集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
1612年……俺達も数え年で24歳。
振り返ると結構色々な事が起こったけど、一番は製塩ができるようになったことかな?
技術書に書いてあった流下式塩田を採用……昭和の中頃に日本の製塩技術で主流だった方法で、ポンプで海水を汲み上げて、竹で編んだ傘に上からぶっかけることで、風の力を利用して自然乾燥させることで塩分の濃度を高め、それを何度も繰り返して濃度を高めたら塩釜で水分を飛ばして塩を完成させるという方法で、この江戸時代初期の塩を作る方法にくらべると10分の1の労力と濃度を普通より高められるので燃料の消費量は半分で10倍以上の塩を作り出す方法である。
これ以上の方法はイオン膜を使ったり電気を使ったりしないとできないので、事実上1つの製塩技術の終着点とも言える。
これを作るのに2年間時間がかかった。
まず海水を汲み上げるポンプの製作。
昨夏が汲み上げ式ポンプの現物をネット通販で購入し、鍛冶師達に真似をさせて作らせた。
最初のうちは上手くいかなかったが、ゴムの木が成長し、ゴムパッキンを作れるようになったことで水漏れが少なくなり、牛や馬を動力として歯車を回転させることで、水の汲み上げ作業が可能になったのである。
それのお陰で、今回の流下式塩田を行うことができ、塩作りを可能とした。
その流れで手押しポンプが開発され、井戸水を汲む際に楽に汲み上げることができた為、領民からも喜ばれた。
まだ量産には至ってないが江戸にも送って、江戸屋敷の井戸汲み上げも楽になり、連日屋敷前にも掘った水汲み場で水を運ぶ商人達が列を作って埋め立て地に住む人達向けに水を売っているらしい。
屋敷前がにぎわうので放置しているし、徳川家にも献上して、江戸城内の井戸水の汲み上げが楽になったと下女や下っ端の武士達に感謝されているらしい。
あとはゴムが大量に取れるようになったことで、ゴム製品も色々作られた。
わらじよりも履き心地が良いゴム靴……現在の小学校で使う上履き(ズック靴)や勇者が負けて魔王に支配された世界出身者が革靴を広めた為に、その靴底にコルクの代わりにゴムを注入すると、履き心地が格段に良いとして領民の中で好評になった。
そのままの流れでゴム製の長靴が作られ、これも好評。
農作業が楽になったとして領民はわらじからゴム靴に移行していくのであった。
他にもゴム製品は色々あるが、ニシン漁の小船などの防水の補強材としても使われる事があり、船の耐久性を上げたり、耐水性を向上させる事にも繋がった。
あとはゴムパッキンが作られたことで陶磁器を使った壺での保存食が作られるようになり、上手いこと密封すると食材を長期保存できるというのが領民達にも広まっていた。
俺達転生者達は領民達から九家老と呼ばれている。
一門ではあるが領主の父上が日高に戻ってきた際に宮永家の分家とすることと各自に家老職を与えると伝えられた。
他にも家臣達や老臣の爺とかもいたが、今までの働きから誰もが納得していて、改めて領主代行としての役割を数年前に与えられたのである。
一応ないと思うが仙の当主の家系が途切れた場合兄弟である俺達の家から領主が出ることになっていたが……まぁ無いだろうな。
領民の数も玄武が大量に呼んだことと、結婚からの出産ラッシュで子供がポコポコ増えて、現在の人口は約7000人ほど。
うち1000人以上が5歳未満というのだから恐ろしい。
紅壱が出産の際に各家を巡り、子供達を改造しているお陰で、早世する子供は殆どおらず、どんどん人口は増え続けていた。
「それー高い高い!」
「「「「キャッキャ!」」」」
現在俺にも子供が9人おり、嫁が3人いるので1年に1人孕ませるペースで増えていた。
ちなみに俺の嫁は元魔法少女の新道寺光……今は宮永光と元旧人類側戦闘用遺伝子強化兵の型式番号FML23-36759……みく、それに宇宙人の家畜になっていた世界出身の咲の3人を嫁にしていた。
それぞれ遺伝子が違ったり色々改造されていたりでちゃんと子供が生まれるか不安だったが、子供達は今の所問題は無さそう。
「父上!」
タタタと走って部屋に入ってきたのは長男の太郎だ。
「太郎どうした?」
「思い出したのですよ! 前世のこと!」
「えー!? 早くない? お前まだ数え年で8歳じゃん!」
「神様よりこれより早世する心配がなくなったし、体が大きいから元服しても問題ないと言われました」
「そ、そうか……」
「パパあたしも前世思い出したんだけど〜」
「え?」
何と長女の芽育(めい)もらしい。
とりあえず太郎の元服をしないと……。
太郎は元服をして宮永相槌(あいづち)と元服して名前を変えさせ、芽育の2人を執務室に連れていき、話を聞いた。
「確認だ……転生時の年号と西暦言えるか?」
「俺令和3年の2021年」
「私平成27年……2015年」
「よしよし、転生者は殆ど同じ世界の時間軸がこれで確定っぽいな。チートは貰っているのか?」
「うん、神様から健康長寿と子宝に恵まれやすくなるのと工業用魔法ってのが使えるっぽい。前世は刃物の企業に勤務していたので、江戸時代ならまだ刀とか必要になるだろうって思って応用の利きそうなチートにしたけど」
「私前世で子供が産めない体質だったから……子供を沢山産めるチートをもらったの。神様から子宝に恵まれやすくなるチートと重複しているから、私の子供は全員健康で頭脳明晰な美男美女が生まれてくるの確定にしてくれたよ」
「おお、俺達の子供はチートが付与される感じか。よしよし、これで開墾がより進む」
「江戸時代前期って神様から聞いてるけど、今西暦だと何年くらい?」
「西暦だと1612年。大坂の陣まであと2年だ」
「え? 俺もしかして出陣ですか?」
「残念ながらな……まぁうちの兵数が頑張っても500人が限界だし、歴史を知ってるから激戦箇所には置かれないと思うけどな」
「それなら……良かったのか?」
「一応俺の家は領主一門の分家兼家老職を父上から頂いているから領内が発展すると思った事は何でもやっていいからな。芽育は何かしたい事はあるか?」
「だったら私江戸に行きたい! 江戸城とか見たいし!」
「そうか、年齢が15になったら行けるように手配する。ただし江戸では藩邸で一族では無く下女として過ごすことになると思うが良いか?」
「うーん……うん。行って駄目なら帰ってくるよ。パパ瞬間移動使えるから連れ帰ることくらいはできるでしょ?」
「まぁそれくらいならな!」
「やりい!」
この芽育の血筋が後々徳川将軍になることをこの時誰も知らなかったのである。