは決まってるんだけど、一応聞いてみる。

 

 

「札付きってどれだよ」

『鬼のような顔をした大型で、グレネードで護衛のクレイドルを吹き飛ばしたそうです』

「らしきじゃないよ、完全にデストロイじゃん……どうされますか?じゃないんだわ、絶対に嫌だ」

『―――だと思いました』

 

 

知ってたって顔でメイガスがショッピングに戻った。

 

当たり前だ。

 

 

 

 

 

 

--- - --- --- - ---

ふわっとした設定と説明

--- - --- --- - ---

 

ゲイザー:

空を飛び回ってるクラゲ。デザインは割と好き

 

札付き:

固有のクレイドルに乗ったネームドで盗賊団、とても強い

 

デストロイ:

本名はButcher Ravager、デストロイ・モンスターって呼ばれているネームドエネミー。

 

無限にグレネードを投げ、グレネードランチャーを撃ちまくる迷惑系盗賊団。

爆発耐性が異様に高くて、こちらが投げるグレネードも、本人の自爆でもダメージも受けない。

 

クレイドルはオーガと呼ばれる系列のレジェンダリー級「ブーケ」にAPK(アメイジアパフォーマンスキット)と呼ばれる、特殊な改造を施したもの。

そして何故か、サイズがデカくなっている。





た、楽しいですよ、SYNDUALITY Echo of Ada(にこ)
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