ただの妄想です。
「地の利を得たぞ、アナキン!」
惑星 ムスタファー。
溶岩の海が赤く燃え盛る世界。
黒煙に覆われた空の下、かつて師弟であった二人のジェダイが対峙していた。
高台に立つジェダイ・マスター、オビ=ワン・ケノービ。
その眼下には、採掘施設の不安定な運搬ドロイドの上に立つジェダイ・ナイト――いや、シスの弟子。
アナキン・スカイウォーカー。
今やダース・ベイダーと呼ばれる男だった。
誰の目にもオビ=ワンが有利だった。
高所。
安定した足場。
冷静な判断力。
すべてが彼に味方している。
だがアナキンの胸には、理屈を焼き尽くすほどの怒りが渦巻いていた。
「僕の力を見くびるな!」
アナキンが右手を突き出す。
凄まじいフォースの奔流が放たれた。
その瞬間。
衝撃波に混じって青白い電流が走る。
アナキン自身も予想していなかった力。
オビ=ワンの目が見開かれる。
「何だ――!」
ライトセーバーで受け止めたものの、その威力に体勢が崩れる。
ほんの一瞬。
それだけで十分だった。
アナキンが跳躍する。
青い光刃が空を裂いた。
⸻
「パドメ!」
アナキンは倒れている妻を抱き起こした。
荒い呼吸。
青白い顔。
かろうじて命を繋いでいる状態だった。
「終わったんだ。もう大丈夫だ。」
パドメはゆっくりと目を開く。
「アニー……」
弱々しい声だった。
「どうして……こんなことに……」
「僕たちは騙されていたんだ。」
アナキンは震える声で答えた。
「ジェダイも、オビ=ワンも、誰も僕を理解しようとしなかった。」
パドメは何も言わなかった。
悲しそうに夫を見つめるだけだった。
その時。
上空からシャトルが降下してくる。
船体には帝国の紋章。
ハッチが開き、一人の老人が姿を現した。
銀河皇帝。
パルパティーン。
いや、ダース・シディアス。
「よく戻ったな、我が弟子。」
老人は満足そうに笑う。
「期待以上の成果だ。」
パドメを見る。
「急がねばならん。母だけでなく、子供たちの命も危険だ。」
アナキンは顔を上げた。
「子供たち……?」
シディアスは意味深に微笑む。
「船へ運ぶのだ、ベイダー卿。」
⸻
コルサント
帝国医療センター。
無機質な白い部屋。
医療ドロイドたちが慌ただしく動き回っていた。
ドロイドが言う。
「医学的には健康です。なぜ死にかけているのかわかりません。」
「ならなぜ死にかけている!」
アナキンの怒声が響く。
ドロイドは機械的な声で答えた。
「患者は生きる意思を失っています。」
「何だと……?」
「まずは出産を優先します。」
アナキンの顔が強張る。
⸻
しばらくして。
赤子の泣き声が響いた。
パドメが力なく呟く。
「ルーク……」
「レイア……」
アナキンの目から涙が溢れる。
「やったんだ、パドメ。」
「僕たちの子供だ。」
「これから四人で暮らそう。」
「ナブーへ帰ろう。」
「全部やり直せる。」
パドメは弱々しく微笑んだ。
そして最後の力を振り絞る。
「アニー……」
「あなたには……まだ善い心がある……」
「ルークと……レイアを……守って……」
そのまま瞳が閉じられた。
「パドメ?」
返事はない。
「パドメ。」
「パドメ!」
「目を開けてくれ!」
医療ドロイドに掴みかかる。
「助けろ!」
「何をしている!」
「助けるんだ!」
だが誰も答えられなかった。
⸻
皇帝宮殿
数時間後。
静寂に包まれた玉座の間。
シディアスが振り返る。
「どうした、ベイダー。」
「祝いの席にしては暗い顔だな。」
アナキンは俯いていた。
「マスター。」
「パドメが死にました。」
「そうか。」
あまりにも冷たい返事だった。
アナキンは顔を上げる。
「あなたは言った。」
「愛する者を死から救う術があると。」
「教えてください。」
「今すぐに。」
シディアスはしばらく沈黙した。
そして笑った。
「…不可能だ。パドメ・アミダラを殺したのはそなただ。そなたの怒りが彼女を殺したのだ。」
静寂。
完全な沈黙。
「……そうか。」
アナキンの声は驚くほど静かだった。
「やはり嘘だったんだな。」
シディアスの目が細くなる。
「怒りを感じるぞ。」
「良い。」
「それこそが――」
青い光が閃いた。
会話の途中だった。
シディアスの赤い刃がそれを受け止める。
轟音。
衝撃波で窓ガラスが砕け散った。
二人のシスが激突する。
フォースが荒れ狂う。
彫像が砕ける。
壁が裂ける。
玉座が吹き飛ぶ。
シディアスは経験で勝っていた。
アナキンは力で勝っていた。
そして怒り。
悲しみ。
絶望。
あらゆる感情がアナキンを押し上げる。
シディアスが稲妻を放つ。
アナキンは正面から耐えた。
肉が焼ける。
だが止まらない。
「パドメを返せ!」
咆哮と共にフォースが爆発した。
シディアスの身体が吹き飛ぶ。
アナキンの怒りに呼応するように、ライトセーバーの青い輝きが濁り始める。
透明だった光が血の色へ染まっていく。
根元から。
ゆっくりと。
逃げ場のない毒が広がるように。
次の瞬間。
赤い刃が振り抜かれた。
⸻
静寂。
床を転がる首。
銀河皇帝は死んだ。
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