集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
田植えが終わり、ウニの旬の季節ももうすぐ終わり……。
毎日30万円近く稼げるボーナスタイムももう少しで終わりである。
一応俺達転生者のお陰で、大多数の領民は今年の冬を乗り越えることができ、新しい家に住み着いて、防寒具を最近は掛け布団代わりにして眠る人が多かった。
なるべく早く極貧状態を脱しないと……。
あと、仙が全国を巡って見聞を広げたいと願い出て春先に昆布を買い取りに来た商人の船に乗って旅に出てしまった。
最初俺達は止めたのだが、本州の情報を天啓頼りに入手するのも限界があるとして、自分の目と耳を使って調べると立候補したのである。
「それに俺のチートは音楽だ。多少は何とかなるだろう」
音楽家として全国に自分の音楽を伝えたいという気持ちが強かったのだろう。
仙は一応若い家臣を2人連れて、飛び出していったのであった。
そんなイベントを挟みつつ、暖かくなってきたので動物も活発に動き始める。
で、星獣と紅壱コンビが今度は野生のイノシシを捕まえてきて改造を施すと……牙が取れて豚に変わってしまった。
ぷぎぷぎ
しかも豚という種そのものが繁殖力旺盛で、4ヶ月弱で子豚を10匹から15匹産む。
それでいて産後2週間もせずに母豚は発情期が来て種付けが可能。
子豚も8ヶ月で成長するので、春に子供が生まれれば冬前に生体になるのである。
「ここの蝦夷では豚を食うのは問題ないが、そのうち日本全国で肉食禁止令が出されるからなぁ……それを掻い潜る方法を編み出さないと」
冬が明けたことでアイヌの人々との交流も始まり、物々交換が始まっていた。
『ミヤナガ、今年も交換するぞ』
「おお、ユワレ今年も来てくれたか! 今年は美味い飯をご馳走できそうだぞ」
『本当かミヤナガ!』
毛むくじゃらのアイヌ人のユワレという男がここらへんのアイヌの頭領らしい。
父上が楽しそうに喋っている。
昨夏がネット通販で取り寄せた調味料と米を使って料理を振る舞う。
建成の召喚した妖精達が持ってきた海産物とアイヌの人々が狩ってきた鹿肉をそれぞれ調理してなし崩し的に宴会が始まる。
「爺、アイヌとこっちの関係ってどんな感じなんだ?」
「それはですね……」
爺と呼んでいる家臣に聞くところによると、うちの領地が今まで生きてきてこれたのはアイヌの人々の手助けがあったお陰であり、父上とアイヌの頭領のユワレが兄弟の契りを結んだお陰で、互いに協力し合って生き抜いてきたらしい。
あと彼らは鮭取りの名人でもあり、うちの領地の昆布の次に輸出品である鮭は彼らの協力あって成り立っているとも言われた。
「父上はなるべく同化させたいと思っているのかな?」
まぁこんな僻地で戦なんてしたらアイヌの戦力に勝てるか怪しいので、食材と毛皮を交換してくれるなら、それに越したことはない。
あとはこっちが豊かになっていけば色々交渉して定住をしたがる者も一定数出てくるだろう。
そんな感じで、上手いこと同化していくに限る。
(確かロシアがシベリアを超えてくるのは17世紀後半……1650年以降のはずだから、俺達の次の世代までは特に問題はないだろう。上手いことそれまでに樺太でも領有宣言していればロシアも交渉してこないといけなくなるだろうし……)
ロシアが来ることは当面無いと思った方が良く、どちらかと言うとあと30年くらいで、明が滅んで清が発足するはずである。
清との密貿易ルートが出来上がれば、結構な儲けが期待できる。
(となると競争相手は蠣崎家……もう少ししたら松前藩になる連中か。今は距離が離れているけど、開拓を続けていけばぶつかることになるだろうし……上手いこと交渉できればいいんだが……)
今は自分達のことでいっぱいだが、将来は松前藩や奥州の大名、そして江戸に商品を卸せるようになれば藩としての権威も高くなるだろう。
とにかく俺らの代で藩の基礎基盤を固める。
そのために頑張らなくては……。
「ここが江戸か……」
私こと仙は転生者の仲間には申し訳ないけど、現状役立っているとは思わなかったので、各地を旅して見聞を広めることにしていた。
チートは歌を歌う能力って名前だけど、楽器全般も上手くなる技能を併せ持っていて、俺は昨夏に無理を言って幾つか楽器を用意してもらった。
まぁ笛とカスタネットとか手で持てる楽器であるが……。
父上からまずは母親達の住む屋敷を訪ねろと言われたので、そこに向かった。
「しっかし、江戸の町は今作られている真っ最中って感じだな」
とても100万人の大都市とは言えない。
天啓によればこの当時の江戸人口は10万人から15万人程度で、100万人の人口になるには幕府が安定してきた1700年代に入ってからである。
それまでは、江戸は犬将軍と呼ばれる5代将軍徳川綱吉が将軍就任直後くらいまで開発ラッシュが続くことになるのだとか……。
で、うちの宮永家が有している大名屋敷は現在の六本木ヒルズがある場所近くに位置し、150人近くの家臣がここで暮らしていた。
まぁ領地が領地なので、ここの家臣達はほぼ自給自足の生活をしていて、哀れんでいた徳川家から支援金を貰って生計を立てていた。
「まぁまぁ! 小さかった若様がこんなに立派になって……」
「うむ、父上の代わりに江戸に来た仙だ。悪いが今江戸に滞在している者達の給金の情報や屋敷の支出に関する情報を貰っては良いだろうか?」
「かしこまりました」
正直全国を巡りたかったが、こんな状態の家臣達を放って置くことはできない。
この体の持ち主はここにいる家臣に可愛がってもらった過去もあるのでね……。
「はてさてどうしたものやら……」
江戸にある屋敷の敷地内は一種の治外法権になっており、徳川家もおいそれと踏み入ることができない。
これがちゃんと固まってくると藩邸と呼ばれて、正門の形、大きさによって大名の格が定められるようになる。
ちなみに今うちの宮永家は藩に置き換えると1万石の大名と同格ということになっており、大名としては最低ランクかつ、大名のシンボルである城も持ってないので城なし大名や屋敷大名とも言われている。
その割には敷地面積が広いのは、父上が先んじて良い土地を押さえたことと家臣が食っていける土地は欲しいと恥も偲んで家康様に頼み込んだことゆえであった。
「さて、現状を見たからには金策をしてあげないと……」
というわけで色々やれそうな事を自分でも考えるが、天啓が来るのを願うのであった。
はい、今作の特徴
本領地の道南の領地経営の他に江戸の町での副業も皆さんには考えてもらいます。
貧乏大名は領地収入だけじゃ食っていけないので江戸でも副業をします!
目指せ金満大名!