ようこそ財力至上主義の教室へ   作:ウメSUN

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遅れましたが、1万UAありがとうございます!創作の励みになりますので、乾燥もじゃんじゃんウェルカムでございます!


銭ゲバ少女ノ金銭裁判

 

「で、だ。具体的にどんな形式で、いくらほど毟り取るつもりなんだ?」

 

「えっとね...大きい金額やクラスポイントを請求するのはやめて、定期的にプライベートポイントを徴収する感じにしておきたいのよね。今のところ、Dクラスって手持ちがほとんどないじゃない?」

 

「ま、手持ちが無ぇし、オンカジの客として見込めなさそうだからって理由でDクラスをターゲットにしたわけだしな。」

 

龍園の言った通りである。手持ちがない状態だからこそターゲットにした。が、手持ちがないからこそ多くの額を請求しにくい。難儀である。あんだけ啖呵を切っておいてアレだが、1000万は厳しいだろう。

 

「ってわけで、そういうのもあって毎月いくらかの徴収、って形が丸いと思うのよ。そういった契約がある、ってだけでクラス間の争いも有利に進められるかもだしね。」

 

「契約の破棄や緩和を条件とした従属関係を作れるからか?」

 

「その通り。鋭くて助かるよ。」

 

実際、プライベートポイントを貯めることしか眼中にないのならともかく、普通にクラス間抗争での勝利もプランの内の一つだ。その点で、使える手札を一つ増やせるというのは大きい。

 

「ってことで、あたしはDクラスに、『毎月一人頭1万5000ポイントの徴収』を提示するよ。」

 

龍園が珍しく驚いたような表情をする。

 

「ハッ、結構吹っ掛けるんだな。」

 

「そこまでじゃないよ。そもそも、南雲先輩の情報によると、退学者の出たクラスはクラスポイントが―300されるらしいの。それの半分、って考えれば妥当じゃない?」

 

実際は退学の理由によって異なるらしく、最悪の場合-300、ってだけなのだが、こちらに有利な情報は黙っておいていいだろう。

 

「だとしてもだろ...そもそも、Dクラスにはそのマイナスされるポイント自体が殆どないんだ。クラスポイントはマイナスされねぇんだからよ。」

 

「そこなんだよねぇ...だからさ、最初は毎月三万を提示して、妥協案でこの案を出す、みたいな感じで飲ませた方がいいんじゃない?って。」

 

いわゆる、ドアインザフェイステクニックというもので、簡単に言うと、最初に暴利な条件を出した後にそこそこの条件をだすと、相手は後者を体感安く感じてしまう、といったテクニックの事だ。

 

「まぁ、Dクラスのリーダー格は甘ちゃん二人と冷血もどきだ。誰が来たとしても、そう難しくはないだろうな。」

 

恐らく冷血もどきは堀北ちゃん、甘ちゃん二人は櫛田ちゃんと平田くんのことかな?

 

「ってことで、明日の話し合いの目標は、『毎月1万5000ポイントの徴収』ってことで。頑張ろうね、龍園!」

 

 

 

 

 

そして、生徒会での話の次の日の放課後、空き教室に、Cクラス代表としてあたしと龍園、Dクラス側は堀北ちゃんと平田くんが来ていた。二人とも、少しピリピリしている。...前言撤回、堀北ちゃんはいっつもこんな感じかもしれない。その理由は明白、龍園の態度だ。龍園は被害者側とは思えないふてぶてしさで、椅子にどっかりと座っていた。あたしはその横にそろりと座り、Dクラスの二人はこちらの向かいに、机を隔てて座る。この空気を破ったのは龍園であった。

 

「まずは結果の確認から行こうか。うちのクラスの小宮、近藤、石崎がそっちのクラスの須藤に殴られた。...これは間違いないな?」

 

「...間違いないわ。」

 

堀北は苦虫を嚙み潰すような表情をしながらそう言う。龍園は続ける。

 

「このままだと須藤は退学だ。それはお前らからも避けたいだろ?」

 

「そうだね。須藤くんは、学力はともかく身体能力は秀でている。彼を失うのはうちのクラスにとって損失だ。」

 

「じゃあ条件だ。お前らDクラスは毎月、一人頭3万をCクラスに寄越せ。それが和解の条件だ。」

 

それを聞いて、堀北ががたりと音を立てて立ち上がる。

 

「待ちなさい!それは暴利にもほどがあるわ。」

 

「どこが暴利だ?テメェ等は知らねぇかもしれねぇから教えてやるが、退学者が出たクラスはクラスポイントが—300されるんだ。ちゃんとしたレートだとは思うがな。」

 

実際は退学の理由によるから、-200ポイントの可能性もあるのだが、そこは龍園。不都合なことはだんまりだ。

だが、堀北もバカではない。何かに気付いたような表情をした後、話し始める。

 

「龍園くん、その話には穴があるわ。クラスポイントがマイナスされる、と言ったわね?」

 

「あぁ、そう言ったぞ。」

 

「生憎だけど、うちのクラスのクラスポイントはたったの80。そして、これは先生から聞いた話なのだけれど、『クラスポイントにマイナスは無い』の。つまり、」

 

「被る損害は300クラスポイントも無い、と?」

 

「その通りよ。つまり、貴方たちに3万も払う義理も理由も、こちらには存在しないことになるわ。」

 

「ハッ、言うじゃねぇか。」

 

実際その通りだ。堀北もバカではない。クラスポイントにマイナスが無いのなら、須藤くんを失う損害を考えても、こちらに3万を払うのは割に合わないと思うはずだ。......そう、理屈上では。理屈で勝てぬなら、理屈では測れぬもの...そう、感情を使って勝つのみ。あたしはずっと黙っていた口を開く。

 

「確かに、理屈上はそうなのかもしれないね...でも、それが加害者側の態度なの?」

 

「...どういう意味かしら。」

 

「こっちの石崎くんたちは、一方的に殴られて...下手したら死ぬかもしれなかったんだよ!?それなのに...この期に及んで、なんでそっちがどうこう言えると思ってるの?金じゃ命は買えないんだよ!?」

 

ここで涙をほろりと落とす。が、堀北ちゃんは動じない。

 

「それはあくまで可能性、それもごくわずかな話でしょう?こっちは、少なくとも今回の結果を鑑みて、3万分の徴収は多すぎる、という話をしているの。話を逸らさないでもらえるかしら。」

 

「堀北さん、その言い方は...」

 

「あぁそう、結果でしか物事を見ないのね。さすがは不良品のDクラス様ってことだ。」

 

「それは関係ないでしょう!?」

 

「あたしも結果に準拠して話しただけだけど?一月余りで1000ポイントを吐き出した、高育始まって以来の不良品、Dクラスの堀北さん?」

 

「何ですって...!」

 

「二人とも、落ち着いて...!」

 

慌てて平田くんが止めに入る。見た感じ、平田くんは少なからず、須藤くんの件に負い目を感じているようだ。今が攻め時だと、龍園に目配せする。

 

「まぁ、実際後遺症などのケガはなかったんだ。正直3万はやりすぎだと思っちゃいたよ。......来月から毎月一人あたり15000ポイント、これでどうだ?」

 

Dクラス二人に向かって、龍園が問いかける。二人とも、考えるような仕草を取ったあと、まずは平田くんが口を開く。

 

「この申し出には異論があるわけじゃないし、むしろ妥当とも思っているんだ。でも情けないことに、今のDクラスではその分すらも払えないかもしれないんだ。」

 

「知るかそんなの。金を得る手段は幾らでもあるだろ?南雲の野郎に借りるなり、それこそ、今月から始まったらしいオンラインカジノで一攫千金でも狙ってみたらどうだ?」

 

押し黙る二人。そしてオンカジのステマをしれっとする龍園。なんというかちゃっかりしてるねぇ。

 

「実際、払えない場合を考慮してないわけじゃないよ。ちょっと利子は...一割ぐらいは貰うかもだけど、多少の延滞は大丈夫だからさ。」

 

「ククク、俺もそこまで鬼じゃあねぇよ。」

 

嘘こけ。鬼を超えて悪魔やドラゴンだろあんたは。Dクラスのふたりは、しばらくの思案の後を経て、しぶしぶ、という形だが結論を出した。

 

「分かった。僕たちDクラスは、卒業までクラスの生徒一人あたり1万5000ポイントを、Cクラスに譲渡し続ける。」

 

「ああ、それで問題無えよ。それと、録音もしてあるから、白を切る、なんてのは許さねぇぞ?」

 

龍園は懐からボイスレコーダーを取り出し、そう言った。横に居た堀北ちゃんが、悔しそうな表情をしている。大方、正式な契約ではないと有耶無耶にするのも考えていたのだろう。

その後、二人は教室を去っていった。ちなみに、堀北ちゃんは終始こちらに睨みを利かせていた。少し罪悪感が出てしまいそうだ。

 

そして、完全に他の人の気配がなくなり、二人きりになったので、あたしは口を開く。

 

「やったね龍園!ポイントゲットだよ!」

 

「ククク、そこまで難しくもなかったがな。これで毎月60万、8億までの地道な一歩って奴だ。」

 

8億なんて荒唐無稽なゴールを前に、こうやって一歩一歩積み重ねているところに、龍園の意外な真面目さを感じる。

 

「オンカジもあるし、もしかすると一年目で1億ぐらい稼げちゃうかもね。」

 

「あぁ、やってみせようじゃねぇか。...そういえば、オンカジはどんな感じだ?確か管理者用のサイトから、誰がいくら使ったかみたいなのが見れた気がするが...」

 

そう聞いて、あたしはスマホを開き、サイトにアクセスする。そこの「利用者情報」の欄に、利用した生徒とその使用額が記されていた。これはそこまで難しい技術ではなく、生徒番号がポイントを使用する端末と紐づいていたが故の副産物だ。

 

「出た出た...おっ、結構利用者数は良い感じだよ?始まったばっかりだから還元率高めにしてるとはいえ、もう200人ぐらいが金を落としてる...!」

 

オンカジの強みである、いつでもどこでもできる、というのがプラスに働いている。

 しばらく利用者を見ていると、1年Dクラスの生徒がいた。2万ほど突っ込んで全負けしている。名前は、山内春樹というらしい。まぁそのあたりはどうでもいいが、クラスポイントが減るかの危機に、のうのうとオンカジをやっていたメンタルは素直にすごいと思う。

 

「この調子だと、客の定着のために還元率上げてる今はともかく、来月からは目標の額に近い分は稼げそうだな。」

 

「そうだね~。ふふふ、月末が今から楽しみだよ...」

 

空き教室に、二人の笑い声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

月末、あたしたちは、もはやいつもの集会場所と化している南雲先輩の部屋に集まっていた。集まった理由は他でもない、オンカジの決算のためだ。

しばらくすると、南雲先輩が飲み物と茶菓子を持ってやってきた。来るたび来るたび、茶菓子のクオリティが下がっているのは何故だろうか。そんなことを考えていると、先輩が話し始める。

 

「今月も終わりなわけだが、収支はどんなもんだ?」

 

「3年生からは100万ほど、2年生からは80万ほど、1年生からは50万ほど稼げました。全部で230万ってとこです。なんで、8:2で分けると先輩の取り分は50万、ってとこですね。」

 

それを聞いた先輩は、あまり満足ではなさそうな表情だ。

 

「少ないな...」

 

「それは仕方ないじゃないですか。客の定着と知名度の向上、これらを狙った結果、多少利率を下げるしかなかったんですよ...」

 

「それは分かっちゃいるんだがなぁ...ま、来月以降が勝負って感じか。来月からは夏休みだもんな。」

 

「そうなんですよ~!夏休みにはなんと、豪華客船でのリゾート旅行が予定されてて...!」

 

豪華客船、という言葉を聞くと、南雲先輩の表情が、何か懐かしむような表情になっていく。

 

「懐かしいな...俺たちも去年は豪華客船に乗ってな...結構楽しかったぞ。」

 

「だってさ龍園!水着用意した?」

 

こっちは用意が万全だ。クーラーバッグもOS-1も水着も、すべて既に買っておいたのだ。

 

「ハッ、はしゃぎやがって...ガキじゃあるめぇし。」

 

「まだまだガキだよ普通に。」

 

ともかく、豪華客船が楽しみなのは間違いない。ほぼ泳げないけど。

 

「ま、頑張ってくれや。俺はCクラスを応援してるからな。」

 

頑張る...何を頑張るのだろうか。まさか、先輩のこの言い草だと、この豪華客船にはウラがあるのだろうか...?だとしても関係ない、もしそうなったとしても、龍園率いる我らCクラスが負けるはずないのでね。

 

「いっやぁ~、楽しみですねぇ~!」

 

来月へのワクワクを胸に抱えたまま、6月は過ぎていった。




6月末時点の龍園クラスの所持ポイント

Cのクラスメイトからの徴収分:20000×40=800000

オンカジの収入:1800000

合計260万ポイント

備考:来月以降はDクラスからの収入があり(15000×40=60万)
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