勝利の天に星は燃ゆ   作:さゝ0

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本作に興味を持っていただき、ありがとうございます。
バルファルクってSF映えすると思うのにクロスオーバー少ないなぁ、と思って書き始めました。
長々と書いてもアレなんで、細かいとこは活動報告にて話してます。気になる方はそちらへ。


第0章 -胎動-
起点


 

某国、軍事基地の特設研究室。

 

 

「ふむ…?」

 

とある報告書に、彼の目が止まった。

 

「……興味深いね」

 

そう呟き、彼は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

南極の隕石落下に関する報告

 

20XX年 ○月✕日、赤く輝く大質量隕石が──観測所で観測された。

直径約50m程であり、1000年に1度の規模であるとされる。

 

当隕石は高度50kmにて空中爆発し、南極に落下した。

爆発と落下の衝撃による被害は報告されていない。

南極以外での破片は現時点で確認されておらず、爆発の衝撃で消失、もしくは宇宙空間まで飛ばされたと考えられる。落下後の大きさや質量等については、後述の理由により未調査である。

 

落下地点に調査隊を派遣したが、調査隊の全隊員が意識障害を発症した。現在も意識は戻っておらず、その後の検査では原因は明らかにできていない。

しかし、状況から鑑みると、件の隕石が原因であると考えられる。

安全性を考慮し、隕石落下地点の半径3kmを封鎖する。

 

また、────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……流石に少し寒いね」

 

数時間後。彼が向かった先は南極。件の隕石落下地点であった。

黒の軍服に白衣という、あまりにも軽装でありながら、少し寒い、というだけで済ませていた。

 

「私の予想が正しければ、あの隕石が赤く輝いている理由と意識障害の原因は……っと、ここか」

 

それは、異様であった。

見た目自体は鉄隕石とそう差異はない。だが、決定的に違うのは、赤く輝くエネルギーを発しているということだ。

 

「確かに濃い。大気中のこのエネルギーを知覚できず、扱えない者にとっては毒だろうね」

 

まあ、私以外には知覚できないだろうけども。

 

そう呟き、彼は杭のようなものを打ち込んだ。

すると、赤く輝くエネルギーがたちまち霧散した。

 

「うん、正常に機能したね。目方は……およそ3m×3m×1.5m、重さは約100tといったところか。──ふむ?打ち込む前より硬度が増したな。この隕石の性質によるものか、エネルギーの性質によるものか……研究のしがいがあるね」

 

実に楽しそうに、彼は微笑んだ。

 

「……けど、ちょっと重いな。少しずつ運ぶか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

兵士は、気だるげに溜め息をつきながら、研究室へ向かっていた。

 

「あの人、ちょっと苦手なんだよなぁ。何考えてるかわかんないし」

 

優しいは優しいんだけどね……

そう思いながら、兵士は研究室のドアをノックした。

 

「大佐、いらっしゃいますか?報告したいことがあるのですが」

 

返事は無い。

 

「大佐?開けますよ?」

 

ドアを開けると、そこには────

 

「……いない」

 

誰もいなかった。

兵士は俯き、肩を震わせていた。

 

「……あーもう!外出する時は誰でもいいから一声かけてから出かけてって言ってるのに!!報告できなくて怒られるの俺なんだからな!!!」

 

兵士はドアを乱暴に閉めながら、

 

「全く!これだから天才ってやつは!」

 

勝手なんだから、そう言おうとした兵士だったが、その言葉が紡がれることはなかった。

 

「私に何か用かい?」

「うわぁ!?」

「うわぁ、とはなんだ失敬な。私の部屋だぞ?」

「も、申し訳ありません。ところで、いつからそこに?」

「"あーもう!"のあたりかな」

「全部じゃないですか!声かけてくださいよ!」

「ははは、すまないね。ちょっとからかいたくて。とりあえず、中で話を聞こうか」

 

彼は悪戯心満載の微笑みで、軽快に笑った。兵士は呆れた様子で彼に尋ねた。

 

「今度は何処に行ってらしたんですか」

「秘密だ。それより、君の用事は?」

 

少しイラッとしながらも、そうだった。と兵士は報告を行った。

 

「上層部が新たな兵器を開発せよ、とのことです」

 

彼は僅かに眉を顰め、

 

「やれやれ、またその話かい。既存の兵器の性能を3倍くらい上げただろう。何度も言っているが、私は平和主義なんだ。必要に駆られない限り、新しく兵器を作るつもりはないよ。」

「必要って、どんなことですか?」

「ふむ、そうだな。宇宙人が侵略してくるとか?」

「そんなことあるわけないでしょう。それと、量子格納技術についてですが……」

「ああ、完成しているよ。ただ問題があってね」

「問題とは?」

「私くらいしか量子変換及び再変換の演算ができない。量子コンピュータを使用しているが、小型は熱暴走、大型となると、安定させるにはこの基地より大きなものを用意するしかない」

「……逆にあなたの脳はどうなってるんですか」

「さてね。生まれつきだから」

 

彼は冗談めかして微笑んだ。

その様子に兵士は再び呆れつつ、

 

「はぁ……とりあえず、上にはどちらも無理と報告しておきますね」

「悪いね、いつも助かるよ」

 

パタン、と静かにドアが閉まり、足音が廊下の向こうへ完全に遠のく。

 

「……さて、この隕石をどう使うかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍事基地内、会議室。

 

「───以上が報告となります」

 

では、と兵士が会議室から退出する。

ドアが閉まると、1人の高官が重苦しい溜め息をつき、頭を抱えながら、口を開いた。

 

「……彼をもう少し上手く扱えないものか」

「ほぼ不可能だろうな。そもそも、我が軍に所属していること自体奇跡だな」

 

1人の高官が疑問を投げかけた。

 

「そこまでの人物なのですかな、彼は」

 

その疑問に対し、あぁ、と、

 

「君は支部から異動したばかりであったな、確かに彼については公にしておらんからな」

「だが、噂くらいは聞いたことがあるだろう?」

「ええ、まあ。我が軍の本部には天才科学者がいると」

 

高官は、しかし、と続け、

 

「命令を聞かぬのであれば、実力行使に出れば良いのではないですかな。もしくは除隊処分にするとか」

「……我々も初めはそうするつもりだったんだがな」

「というと?」

「彼はただの科学者ではない、ということだ」

 

その言葉に困惑している高官を他所に、続けてこう言った。

 

「彼の階級は特務大佐、つまり士官学校の出ではなく、叩き上げということだ。特務士官としては異例の階級だな」

「この階級は彼の科学者としての功績だけできまっておらん。……あれは忘れられぬな」

「あれは驚くほかなかった。そして、諦めるに至った理由の一端だな」

 

2人は、はは、と乾いた笑いを漏らしながら、語りだした。

 

「1年前、紛争の鎮圧任務があったんだが……。彼は『研究ばかりだと身体が鈍る』と言って、戦場へ向かったんだ」

「……は!?止めなかったのですか!?」

「止める間もなく、だな。というより、いつの間にかいたというのが正しいだろう」

「戦場での活躍は目覚しかったな。武装した相手に対し素手で完勝したと言ったら、君、信じられるか?」

 

いえ、と首を横に振る高官。

 

「キルスコアは脅威の137。たった一度の戦場でだぞ?今でも信じられんよ」

「まさにちぎっては投げ、という言葉が適切であったな。」

「殺した、というより無力化したというのが正しいがな。殺したのは残虐行為をした者のみだったからな。平和主義というのは間違いではない」

「そんなことが……」

 

あまりに現実的ではなさすぎる、と唖然とする高官を尻目に、要するに、と言葉を続けた。

 

「実力行使は不可能、ということだ。この戦闘能力に、彼の科学力も合わさったら……想像もしたくないな」

「彼が我が軍に所属しているのは気まぐれに過ぎんのだよ」

 

高官は額に汗を垂らしながら、

 

「にわかには信じがたいですな。が、お二人の様子を見ると真実であるようだ」

「気持ちは痛いほどわかるぞ。我々も報告を受けて、現場を見るまでは同じ感想だったからな」

「だがまあ、彼の真骨頂はやはり科学力だな。武装の性能の向上に加え、基地内のインフラも彼が改造し、管理している」

「それと、彼は新兵の養成や戦術指南も担っていてな。陸海空問わず、彼を先生と呼び支持する者も多いのだ」

「もはや彼無しでは成り立たないレベルである、と?」

「ああ。他にもいくつかあるが、彼をどうすることもできない理由は十分伝わっただろう」

「まあ彼については今まで通り、放任という形にする他あるまい」

「異存なし。さて、次の議題に移ろ……」

 

突然、会議室のドアがノックされる。

 

「入れ」

 

ガチャ、とドアが開かれると先程の兵士であった。

 

「用件は?」

 

兵士は申し訳なさそうに報告した。

 

「その、大佐から砂糖が足りないので支給を増やしてほしい、と言われまして」

「何だと?1週間前に10kgを支給したばかりだぞ」

 

それが……、と兵士は続ける

 

「最近、お菓子作りに凝っているらしく……」

 

高官は呆れた様子で、

 

「いや、うむ……。彼が極度の甘党であるのは知っているが……、わかった、すぐに支給させよう。もう100kgでいい」

「彼の料理は実に美味だったからな、試作品ができたらこっちに寄越すよう伝えておいてくれ」

「了解しました、大佐にも伝えておきます。では、失礼します」

 

兵士が退出すると、高官は再びため息を吐いた。

 

「……では、次の議題に移ろうか」

「うむ。では、この問題についてだが────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某国軍、特務大佐。

彼を形容する言葉として、"天才"という二文字はあまりに陳腐で、不正確に過ぎた。

 

人類が数千年の歴史の中で積み上げてきた叡智、その最先端。凡百の研究者が一生を捧げてようやく覗き見る世界の真理を、彼にとってはただの"通過点"でしかなかった。

 

彼の脳が弾き出す演算は、スーパーコンピュータの稼働を過去のものにし、その瞳が見据える先は、人類の誰もが到達し得なかった未来の領域を捉えている。

 

更には、その五体に至るまでがオーバースペックであり、他の分野においても最高峰。

 

実に万能という言葉が適した表現である男。

 

────彼の名はテンスイ。

紛れもなく、人類の最高到達点であった。





こんな感じで第0章はラプチャー侵攻前を書いてこうかなと思います。
まあ書きたいのは1章からなんで、そんな長々とした章にするつもりはないです、大体3~5話想定ですかねぇ。プロローグとお考えください。
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