村へ行って、村人たちに色々と説明して帰ってきた。とりあえず、例のすみれ草をプレゼントしてから帰ってきたのである。
さて。サクの体から出てすみれは祠のところに戻ってきていた。
《そうだ。ユキにもこれあげるよ》
『なになにー?』
すみれはユキにも例の祠の前のすみれ草をプレゼントした。
『え!? これって・・・・・・』
《ユキにもあげるよ》
『いいの!? ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい・・・・・・!』
ユキは目を輝かせて受け取った。セーラー服の胸ポケットに入れて飾る。
『マジでありがとね! うーん、けど、先越されちゃったなあ』
《ん?》
『いやー、実は私もプレゼントを用意してたんだよね』
《え?》
ユキは、どこからともなくラッピングされたお菓子を出してきた。
『じゃーん! フィナンシェ!』
《フィナンシェ!?》
『そう! しかも、私の手作りなんだよ!』
《て、手作り?》
『そう! 実はちょうどお誂え向きに捧げ物の中に材料と調理器具があってね。ミネラルウォーターとかもあったし、作れそうだったから作ってみたんだ。ご都合主義ってやつ?』
《メタいな・・・・・・》
『バターとかしたりとかお湯を使う必要があったりとか、そういう時には鬼火を利用して・・・・・・割と大変だったけど、けっこう良さげな仕上がりにはなったと思うよ!』
《確かに、綺麗な見た目だな・・・・・・》
まだ食べてないから味はわからないけど、見た目的には綺麗なちゃんとしたフィナンシェだ。そういえば、用事があるからってすみれとサクについてこなかったけど、ひょっとしなくてもその用事っていうのはこれか・・・・・・。
《ありがとう。嬉しいけど・・・・・・でも、なんで?》
なんで突然お菓子をプレゼントしてきたのだろう。理由がわからなくて、すみれはそう尋ねた。
すみれの問いかけに、ユキは珍しく改まった表情をした。
『いや、実は謝りたいことがあってさ・・・・・・』
《謝りたいこと・・・・・・?》
なんだろう。すみれには心当たりがなかった。
不思議そうな表情をするすみれをよそに、ユキは真剣な表情で言った。
『今更って感じだけど、ちゃんと謝っておきたいと思って。すみれちゃん・・・・・・いや、シュロさん。あなたの同意も得ず、無理矢理この村の神にするなんて、勝手なことをしてごめんなさい』
ユキはそう言って頭を下げた。
《・・・・・・》
なるほどな・・・・・・とすみれは思った。なんか反省してるよーんみたいな軽い感じだったから、そのことについて全然気にしてないのかと思ったけど、ユキはそれをずっと気にしててちゃんと謝る機会を窺っていたのだ。
なんだ、思ったよりもちゃんとしたいい子なんだな・・・・・・とすみれは思った。
すみれは、そんなユキに向かって言う。
《大丈夫だよ。俺は気にしてない》
『でも・・・・・・』
《大丈夫だって。言葉だけじゃない。本当に気にしてないんだ。むしろ、俺はここに来ることが出来て、良かったと思ってるんだ》
すみれは森の中に目を向けた。月の光が美しく射す。木々にのざわめきに、心癒される。しっとりとした冷たさが、心地いい。
《俺は都会で育って、独り立ちしてからもずっと都会で暮らし続けた。都会での暮らしは別に普通の暮らしだったと思うけど、俺はそれに疲れてしまっていた。都会から離れたゆったりとしたこの場所へ来て、ようやくその疲れが癒やされたんだ。どうやら、俺には都会のせかせかした感じじゃなくてこういう感じの方が性に合っていたらしい。それに気づかせてくれたから、俺はここに連れてきてもらえたこと、ありがたいと思ってるんだよ》
そして、すみれはユキを見て言った。
《それに俺は、ユキ、お前のことをいい友達だと思ってるし、けっこう好きなんだ。だから・・・・・・ユキに出会えたってだけでここに来れたのはいいことだって思えるよ》
『っ・・・・・・!』
ユキは顔を赤くして、すみれに聞こえないくらいの声量でポツリと呟いた。
『ずるいなあ・・・・・・その姿で言われたら、ときめかざるをえないじゃんか』
《何か言った?》
『んー? なんでもなーい』
まあ、そういうことで、そのあとはプレゼントのフィナンシェを食べた。
《あ、おいしいねこれ!》
『でしょー!? お菓子作りには自信があるんだよ! 生前も作ってたからね!』
《いや、ほんと美味しいよこれ! お世辞とか抜きでちゃんと美味い》
『えへへへ・・・・・・そんなに褒められると照れるね・・・・・・よし、ならまた材料が揃ったら作ってあげるよ!』
《そんなにご都合展開続くかな・・・・・・》