といってもセリフとか若干変えてます。
足利将軍家の庶流として名門を誇ってきた今川家……しかし、戦国時代にはいると名門といえども戦乱の外ではなかった。兄弟との争いを乗り越え十一代当主となった今川義元は失われた名門の誇りを回復すべく、領土を拡げた。義元の精力的な領土拡張で、駿河・遠江・三河の三国に覇を称えるまでに成長を遂げた。
そんな今川家に、ある一人の元服したばかりの青年がいた。名を梅木源次郎氏勝という。彼は義元の子だったが、母の出自が低く、また今川氏は天下一名字だったこともあり、今川を名乗ることができなかった。代わりに梅木と名乗った。その苗字は彼の住まう屋敷に一本の白い梅の木が生えていたことが由来だった。
「父上はまさに東海の英雄じゃ……わしも頑張らねば……」
氏勝は屋敷の庭で木刀を振りながら、そんな独り言をつぶやいた。庭は手入れが行き届いており、緑の端に名の由来となった大きな梅の木が一本生えている。
「じゃが、どうも身が入らんのぅ」
木刀を振り下ろしてからそれを脇に差すと、縁側に腰を落ち着かせた。少し湿った冷たい風が汗の垂れている頬を撫でた。
「そうじゃ」
小さな勝手口から走って出ていった。
氏勝が向かったのは岡部の屋敷だった。ここには岡部元信がいた。暗い屋敷内には外からの鳥の声が響いていた。
「五郎兵衛はおるか」
「誰かと思えば、若殿ではございませぬか……何用でございますか?」
青の衣に身を包んだ白い肌の男が顔をのぞかせた。元信は氏勝と2歳しか変わらず、友人のような関係だった。武勇に優れた武将だった。
「手合わせを願いたい」
「ほほう、手合わせでございまするか……では一戦いたしましょうか?」
氏勝と元信は庭へと出た。お互いの手には木刀が握られていた。
「いきますぞ!」
えいや、と声を出す元信の動きを読んで、氏勝は右へと動いた。一度刀を振り落とすと、当たった。が、有効打にはならなかった。
そのままにらみ合いが続いた。左へゆっくりと足を進める。元信も右へすり足で移動していた。元信は刀を振り上げながら突っ込んできた。小柄な身体から繰り出される猛攻をどうにか左にかわし、刀を振るう。
「甘い!」
元信はその太刀筋を読んでかわした。そのすぐ後の攻撃を、素早く左へとかわしながら剣を振った。カツ、と心地よい音が響いた。
「まだだ!」
「やあ!」
元信が横に刀を振ったのを後ろに避ける。そのまま左へとステップしてから、大きく刀を振った。カツ、と元信の頭に当たった。
「うっ……参りました」
元信が座り込んで言った。お互いに息が切れていた。
氏勝は笑みを浮かべながら元信に手を伸ばした。元信も微笑みながらその手をつかんだ。
「ううむ、お見事。またいつでもお相手いたしましょう」
その後は、二人で酒を飲んで騒いだ。笑い合う二人にロウソクの炎が揺れていた。
次話から毎日6時に更新予定です。