死者の宴   作:アリス・リリス

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~死者の世界へ~

一人のシャーマンのもとを訪れる。

 

「死者の宴を覗いてみたい、とな?

 

お前は、『冥界通行許可証(パスポート)』を持っておらぬだろう?

 

本来、冥界は死者の世界なのじゃ。

生者が行ける世界ではないのじゃぞ。

 

………え、我らのような者は行き来できるではないか、とな?

 

我らは、冥府より通行許可証(パスポート)をもらっておるのじゃ。

 

どうしても行きたいと申すのか?

 

………ふうむ………。

 

よし、(わらわ)が冥府に掛け合ってみよう。

 

しばらく待っておれ…。」

 

 

そう言うと、シャーマンは無口になった。

 

心なしか、血の気が失せたようにみえる。

 

呼吸を確かめてみると………、………止まってしまっている………!

 

まさか、本当に死んだのでは………。

 

不安がよぎるその瞬間、シャーマンはいきなり目を開いた。

 

 

「異世界交流庁が興味を持ったそうじゃ。

 

今より、冥府の最高評議会にて通行許可証(パスポート)発行の審議を行うそうじゃが、お前の臨席が必要じゃ。

 

妾の手を握り、心を通わせるのじゃ。

さすれば、冥府へ赴ける」

 

 

差しのべられた手をそっと握り、目を閉じる。

 

 

 

体から魂が抜けるような感覚がしたが、気のせいだろう…。

 

 

「ほれ、いつまで寝ているのじゃ!?」

 

「はいっ!

あ………!」

 

 

シャーマンの声で起こされると、眼下に自分の体が見える。

 

 

「これで、(うつわ)(こころ)の分離ができた。

 

これより、冥府に向かう。

 

おっと、これを渡し忘れるところであった。

 

これは、臨時通行証じゃ。

これがなければ、冥府の門で弾かれてしまうからのう…。」

 

 

シャーマンは、不思議なカードを手渡す。

 

 

「妾についてくるのじゃ!」

 

 

シャーマンは、空へと舞い上がる。

 

「あそこに見える湖の底に冥界への入り口があるのじゃ。

 

もたもたせずに、飛び込むぞ。」

 

 

バッシャーン!

 

 

派手な音をたてて、飛び込む。

 

 

周囲の人は気づいていない。

やはり見えないのか………。

 

 

湖の底を目指して泳ぎ続ける。

 

 

と、底に大きな扉がある。

 

 

「あそこから先が冥界じゃ。」

 

 

冥界へと通じるという扉がゆっくりと開いていく。

 

「入るぞ。」

 

まばゆい光のなかに飛び込むと、青い空の中に浮かんでいた。

 

 

「何を驚いているのじゃ。

 

ここは、冥界の空なのじゃ。

 

ほれ、あそこを見てみろ。」

 

 

シャーマンが指差す先に、壮麗な宮殿が建っている。

 

 

「あれが冥界の政治の中心・バルハラン宮殿じゃ。

あそこに冥府の最高評議会があるのじゃ。

 

 

…………よいか、決して無礼なことをしてはならぬぞ。

そして、嘘をついてもならぬ。

 

必ず見破る嘘発見器のようなものがあるからな。

 

 

発行するかどうかは向こうが決めることじゃが、

無礼なことをしたり、嘘をついたりでもすれば、恐ろしい罰がくだされるのじゃ。

 

 

かつて、お前と同じように通行許可証(パスポート)発行してもらうために訪れた者がいた。

 

じゃが、無礼なことをしたために、その者の(こころ)は“無限地獄”と呼ばれる冥界の牢獄に入れられてしもうた」

 

 

つまり、その人間は冥府の最高評議会によって殺されたというのか………?

 

 

「バルハラン宮殿に急ごう。

予定の時間を過ぎると、希望者不在で、受理されなくなるからの…」

 

 

ゆっくりとバルハラン宮殿の玄関口へと降りていく。

 

 

 

「バルハラン宮に何の用だ?」

 

 

門番に尋ねられる。

 

 

「この者の通行許可証(パスポート)発行の審議に臨席しに参りました」

 

「………よし、入れ。

 

二階の“真実の間”で審議が行われる。

 

係りの者が案内する。」

 

 

目の前に、メイドの服装をした女性が現れた。

 

 

「私が“真実の間”までご案内いたします。」

 

 

黒曜石でできた階段をゆっくり上がっていく。

 

天井は、きらびやかなステンドグラスがはめ込まれている。

 

 

ステンドグラスを通った光が、黒曜石の床を鮮やかに照らし出す………。

 

 

「こちらでございます。」

 

 

“真実の間”への続く扉は、クラック水晶でできていた。

 

 

………ようこそ、バルハラン宮へ………

 

遠雷のように響く声がしたと思うと、扉がゆっくりと開かれた。

 

「さあ、入るぞ」

 

 

 

カツン…カツン…カツン…

 

 

 

「よく来たな」

 

 

自分を囲む議員達の姿。

 

 

「今日の議長は、このハデスが務める。

 

では、審議を始めよう。

 

 

自由に質問してくれ。」

 

 

一段高い席に座る男が声を発する。

 

 

「ひとつよろしいでしょうか?」

 

手を挙げたのは、あどけない姿の少女。

 

「どうぞ、ヘカテー議員。」

 

「はい。」

 

 

ヘカテーと呼ばれた少女は立ち上がる。

 

「死者たちの宴を見たいという話を聞いているのですが、どこで宴のことを知ったのですか?」

 

かつて生死の境をさ迷った親戚が話していました。

 

「アヌビス、正しいことを言っているか?」

 

自分が言い終わると、ハデスが犬の顔をした議員に尋ねる。

 

アヌビスと呼ばれた議員は、大きな天秤を傍らに携えていた。

 

速記者から渡された紙を皿に乗せ、もう一方には大きな羽根が置かれた。

 

 

………これが有名な“オシリスの審判”………?

 

 

「この者が言っていることは、真実でございます。」

 

 

「よし、次の質問を。」

 

………………………………

 

 

………一体どのくらい質問されたろうか………?

 

永遠に続くかと思えた質問攻めもようやく終わった。

 

 

「では、これより審議に入る。

 

異界からの客人よ、隣の“花の間”にて待機せよ。」

 

 

 

 

 

 

色とりどりの宝石をちりばめた部屋でしばらく待たされたのち、再び呼び出された。

 

 

「審議の結果…、通行許可証(パスポート)の発行を許可する。

 

これがお前の許可証(パスポート)だ。」

 

 

渡されたのは、ルビーでできたカード。

 

 

「さあ、もうすぐ夜が明ける。

 

今は現世に戻りなさい。」

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