集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
蝦夷に来て初日を終えた俺達兄弟は、次の日から藩校にお世話になることにした。
「藩校の教師も転生者か……」
「子供が子供を教えてるよ」
「もう、これでも先生なんですよ!」
ぷりぷりと怒っているのは俺達と同じ年か1つ歳下のまだ幼さが抜けてない転生者の桃子であった。
「藩校は今年開校したので、通ってる生徒数はまだ少ないけど、誰でも入校して勉学を鍛えることができるのですよ! ちなみにここに勤めている転生者は3人いますが、全員前世では教員免許を持っていたのと、チートも教育系なので安心してくださいね!」
「俺達が学べることとかあるのか?」
「そうですねぇ……私が受け持ってるクラスだと、領地経営だったり店や商売の経営を学ぶクラスなのできっと役に立つと思いますよ」
そう言ってクラスの中に案内されると、俺達と同年代の子供達が現実の経済の流れを模したTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)で遊んでいた。
ここにいるクラスの半数が転生者らしい。
「他半数はもうすでに自立して働いてたりするけど、将来商人になりたかったり、藩の経営に携わりたかったりする人はここのクラスで学んでいるよ」
「このゲーム形式で学べるものなのか?」
「それが馬鹿にできないんだよね」
1ターンでサイコロ振って気象情報や天災が発生したり、それぞれの幸運値で良い出来事悪い出来事が起こったり……各々が持っている資産をどのように運用するかを学ぶゲームである。
「人生ゲームと株とかを組み合わせたゲームっぽいな」
「もちろん今はこれをやる時間だけど、そろばんや算術の練習だったり、この時代の読み書きの練習だったりも行なっているよ。この時代は崩し文字だから普通には読めないからね」
「確かに、それで俺達も最初苦労したわ」
「この身体の知識として覚えていてくれたから何とかなったけど……」
「じゃあ混ざってやりましょうか」
その日は1日、藩校で勉強を学ぶのだった。
「一緒にやりましょ!」
「お、おう……」
この日俺は運命の出会いをする。
たまたま同じグループで一緒になった女子の芽育……あとで知ったが角栄おじさんの娘さん、俺の従兄妹に当たる女性に一目惚れしてしまう。
その日から俺は彼女に気に入られようとアプローチをするのであった。
「角栄おじさん」
「どうした?」
「芽育ちゃんっておじさんの娘さんですよね?」
「ああ、そうだが」
「俺、彼女のことが好きになってしまいました」
「おぉ、そうか……本人同士が納得するんだったら、俺は何も言わないが」
「い、言いましたね! 俺本気で狙いますからね!」
「おお、そうか……頑張れよ」
一応角栄おじさんにも伝えておくのであった。
藩校が休みの日、俺と弟の成秋、それに仲良くなった芽育ちゃんと桃子の4人で、領内の施設について案内をしてもらった。
「うちの領地だとやっぱり温泉施設が目立つかなー。領民は1文で入ることができるし、1文くらいであったら子供の私達でも軽くアルバイトすれば稼げる額だからね」
「アルバイト?」
「そうそう、藩校が終わったら私達転生者は基本アルバイトをしているわ。生糸の糸紡ぎだったり、農作物の収穫のアルバイトだったり、それぞれチートを使った稼ぎ方をする人や、飲食店で働いている人もいるかなー」
芽育ちゃんがそう教えてくれる。
一応俺と弟の成秋はお小遣いとして毎日50文(現代価格で約6000円ほど)を貰っているので、今日の町の紹介をしてもらうかわりにお金はこちらで出すと言っていた。
「あとは動物相撲とか?」
「動物相撲?」
「うん」
案内された場所は相撲小屋と書かれており、見物料金1人4文を払って中に入ると、中で相撲が行われていたのだが、相撲をしている人達が普通とは違っていた。
もちろん人の力士もいるが、熊や九尾、カンガルーもどきみたいなのも相撲をしているのである。
「すげぇ、熊が相撲してる」
「転生者の星獣さんと紅壱さんが色々な動物をテイムして改造した結果、人並み知能を持つようになったから、動物達を飼育代を稼ぐのに、動物達に相撲を取らせることにしたんだって。それが領民達に大受けで」
「確かに、熊や九尾が人と相撲するのは迫力あるな」
「人側も強化人間だったりもと人造兵士だったりするから負けてないし、兵士の人達の中で特に強い人達が相撲をしてくれるから毎日凄い迫力で」
「おお」
今ちょうど熊が力士に投げ飛ばされて、土俵から転がり落ちていった。
「それにここだと雨でも楽しめるし、ここでしか食べれないお弁当が売られていたりするからね」
「あー、弁当も食べられるのか。せっかくだからここで飯にするか?」
「いや、今日のご飯はとある店って決めてるの。もう数試合見たら移動しましょうか」
相撲を楽しみ、町を歩くが、遊郭のエリアに入ったっぽい。
ここらへんは売春宿だったり、軽食系のお店が多く、昼間は普通に店員をして、夕方から夜は体を売る系の仕事をしたりしているらしい。
「値段安くないか? 120分20文から100文って」
成秋が桃子に質問すると律儀に答えてくれた。
「まず日高のここが物価が安いってのがあるけど、角栄さんが連れてきた遊女が1流半から2流、3流の人が殆どで、その後に異世界から召喚された人達も入ったけど、遊女で稼ぐってよりはそこで気に入られて旦那を見つける婚活的な意味合いが強いから安いんだと思う。あと最近は生ゴムからコンドームを作れるようになって、避妊がしっかりしてきたから余計に値下がりしたらしいわよ」
「なるほど……」
あとは船でやってくる商人達向けに慰労を込めてというのでもあり、領主側で一部補填が入っているのだとか。
「領地の外からやって来た女性が日高の常識を学ぶ場所でもあるからね。2人共行き過ぎるのには注意ね」
「い、行かねぇよ」
「ふーん、見栄はっちゃって」
そんな会話をしていたら夕方になると、とある店の前に人だかりができていた。
「うわ! 龍じゃん」
「あいかわらずのパフォーマンスで」
この店は転生者が経営する食堂で、店先の前で夕方になるとモンスターの解体パフォーマンスが行われるのらしい。
その解体したモンスターを中で食べることができるし、料理人の転生者のチートが食べた食材によって身体能力等を強化される……という物なので、転生者の多くは毎日ここの食堂に通うのだとか。
「いらっしゃいませ~」
「小松兄さん、4人行けます?」
「はいはい、桃子も後で手伝ってね。4名入ります」
「小松兄さん?」
「ここの店主私の兄なの」
「なるほど」
出されたのは龍の蒲焼定食であり、醤油ベースのタレが絶品であった。
「これは確かに毎日通いたいわ」
「月曜日は定休日だから気をつけてね」
「なるほど……値段は?」
「定食は全品8文(960円)。安いでしょ?」
「この料理が食べられるんだったら安いな。うわ、良いなぁ。小松さんの家族って、毎日これが食べられるんだろ?」
「ふふ、家族の特権ね。あとお父さんがネット通販のチート持ちだから、たまに家族だけで未来でしか食べられない食材で食べたり」
「うらやましい……良いなぁ」
そんな会話をしながら時間は過ぎていき、それぞれ解散となった。
「じゃあ俺は芽育さんを送っていくから、成秋は先に帰っていってくれ」
「了解、ごゆっくり~」
「おい!」
「ふふ、じゃあ夜のデートでもしますか?」
「い、いいんですか?」
「なーんてね」
からかわれながら俺達は帰路に着くのだった。