集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
俺達は大量に造られた芋や砂糖を使って酒を作れないか……という試みを行なっていた。
というのも、領民達が酒を飲みたいと言い始めたからである。
治安悪化を抑制するために、今までは酒の交換を行ってこなかったが、少し余裕も出てきたし、飲みたい人物の中から、酒造りに適していそうな人物をピックアップして、錬金と秋翁の2人がタッグを組んで酒造りを始めたのだ。
「さて、現在領地から採れる材料だと、ジャガイモ、サツマイモ、そして砂糖の3つから酒を作り出すことができるね」
「うん、そのための道具も自作したからな」
錬金が粘土を上手いこと成分調整をしてとある焼き物を量産していた。
それは後々語るとして、砂糖からラム酒を作るやり方を見ていこう。
まず甜菜を砂糖にする際に糖蜜という分離液が出てくるのであるが、錬金術を使うとこれすらも砂糖に変換してしまうので、領民達に改めて甜菜から砂糖の抽出を行わせて、一定量の糖蜜を確保することが出来た。
それを発酵させた後にランビキと呼ばれる陶磁器製の道具を使って蒸留を行う。
これがさっき言っていた粘土を焼いて作った道具である。
下に壺状の原液入れ、その上にひっくり返したやかん状の出入り口を2箇所作り、下から火をかけると蒸気が上に登っていく過程で冷やされ、真ん中の排出口から蒸留した物が出てくるのである。
これを繰り返すと酒の度数がどんどん上がっていく。
蒸留酒と言われる酒は基本この工程を行うのである。
サツマイモとジャガイモもこの要領で、煮詰めてドロドロになった液体を発酵させて濾した後に蒸留すれば芋酒の出来上がりである。
領民達も久しぶりに飲む酒に大興奮。
ジャガイモはさっぱり目、サツマイモは仄かな甘さ、ラム酒はキャラメルの様なほろ苦さの中に甘さを感じて焼き鮭をツマミにしてまぁよく飲む。
俺達が領民達に作り方を教えたので、皆家で密造酒造りに精を出すようになるのであった。
酔っ払いは増えたが、ストレス発散が出来たし、狩野先生が度数の凄く高い酒を作って、傷の消毒に使うように、怪我の回復が早くなる副次的な効果も得られるのであった。
「食料事情も安定してきたし、秋のうちに幾つか新居も作ったから、数十人のキャパの空きはできたな」
「呼ぶのですなw」
「ああ、新しい住民を呼ぼうか」
というわけで異世界から住民の拉致3回目である。
今回はこの世界の適合率を低めにし、逆に満足度を高めに設定した若い女性という制限をかけ、職業はランダムにしてもらった。
玄武曰くファンタジーかSF寄りな異世界から召喚されるとのこと。
ではレッツ召喚。
「こほこほ……あれ? 私はギロチンにかけられる寸前だった筈じゃ……」
金髪の西洋人風の若い女性が召喚された。
「よし、召喚に成功」
「召喚? 勇者様と同じ様なものでしょうか?」
「お、勇者を召喚するような世界出身か」
彼女の名前はニコル・クリスティ。
数年前まで服屋を営んでいたらしいが、勇者が魔王に負けて、人族は皆魔族の家畜になってしまった世界らしく、勇者の衣服を作ったとして彼女は拷問の末に処刑される寸前だったらしい。
「こ、ここの世界で……私は勇者として戦わされる感じですか!」
「いや、そんなことは無いから安心してくれ」
俺が代表として彼女に分かる表現で状況を説明すると、寒い地域に移住した新興貴族の一団であり、人材不足を補うため、異世界で不幸な目に遭っている人物を召喚して、領地経営の手伝いをしてもらっていると説明した。
「なるほど……お役に立てるか分かりませんが、命の恩人なので、できる限りのことはやらせてもらいます!」
「ありがたい……ここにいる秋翁がこの世界の常識を教えてくれるから」
「はい、秋翁様よろしくお願いします!」
「お、おう……」
常識インストール後、ニコさんはモジモジしながら恐縮なのですがとお願いしてきた。
「あの、私だけ皆さんと容姿が違うので、他の住民に受け入れられるか不安なのですが……」
「それもそうか……玄武、追加で20人くらい呼んじゃえよ」
「了解!」
というわけで玄武が追加召喚を行ったところ、同条件でも別の世界に繋がってしまったらしい。
「型式番号FML23-36759号デス。新しい指示をドウゾ」
髪色カラフルなSFに出てくる少女兵士の様な人物達が召喚された。
彼女達に召喚とか色々説明したら、一応状況は飲み込んでくれたらしい。
「本機は人造培養ポットにて製造された旧人類側戦闘用遺伝子強化兵になるデス。戦闘行動及び居住環境の整備等がインストールされておりマス。またある程度は自律して活動することがデキマス。自律プログラムを起動させマスカ?」
とりあえずはいを選択する。
こいつも秋翁に常識をインストールしてもらうと、一応人間っぽく振る舞ってくれるようになった。
こいつらは家臣達に任せようと思い、独身の家臣達に異国から来たお嬢さん達だからよくしてやってくれと丸投げした。
「ご主人様よろしくお願いしマス」
「若様方!?」
「異国の人が流れ着くことも度々ある土地だからな。これには慣れろお前ら」
「ご主人様、お風呂にしマスカ? ご飯にしマスカ?」
最初のうちは戸惑いが多そうだし、機械的な動きが殆どであったが、なんだかんだ家臣達は少女兵士達に色々教えていき、殆どが恋仲に発展していくのであった。
一方でニコさんは常識がインストールされたことで、この世界は反物(布1枚を切らずに活用すること)と洋服の違いをすぐに理解したが、防寒具だったり下着は洋服の方が良いとして、次々に毛皮を使ったり、昨夏がネット通販で買ってきた化学繊維の布や綿毛で見事な防寒具を作り上げていった。
「この世界に来てから衣服に能力を付与する……みたいなのの効力がガクっと落ちたけど……領民の皆さんは私の服をありがたがって着てくれて助かったぁ……これならここでも服屋としてやっていけそう……」
更に彼女は自分が使っていたから構造がわかるとして、秋翁と俺(角栄)に協力を要請して、足踏み式のミシンを開発するのであった。
あれ? ファンタジー世界の方が文明レベルがもしかして上なのか?
彼女の開発した足踏み式ミシンは各家庭に販売され、和洋折衷の服装が暖かいや動きやすいという理由で好まれて着用されるようになるのであった。