集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「性病の娼婦を連れてくるかぁ……よく思いつくね角栄」
時は少し遡り、俺は狩野先生と錬金、昨夏の3人に娼婦の女性や捨て子を大坂で拾ってくることを伝えていた。
「うむ、大坂であればこの時代なら江戸よりも人口は多いだろうでありますな。しかし、薬の量が少々心許ないかもしれないでありますよ」
「そこは錬金の力で増やすことはできないか?」
「できるよ。うちの領民だけなら狩野先生が調薬する分で済んでいたけど、一気に数百人単位で連れてくるんでしょ? だったら薬を増やすのは僕の領分だね」
「で、材料は私がネット通販で購入すると……できなくはないだろうけど、そんなに大量に連れてこれるの?」
「最初は狩野先生を連れて行こうとも思ったけど、訳あり人材を娼館から買い取って、こっちで治した方が早いと思ってね。こっちに来てくれた方が他所に何をやってるか分からないだろうし」
というわけで錬金と狩野先生で薬を大量に用意してもらったのである。
注射器が用意できないから逆に飲み薬にしてしまった方が早いとして、錬金が抗生物質の飲み薬だったり虫下しの薬を大量に用意し、それを連れてきた娼婦や子供達に接種させて治療を行なっていった。
連れてこられた女性や子供達は最初困惑していたが、暖かい着る物と毎日食べられる環境に喜び、子供達は徐々に開墾の手伝いだったり色々な仕事に従事するようになる。
もちろん紅壱に肉体改造を施されていたが。
紅壱の能力も転移者の遺伝子情報を解析することで、能力の拡張が行われ、更に病気や寒さに強い様に改造されたのである。
それにより衰弱していた子供達も狩野先生と紅壱の力で元気になり、秋翁が知識を教えて、十分に戦力となっていくのだった。
大坂で予定よりも人数が集まり、人攫いの噂が広まり始めていたので、家臣達を江戸に返して、俺も日高に撤収。
大坂で手伝いをしてくれた家臣達は俺を天狗と同列に扱って妖怪様と恐れていたが……まぁ大丈夫だろう。
時期も5月となり、領民達は一斉に田植えを始める。
3年目となると慣れた者で、領民達も広がった田んぼに生き生きと苗を植えていってたり、砂糖の原料となる甜菜や芋類、野菜も植えていっていた。
今年の田植え面積は約50町。
世代を重ねたことで晴宗のチートが本領を発揮し、そらななつの品種が更に改良を重ね、より寒さに強く、稲を太く育つことで倒れにくく、より稲穂が成るように改良されていた。
昨年度より面積当たりの収量は更に増えると自信満々である。
あと他の改良としては麦類だろうか。
今までは米の収穫後種籾を蒔いても、冬になり、育つのが6月までかかり、米の田植えと微妙に被っていて2毛作ができなかったのであるが、雪解けと共に成長し始める様に改良した結果、4月で収穫できるようになり、ギリギリ2毛作が成り立つ様に晴宗が頑張ってくれた。
これにより牛や馬に与える藁が豊富となり、俺が買ってきた子牛、子馬も十分に育てていけるだけの餌は確保できるだろう。
「日本の在来種は牛も馬の粗食に強いって知っていたが、そこら辺は改造しなくても大丈夫だな……こいつら……冬でも木の皮とか食べて生きていけるんじゃね」
「そんな馬鹿な……」
「いや、ガチガチ。粗食に耐えるって面は改造しなくてもトップクラスにチューニングされてるぞ……ここから更に変えると豚みたいに雑食になるが、そうなったら違う生き物になっちゃうからな」
「それさ……人間も改造してるけど大丈夫なのか?」
「い、今のところは大丈夫なはず……」
「俺知らねぇよ……尻尾が生えてきたとかスーパー野菜人になったみたいな事が起こっても」
「大丈夫……だと思う」
「おいおい……」
そんな会話をしていたが、子馬や子牛はすくすくと成長していき、頭も良い為、人の言う事をよく聞いた。
領民達もトナカイもどきよりも慣れ親しんだ牛や馬の方が育てやすいとして、トナカイもどきは労力から一転して食肉方面で育てられることになる。
田植えも無事に終わった頃、本間殿が更に船を増やして戻ってきた。
「あれ? 角栄様? 戻られていたのでござるか?」
「あ、ああ。先に戻ってきていたわ」
「言ってくれれば船に乗せて行ったでござるのに……砂糖も無事に捌けたでござるよ! 決算がこちらに」
この時代砂糖の年間輸入量は150キロそこらの時代に本間殿だけで5トンもの砂糖が江戸に入ると価格の暴落が起こり、市場は大混乱に陥ったらしい。
色々すったもんだがあったが、幕府の役人から毎年この量を運んでこれるのかと聞かれ、俺が事前に来年はこれ以上取引できると思うと伝えていたので、本間殿は自信満々に来年は更に取引出来ると言ったことで、役人が取次いで混乱は収束。
市場を混乱させたとして本間殿は結構な額の罰金刑になったらしいが、それでも1万両以上の稼ぎを出したのだとか。
「宮永家からも領地で砂糖を栽培できる作物が見つかり、それで砂糖を実際作ったことを事前に伝えておいてくれたのがよかったでござるよ。幕府も宮永家から砂糖を大量に献上されていたから沙汰も軽く済んだでござる」
まぁ来年から砂糖の積み荷の2割は幕府が持っていくという約束をされてしまったらしいが、勉強代として仕方がないだろう。
「実際1石分の砂糖はどれくらいで売れるんだ?」
「1石で今回は500両の値段が付いていたでござるが、来年からは市場も落ち着くと見て……1石50両くらいに落ち着くと思うでござるよ」
「10分の1か……」
「それでも高額商品なのには変わらないでござるがな」
来年の相場だと町民には1斤(600グラム)で取引になると思うとされ、約250文から300文で購入できるようになるんじゃないかとのこと。
その値段だったらギリギリ町人も買えなくはないか。
ちなみにこの頃の1両は1000文なので悪しからず。
「まぁ全国で転売されるでござるから、増強した輸送力で、江戸だけでなく他所にも運べば十二分に利益になるでござるよ。立ち寄ったついでに酒田に運ぶ物を買い取りたいでござるが……」
「真珠と椎茸が結構あるぞ。他は毛皮と酒かとか?」
「じゃあ酒を大量に買い込むでござる。真珠や椎茸は酒田からまた戻ってくるでござるから、その時に」
「おう」
こうして本間殿は2ヶ月で江戸と酒田を往復するようになり、春の3月から雪が積もり始める10月後半までで年8回日高に来てくれるようになるのであった。
1回の航海で、本間殿は数万両を稼ぎ、そのうちの7割が日高藩に流れることになる。