Fate/Grand Order 第三部 Script of the Palimpsest   作:白瀬 綴

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【現時点の暫定勢力図】
■リボーン陣営
アルコバレーノウォッチ:リボーン
ボスウォッチ:沢田綱吉
バトラーウォッチ:獄寺隼人/山本武
ウォッチ非所持者:クローム髑髏/笹川了平/ランボ

■コロネロ陣営
アルコバレーノウォッチ:コロネロ
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■マーモン陣営
アルコバレーノウォッチ:マーモン
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■スカル陣営
アルコバレーノウォッチ:スカル
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■ヴェルデ陣営
アルコバレーノウォッチ:ヴェルデ
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■風陣営
アルコバレーノウォッチ:風
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■ユニ陣営
アルコバレーノウォッチ:ユニ
ボスウォッチ:???
バトラーウォッチ:???/???
ウォッチ非所持者:???

■藤丸陣営
おしゃぶりウォッチ:藤丸立香
ボスウォッチ:マンドリカルド
バトラーウォッチ:エミヤ/ジャンヌ・ダルク・オルタ
ウォッチ非所持者:なし


第4話 天才たちの会合

 石段の下から迫ってくる黒い炎の輪郭は、さっき町中で見たものよりも数が多かった。

 

 人型に近い。腕に似た突起があり、脚に似た黒い揺らぎもある。だが、関節は途中で途切れ、歩幅も揃わない。炎の揺れが人間の動きを真似ているだけで、足裏にあたる部分が石段を擦るたび、乾いた音が境内へ這い上がってくる。熱はない。煤の匂いもない。それでも、近づかれるほど喉の奥がざらついた。火に焼かれる痛みより先に、身体の内側から熱だけを削られるような冷たさがあった。

 

 綱吉は藤丸を抱えたまま、靴先を石畳へ滑らせた。

 

 前へ出る獄寺と山本、後方に残るクロームと了平、眠っているランボ、境内中央にいるリボーンたち。綱吉は、そのあいだへ自分が立つ位置を腕の重みごと測り直す。

 

 腕の中の藤丸は軽い。けれど、その軽さに反して、近くへ寄った三騎の輪郭が空気の密度を変えていた。赤い外套の男――エミヤが綱吉の肩越しに弓を構え、ジャンヌ・オルタは口元を歪める。マンドリカルドはまだ手首の太い時計を気にしながらも、剣の柄へ指をかけていた。

 

 リボーンの声が飛ぶ。

 

「ツナ、そいつを落とすな。そいつが崩れれば、後ろの三人も崩れる」

 

 短い指示で、綱吉の腕に力が入った。藤丸を抱えている自分の周囲だけ、エミヤたちの輪郭が保たれている。藤丸がここにいて、綱吉の死ぬ気の炎が届く距離にいて、そこでようやく三騎はこの世界へ踏みとどまれる。細かい理屈より先に、その危うさが藤丸の軽さと一緒に腕へ伝わっていた。

 

 獄寺が前へ出る。細いバトラーウォッチが手首で鈍く光り、その奥でボンゴレギアの炎が揺れた。

 

「十代目、右は俺が潰します!」

 

 言い終えるより早く、獄寺の指が動く。ダイナマイトが指の間へ現れ、嵐の死ぬ気の炎を帯びた火線が石段へ走った。黒い炎の輪郭へ炸裂した瞬間、爆風は確かに外殻を崩す。だが、手応えが浅い。砕けた黒は薄い粒子になって散り、僅かに遅れて同じ輪郭へ戻ろうとした。

 

 獄寺の眉が跳ねる。

 

「チッ、燃やしても戻りやがるのかよ……!」

 

 山本が左から踏み込んだ。雨の死ぬ気の炎をまとった刀が、黒い腕を斜めに切り落とす。切断された部分は落ちず、空中でほどけた。次の瞬間、山本の脇腹を狙って別の黒い腕が伸びる。

 

 山本は身体を捻り、切っ先を下から返した。刃が二度、三度と走り、黒い炎の胴を細かく刻む。雨の死ぬ気の炎が触れた箇所だけ、戻る動きが一瞬遅れた。

 

「雨は効く。けど、止めるところまでだな」

 

 山本の声は落ち着いていたが、視線は笑っていない。効くには効く。刃が通るたび、黒い輪郭は遅れる。それでも、倒した重さが返ってこない。戦闘の温度だけが一段冷えた。

 

 エミヤが赤い外套を翻す。手元に弓の輪郭が立ち上がり、次の呼吸にはもう弦が引かれていた。

 

 放たれた矢は黒い炎の胸を貫き、背後の一体までまとめて射抜く。普通なら致命傷に届く軌道だった。だが、相手は血を流さない。肉も骨もない。貫かれた穴だけがしばらく黒く残り、周囲の揺らぎがゆっくり流れ込んで埋めていく。

 

 エミヤの目が細くなった。

 

「核が外に出ていない。貫いたところで、崩れる部分が軽すぎる」

 

 ジャンヌ・オルタが舌打ちする。

 

「面倒くさいわね。人間の真似だけして、中身は空っぽってこと?」

 

 彼女の炎が膨れ上がる。黒い炎の輪郭へ向けて放たれた熱と怒りは、真正面からぶつかり、上半身の揺らぎを一息で焼いた。今度は戻りが遅い。焼けた場所から煤は出ず、膜の残光に似た細かい粒子が立ち上る。そこへ別の黒が吸い寄せられ、焼けた穴を塞ごうとした。

 

 マンドリカルドが喉を鳴らした。

 

「……倒した感触が、軽すぎるっすね」

 

 その声に、藤丸の指先がわずかに震えた。

 

 軽すぎる。まさにそれだった。戦っているのに、相手を倒している実感が腕へ返ってこない。こちらがどんな攻撃をするか測るため、壊れても構わない人型を次々と差し出されているような気持ち悪さがある。

 

 その違和感を、境内の中央にいた白衣の赤ん坊――ヴェルデが、低く口にした。

 

「……観測端末に近いか」

 

 誰もすぐには返さない。ヴェルデは、戦闘そのものよりも、崩れていく黒い炎の粒子の流れを追っていた。攻撃を受けた黒い炎は、薄くなり、ほどけ、細い流れとなって境内の外へ引かれていく。残った揺らぎは再び人型へ戻るが、ほどけた一部だけが、こちらの視線から外れる。

 

「崩れる直前までこっちを見てるな。今の攻撃も、炎もだ」

 

 獄寺が噛みつくように振り返り、ヴェルデは眼鏡の奥で黒い炎を睨んだ。

 

「だったら、こいつらは何なんだよ!」

 

「黒い炎で作られた観測端末。仮に――影炎体、と呼ぶ」

 

 その呼称が落ちた瞬間、境内の空気がわずかに重くなる。正体の輪郭はまだ遠い。それでも、人の動きを真似た黒い群れが偶然そこに生まれたとは考えにくい。倒した時の軽さも、ほどけた粒子がどこかへ引かれる現象も、まだ理由だけが見えなかった。

 

 リボーンが短く言う。

 

「なら、長引かせるな。何を見てるか分からねえ相手に、手の内を見せ続ける必要はねえ」

 

 その一言で、全員の動きが変わった。

 

 獄寺は爆破範囲を絞り、嵐の死ぬ気の炎を一点へ集める。黒い炎の外殻を削り、戻る前に山本の雨が切り込む。山本の刀が相手の動きを鈍らせた瞬間、ジャンヌ・オルタの炎が叩き込まれ、エミヤの矢がほどけた粒子の流れへ差し込んで散る向きを乱した。

 

 同じ攻めを長く見せない。ほどけた粒子がどこへ流れるのかも見失わない。その意識が、攻撃の組み方を変えていく。

 

 だが、影炎体は減らない。

 

 境内を囲っていた黒い群れが、こちらの対応に合わせて散り始めた。獄寺の爆風が届きにくい石灯籠の陰へ潜り、山本の踏み込みを誘う位置へ腕を伸ばし、藤丸を抱えた綱吉の退路へ薄く回り込む。

 

 藤丸の背中に、冷たいものが走った。

 

 狙いが寄っている。

 

 影炎体に顔はない。視線もない。それでも、動きの向きだけが、明らかに藤丸へ集まっていた。

 

 綱吉も気づく。抱えた藤丸を左腕で支え直し、右手を前へ出した。その動作へ反応するように、額の奥で熱が揺れる。死ぬ気丸を飲んだ時のような急な切り替わりは来ない。守るために前へ出る意思が、身体の芯へ熱を集めた。

 

 黒い炎の腕が、斜め後ろから伸びた。

 

 綱吉は振り返るより先に、踵を引いた。抱えている藤丸の重みで身体の軸がずれ、いつもより動きが鈍る。それでも、黒い腕の軌道は身体が先に拾っていた。回避は間に合う。けれど、避ければ後ろのクロームへ流れる。

 

 ここで流せば、クロームの胸元へ届く。

 

 綱吉の右手に橙色の死ぬ気の炎が灯る。

 

 掌底を打ち込んだ瞬間、黒い炎が弾けた。炎と炎がぶつかったのに、爆発は起きない。大空の死ぬ気の炎に触れた箇所だけ、黒い輪郭が乱れ、違う場へ馴染まされるように崩れていく。

 

 藤丸の胸が、どくんと鳴った。

 

 ツナの炎が触れた場所だけ、影炎体の揺れ方が変わった。三騎の輪郭がツナの近くで濃くなる現象と、どこか似て見える。

 

 理由は分からない。藤丸に掴めるのは、壊すための一撃だけでは説明しにくい変化が、どちらにも起きたというところまでだった。

 

 リボーンは、その一撃から目を離さない。

 

 これまでの影炎体よりも輪郭が濃い。人型の胴は肩だけが異様に広く、腕が長い。歩くたびに、石段の表面を削る音が鳴る。中身のない黒い炎であることは同じなのに、そこに混ざる圧だけが違った。

 

 獄寺が前へ出ようとした瞬間、黒い塊の腕が伸びた。黒い軌道は石段の空気を裂き、獄寺の胸元へ届く前に、山本の刀が間へ入る。雨の死ぬ気の炎が散り、腕の速度をわずかに落とした。だが止まらない。山本の身体が押し込まれ、靴底が砂利を削る。

 

「山本!」

 

 獄寺が叫び、嵐の死ぬ気の炎を撃ち込む。黒い腕の側面が削れ、ようやく山本が抜けた。その隙へ、エミヤの矢が刺さる。ジャンヌ・オルタの炎が追い、マンドリカルドが踏み込んで剣を振るった。

 

 剣は黒い炎の肩口を裂く。

 

 だが、浅い。

 

 マンドリカルドの腕へ鈍い衝撃が返り、身体が一歩ぶん後ろへ弾かれる。刃は入ったのに、肉を切る手応えがない。固い水面を叩いたような反発だけが、柄から肘へ跳ね返った。

 

「っ、重……!」

 

 黒い塊が、マンドリカルドへ腕を振り下ろす。

 

 影炎体に意思があるか、綱吉には掴めない。けれど、攻撃は明らかに太いボスウォッチへ向かっていた。

 

 エミヤが矢を番え、ジャンヌ・オルタの炎が膨らみ、綱吉も藤丸を抱えたまま前へ踏み出そうとする。三つの動きが重なる寸前、マンドリカルド自身が歯を食いしばった。

 

 逃げるのが一番早い。身体はその道を選びかけていた。けれど、逃げれば藤丸の前が空く。剣を握る指が震え、腕が重くなり、息が浅くなる。それでも、マンドリカルドは下がりきらなかった。

 

「……いや、ここで下がったら、ダメなやつっすよね!」

 

 剣を斜めに構える。

 

 受け止めるには弱い。押し返すには足りない。だが、真正面から諦めない構えだった。黒い腕が振り下ろされる寸前、綱吉の死ぬ気の炎がその背後から届く。橙色の熱がマンドリカルドの肩口をかすめるように流れ、剣の表面へ薄くまとわりついた。

 

 マンドリカルドの目が見開かれる。

 

 マンドリカルドの身体から、新しい炎は立ち上がっていない。けれど、剣を握る手の震えだけがほんの少し静まり、重かった腕が動く位置まで戻ってきた。恐怖は胸に残っている。それでも、目の前の一撃へ剣を合わせられる。

 

 黒い腕と剣がぶつかった。

 

 今度は、弾かれない。

 

 衝撃が足裏まで突き抜け、膝が折れかける。それでも、マンドリカルドは僅かな時間だけ耐えた。その短い耐えで十分だった。エミヤの矢が黒い塊の胸を貫き、ジャンヌ・オルタの炎が肩口を焼き、獄寺の嵐の死ぬ気の炎が外殻を砕き、山本の雨の死ぬ気の炎が戻る動きを遅らせる。

 

 最後に綱吉の死ぬ気の炎が、乱れた黒い塊の中心を撃ち抜いた。

 

 影炎体は、今度こそ輪郭を保てなかった。黒い炎が崩れ、粒子のように境内へ散る。その一部がどこかへ流れようとした瞬間、エミヤが矢を放ち、ジャンヌ・オルタの炎が残りを焼いた。

 

 流れ出る粒子は、さっきより少ない。

 

 マンドリカルドは剣を下ろし、肩で息をする。

 

「……今の、何なんすか」

 

 自分の手を見る。震えはまだある。だが、さっきまでとは違う。恐怖が消えていないのに、剣を振るう角度だけが残っている。

 

 綱吉も自分の手を見る。

 

 大空の死ぬ気の炎がマンドリカルドの剣へ触れた瞬間、薄かった腕の輪郭が僅かに濃くなり、握りの震えが止まった。綱吉に分かるのは、目の前で起きた変化だけだった。

 

 ヴェルデの目が鋭く光る。

 

「……面白い。今ので炎量が跳ねたようには見えない」

 

 白衣の赤ん坊はマンドリカルドの腕と綱吉の手元を見比べた。

 

「そいつ自身から死ぬ気の炎は出ていない。それでも、沢田綱吉が触れた直後だけ揺れが止まった。……もう一度あれば、今度は取りこぼさない」

 

 リボーンが横目で見る。

 

「調べるのは後だ。今は退くぞ」

 

 影炎体は倒した。だが、境内の外周にはまだ黒い揺らぎが残っている。今ここで全部潰しに行けば、こちらの手の内をさらに晒すことになる。ウォッチを装着したばかりで、誰もルールを身体へ落とし込めていない。

 

 リボーンは短く指示を飛ばす。

 

「ツナたちは石段側を抜ける。コロネロ、風、ユニを連れて別方向へ出ろ。ヴェルデ、そのケースは離すな。あとで全部聞く。スカルとマーモンは勝手に死ぬな」

 

 ヴェルデはケースの脇から掌ほどの小型中継機を外し、綱吉へ放った。

 

「通信が戻るなら、こいつが拾う。首元の器やウォッチは使わん」

 

 スカルが何か言い返そうとしたが、コロネロの一瞥で口を閉じる。黒いフードの赤ん坊は小さく笑っただけで、何も言わない。ユニは周囲を見回し、それから綱吉と藤丸の方へ視線を向けた。

 

「……また合流しましょう」

 

 ユニの声には、ここで別れても、もう一度顔を合わせたいという意思がまっすぐ乗っていた。

 

 綱吉は頷く。

 

「うん。気をつけて」

 

 それだけ言って、石段側へ向き直る。

 

 藤丸は腕の中で、まだ息を整えていた。身体は小さいままで、胸の奥には嫌な重さが残っている。影炎体は、襲うだけの敵として動いていない。削り、測り、ほどけた粒子をどこかへ流していく。しかも、その動きは藤丸へ寄っていた。

 

 胸の奥にある空白が、答えの端を知っているように疼く。

 

 首元の器は、遅れて一度だけ冷えた。何に反応したのかは分からない。

 

 それとは別に、綱吉の懐でヴェルデから受け取った小型中継機が震え、細いノイズを吐いた。

 

   * * *

 

 石段を下り、神社の鳥居が背後へ遠ざかるころには、小型中継機のノイズへ途切れた声が混じり始めていた。

 

 鳥居の周りを抜ける風音より細く、影炎体が石段を擦る音より遠い。ざらついた砂嵐の奥で、小型中継機のスピーカーが何度も音を結びかけ、そのたびに切れた。

 

 綱吉の腕の中で、藤丸は顔を上げる。

 

「……待って」

 

 綱吉が足を止める。獄寺と山本もすぐに周囲へ目を走らせた。エミヤの手元に弓の輪郭が立ち上がり、ジャンヌ・オルタは炎を抑えたまま石段の下を睨む。マンドリカルドも遅れて剣を持ち直した。

 

 小型中継機から、ざり、ざり、とノイズが跳ねる。途切れた声が混ざる。遠い。だが、耳へ確かに届いていた。

 

『――こえ――るかい――藤丸くん――』

 

 藤丸の喉が詰まった。

 

 聞き慣れた声だった。明るくて、軽くて、本当にまずい時ほど無理に軽さを保とうとする声。

 

『――こちら、カルデア管制室――ダ・ヴィンチちゃんだ。聞こえるかい、藤丸くん』

 

 胸の奥に、遅れて熱が戻る。

 

 藤丸は小さな身体のまま、必死に声を出した。

 

「聞こえる……! ダ・ヴィンチちゃん、聞こえてる!」

 

 エミヤの表情が、ほんのわずかに緩む。ジャンヌ・オルタは露骨に安堵を見せないが、炎の揺れが少しだけ落ち着いた。マンドリカルドは目を見開き、それから肩の力を抜くように息を吐く。

 

『よかった。いや、本当によかった。こちらの観測では、君たちは町の内側へ閉じ込められている。箱の内壁みたいな境界に阻まれて、何度呼びかけても座標が噛み合わなかった』

 

 綱吉たちは、その声の主を知らない。藤丸が小型中継機へ身を寄せた反応だけが、少なくとも藤丸にとって待ち望んだ相手だと示していた。

 

 獄寺が警戒を解かないまま訊く。

 

「誰だ」

 

 藤丸は綱吉の腕の中で振り向いた。

 

「カルデアの仲間。俺たちが戻る場所で、人理を守るために動いてる組織だ」

 

 藤丸は背後の三騎へ視線を送る。

 

「俺はそこでマスターをやってる。この三人は、俺と契約してるサーヴァントです」

 

「マスター? サーヴァント?」

 

 獄寺の眉が跳ねる。リボーンも、聞き慣れない響きをそのまま流さなかった。

 

「その前に、人理ってのは何だ」

 

 通信の向こうで、ダ・ヴィンチちゃんが僅かに息を整える。

 

『人間の歴史が、明日へ繋がっていくための基盤だと思ってくれればいい。カルデアは、その流れに大きな異常が出た場所を観測して、必要なら現地へ人員を送る』

 

 獄寺が目を細める。

 

「歴史そのものに異常が出るってのか」

 

『そういう地点を、私たちは特異点と呼んでいる』

 

「特異点……?」

 

 綱吉は思わず聞き返した。

 

『本来の人類史から大きく外れた状態が固定されている地点だよ。原因も規模も毎回同じとは限らない』

 

 山本が小さく息を漏らす。

 

「未来へ飛ばされた時も大概だったけど、そっちは歴史そのものを相手にしてるのか」

 

『君たちもずいぶん濃い経験をしているみたいだね』

 

 軽く返したあと、ダ・ヴィンチちゃんの調子が変わる。

 

『ただし、この町は普段の特異点と観測の出方が違う。白い包囲層の内側に、こちらとは別の法則を持つ町が綴じ込まれ、その一部だけがカルデアの観測線へ触れている。だから今は、暫定的に偏綴点(へんてつてん)と呼んでいる』

 

「偏綴点……特異点の一種って決めてるわけじゃないんだな」

 

 リボーンの確認に、ダ・ヴィンチちゃんがすぐ答える。

 

『そう。呼び方も仮のものだよ。まず観測の違いを区別するために付けている』

 

「じゃあ、直し方は?」

 

 綱吉の問いに、通信の向こうが短く静まった。

 

『まだ確定していないわ』

 

 オルガマリーが先に答えた。

 

『過去に対処した特異点では、聖杯が異常へ関わっていた例も多い。でも、この町に同じものがある証拠はない。藤丸たちの生存を確保しながら、ここで働いている規則と異常の中心を調べる。それが先よ』

 

 リボーンが帽子のつばへ指を添える。

 

「聖杯ってのは、宗教の方で聞くあれと同じか?」

 

『由来は近いけれど、こちらで扱う聖杯は、願いを叶えるほど大きな力を蓄える器だよ。もっとも、今それを前提にすると調査を外す』

 

「そっちも、この町へ来れば終わらせられる答えを持ってるわけじゃねえんだな」

 

『残念ながらね』

 

 ダ・ヴィンチちゃんは誤魔化さなかった。リボーンは綱吉の腕の中の藤丸、その背後の三騎、首元の器を見比べる。

 

「なら次だ。藤丸が言ったサーヴァントってのは何だ」

 

『人類史に刻まれた英雄や伝承の記録を、霊基という器へ落として現界させた存在だ。藤丸くんは契約者として三騎を指揮する』

 

「生き返った死人ってことか?」

 

 獄寺の問いは遠慮がない。

 

『墓から本人を蘇らせた、という話とは違うよ。英霊として刻まれた記録を、現世で活動できる霊基へ呼び出している』

 

 綱吉は思わず三騎を見た。

 

「じゃあ、本当に昔の英雄が今ここにいるの……?」

 

『場合によっては、歴史の教科書で見た人物と会うこともある』

 

 山本の眉が上がる。

 

「過去の人と一緒に戦えるのか。すげーな」

 

 獄寺の目にも、警戒とは別の光が混じった。

 

「昔の英雄だの伝説だのが実在するってことかよ。UMAどころじゃねえじゃねえか……!」

 

「ご、獄寺くん、今そこに食いつくところ!?」

 

「十代目の安全確認が最優先です! 相手が何なのか調べるのも安全確認です!」

 

 綱吉は三騎から、腕の中の藤丸へ視線を落とした。

 

「藤丸も、最初からマスターになるつもりだったの?」

 

「いや。カルデアに来た時は、魔術のこともほとんど知らなかったよ」

 

 獄寺が眉を寄せる。

 

「待て。そんな状態で、さっき言ってた歴史の異常へ行ったのか?」

 

「最初の頃は、知らないことばっかりだったよ。現地に着いてから教えてもらうことも多かったし、何度も助けてもらった」

 

 山本が藤丸の背後にいる三騎を見て、それから綱吉へ目を移した。

 

「じゃあ、今も同じだな」

 

「うん。今も助けてもらってる」

 

 藤丸が答えると、綱吉の肩からわずかに強張りが抜けた。

 

「……藤丸も、最初からこういう役目だったわけじゃないんだ」

 

「そうだね。気づいた時には、やるしかなくなってた」

 

 綱吉はそれ以上聞かなかった。自分の意思より先に大きな役目が置かれる感覚だけは、説明されなくても胸へ引っ掛かった。

 

 リボーンだけは三騎から視線を外さない。

 

「藤丸との契約が切れたら、三人はどうなる」

 

『現界を維持できなくなる可能性が高い。しかも今は、藤丸くんと三騎を結ぶ魔力のパスそのものが傷んでいる』

 

 藤丸の指が綱吉の服を掴んだ。

 

『本来なら、カルデアの召喚基盤と藤丸くんの魔術回路を介した魔力供給で霊基を支える。ところがこの町では、大気中のマナも、通常の魔力のパスもこちらの想定どおりに働いていない』

 

「魔術回路……霊基……」

 

 獄寺は知らない術語を口の中で転がし、三騎と藤丸を交互に見る。その横で、綱吉も小さく呟いた。

 

「魔術って、本当にあるんだ……」

 

 未来や幻術を経験してきても、そこだけは別の棚に入っていた。知らない世界の常識が、目の前の三人を通して急に現実へ降りてくる。

 

 リボーンが訊く。

 

「魔力ってのは、ツナたちの死ぬ気の炎とは別なんだな」

 

『別の体系として見ている。魔力は魔術を動かし、サーヴァントの現界も支える。大気から取り込むものをマナ、術者自身が生み出すものをオドと呼び分ける場合もある』

 

「マナとオド?」

 

 獄寺が聞き慣れない二つを拾う。

 

『外から取り込むか、術者自身の内側から生むか。その違いを示す呼び分けだよ。今はそこまで押さえれば十分だ』

 

 獄寺が綱吉の手へ視線を落とした。

 

「じゃあ、十代目の炎が魔力に変わってるわけじゃねえ?」

 

『今の観測では、魔力総量が増えた反応は出ていない』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声に、研究者らしい熱が僅かに混じる。

 

『……ここは面白い。あの少年の炎が触れた直後だけ、三騎が少し落ち着いてる。理由はまだ分からない。そっちの炎のこと、もう少し教えてくれるかい?』

 

 その時、藤丸の近くで小さな紫の揺らぎが立った。

 

 クロームが周囲へ霧の死ぬ気の炎を薄く広げた横で、綱吉の小型中継機へ別方向から細い信号が入った。

 

 ざり、とノイズが跳ねる。

 

『聞こえるか。そちらの中継機、こちらでも拾った』

 

 境内で聞いた、冷静で刺のある声だった。リボーンが短く告げる。

 

「ヴェルデだ。神社にいた雷のおしゃぶりの持ち主だ」

 

『……別端末からの割り込み? 君はどうやって入ったんだい』

 

『クローム髑髏の霧の死ぬ気の炎で周囲の揺らぎがずれた瞬間に、私の端末から中継機へ周波数を合わせた。通信そのものは機械同士だ。会話に使える程度なら通せる』

 

 ダ・ヴィンチちゃんは短く沈黙し、すぐ興味を隠さなくなった。

 

『なるほど。現地側の揺らぎが薄くなった隙に、機械同士を繋いだわけか。いいね。私はカルデアのダ・ヴィンチちゃん。君は?』

 

『ヴェルデだ』

 

 リボーンが口元だけで笑う。

 

「おい、ヴェルデ。相手はダ・ヴィンチちゃんだとよ。お前、“ダ・ヴィンチの再来”なんて呼ばれてたよな」

 

『その二つ名を持ち出すな。僕が名乗った覚えはない』

 

『へえ。“再来”。ずいぶん面白い肩書きじゃないか』

 

「本人と再来の顔合わせだな」

 

『通信帯域の無駄遣いだ、リボーン』

 

 短いやり取りのあと、ヴェルデは神社で得た観測へ話を戻した。

 

『黒い群れは、倒されるまでの反応を取る観測端末に近いと見ている。崩れた粒子がどこかへ流れる点も含め、消滅しただけとは考えにくい。ただし、行き先までは追えていない』

 

『ウォッチについては?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが問う。

 

『装着者へ役割を押し込み、外せない。戦闘領域の規則とも連動する。少なくとも、単なる識別札より拘束具へ近い』

 

 獄寺が口を挟む。

 

「呼び方はウォッチだ。頭にそう入れられた。ボス、バトラー、アルコバレーノで役割も違う」

 

『ウォッチ、か。よし、こっちの呼び方もそれで揃えよう』

 

 オルガマリーが割り込んだ。

 

『今度はそちらが名乗って。藤丸を助けた少年と、その仲間たち。所属と目的を確認したいわ』

 

 リボーンは当然だというように答えた。

 

「俺はリボーン。こいつが沢田綱吉。獄寺隼人、山本武、笹川了平、クローム髑髏。寝てるのはランボ。ボンゴレファミリーの連中だ」

 

 わずかに間を置いて、最後を足す。

 

「マフィアだと思っとけ」

 

『……待ってくれ』

 

 通信の奥でムニエルの声が裏返った。

 

『今、マフィアって言ったか? あのマフィア?』

 

 藤丸は路地で同じ事実を聞いた時の驚きを思い出した。自分はもう知っている。けれど、通信先のカルデアにとっては今が初めてだった。

 

 獄寺の眉が跳ねる。

 

「十代目をその辺のチンピラと一緒にすんじゃねえ」

 

『いや、そこじゃない! 学校へ行く年齢の子がマフィアの後継者候補で、その炎がサーヴァントへ作用してる状況が追いつかないんだよ!』

 

 綱吉は困ったように肩を縮め、それでも路地で話した説明は繰り返さなかった。

 

「俺は十代目になる気はありません。でも今は、京子ちゃんとハルと母さん、町のみんなを戻したい。藤丸も元へ戻したい。それが先です」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声が少し柔らかくなる。

 

『うん。肩書きはかなり物騒だけど、君が今どこを向いてるかは分かったよ。藤丸くんを助けてくれた事実も、こちらはちゃんと見ている』

 

『信用したわけじゃないわよ』

 

 オルガマリーがすぐに釘を刺す。

 

『でも、目的が重なる間は情報を交換する価値がある。それで十分でしょう』

 

「話が早くて助かるぜ」

 

 リボーンの返答は短い。そこへダ・ヴィンチちゃんが続ける。

 

『では、こちらからも聞かせてほしい。死ぬ気の炎。あれはどういう体系なんだい?』

 

 リボーンが綱吉たちを見る。

 

「七つの属性がある。大空、嵐、雨、晴、雷、雲、霧。それぞれ死ぬ気の炎の働きが違う」

 

 ヴェルデが端末越しに補う。

 

『大空は調和。嵐は分解。雨は鎮静。晴は活性。雷は硬化。雲は増殖。霧は構築。単なる色分けじゃない。炎そのものの性質だ』

 

 獄寺は自分の手へ視線を落とした。

 

「俺の嵐なら触れたものを削る。山本の雨なら勢いを落とす。性質を使って戦い方を組むんだ」

 

「食らう前提で勧めるなって」

 

 山本が苦笑する。

 

『炎なのに、燃やす以外の働きが本体になる属性まであるのか。なるほど、魔力と同じ箱へ押し込んだら盛大に外しそうだ』

 

 ダ・ヴィンチちゃんはそこで一度、綱吉たちの戦闘記録へ視線を戻したらしい。声の奥で、何かを拾い直す気配がする。

 

『もう一つ面白い。炎の出方が、身体の状態や本人の意思とかなり深く結びついているように見える。生命力、精神状態、覚悟――そのあたりが同じ出力へ重なっている可能性がある。ただし、まだ仮置きだ。こちらの魔力と同じ測り方を当てはめるのは早いね』

 

『精神論だけで片づけるなよ』

 

 ヴェルデがすぐに割って入る。

 

『炎圧も純度も測定できる。使用者の状態が出力へ強く出るのも事実だ。そこを分けて取らないと、原因と結果を取り違える』

 

『だから面白いんじゃないか。測れる現象なのに、使う人間の生き方まで出力へ混ざる。君たちの炎、かなり癖が強いよ』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声には、困惑より楽しさが勝っていた。

 

『君たちの武装も、その炎を使うのかな』

 

 リボーンが答える。

 

「全部同じ仕組みじゃねえ。匣兵器(ボックスへいき)は、死ぬ気の炎を鍵にして起動する箱型の兵器だ。属性や炎の質で出るもんも働きも変わる」

 

「箱から武器とか動物が出てくるんだ」

 

 山本の補足に、ムニエルが呻いた。

 

『もう俺の知ってるマフィアから遠すぎる……』

 

 獄寺は自分の装備を示す。

 

「今の俺たちが使ってるのはボンゴレギアです。元になったリングが、継承した人間の戦い方に合わせて進化した武装。さっきのウォッチとは別物です」

 

『面白いなあ。同じ死ぬ気の炎を使っても、匣兵器は炎を鍵にして開き、ボンゴレギアは継承者に合わせて変わる。入口が似ていても、設計思想は別なんだね』

 

「一緒くたにするなよ」

 

 リボーンが釘を刺す。

 

『しないさ。似て見えるものほど、同じだと思い込むと解析を外すからね』

 

 そこでダ・ヴィンチちゃんは、先ほどの戦闘へ話を戻した。

 

『大空の性質が調和なら、マンドリカルドの揺れが止まったのも話は通る。けど、今は「そう見える」までだね』

 

『次に同じことが起きたら、僕が見る』

 

 ヴェルデがすぐに続く。

 

『安全性も未確認よ』

 

 オルガマリーの声が鋭くなる。

 

『都合よく安定したからといって、藤丸や三騎へ負担がない証拠にはならない。再現させるために無茶をさせるのは禁止』

 

「ツナを実験台にする気なら、俺も止めるぞ」

 

 リボーンが低く言う。

 

『そこまで雑な実験はしないよ』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが軽く返すと、ヴェルデは綱吉へ問いを向けた。

 

『沢田綱吉。大空の出力は任意で一定にできるのか』

 

 綱吉は息を詰めた。

 

「……今のままだと難しい。俺がちゃんと戦う時は、死ぬ気丸を使って切り替えてるから」

 

『死ぬ気丸?』

 

 ダ・ヴィンチちゃんがすぐに食いつき、獄寺が説明を引き取る。

 

「十代目が死ぬ気モードへ入るための錠剤です。二錠使えば、超死ぬ気モード(ハイパーしぬきモード)に入る。ただ、身体への負担は軽くありません」

 

『なるほど。出力だけを上げる薬と決めつけるのは早そうだね。ツナくん自身の判断まで変わる?』

 

「普段より迷わなくなる。怖さが消えるっていうより、何をするかがはっきりする感じ」

 

『なら、今ここで無理に使う必要はない』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの声から興味の熱が少し引いた。

 

『なら、今は自然に漏れてる分だけ見せてもらうよ。ツナくんに無理をさせずに三騎へ使えるか、こっちで確かめる』

 

 綱吉は小さく頷いた。

 

「うん」

 

 エミヤも静かに頷く。

 

「そうしてくれ。今はそれで十分だ」

 

 マンドリカルドは困ったように笑い、それでも剣を握り直した。

 

「いや、俺も頑張るっすよ。ボスとか正直まだ全然納得してないっすけど……今さら無理ですって言える空気じゃないっすし」

 

 綱吉の腕の中で、藤丸は小さく息を吐いた。

 

 戦いは始まったばかりだ。ルールは押しつけられ、敵は倒されてもなお不気味なほど綺麗にほどけていく。どこかへ流れるように消えた粒子の行き先はまだ分からない。だが、その消え方は、藤丸の胸の奥に嫌な記憶だけを残していた。

 

 炎を奪われるような、声にしにくい既視感。

 

 獄寺や山本の表情にも、どこか似た引っかかりがある。あの黒い炎が何をしているのか、今はまだ掴めない。綱吉は目の前で起きたことだけを胸へ残した。

 

 ただ、藤丸は思う。

 

 影炎体。

 

 少なくとも、あの黒い炎の化け物には呼び方ができた。次に現れた時、それを指して警戒できる。何も分からないまま襲われるよりは、ほんの少しだけ前に進んでいる。

 

 その時、通信の向こうでダ・ヴィンチちゃんが、少しだけ声を低くした。

 

『次に同じ黒いのが出ても、さっきと同じつもりで行かないで。あの粒子、終わったようには見えない』

 

 藤丸は目を閉じない。

 

 胸の奥にある空白が疼く。奪われたものが、まだどこかで自分を呼んでいるような気がする。

 

 綱吉は藤丸を抱え直し、町の奥を見た。

 

 並盛町の外周には、まだ白い包囲層が残っている。綱吉は人影のない路地を確かめながら進み、藤丸も影炎体の粒子が流れた方角を何度か振り返った。襲われて逃げるだけだった時より、見るべきものは増えている。

 

 影炎体を倒した境内の空気が、遠くなっていく。そして同時に、次の戦いの足音が、白く囲まれた町のどこかで静かに鳴り始めていた。

 

 通信の端で、ダ・ヴィンチちゃんの息が一瞬だけ止まった。

 

『……待ってくれ。別の反応が入った』

 

 綱吉は小型中継機を持ち上げ、藤丸も顔を上げた。

 

『さっきの装置と同系統の反応が七つ。少し離れているが、この町の中に散っている。そのうち一つが、ひどく不安定だ』

 

 その数を聞いた瞬間、リボーンの横顔が変わった。

 

『詳しく確認したい。今の経路を切らないように、少し落ち着ける場所へ移動してくれ』

 

 クロームが小さく頷く。紫の揺らぎは細いまま、まだ途切れていない。

 

 綱吉は藤丸を抱え直し、住宅街の奥へ足を向けた。

 

 小型中継機の音声に、ほんの短い途切れ目が生まれた。

 

 その途切れとほぼ同時に、通信機とは別に、藤丸の首元の空の器が一度だけ冷えた。

 

 その冷えを、藤丸の指だけが拾っていた。

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