集まれ〜江戸時代藩内政シミュレーション〜   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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仙の大江戸金策物語

 はい、どうも仙です。

 

 天啓も幾つか降りてきたので頑張っていきましょう。

 

 まず邸内で育てている物について。

 

 他所と同じ作物を同じように育てていたらそりゃ他所と差がつかない。

 

 それどころか財力のある大名には差をつけられてしまう。

 

 ということで、俺は鶏の飼育を始めることにした。

 

 これ天啓ね。

 

 神様達曰く、戦国時代は基本鶏は食べられていなかったが、各地で鶏を刻鳥として大切に育てるように見せかけて、キジの肉として食していた場所が京から離れた場所は多かった。

 

 つまり関東の江戸では結構な割合で鶏肉を食べていた者がいたのである。

 

 それと同時に仏教的には禁じられていなかった卵もセットで禁止されていたが、信長や秀吉の時代に鶏の卵を売ったり食べたりしても朝廷……時の天皇が特に罰するお触れを出さなかった事をいい事に、徐々に鶏飼育が広まりを見せていたのである。

 

 ただ大名の屋敷内で養鶏をやるなんて普通は思わない。

 

 普通思わないなら先駆者に成れるということで、家臣達に鶏小屋を幾つも作らせ、鶏を飼育していた半農にまで落ちぶれていた元足軽だったり浪人を雇い入れて、鳥の番という役職を作り、養鶏を始めたのである。

 

 鶏は雑食で何でも食べるため、餌代も特に問題なく、懸念点だった奥方たちも周りから貧乏大名と馬鹿にされて悔しい思いをしていたので、少しでもマシな生活が送れるのであればと了承した。

 

 というか蝦夷にいる他の子供達や旦那がサバイバル生活をしているため、こっちはこっちで家臣や自分の食い扶持を稼がないとという思いが強いのと、江戸に住んでいる奥方3人は元々身分が低い下級武士出身だったので、今の生活でも十分と耐性があるのが良かった。

 

 というわけで養鶏を始めたのが1つ。

 

 もう1つはももんじ屋の開業であった。

 

 体力の有り余っている家臣達を編成して周辺の村々の害獣退治と称して狩りを行い、時には村人から猪、鹿、兎などを購入し、樽や箱に隠して江戸の中に入れるのである。

 

 まぁ隠すといってもこれは将来を見越したことで、今は大名が狩りをして成果物を隠して持ち込まなくても大丈夫だが……犬将軍になった際に問題になるのでね。

 

 まぁその頃までに肉を薬として販売する実績を作っておけば、問題は少ないだろうし、最悪江戸に金をためて別宅を作ってしまえば、そこで売ることもできるだろうからな。

 

 多少まだ肉への忌避感があっても薬だよって売れば江戸の庶民も食べるだろう。

 

 そしてこれを始めたからって味が良くなければ誰も食べない。

 

 なので天啓でも降りてきたが、屋敷にいる料理人を集めて現代でも食べられる料理を教えていく。

 

 例えば卵料理……だし巻き玉子や茶碗蒸しなんかが誕生したのは江戸時代中期と天啓の神様は言っていたのでその2つとふっくら食感のお菓子も1品欲しいとして贈り物として使える現代風のどら焼きの3品で卵料理で勝負することに。

 

 俺も前世で売れない音楽家をやっていたので自炊はある程度できる。

 

 天啓で調理方法や材料も神様が教えてくれたので何とかなるだろう。

 

 というわけでだし巻き玉子から作っていく。

 

 少ない金で江戸の職人に特注してもらった四角いフライパン……この時代だと鉄鍋……を使っていく。

 

 まず鍋で昆布とカツオ節から出汁を取っていく。

 

 うちの家領地から昆布が流れるので、市場価格より安く手にはいる。

 

 カツオ節もこの時代は高価だけど必要経費として割り切る。

 

 卵は8つ、出汁とみりん、醤油を加えてかき混ぜる。

 

 ちなみにこの時代にみりんは下戸や女性向けの高級酒として売られており、味を良くする為に使ったが、料理酒でも代用は可能。

 

 醤油はこの頃にたまり味噌が売られるようになり、これが醤油の原点とされる。

 

 後々関西で大量生産されるが、今はたまり味噌で代用する。

 

 油を敷いた四角い鉄鍋に5分割でかき混ぜた液体を注いでいく。

 

 ふわっと仕上がったら菜箸で四角く巻いて、空いたスペースに再び卵と出汁を混ぜた液体を注いでいく。

 

 これを5回繰り返して分厚くしたら、完成である。

 

 皿に盛り付けて包丁で切ると半熟の中身がとろとろ溢れ出して香ばしい匂いが溢れ出てくる。

 

「今の手順を紙に纏めたし、見ていたな。練習を繰り返して作れるようになれ」

 

「「「はは!」」」

 

 他に、茶碗蒸しとどら焼きも作っていく。

 

 どら焼きは現代のふっくらし、甘いあんこが入っているのは大正から始まったらしく、そもそも菓子をふっくらさせる技術がまだ未成熟。

 

 一応西の方はカステーラことカステラもどきが作られていたが、まだ全国的な広まりでは無かった。

 

 なので比較的手に入りやすい小麦粉と小豆、そして庭で育てられている鶏の卵に、薬として入手できた重曹を使ってどら焼きを作っていく。

 

 勿論蝦夷の領地で将来甜菜を作り、砂糖を量産するだろうから、それを見越しての一手でもある。

 

 まぁ現状は塩餡で我慢することになるが……。

 

 そんな3品を作り、家臣達も練習をしてもらう。

 

 正味うちのような弱小藩は武芸を磨くのも大切だが、包丁使えたほうが金になるからな……。

 

 まぁ大阪の陣で失態をしない程度に鍛えておけば良いだろう。

 

 そんなこんなで料理を練習していき、鶏を入手したり、各種料理を作る際に融資をしてくれた商人達を呼んで接待を行った。

 

 一応名目上は俺の演武を観てもらうということだが、卵料理三品を出して食べると、商人達は目をかっぴらいた。

 

 金の味がしたのであろう。

 

 それに前世から鍛えていた演奏を行えば商人達は最高の一時を過ごせたと大満足。

 

 そしてボソっとお願いをする。

 

「この料理のお店を開きたいのですが、うちの屋敷の前の土地が空いていて……建物もこちらで用意しますので、卵を扱う店を開いてみては……」

 

 そう呟く。

 

 こっちとしてはちゃんとした職人が卵料理を広めてくれるし、屋敷の土地の一部を貸し出せば借地や賃貸収入が見込める。

 

 そして卵料理に使う卵だったりだし巻き卵や茶碗蒸しの出汁に使う昆布はうちの領地の特産品ゆえにうちから優先して買うだろう。

 

 そして屋敷前が賑わえば他の商人も商売をしたいと土地を借りることになるから更に賃貸収入が入る。

 

 これぞ金策である。

 

 これからの時代は商人を味方にしたもん勝ちなのだ! 

 

 

 

 

 

 

 

 2ヶ月後、うちの屋敷の前に卵料理の専門店がオープンし、連日大盛況で、うちに卵を買いに来る者が絶えない。

 

 それに江戸幕府……まだ開府されてはないが、徳川家の主要な家臣達や将軍様にもどら焼きを贈って好感度を稼ぐのを忘れない。

 

 お陰で家の屋敷は周りから鶏屋敷と呼ばれるようになったが、別に構わない。

 

 あとは鶏の卵の質を上げていき、卵と言ったら宮永家って言われるようになれば完璧である。

 

 ちなみにこの時代の卵は1個300円から400円するので、鶏がガチで金を産む状態である。

 

 屋敷では2000羽の鶏を飼育しているが、稼いだ金で江戸近くの空き地を徳川家の許可を得て買い取って広い養鶏場を作ってもいいかもな……。

 

「とりあえずド貧乏からは脱却できるだろう」

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