集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「んん〜江戸にいる仙殿に話を聞いて貿易に来ましたが、思ったよりも収穫があってよかったでござるよ」
「遠い江戸から商人の方があなたが来ていただきありがとうございます」
「いやいや、拙者本拠地は酒田(現在の山形県)故にちょうど江戸から船で帰る時に立ち寄った次第で」
ござる口調の彼は酒田と江戸を生き来して商売をしている商人と武士を掛け持っている本間左衛門と言う男であった。
酒田本間氏……戦国時代では佐渡に本拠地を置いていた国人衆(戦国大名に従属していた有力な武士)であり、上杉家による佐渡侵攻と関ヶ原後、徳川家による佐渡の統治が始まり、没落してしまった経緯がある。
本家はそんなことになったが、時勢が読めていた彼は上杉家が佐渡に侵攻するまでに佐渡を脱出し、酒田の地に拠点を移し商人の真似事をしていたが、紆余曲折あって地主に成り上がっていた。
そんな彼は商売の幅を広めれないかと江戸見聞に行った際に、仙と知り合い、鶏の仕入れを手伝ったことである程度まとまった金を手に入れたのだとか。
それを元手に米相場に手を出したらこれが大儲け。
ホクホク顔で帰っている途中で仙にお世話になったし、仙の実家が困窮しているって話だったので少しでも手伝いできればと、食料か着物を買い込んで立ち寄ってくれたのだとか。
「本当に助かります! 食料はまだまだ足りてないですし、着る物も十分とは言えないので」
「いやいや、こちらとしても仙殿にお世話になったでござるよ!」
本間殿と俺こと角栄は話が弾み、食事を提供したところ、米の旨さに驚いていた。
「もしよかったらこの米の種籾を譲ってはくれはせぬでござるか! この土地でも育つような米であれば、冷害で困る民を救えるのでござるが……」
「それは……」
現代米を他所に譲れば味の優位性を放棄することに等しいが、俺は頭の中で計算していると、天啓が降りてきた。
『本間と繋がりができるなら譲ってしまった方が得だ。それよりも米だけでなく器やコップなんかを譲って恩を売り込め』
天啓によると今話している本間の子孫はそこらの大名をも凌ぐ日本一の地主と言われるくらいの大商人に化けるらしい。
彼との繋がりを持っておけば、将来絶対に役に立つからと神様から念を押されたので、俺は『そらななつ』の種籾を譲ることに。
「これが蝦夷でも育つ米の種籾になります」
「感謝するでござるよ……来年育ててみるでござる」
「あとお近づきの印としてこちらを」
俺は昨夏がネット通販で買ってくれた色付きのガラスコップを幾つか木箱の中に割れないようにおが屑を入れた状態で渡す。
「こ、こんな良い茶器をいただいてもよろしいのでござるか?」
「ええ、うちの領地で職人が作っている物でして……まだ数は揃えられませんが」
「いやいや……和物(日本で作られた茶器全般を和物もしくは国焼と言う。中華が作った物は唐物、朝鮮は高麗茶器と言われる)でこれほどの物を作れる職人がいるとは……是非とも取引をしたいでござるよ!」
「技術は教えられませんが、取引なら是非。そうですなぁ……秋頃であれば更に数を揃えてられると思うのでいかがでしょうか」
「ぜひぜひ! 次来る時は何が欲しいでござるか?」
「そうですね……やっぱり熊が出るので槍や刀などの武器類、あとは寒いので着物を多く持ってきてくださると助かります」
「うむうむ、着物は質より数の方が良さそうか?」
「そうですね。数がある方が助かります」
「相わかった! では秋頃にまた来るでござるよ」
こうして商人の本間と伝手が出来、ついでに江戸で仙が頑張っていることが皆に広まるのであった。
商人の本間が来たのを皮切りに、仙が江戸で日高の領地に移住する住人を募集を掛けたらしく、船に乗って100人近くの男達が移住して来た。
殆どが元足軽で、戦の無い世の中になったことで帰農することを考えていたが、蝦夷であれば最初の数年頑張れば広い土地を手に入れられて地主になれるかもしれない……と言う淡い希望を抱いて移住してきていた。
そんな彼らがまず目にしたのは領民達からの歓迎。
少しでも男手が欲しい領民達は例え元足軽だろうが農民だろうが構わず歓迎した。
そして広がる農地に青々と育っている野菜や米の苗の数々。
伝説の妖怪の九尾までいるものだから、腰を抜かして驚く者が続出し、それを使役していたり、様々な能力を使う領主一族……つまり俺達は逆らってはいけない存在だと感じたらしく、すぐに従順になっていた。
結構犯罪を犯したりするんじゃないだろうかと心配していたが、杞憂だったみたい。
まぁうちの領地で犯罪を犯して牢屋にぶち込まれるか追放刑になれば、牢屋は夏場は良いが、冬は凍傷の危険があるし、追放されればそれすなわち死みたいなもんで、領地の外に出れば熊が普通にうろついているので、どう頑張っても死ぬしかない。
そんなことを他の領民から言われているので、荒くれ者たちもすっかり大人しくなってしまったのである。
俺らにとっては素晴らしいけどね。
あと真面目に働いていれば領主から色々ご褒美(防寒具や調味料、食料、農具、寝具)が下賜されると聞いて、彼らもやる気になっていた。
「とりあえず今は俺達と共に開墾に従事してくれ。生きていける環境が整ってきたら、ちゃんと土地を与えるから」
「「「おお!」」」
土地をもらえると聞いて家臣達は色めき立つ。
土地持ちはこの時代の人達からするとステータスなので、金よりも広い土地や豊かな土地を欲しがる。
そこら辺を刺激してやれば、家臣達や新しく来た者達もやる気を見せて開墾作業を頑張るのであった。
「ねぇ昨夏」
「ん? どうしたの錬金?」
「僕さ思いついちゃったんだけど錬金術を使えば真珠作れるんじゃないかって」
「どういうこと?」
錬金曰く、自身が使える錬金術は工程の省略、化学変化や自然現象で起こることの再現、そして時間を飛ばす……なんかができるとのこと。
そこで錬金釜を大きな真珠と同じ機能を持たせて錬金術を使えば、真珠を量産することができるんじゃないか……と考えたらしい。
「これが上手く行けば一定種類の宝石も作り出せるから試してみようよ!」
「まぁやるだけやってみようか……私を呼んだってことはネット通販で買いたい素材があるんでしょ?」
「うん! 真珠を作るには真珠核となる貝殻の破片だったりする物と真珠層を形成するのに母貝の貝殻を砕いた物、炭酸カルシウム、少量のタンパク質を混ぜれば僕のレシピだと真珠を大量に作ることができるとのことができると思うよ」
「えっと……真珠核は100個入りが500円、炭酸カルシウムが工業用20キロが1000円、タンパク質……まぁプロテインパウダーから抽出するとしたら5キロ1万5000円くらい? で、母貝は何でもいいの?」
「真珠作れる物なら何でも。アワビの貝殻でもいいよ」
「だったら50枚1000円で売ってたけど。貝殻の粉末1キロ5000円もあるわね」
「じゃぁ粉末の方で」
「はいはい」
ドサドサっと段ボール箱が空中から出現し、中に購入した物が詰まっていた。
それを取り出して錬金がぽいぽいっと錬金釜に入れていく。
「うーん、真珠核追加で4900個」
「そんなにできるの?」
「この量ならそれくらい作れそうってチートが囁いてるの」
追加で真珠核を4900個……中に5000個入れて、錬金が水を入れて、かき混ぜていくと、錬金釜(ドラム缶半分ぶった切った物)が光輝き出し、銀色のドロリとした液体になっていく。
十数分に煮込み続けてから火を止めると、鍋を冷ましていく。
「半日漬け込んだら完成だよ」
「あ、そんなにかかるんだ」
「真珠が今周りの養分を吸い付いてデカくなっている最中だから。この錬金釜全体が真珠の貝殻の中みたいになってる感じだからね」
半日待つと中身の銀色の液体がほぼなくなっており、中には乳白色に輝く真珠が沢山……。
「ネット通販で売れる?」
昨夏が大きめ(8mmクラス)の真珠を手に取り鑑定してみる。
「うーん……人工真珠って表記されていて、売値は2000円。大きめの10mmサイズで3000円かな?」
「材料費を考えると……」
真珠5000個を1個平均2500円と考えてると売値1250万円。
手間とコストを考えると今までで一番金になる事が判明。
「あ、でも1年で売れる数に制限かかってるわ。人工真珠だから?」
「まぁあの邪神のチートだから凄く楽にさせるつもりは無いってことね……」
それでも人工真珠は5000万円までは売れるらしいので、造れるだけ作っておいて、ネット通販で換金できない分は木箱に詰めて、偶に船でやってくる商人に代金代わりに支払いに使うことになるのだった。
商人達はめっちゃ喜び、翌年から交易に来る頻度が上がった。