Fate/Grand Order 第三部 Script of the Palimpsest 作:白瀬 綴
公園を離れても、すぐに会話は戻らなかった。
藤丸の首元へ埋め込まれた空の器。リボーンたちのおしゃぶり。ボンゴレギア。町のどこかで歪む七つの反応。砂場のそばで確かめた情報は、歩き始めた途端に別の重さを帯びた。静まり返った住宅街へ靴音が続くたび、掴めていない範囲ばかりが広がっていく。
藤丸は綱吉の腕の中で息を吐いた。幼く縮んだ身体は、姿勢を変えるだけで重心がずれる。首元へ触れると、硬い器の奥から細い疼きが返った。奪われたものへ繋がる感触は消えず、異物を引き剥がそうとした指だけが冷えていく。
綱吉は藤丸を抱え直した。腕へ預かる重さは軽い。それでも、三騎の輪郭が自分の大空の死ぬ気の炎へ寄るたび濃くなる現象も、藤丸の呼吸が揺れに追いつけないことも、腕の内側へ積み重なっていた。
少し先を歩いていたリボーンが振り返る。
「ヴェルデとの通信は切れたか」
クロームの肩が小さく揺れた。公園では、彼女の霧の死ぬ気の炎と藤丸を中心にした接続の揺らぎが重なり、カルデアとヴェルデの声を同じ回線へ辛うじて通していた。いまは、その隙間が閉じかけている。
藤丸は首元へ指を添えた。
「ダ・ヴィンチちゃんたちの声も遠い。ヴェルデさんは、もうほとんど聞こえない」
ざり、と通信が掠れた。
『藤丸くん、こちらでも確認した。さっきの割り込み経路は維持できていない。クロームくんの霧の死ぬ気の炎と、君の周囲に残る接続の揺れが一時的に噛み合っていたようだ』
ダ・ヴィンチちゃんの声は細い。それでも、カルデアから届く音が胸の奥に残っていた緊張を少しだけ緩めた。
獄寺が眉を寄せる。
「要するに、あの眼鏡の赤ん坊はもう割り込めねえのか」
「その言い方はどうかと思うけど……」
綱吉が苦く返すと、リボーンは帽子のつばを下げた。
「ヴェルデも自分の陣営へ戻る頃だ。こっちの回線へ居座っている余裕はねえだろ」
獄寺は奥歯を噛み、続きかけた悪態を飲み込んだ。解析役が減る痛手まで否定する気はなかった。
山本は人影の消えた通りへ視線を流した。
「なら、ここからは自分たちで進むしかねえな」
「極限に進むぞ!」
了平が眠るランボを背負い直す。大声に眉を寄せたクロームが、「了平さん、少しだけ静かに」と細く制した。
綱吉は、その声に混じる息の浅さを聞き取った。
「クローム、大丈夫?」
「……はい」
返事の直後、クロームは唇を閉じた。白い頬からさらに血の気が抜け、腹部へ寄りかけた指が途中で止まる。公園で通信を支え続けた負荷が、まだ身体の内側へ残っていた。
リボーンも一度だけ彼女を見たが、問い詰めなかった。藤丸も声をかけず、短く乱れる呼吸と、立ち続けようとする膝の力を見ていた。
公園から商店街へ向かう通りには、低い塀と住宅が並び、角には古い自動販売機が残っていた。店先のシャッターも郵便受けも壊れていない。生活に使われていた物だけが朝の位置を保ち、人の気配だけが抜け落ちている。
曲がり角へ近づいたところで、クロームが足を止めた。
「……膜が、あります」
前方の景色へ、薄い層が重なっていた。商店街へ続く道路の表面だけが張り詰め、電柱と看板の輪郭が二重にずれる。風は通っているのに、その境目だけが硬い。
獄寺が綱吉の前へ出た。
「十代目、下がってください」
綱吉は藤丸を抱いたまま足を引き、山本が隣へ並ぶ。了平はランボを背負った身体を後方へ置き、クロームは膜の縁へ目を凝らした。
エミヤの手に弓が現れる。肩口はまだ薄く、矢を番える指先が一度だけ透けたが、照準は揺れない。
「戦闘領域に近い遮断層か」
「呼び方なんてどうでもいいわ。閉じ込めるつもりなら、焼くまでよ」
ジャンヌ・オルタが指先へ火を滲ませる。マンドリカルドは剣の柄を握り、綱吉の近くへ寄った。
「ツナさん、マスターを前へ出しすぎないでください。今の身体だと、揺さぶられるだけでも息を持っていかれるんで」
藤丸が短く頷いた直後、膜の向こうで三つの黒い輪郭が起き上がった。
影炎体は商店街へ続く道を塞ぎ、左右へ広がる。一体の腕には刀身を思わせる黒い棒が伸びていた。肩の落とし方、踏み込みへ入る前の腰、間合いを測る視線まで、山本の動作を粗くなぞっている。
山本の目が細くなった。
「……俺の真似か」
「覚えたのか、さっきの動きを……」
綱吉の腕へ力が入る。山本は笑みを作らず、時雨金時の柄へ指を掛けた。
「見せたつもりはなかったんだけどな」
影炎体が踏み込む。黒い刀身が山本の肩口へ走り、時雨金時が外側から受け流した。金属音は響かず、接触した空気だけが濁って軋む。影炎体は受けた腕を戻し、山本の次の斬線へ合わせて角度を変えた。
獄寺が横から爆薬を投げる。二体目が割り込み、胴で爆風を受けた。黒い輪郭は崩れたが、散った粒子は路面へ落ちず、細い流れになって膜の奥へ吸い戻されていく。
藤丸の喉が狭くなる。エミヤも粒子の行方を追い、眉間へ皺を寄せた。
「破砕した情報を、奥へ回収している」
「それ、いま聞くと最高に気分が悪いんだけど」
ジャンヌ・オルタの火が影炎体の進路を横切る。出力は細いが、踏み込む脚を止めるには足りた。
膜の内側は狭く、綱吉は藤丸を抱いたまま前へ入れない。了平はランボを背負い、エミヤたち三騎も互いの射線を譲りながら動く。クロームは戦闘の向こうで、閉じかける膜の縁だけを追っていた。
「このまま閉じたら、中と外へ分けられます」
「分けられる?」
「境界が狭まっています。全員で同じ出口を通れる時間が、長くありません」
獄寺が爆薬を握り直す。
「なら、ぶち抜く!」
「待って、獄寺くん!」
綱吉の制止と同時に、膜の表面が脈打った。力を正面からぶつければ、その反動が中にいる誰かへ返る。綱吉は藤丸を抱いた腕へ走った寒気に従い、獄寺の前へ声を飛ばした。
山本は黒い刀を流しながら、クロームへ問う。
「通り道を作れるか?」
クロームは腹部へ寄った手を下ろした。指先が震え、呼吸も浅い。それでも、前方へ一歩出る。
「……少しだけなら」
霧の死ぬ気の炎が、紫の薄光となって彼女の周囲へ広がった。膜を砕く力は持たない。代わりに、内と外を分ける境界へ幻覚を重ね、閉じようとする縁を僅かに曖昧にする。
膜の継ぎ目が揺れ、商店街へ続く曲がり角に人ひとり分の隙間が開いた。
「今です!」
山本が黒い刀を弾き上げ、獄寺の爆風が二体目を横へ押す。ジャンヌ・オルタの火が三体目の進路を塞ぎ、エミヤの矢が肩口を貫いた。マンドリカルドは綱吉たちの横を固め、了平がランボを背負ったまま先に隙間へ飛び込む。
綱吉も藤丸を抱え直して続いた。境界を抜けた瞬間、冷たい圧が皮膚へ貼りつき、自分の立っていた位置だけを後ろへ剥がされる感覚が走る。
最後にクロームが抜けると、膝が崩れた。
「クローム!」
山本が肩を支え、路面へ落ちる寸前で受け止める。クロームは立とうとしたが、唇の色まで薄くなっていた。
「……まだ、立てます」
リボーンが彼女の前へ視線を置く。
「負荷を見誤るな。お前が倒れれば、ランボへ手を伸ばす余力も消える」
クロームは了平の背で眠るランボを見た。頬に残る涙の跡が揺れ、細い指から力が抜ける。
「……はい」
膜の向こうで影炎体が蠢いていたが、境界へ重ねられた幻覚に狙いを迷わせ、すぐには追ってこなかった。
商店街へ入ると、住宅街よりも空白が濃くなった。魚屋の発泡スチロール箱、八百屋の値札、文房具屋の色褪せたポスター。人の手を待つ品だけが店先へ残り、アーケードの長さは視線を向け直すたび僅かにずれる。
『藤丸くん、聞こえるかい』
ノイズの奥からダ・ヴィンチちゃんの声が届く。
「聞こえる。さっきより遠いけど」
『君たちの位置情報が一瞬ごとにずれている。膜を抜けた際、観測座標まで引っ張られたようだ』
奥でムニエルが呻く。
『座標が酔ってるみたいに揺れてるぞ、これ……』
『例えは雑だけど、現象は近い。空間上の住所が固定されていない』
オルガマリーの声が割り込んだ。
『さっきの黒い個体も記録できたわ。山本くんの動作を模倣していた可能性が高い。同じ攻めを繰り返せば、次は先に合わせられるかもしれない』
「やっぱり、見られてたんだ」
『反応の一部を拾えただけよ。ただ、接触した戦闘動作を保持し、崩れた粒子まで回収している。次に出てきた時、精度が上がっている危険はあるわ』
藤丸の表情が強張り、綱吉たちにも通信の緊張が伝わった。
リボーンが商店街の奥へ目を向ける。
「長居はしねえ。抜けるぞ」
その直後、古びた蛍光灯が一斉に明滅した。看板の影がアーケードの床へ伸び、その暗がりの中に黒い外套が立っていた。
顔を覆う銀色の面が、ちらつく照明を鈍く返す。人間に近い輪郭を持ちながら、立っている実感だけが一拍遅れて届く。影炎体にあった黒い揺らぎはなく、外套の裾も鎖も静止していた。
綱吉の背中へ、シモンとの抗争で触れた冷たい記憶が上がる。沈黙の掟を破った者へ刑を執行する存在。獄寺の肩が強張り、山本の指が時雨金時の柄へ沈む。リボーンの目も細くなった。
「あいつは……」
黒衣の奥から乾いた声が落ちる。
「――
銀色の面は動かない。名乗りが響いた瞬間、了平は背中のランボを支える腕へ力を込め、獄寺は一歩ぶん綱吉へ寄った。
黒衣が鎖を鳴らす。
「掟に背く者に、裁きを――」
藤丸は綱吉たちの反応を見上げた。カルデアで知るアヴェンジャーとは文脈が異なる。それでも、その呼称が裏社会で何を指すのか、周囲の呼吸が先に教えていた。
通信の奥でムニエルの声が上擦る。
『復讐者って、アヴェンジャーじゃなくて、この世界の組織か?』
『ヴィンディチェ。イタリア語では復讐者を指すけれど、呼称だけの集団ではなさそうね』
オルガマリーの問いへ、リボーンは黒衣を見据えたまま答えた。
「マフィアの世界で沈黙の掟を破った者を裁く連中だ。普通のファミリーが敵に回す相手じゃねえ」
『裏社会の刑を執行する機関、と捉えるべきか』
ダ・ヴィンチちゃんの声から軽さが消える。
『善悪よりも、彼らが定めた掟への違反を基準に動く。こちらの説得が通る保証は薄いね』
「それでも、止めないと」
綱吉は黒衣を見たまま拳を握った。
「マフィアの決まりも、そこにある事情も、俺には全部分かりません。だけど、この町で誰かを消して、藤丸まで連れていこうとするなら、黙って見ていられない」
獄寺の肩がわずかに揺れた。綱吉は指を強く折り込み、逃げ出しそうになる足をその場へ留める。
「目の前で誰かが奪われるのは、もう嫌です」
黒衣は沈黙したまま、外套の下から腕を上げる。鎖へ薄い火がまとわりついた。大空の七属性とも、大地側の気配とも噛み合わず、色を捉えようとした視線だけが滑る。
リボーンが低く問う。
「俺たちは沈黙の掟を破っちゃいねえ。シモンやD・スペードの件で来たのか」
返答の代わりに、鎖が商店街の床を擦った。
次の拍で、鎖が藤丸を抱える綱吉の前腕へ走る。輪は腕の外側へ回り込み、藤丸ごと引き剥がす角度で閉じようとした。
山本が割って入り、時雨金時で鎖を弾く。濁った金属音が響き、柄を握る手首へ震えが残った。
「重い……!」
獄寺の爆薬が横から飛ぶ。鎖は輪を返して爆薬を弾き、爆風を綱吉たちから外へ逃がした。続けて飛んだエミヤの矢も、別の輪が軌道を折る。ジャンヌ・オルタの火が迫ると、黒衣は片足を後ろへ滑らせ、燃える線から外れた。
「裁きだの掟だの、趣味が悪いのよ!」
マンドリカルドは剣を抜きかけたが、藤丸のそばを離れられない。綱吉も腕の中の幼い身体を庇い、踏み込む幅を失っていた。
鎖が二筋へ分かれる。一筋は山本の刀を外側から縛り、もう一筋は了平の背へ回った。
「ランボ!」
クロームの霧の死ぬ気の炎が紫の幕を作り、鎖の先を僅かに逸らす。了平は身体を横へ投げ、空いた拳で鎖を弾いた。鈍い衝撃が腕へ残り、眉間が歪む。それでもランボの身体は背から離れない。
「極限に危ないだろうが!」
「追いすぎるな!」
リボーンの声に、黒衣の銀面が僅かに向く。鎖が引かれた直後、商店街の床へ黒い粒子が寄り集まり、三体の影炎体が立ち上がった。黒衣を守るように左右へ広がり、こちらの退路へ腕を伸ばす。
獄寺が怒鳴る。
「てめえ、何者だ!」
鎖が床を叩き、影炎体が一斉に前へ出た。山本が黒い刀を受け、獄寺の爆風が二体目の踏み込みを止める。ジャンヌ・オルタの火が三体目の進路を焼き、エミヤの矢が肩を貫いた。マンドリカルドは綱吉と藤丸の前へ身体を入れる。
綱吉は黒衣の銀面を見た。死ぬ気丸へ手を伸ばせば戦える。それでも、腕の中の藤丸は揺れるたび呼吸を乱し、相手の鎖は殺傷よりも奪取へ向いている。
「ツナ、脇道へ抜けろ。狙いが読めねえうちに、藤丸を抱えたまま受け続けるな」
「でも――」
「連れて帰るために退け」
綱吉は歯を食いしばり、仲間へ声を飛ばした。
「みんな、抜ける!」
山本が影炎体の刀を押し返し、獄寺は商店街の脇道へ爆風を通す。
「十代目の道を開ける!」
散った影炎体の粒子が再び奥へ引かれたが、追う余裕はない。クロームは薄く広げた霧の死ぬ気の炎で黒衣の視界をずらし、ランボと藤丸が通る数秒を作った。
銀色の面がクロームへ向く。その視線を受けた瞬間、クロームの腹部から支えが遠のき、息が喉で詰まった。膝が沈みかけても、槍を握る指は離れない。
「クローム!」
綱吉が踏み出しかける。腕の中の藤丸と、背後から迫る影炎体が、その足を止めた。
クロームは唇を噛み、顔を上げる。
「私も、みんなと行きます。少しだけ、持たせます」
「負荷を越えるな。倒れたら、その先へ手を伸ばせねえぞ」
リボーンの声に、クロームはランボと藤丸を見た。霧の死ぬ気の炎を細く絞り、脇道の入口へ幻覚を重ねる。
綱吉たちはその隙へ飛び込んだ。了平がランボを背負って続き、エミヤとジャンヌ・オルタが後方を牽制する。マンドリカルドは藤丸のそばを離れず、山本と獄寺が最後に脇道へ入った。
黒衣は追ってこなかった。遠ざかる一行へ銀色の面を向け、鎖を静かに引き戻している。
脇道の壁際で全員が息を整える。獄寺は拳を握り、山本は時雨金時を下ろしても手首の震えを消せずにいた。
「リボーン、あのヴィンディチェ……」
「あの外套、銀面、鎖、自分から告げた呼称。次に会っても、普通の相手として近づくな」
藤丸は綱吉の腕の中で浅く息を繰り返していた。自分で走っていないのに、揺れだけで体力が削られていく。
通信の奥でダ・ヴィンチちゃんが口を開く。
『今の個体は記録した。黒い外套、銀色の面、拘束を優先する鎖、ヴィンディチェという呼称。影炎体と同時に現れた点も含め、最優先で比較対象へ入れる』
『あいつが影炎体を動かしているのか?』
ムニエルの問いに、ダ・ヴィンチちゃんは即答を避けた。
『出現が重なっただけで因果までは断定できない。黒衣、影炎体、膜の反応を分けて記録する。次の遭遇で一致する要素を拾うよ』
オルガマリーが続ける。
『藤丸と三騎の状態も危険よ。三騎はカルデアから同行した霊基なのに、現地へ入った直後から輪郭を削られている。ツナくんの大空の死ぬ気の炎へ近づいた時だけ安定する現状では、移動も戦闘も彼へ寄りすぎるわ』
『今の戦闘で炎の反応を少し拾えた。魔力とは異なる働きで、霊基の崩れを一時的に抑え、現界を支える足場になっているらしい。藤丸くんの擬似おしゃぶりとカルデア側の通信を接続できれば、簡易補助式を試せるかもしれない』
藤丸は息を整えながら顔を上げた。
「ツナが離れても、みんなが動けるように?」
『まだ可能性の段階だよ。次に回線が安定した時、こちらで組み始める。藤丸くんが抱えられたまま、三騎までツナくんの近くに縛られる状態を長引かせる方が危険だ』
『さっきの膜も、次はもっと早く閉じるかもしれない。移動経路を一本に絞らないで』
オルガマリーの注意に、ムニエルが低く呻いた。
『町は閉鎖、影炎体は模倣と回収、そこへヴィンディチェを名乗る黒衣か……厄介事が増えすぎだろ』
誰も笑わなかった。
綱吉は商店街の奥を振り返る。黒衣も鎖も見えない。ただ、戦いの間ずっとこちらの動きを測られていた感触だけが残っている。
リボーンは帽子のつばを下げた。
「進むぞ。あいつは仕留めるより、こっちの反応を拾っていた。次は今回の動きを踏まえて来る」
綱吉は頷き、藤丸を抱え直した。首元の空の器を握った藤丸の指へ、細い疼きが返る。
商店街の先には、白い膜の残光が点々と残っていた。模倣する影炎体、閉じる境界、復讐者を称した黒衣。どれも同じ場所へ繋がる手掛かりを見せながら、肝心な部分だけを隠している。
綱吉は消えた町の人々を思い、白い残光の奥へ足を進めた。
その背後、路地の角で銀の鎖が外套の内側へ静かに収まった。黒衣は遠ざかる一行へ銀色の面を向けたまま、アーケードの暗がりへ姿を沈めた。