集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
角栄達が開墾開拓に精を出していた頃、江戸では仙が江戸城を出入りして色々な情報を耳にしていた。
「情報が入ってくるのは大きいな」
関ヶ原の仕置も大凡片付いてきており、一番戦後処理に抵抗していた島津が所領安堵で決着したことで、徳川家に逆らう大名を殆ど排除することに成功したのである。
国替えも同時に行われており、東軍で大活躍だった山内一豊が土佐一国の大名となったり、父親が織田信長の乳母兄弟だった池田輝政が西国に今までの約3倍の50万石以上の領地を拝領したりと、東軍に加担した大名達への加増が目立った。
西軍、東軍両軍の国替総石高は740万石にも及び、日ノ本全土の石高がこの時代1400万石前後なので、約半分が動いたことになる。
ちなみに仙と仲のよい伊達政宗は関ヶ原直前に東軍の味方の領地で一揆を扇動した罪に問われ、100万石の約束をされていたのに、結果2万石の加増だけということになったりしていた。
そのお隣の最上家は伊達の分の加増を貰って所領が2倍になったりしていたが……。
ちなみに日高を訪ねていた本間が本拠地にしている酒田は、現在最上家の所領である。
そして豊臣家が保有していた全国の鉱山の利権を関ヶ原以後は徳川家が掌握し、豊臣家が発行していた金貨銀貨を徳川家が発行するようになり、着々と徳川家に権力が移行している真っ只中であった。
それに噂によると徳川家康様が朝廷より征夷大将軍及び幕府を開く許可を頂くのも時間の問題であると仙の耳に入ってきていたのである。
(なんかそんな話を聞いていると、歴史が動いているって感じがすごいするな……)
そんなことを考える仙だった。
「真珠細工で食っていくしかないだろう」
蝦夷の日高にいる俺は、錬金が量産していた真珠の価値を最大限高めるために、領民達でも手先が器用な者に真珠細工の工芸品を作れないかと失敗を繰り返しながら練習していた。
領民達は宝石である真珠を使う以上失敗に怯えていたが、技術が無いので数をこなして覚えるしかない。
この時代よく宝石が使われる飾りは簪(かんざし)だったり櫛(くし)だったり、女性の髪を纏めるのに使う物や今でも法事とかで使われる数珠に使われる事が多く、ネックレスとかイヤリングみたいな物は日本では好まれない。
無論ネット通販ではネックレスとかにしたほうが値段はつくし、加工してしまえば上限金額を突破する裏技も見つかったり……。
まぁでも現状は錬金が作り出す真珠で毎年5000万稼ぎ出す事が確定したので、それ以上に作った真珠は加工するしか無いのである。
簪や櫛は豊臣政権時代に各国の大名の奥方を大坂城城下に住まわせたことで堺や京などで流行っていた服装が全国的に広まりを見せ、徐々に庶民達にも伝播している最中であった。
戦が無くなり、生活に余裕が出てきた女性達が少しでも着飾るのに身分に合わせて簪や櫛を着用していたのであり、江戸時代はほぼ全ての女性が身につけることになるし、好きな女性に櫛を贈るのが求愛の印みたいになっていくのである。
って天啓が言っていた。
だから今のうちに領民達の副業として簪や櫛を作れるようになっておけばいいなぁと言う感じで作る練習が始まっていたのである。
「できました!」
「おお、流石手先が器用」
簪や櫛を身につける文化は無かったが、見本を見様見真似で作っていたデストピア出身の女性達は綺麗に作っていた。
「玄武、もっとデストピアの女性陣呼んだ方がいいんじゃね? 工芸品作るのに滅茶苦茶有能だぞ……」
「追加で呼ぶでござるかw」
というわけで30人追加招集。
宇宙人の家畜になっていた少女達なので生きていけるだけで幸福度爆上がりという俺たちにとってはとてもありがたい人材である。
寒さや飢えにも強いし……あと紅壱によれば母体としても優秀って言っていた。
ちなみに少女達のカップル第一号は狩野先生とその助手を務めていた少女であった。
狩野先生の男らしさに惚れて魅了したら、戦争やシベリア抑留で数年女性と触れ合うことがなかったのと童貞だった先生の理性がプッツンしたらしい。
その他にも少女達は領民の方々と各々いい感じになっている子がちらほらいたのでいい傾向である。
玄武は彼女が欲しいと泣いていたが……ちょっとキモかった。
材料は俺が切り倒してきた木材の廃材を使い、まず櫛や簪の形にノミで削っていき、削り終えたら昨夏が取り寄せてくれた漆を使ってコーティング。
最後に色を塗ったり装飾をしたりしたら完成である。
切り出す人、漆に浸けて乾燥させる人、装飾する人の分担作業になるが、領民……特に女性達はこの副業にこぞって参加した。
男達は農作業や開墾作業をしているので、女性の自分達は手先の器用さで稼いでやろうという魂胆である。
で、そろそろ物々交換だと難しい状態になってきたので、商品券を発行し始めた。
商品券……この時代だと藩札になるのか?
ろくに通貨も無いので、昨夏が働いてくれた人にお金の代わりとして大量に売られている年賀状を買い込んで、そこに複数の切手を貼り付けることで商品券代わりにしたのである。
ネット通販で格安に売っている偽造しにくい紙で調べたらちょうどいいのが年賀状だったらしい。
現状領地で使えればいいので、そんなに量も必要無いし、切手は1枚数円なのでハガキに貼ってスタンプカード感覚で何円分貯まれば交換みたいな感じで始まると、領民達のやる気は向上。
各々頑張って働いて商品券を支給してもらい、昨夏がカタログリストを作成して、商品券何枚で交換みたいに感じにしたのである。
領民達はやる気が出る、こっちは欲しい物の管理がしやすくなる……win-winだ。
そんなこんなで失敗を繰り返しながらも、徐々に装飾が上手くなっていき、半年練習をしたら、ネット通販でも1個1500円で売れる値段が付いたのである。
真珠付きというのを考慮すると、若干安くなっているが、ネット通販で値段が付く商品認定されたのは大きい。
で、実際に日高に来た商人に売り込みをかけると、装飾品が飛ぶように売れた。
勿論真珠を使っているのもあるが、色々な染料(錬金作成)を使った複雑な柄入りなのが商人達的には売れると感じたのだろう。
商人達は簪や櫛、それに真珠を買い取り、そのかわりに食料と布を交換してくれるのであった。