集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
僕の名前は小松……前世では料理人をやってました。
ホテルでシェフをある程度までやって、そのまま個人店を開いて経営していたのですが、1人で店を回していたのが祟ったのか、疲労である時ぽっくり逝ってしまいました。
そしたら自らを邪神と名乗る神様に出会って、この江戸時代が始まった時代に飛ばされたのです。
正直、歴史は詳しくなかったので、周りに多くの転生者が居てくれて助かりました。
あと、僕は一応支配者層の武士でも偉い方であると聞いたときはまともな料理が食べられるとして喜んだ記憶があるんですが……。
そんな僕の生活を見てもらいましょうか。
午前5時起床。
日の出頃に起床して、母親達に指示を出しながら朝食の準備。
僕の父親は昨夏と言って、ネット通販で色々な物を購入できるチートを持っているけど、領民の為に買うものが多いから、食材はなかなか買ってくれない。
だから食べたかったら作るしかないんだよねぇ……。
「さてと、朝食を作りましょうか!」
母親達と言う様に、僕の家には母親が3人居る一夫多妻制。
現代人の感覚だと色々思うところはあるけれど、戦国時代というより生き残りをかけたサバイバル生活を数年続けていた父親達は生存本能が刺激されたのか、全員複数人の嫁を貰っている。
というより、ここの領地の男女比が女性の方が多くなったから、一夫多妻に自然となったと教えられた。
僕も結婚はしたいが、お嫁さんは1人でいいかなぁ……。
「さてと」
相槌が作ってくれた包丁でほうれん草をざく切りに、あと大根も白い部分と葉の部分を入れて味噌汁に、ほうれん草のおひたしも昨日作っておいて、日の当たらない涼しい場所に置いておいたので、それも朝食に。
あとは稲藁の中で発酵させた納豆を皿に盛り付け、炊き上がったご飯と共に朝食とさせてもらう。
「いただきます」
まだ幼い弟達と一緒に家族でご飯を食べる。
朝食が終わったら仕事の時間。
僕は開墾作業は免除されているが、開墾作業に従事している人達の為に昼食を用意する仕事を任されたので、領主屋敷……実質市役所みたいな場所で昼食を食べに来る人達の為に料理を作っていく。
だいたい握り飯と漬物が殆どで、前までは焼いた芋パンを弁当代わりに持って行っていたらしいが、今は殆どが米を食べたがるので、おにぎりを握って大葉やとろろ昆布といった食材を海苔の代わりにして巻いたり、笹の葉でくるんで弁当を運ぶ係が数十個単位を担いで運んでいく。
開墾作業は遠くでやっていることが殆どなので、運ぶ係がどうしても必要になるのだ。
もちろん屋敷近くで仕事している人達は領主屋敷に食べに来て、昼メシを食べていく。
おにぎりの具も毎日同じだと飽きるだろうからと工夫を凝らす。
僕が赤ん坊の頃に植えられた梅の木の梅を使った梅干し、ここの領地の定番の鮭やいくら、養鶏もしているので味付け卵だったり、昆布や小魚の佃煮なんかも大人気。
冬が近くなり、豚が屠畜されるようになると、肉の消費をしなきゃいけないので、最初は味噌とそぼろを炒めた味噌そぼろ、続いて塩漬け肉を焼いて細かくしておにぎりの具にしたり、最後はソーセージを焼いたのをおにぎりの具にすることも。
あとは唐揚げをおにぎりの具にしたのも皆喜んで食べる。
甘じょっぱい砂糖醤油で作る焼きおにぎりなんかも人気だ。
そんなこんなで毎日おにぎりと漬物を色々作って昼メシ時が終わるとだいたい午後の2時くらいになる。
そしたら他の転生者達と情報交換をしたり、夕飯や明日の朝食に向けての買い出しを行う。
「あちゃ~まいったなぁ……」
「どうしました?」
「ああ、小松じゃねえか。実はな」
漁師がマグロを捕ったのだが、釣ったそばから鮮度がどんどん落ちて、生臭くなってしまったので、買い手がなかなか現れないのだとか。
「じゃあ僕が何とかしますよ。1尾どれくらいの値にするんです?」
「そうだな……小ぶりだし、400文でどうよ」
「わかりました」
400文……現代換算で約5万円くらい。
100文代わりの年賀状を4枚漁師の兄ちゃんに渡し、交渉成立。
「よっこらしょっと」
母親が強化兵とか言うのだったから、僕の体も普通の人の十数倍力があるらしく、100キロ近くのマグロを抱えて運ぶことができる。
家に持ち帰ると、父親の昨夏に醤油とみりんを大量にちょうだいとねだり、あと母親達にニンニクを買ってきてもらう。
「さてと、やりますか!」
相槌が作ってくれた包丁でマグロをどんどん解体していく。
鮮度の問題でトロの部分は食べられなくなってしまうので、仕方がないが、肥料に回し、赤身の部分を醤油、みりん、ニンニクを入れた漬タレに漬け込む。
桶に漬けたマグロをご近所に配っていき、野菜やら食べ物と交換していく。
あっという間にマグロで使った400文の元は取れてしまう。
「じゃあまた飯炊いておいて」
俺は再び港に行き、食材を調達すると、夕方になり、家の前に暖簾を垂らす。
父親が俺の為に家を拡張して台所の奥に食事処のスペースを作ってくれたのである。
まぁ作ったのは建成さんだけど……。
「いらっしゃいませ~」
「お、小松今日もやってるな!」
入ってきたのは幼なじみの悟。
そんな彼は今日も自身のチートで異空間に行き、モンスターを狩ってきたらしい。
だいたい彼が一番乗りで入ってくる。
「今日は何を捕まえてきたの?」
「じゃ~ん、巨大ホロホロ鳥だ。血抜きはしてある」
店の外に持ってきていたそれは3メートルサイズのホロホロ鳥であった。
「こりゃまたすごいな。これと交換で良いか?」
「ああ、とびっきりの1食を頼むぜ!」
「はいよー」
悟は僕の1食を食べたあとに店前でモンスターの解体ショーを行うのが最近の日で、解体ショー目当てに多くの領民達が集まってくるのである。
「今日はマグロを漁師の兄ちゃんが釣ってたからマグロの漬けをメインに、海鮮丼にしてみたよ。それにアラで取ったアラ汁、に僕が育ててる糠漬けを少々。足りなかったらおかわりあるから気軽に言ってね」
「うっひょーうまそう! いただきます!」
山盛りの海鮮丼を悟は口にかき込んで美味しそうに食べていく。
時々味噌汁を啜って、またかき込む。
最後に口直しで糠漬けをポリポリと食べて……
「ごちそうさまでした」
「はーい、おそまつさん」
「さてと飯を食ってやる気出たから解体してくるわ」
「了解。必要な道具はある?」
「いや、今回は全部持ってきたからな。大丈夫だ」
僕も解体を手伝い、食材になる部分を飯代としていただく。
皮や羽、骨は加工すれば装飾品のとして使えるからとそっちの職人達に渡すとして、解体して得られた食材をメニューに加えて、店を再開する。
解体ショーを見ていた人達も、その解体したモンスターを食べられると好評である。
「今日はさっきの鳥の唐揚げ定食か海鮮を使った丼のどちらかだよ。お酒も用意しているからね!」
「小松の大将今日もやってるねぇ、じゃあ唐揚げ定食と芋酒を」
「俺海鮮丼」
「私も海鮮丼を!」
「はいよー。ごめん皆手伝ってくれ」
「「「はーい」」」
遊びから帰ってきた弟達や母親達にも手伝ってもらい、店を回す。
「小松、足りない調味料足しておいたから」
「父上、助かります」
「私も1食いただいても?」
「もちろん。弟達も手伝いありがとう。ご飯にしようか!」
「「「「やった!」」」」
そんな感じで皆で夕食を食べて、食べ終えた弟達から風呂に入り、俺は4時間程度営業したら店じまい。
もし肉とかがのこっていたら明日の朝食にしてしまうのだった。
それが僕こと小松の一日である。