死者の宴   作:アリス・リリス

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~旅のルール~

目を開けると、もとの場所に戻っていた。

 

 

「無事戻ってこれたの。

通行許可証(パスポート)は、ちゃんと持ち帰ったかね?」

 

 

左胸のポケットに重みを感じる。

 

取り出してみると、ルビーのカードだった。

 

「ちゃんと“冥府出入国管理局(Δαξδρσω)”と刻まれているな。

 

よし、これでお前も冥界の旅ができる。

 

 

………お前に冥界の法律と慣習を教えなきゃならぬな………」

 

 

この世にルールがあるように、

冥界にもルールが存在する。

 

 

・冥界固有の動植物の採取は厳禁

 

・冥界の食べ物を口にした場合、時空の門の近くにある“禊(みそぎ)の滝”で身を清めてから帰ること

 

・冥界の住人を現世に連れていってはならない

 

 

 

「………と、法律はこのくらいじゃな。

 

あとは、冥界への旅の注意事項じゃな。

 

 

冥界に向かうためには、通行許可証(パスポート)を必ず持っていなければならない。

 

………どのようにするのか?

 

例えば、その胸ポケットに入れていればよい。

 

その後、体(うつわ)と魂(こころ)を分離すれば、精神体になっても通行証(パスポート)を持っているはずじゃ。

 

………ならば、“分離”を教えよう。

 

こちらへ。」

 

 

シャーマンは、建物の奥へと歩いていく。

 

 

たどり着いた先は、かがり火が灯る部屋。

 

床には不思議な模様が刻まれている。

 

 

「ここで、“分離”の修行をするのじゃ。

 

心を静め、無心になるのじゃ。

目を閉じ、耳を背け、すべての感覚より離れよ。

ただそれだけじゃ。」

 

 

ただそれだけって………、何の役にもたたないんじゃ………?

 

 

「………疑うより、やってみるのじゃ。

疑うだけならば、何の役にもたたぬ。」

 

 

…目を閉じ、耳を背け、すべての感覚から離れる…

…心を静め、無心の境地に入る…

 

…光もなく音もなく、暑くも寒くもない世界に身を置けということか…

 

 

………………………………

………………………………

………………………………

 

 

「分離したようじゃな。」

 

 

不意に声がする。

 

「目を開けてみよ。」

 

 

目を開けると、自分の体が眼下に見える。

 

 

「妾(わらわ)は、分離しておらぬとな。

 

妾が誰だと思っておるのかのぅ?

 

分離せずとも、霊を見ることができるのじゃよ。

 

では、次は“融合”の修行じゃ。

 

肉体にもたれ、感覚をつなげるのじゃ。」

 

 

………ただそれだけなのか………

 

 

…肉体にもたれ、感覚をつなげる…

 

…すべてを肉体に戻す…

 

………………………………

………………………………

………………………………

 

 

「はっ!」

 

全身の感覚が急に戻る。

 

「初めのうちは、気分が悪くなるじゃろう。

しかし時が経てば、慣れるはずじゃ。

 

あと、10回ほど練習してみよ。」

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