死者の宴   作:アリス・リリス

2 / 3
~旅のルール~

目を開けると、もとの場所に戻っていた。

 

 

「無事戻ってこれたの。

通行許可証(パスポート)は、ちゃんと持ち帰ったかね?」

 

 

左胸のポケットに重みを感じる。

 

取り出してみると、ルビーのカードだった。

 

「ちゃんと“冥府出入国管理局(Δαξδρσω)”と刻まれているな。

 

よし、これでお前も冥界の旅ができる。

 

 

………お前に冥界の法律と慣習を教えなきゃならぬな………」

 

 

この世にルールがあるように、

冥界にもルールが存在する。

 

 

・冥界固有の動植物の採取は厳禁

 

・冥界の食べ物を口にした場合、時空の門の近くにある“(みそぎ)の滝”で身を清めてから帰ること

 

・冥界の住人を現世に連れていってはならない

 

 

 

「………と、法律はこのくらいじゃな。

 

あとは、冥界への旅の注意事項じゃな。

 

 

冥界に向かうためには、通行許可証(パスポート)を必ず持っていなければならない。

 

………どのようにするのか?

 

例えば、その胸ポケットに入れていればよい。

 

その後、(うつわ)(こころ)を分離すれば、精神体になっても通行証(パスポート)を持っているはずじゃ。

 

………ならば、“分離”を教えよう。

 

こちらへ。」

 

 

シャーマンは、建物の奥へと歩いていく。

 

 

たどり着いた先は、かがり火が灯る部屋。

 

床には不思議な模様が刻まれている。

 

 

「ここで、“分離”の修行をするのじゃ。

 

心を静め、無心になるのじゃ。

目を閉じ、耳を背け、すべての感覚より離れよ。

ただそれだけじゃ。」

 

 

ただそれだけって………、何の役にもたたないんじゃ………?

 

 

「………疑うより、やってみるのじゃ。

疑うだけならば、何の役にもたたぬ。」

 

 

…目を閉じ、耳を背け、すべての感覚から離れる…

…心を静め、無心の境地に入る…

 

…光もなく音もなく、暑くも寒くもない世界に身を置けということか…

 

 

………………………………

………………………………

………………………………

 

 

「分離したようじゃな。」

 

 

不意に声がする。

 

「目を開けてみよ。」

 

 

目を開けると、自分の体が眼下に見える。

 

 

(わらわ)は、分離しておらぬとな。

 

妾が誰だと思っておるのかのぅ?

 

分離せずとも、霊を見ることができるのじゃよ。

 

では、次は“融合”の修行じゃ。

 

肉体にもたれ、感覚をつなげるのじゃ。」

 

 

………ただそれだけなのか………

 

 

…肉体にもたれ、感覚をつなげる…

 

…すべてを肉体に戻す…

 

………………………………

………………………………

………………………………

 

 

「はっ!」

 

全身の感覚が急に戻る。

 

「初めのうちは、気分が悪くなるじゃろう。

しかし時が経てば、慣れるはずじゃ。

 

あと、10回ほど練習してみよ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。