妄想その4
ガチャガチャガチャガチャ。
少年がプロトコル・ドロイドを分解している。
その隣では、年齢にそぐわないほど大きく分厚い本を読む少女。
そして彼らを静かに見守るアストロメク・ドロイドと複数のトルーパーたち。
「ルーク様、足を元に戻してください。」
そう言うのは、今まさに少年に足を外されたプロトコル・ドロイド、C-3POだった。
ここはコルサント。
皇帝宮殿。
「C-3PO、君は足が遅いからさ。足にエンジンを付けたら速くなると思わない?」
男の子――ルーク・スカイウォーカーは目を輝かせながら言った。
「足にエンジンですか!?
そんな恐ろしいことはおやめください!」
C-3POが慌てて叫ぶ。
「ルーク。またC-3POのメモリーが消えちゃうよ。」
少女――レイア・スカイウォーカーは本から目を離さずに言った。
ルークとレイア。
銀河帝国皇帝アナキン・スカイウォーカーの子どもたちである。
「大丈夫だよ、レイア。
R2がバックアップを持ってるし。」
ルークはそう言いながら、器用に工具を回す。
「それに、もし壊れてもお父さんが直してくれる。」
「お父様は忙しいんだから。」
レイアはページをめくった。
「そんなことに付き合わせたら怒られるよ。」
「怒られないよ。」
「怒られる。」
「怒られない。」
「怒られる。」
その様子にトルーパーたちの口元がわずかに緩む。
その時だった。
扉が開く。
室内の空気が変わった。
トルーパーたちが一斉に背筋を伸ばす。
入ってきたのは二人の男。
一人は黒衣の人間。
もう一人は長身のパウアン。
「お父さん!」
「お父様!」
兄妹が同時に顔を上げる。
アナキン・スカイウォーカー。
銀河帝国皇帝。
その名を知らぬ者はいない。
彼は子どもたちへ歩み寄る。
そして床に転がるC-3POの足を見た。
「……また分解したのか。」
「改良だよ。」
ルークは真剣な顔で答える。
アナキンは小さく息を吐いた。
「組み立て直せるなら好きにしろ。」
「ほら!」
ルークが得意げな顔でレイアを見る。
「お父様は優しいからまだ怒ってないだけ。」
レイアは本を閉じた。
アナキンの口元がほんの僅かに緩む。
だがすぐに表情を戻す。
「お前たちも六歳になった。」
その声で室内の空気が引き締まる。
「これまでも私が教えてきたが、これからは本格的な訓練を始める。」
ルークとレイアは姿勢を正した。
「本来なら私が常に教えたい。」
アナキンはそう言って一瞬だけ二人を見る。
その言葉に嘘はなかった。
しかし皇帝には皇帝の務めがある。
「だが、それは難しい。」
彼は隣に立つパウアンへ視線を向けた。
「そこで師を付ける。」
パウアンの男が一歩前へ出る。
「大尋問官だ。」
アナキンがそう言うと大尋問官は静かに頭を下げた。
「これよりお二人の指導役を務めさせていただきます。」
短い挨拶だった。
「大尋問官?」
ルークが首を傾げる。
「変な名前。」
一瞬、数名のトルーパーの口元がわずかに緩んだ。
だが、大尋問官が静かに視線を向ける。
それだけで表情は消えた。
室内に再び静寂が戻る。
アナキンは気にした様子もなく続けた。
「多くを学べ。」
ルークとレイアは同時に頷く。
「はい、お父さん。」
「はい、お父様。」
アナキンは満足そうに頷いた。
そして大尋問官を見る。
「任せる。」
「お任せください、陛下。」
短いやり取り。
だが大尋問官の声には僅かな緊張が混じっていた。
アナキンは踵を返した。
黒いローブが揺れる。
扉が閉じられる。
静寂。
そして。
大尋問官がゆっくりと子どもたちへ向き直った。
「では――」
その黄色い瞳が二人を見つめる。
「早速、授業を始めましょう。」
ルークは露骨に嫌そうな顔をした。
レイアは小さくため息をついた。
R2-D2だけが、それを面白そうに見ていた。