すみれが朝目を覚ますと、祠が壊れていた。
《うわ、因習村の怪しげな神の祠が壊れてる・・・・・・》
『ちょっと前に流行ったヤツだよねー祠破壊』
調査の結果、どうやら村の宿屋に泊まっている観光客が誤って転んでしまった結果、破壊してしまったらしい。
《まあ、わざとじゃないなら仕方ないけど・・・・・・でも一応それなりの対応はしなくちゃならないかな。とりあえず、「祠壊しちゃったの? 呪われちゃうね、かわいそうに・・・・・・」ってくすくす笑う双子の子供を用意して・・・・・・》
「はいはい! 私、その双子の子供役やっていいですか!」
双子の子供を手配しようとしたところ、サクがそう言って挙手した。
《ええ・・・・・・? サク? いや、サクは双子でも子供でもないじゃん・・・・・・ただの露出狂じゃんか》
「ええー? いいじゃないですか!」
《お前、露出狂がその役やってるの見たことある?》
「見たことはありませんけど、大丈夫ですよ!」
なぜ自信満々なのかわからないが、まあそれを言いにいくぐらいなら大丈夫だろうと思ってとりあえずサクに行かせることにした。
《じゃあサク、お前に任せるよ》
「やったー!」
《うん、サクに任せるけどさ・・・・・・お前、なんでこんな暑いのにトレンチコートなんか着てんの?》
「・・・・・・」
《服着な?》
ちゃんと服を着せて行かせようとしたけど、めちゃくちゃごねられて結局ノーパンで行かせることになった。
・・・・・・
「言ってきましたよー!」
《おー! ちゃんと「祠壊しちゃったの? 呪われちゃうね、かわいそうに・・・・・・」って言ってきた?》
「いえ! 「祠壊しちゃったの? 宇宙人にアプダクションされて改造されちゃうね、かわいそうに・・・・・・」って言ってきました!」
《世界観にそぐわないアドリブをかますなよ・・・・・・》
「でも怖がってましたよ?」
《怖がるなよそんなので・・・・・・》
まあそんなわけで、とりあえず祠破壊のイベントは無事(?)に終わって。
『どうする? 流石にちょっとぐらい祟っておく?』
《んー・・・・・・祠破壊って、法律的にもなんらかの罪に問われる気がするし・・・・・・ちょっとだけ祟っておこっか?》
『そうだね。どんな祟りをかける?』
《ん・・・・・・そうだね。しばらく歯磨き粉が味噌汁味になるようにしよう》
『地味に嫌な祟りだね、それ・・・・・・』
「口内の爽やかさが犠牲になりましたね」
◇
村人の尽力で祠が直ってよりのち。
《村の宿屋を手伝ってほしい・・・・・・?》
すみれはきょとんとした顔で鸚鵡返しにそう言った。
「ええ。うちの宿屋を手伝ってほしいんです」
そう言ったのは、瑠璃。名前と同じ瑠璃色の長い髪と目を持つ、着物姿の凜とした若い女性だ。
この瑠璃は、この因習村、『すみれ村』の村長なのである。村長には、代々すみれの姿が見え、声が聞こえるだけの霊能力を持つ者がなるのだ。だから、瑠璃は若くしてこのすみれ村の村長になったのである。
その村長から、宿屋を手伝ってほしいと言われたのだ。
《どういうことだ?》
「いや、実は最近お客さんが少なくなっていて・・・・・・」
『まあ、因習村って怖いイメージあるし、仕方ないよね』
《怖いイメージっていうか、普通は因習村って怖いもんなんだよ》
「まあ、最近サクさんという露出狂がしばしば夜中に徘徊するようになったので、ある意味怖いと言えば怖いんですが・・・・・・」
《またあいつは・・・・・・》
まあそれはおいといて。
「それで、まあお客さんを呼び込むために、大変恐縮なのですがすみれ様に宿屋のお手伝いをしてもらいたいと思いまして・・・・・・」
瑠璃はそう言った。
《なんで? 別に、私が手伝ったところでお客さんが増えるわけはないと思うけど・・・・・・》
確かに、すみれはご利益のある神様ではあるけど、座敷童とかそういう類のものではないのだ。しかし瑠璃は首を振った。
「いえ、そんなことはありません。私は、すみれ様の魅力ある姿を見せつけたら、この宿の宣伝になると踏んだのです。めちゃくちゃ可愛い子が働いてる宿屋があると」
《そんなことになるかな・・・・・・?》
『なるね! すみれちゃんの可愛さなら評判になること間違いなしだよ!』
《そうかなあ・・・・・・?》
すみれはあんまり納得出来ていないみたいだったが、結局お手伝いをすることになったのであった。